英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート
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第20話
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
『”戦争回避条約”の救済条約』
1、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女がリィン・シュバルツァーに降嫁する事(正妻、側室、愛人は問わない)
2、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女がリィン・シュバルツァーに降嫁した際、”戦争回避条約”の第3項、第4項、第9項、第10項の条約は消滅し、第5項の条約の内容を変更する(変更部分:内戦に加担していたエレボニア貴族のメンフィル帝国への帰属の不許可を条件付きの許可(条件、爵位を一段階下げる。)に変更。※ただし、”四大名門”は禁ずる)、同時にエレボニア帝国がメンフィル帝国に対する”友好”を示した”証”としてメンフィル帝国は100兆ミラ並びに内戦で荒れ果てたエレボニア帝国に必要な分の支援物資を贈与する
3、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女とリィン・シュバルツァーとの間に産まれて来た子供やその子孫についてはエレボニア皇家である”アルノール家”が望まない限り、エレボニア帝国の皇位継承者の権利は存在しないものとする
4、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女がリィン・シュバルツァーに降嫁した際エレボニア帝国が希望するのならば、メンフィル帝国軍によって爆撃されたバルヘイム宮の修繕費の内、70%をメンフィル帝国が負担する
5、アルフィン・ライゼ・アルノール皇女がリィン・シュバルツァーに降嫁した際、メンフィル帝国は”クロスベル帝国”とエレボニア帝国との国交回復に協力する
「ええええええええええええっ!?」
「リ、リィンとアルフィン皇女殿下がけ、けけけけけ、結婚!?」
「しかも爆撃したバルヘイム宮の修繕費の内、7割も負担すると書いてありますわね…………」
「はわわわわわっ!?じゃ、じゃあリィン君はアルフィン皇女殿下と……!」
「え、えーと……な、何て言ったらいいのかな…………」
条約を読み終えたエリオットとマキアスは声を上げて驚き、セレーネは目を丸くし、トワは慌て、ジョルジュは冷や汗をかいて表情を引き攣らせながらリィンとアルフィン皇女を見つめた。
(アハハハハハッ!よかったじゃない♪これで一番の難題だったあのお姫様を簡単にハーレムの一員にできるじゃない♪)
(ふふふ、恐るべきはご主人様の女運ですね。)
(ア、アハハ……確かに。)
(フフ、ある意味リィンらしい解決の方法ね。)
一方ベルフェゴールは腹を抱えて笑い、リザイラは静かな笑みを浮かべ、メサイアとアイドスは苦笑していた。
「”戦争回避条約”の内第3、4、9、10項が消滅するとなりますと…………」
「金に関する条約はほぼ全て消滅する上、100兆ミラと支援物資の贈与に加え、バルヘイム宮の修繕費の半分以上を負担するだとっ!?」
「滅茶苦茶簡単だし、凄くお得な条約じゃん!」
「確かにこれなら今すぐ実行できる簡単な条約ね。」
「というか、100兆ミラや支援物資の贈与に加えて自分達が爆撃したバルヘイム宮の修繕費の半分以上も負担するなんて、メンフィルはどこまで余裕があるのよ……」
クレア大尉は真剣な表情で戦争回避条約と救済条約が書かれてある書類を見比べ、見比べていたトヴァルは信じられない表情で声を上げ、ミリアムは目を丸くして声を上げ、セリーヌは静かな表情で呟き、サラ教官は疲れた表情をし
