冬の恋
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「さもないと冷えるから」
「アイスランドだからね」
「そうなの、まあとにかくね」
「これからね」
「植物園に行くのよね」
「すぐにね、バスに乗ってね」
スノッリはビクトリアににこりと笑って答えた。彼にしてもビクトリア程ではないがかなりの厚着で武装している。
「行くよ」
「わかったわ」
ビクトリアも頷いてだ、そうして。
二人ですぐに来たバスに乗ってだった、植物園まで行った。その植物園の中に入ると。
温室の中だった、スノッリの言った通り。
その温室の中でだ、数多くの植物達を見てだった。
ビクトリアはマフラーを取ってからだ、こう言った。
「暖かいわね」
「そうだよね」
「ええ、本当にね」
「外よりもずっとだよね」
「お外が寒い過ぎるのよ」
ビクトリアはその外を見ながら言った、空は曇っていて何処も雪に覆われている。
「だから余計にね」
「ここの暖かさが嬉しいよね」
「本当にね。それと」
「うん、植物園だから」
「どの植物もいいわね」
本当にと言うのだった。
「お花もね」
「ビクトリアはどのお花が好きかな」
「やっぱり薔薇ね」
ビクトリアが最初に言った花はこの花だった。
「何ていっても」
「確かイギリスの国花だったよね」
「そうよ、紋章にもよく使われてるし」
「薔薇戦争とか」
「あの戦争は訳がわからないのよね」
その薔薇のコーナーに向かいつつだ、ビクトリアは言った。
「ちょっとね」
「王位を巡っての争いだよね」
「そうなんだけれど」
「それぞれの家の紋章が白薔薇と赤薔薇で」
「その血縁関係が物凄くややこしいのよ」
ビクトリアは眉を顰めさせてスノッリに話した。
「百年戦争からそうだけれど」
「もうそれぞれの関係が入り組んでて?」
「そう、一見すると誰がどの家で」
当時のイギリスの王家のことを話すのだった。
「誰の親で誰の子供で何をしたのか」
「わかりにくいんだ」
「凄くね、ついてに言えば私スコットランド生まれだけれど」
「薔薇戦争には関わってないよね」
「ええ、直接はね。ただね」
「傍目から見て」
スコットランド人からだ。
「複雑過ぎるんだね」
「後々メアリー=スチュワートとエリザベス一世が血縁だったりして」
「もう無茶苦茶だね」
「わかりにくいのよ、特に薔薇戦争の辺りね」
「じゃあ薔薇は」
「一番好きなお花だけれど」
それでもというのだ。
「そうしたことも思い出すの」
「純粋には楽しめない」
「そうなの」
「それは厄介だね」
「全く、誰が誰かわからないまでの結婚も」
口をへの字にさせてだ、ビクトリアはぼやいた。
ページ上へ戻る