「な、なななななななっ!?」
「うふふ、慌てる必要はありませんわよ、お嬢様?お嬢様はリィン様の重婚を受け入れているのでしょう?それよりもいっそ、アルフィン皇女殿下と共にこの場で結婚してはいかがですか♪」
「シャ、シャロンさん………そんな事を言ったらアリサさんが更に混乱しますよ……」
混乱しているアリサの様子を見て微笑みながらフォローと共に提案をするシャロンを見たエマは冷や汗をかいて苦笑しながら指摘した。
「驚いた。本当にリィン、逆玉の輿になるじゃん。」
「阿呆。よく読んでみろ。”降嫁”と書かれてあるだろうが。」
目を丸くしているフィーの言葉を聞いたユーシスは呆れた表情で指摘し
「”降嫁”とは何なのだ?」
「”降嫁”とは皇族や貴族が”自分達より下の身分に嫁ぐ事”だ。この場合はアルフィン殿下が”皇族の身分を捨ててシュバルツァー家の子息であるリィンに嫁ぐ事”になるな。」
「……………」
ガイウスの疑問にラウラは答え、リィンは救済条約の内容を見つめたまま石化したかのように固まり続け
「リ、リィンさん…………」
「アルフィンの気持ちは知っているけど今の状況で喜ぶのは間違っていると思うよ、アルフィン………」
「…………よかった………女神よ、この偶然に心から感謝致します………」
「ムッ………」
頬を赤らめて嬉しそうな表情でアルフィン皇女に気付いたセドリック皇太子は呆れた表情をし、プリシラ皇妃は安堵の溜息を吐いた後その場で祈りを捧げ、エリスは頬を膨らませてジト目になった。
「クスクス、貴女の双子の妹だけあって焼き餅な所も貴女とそっくりね?」
「……否定はしません。」
エリスの様子を微笑ましそうに見つめるシグルーンの指摘にエリゼは静かな表情で答えた。
「ヴァイスさんが知ったら、大笑いするでしょうね♪」
「ア、アハハ……確かにヴァイス様ならありえそうですわね。」
「というか確実に彼を羨ましがるのではないかと。」
微笑みながら言ったルイーネの言葉にマルギレッタとリ・アネスは苦笑しながら答えた。
「レン姫、失礼ですが本当にこの条約内容をメンフィルは実行できるのでしょうか?100兆ミラのような大金、エレボニア帝国で言えば軽く見積もっても最低10年分の国家予算にはなりますが……」
レーグニッツ知事は戸惑いの表情でレンを見つめて問いかけた。
「うふふ、可能だから書いているのよ?現にさっきの話通り、遊撃士協会には既に100兆ミラを”寄付”したし、エレボニアにもいつでも渡せるように既に用意してあるわよ♪」
「なっ!?」
「さっきの二大国侵攻を黙秘する件か………!」
「……”契約金”を受け取った以上、本部は今回の件に関しては絶対に動かないでしょうね……」
レンの答えを聞いたレーグニッツ知事が驚いている中、トヴァルとサラ教官は厳しい表情で呟いた。
「確かにこの条約なら今すぐ実行できる容易な内容だが…………」
「一体何故この条約を考えたのだい?アルフィンとリィン君の子供やその子孫が持つエレボニア皇家の”皇位継承権”すらも捨てるなんて、正直メンフィルにとっては”利”はないに等しいと思うのだが。」
「………………」
一方アルゼイド子爵は探るような視線でレンを見つめ、オリヴァルト皇子は戸惑いの表情で尋ね、ユーゲント三世は警戒の表情でレンを見つめていた。そしてレンはメンフィルの”利”を説明した。
「なっ!?」
「レン姫!それはアルフィン皇女殿下を……エレボニア皇家であるアルノール家を最大限に侮辱する行為だと思われます!」
「―――正直、”人身売買”と言ってもおかしくないわね。というか実際にお金が絡んでいるから、言葉通りアルフィン皇女を”買い取っている”じゃない。まあ、”帝国の至宝”と称されている皇女に付ける値段としては相応しいかもしれないわね。」
「セリーヌ!」
「そ、そんな………幾ら何でも酷すぎます……っ!」
「だから相殺される条約内容が金銭が関わる内容が多いのですね………!」
「………………」
「姫様……」
説明を聞き終えたリィンは厳しい表情で声を上げ、ラウラは怒りの表情で反論し、セリーヌは目を細めた後呆れた表情で呟き、セリーヌの言葉を聞いたエマは声を上げ、セドリック皇太子は悲痛そうな表情をし、プリシラ皇妃は厳しい表情でレンを睨み、アルフィン皇女は複雑そうな表情で黙り込み、その様子をエリスは心配そうな表情で見つめていた。
「仕方ないでしょう?メンフィルの民達のエレボニア帝国に対する”怒り”を鎮めるにはエレボニア帝国を滅ぼすか、もしくはエレボニア帝国の”誇り”を最大限に汚すかのどっちかなのだから。ラウラお姉さんもさっき見たでしょう?メンフィルの民達の”怒り”を。あの”怒り”をアルフィン皇女の結婚の件以外で穏便な方法で鎮められる方法があるのかしら?」
「それは………………」
「……………………」
レンの指摘に対する反論を持ち合わせていないラウラは複雑そうな表情で黙り込み、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「それにエレボニアを救う為に大切な娘をレン達メンフィルが指定する人物とアルフィン皇女の意思を無視して強制的に結婚させる必要があるとはいえ、アルフィン皇女の親であるユーゲント皇帝にとっても、大切な娘の結婚相手がリィンお兄さんなら”色々な意味”で安心できるでしょう?何せ信頼していた家臣――――”鉄血宰相”の息子である事と共に友人関係のシュバルツァー男爵の息子である事に加えて、二人は知らない仲じゃない……というかむしろアルフィン皇女自身がダンスパートナーに指名した上、互いに文通をしていたくらい親しいし♪しかも単身でアルフィン皇女を”パンダグリュエル”から連れ出した恩人でもあるしね♪リィンお兄さんがアルフィン皇女の事をどう思っているかは知らないけど、リィンお兄さんの性格を考えるとアルフィン皇女に対して恋愛感情を抱いていなくても絶対にアルフィン皇女を大切にするだろうし、更にユミルでアルフィン皇女を匿った件も考えると、義理の両親になるシュバルツァー男爵夫妻も間違いなくアルフィン皇女を大切にしてくれるだろうから、本人の意思を無視する強制的な結婚でありながらもこんなにも安心できる嫁ぎ先は他にはないと思うのだけど?」
「…………それは……………」
「だからと言ってリィン君の出自を利用するのは、彼自身に失礼かと思われますが……!」
「そうだよ……!リィンがずっと気にしていた事の一つなのに……!」
「知事閣下……エリオット……俺の事は気にしないで下さい。もう吹っ切っていますから。」
小悪魔な笑みを浮かべるレンに問いかけられたユーゲント三世が複雑そうな表情で言葉を濁している中、レーグニッツ知事とエリオットは厳しい表情で指摘し、二人の指摘に驚いたリィンは静かな表情で答えた。
「話を続けるけど、この条約によってエレボニア帝国もその条約に書かれてあるもの以外の”利”を得ることもできると思うわよ?」
「え…………」
「それは一体どういう事だい?」
話を続けたレンの言葉を聞いたリィンは呆け、オリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ね、レンはエレボニア帝国の”利”を説明した。
「うふふ、情報局ならそう言った情報操作もできるでしょう?」
「……確かに可能ですが………」
「実際ヴァリマールは結構目立っちゃったから、情報操作は案外簡単にできるだろうね~。しかもリィンは元々夏至祭の件でアルフィン皇女の婿候補として騒がれていた時期もあった上たった一人でアルフィン皇女をパンダグリュエルから奪還して来たから、その時点でもメンフィルの狙い通りリィンをエレボニアの”英雄”扱いをして、アルフィン皇女が嫁ぐ相手として相応しいという情報操作をわりと簡単にできると思うよ~?」
説明を終えたレンに問いかけられたクレア大尉はリィンを見つめて辛そうな表情をし、ミリアムはリィンを見つめながら推測した。
「……お兄様…………」
「ちょ、ちょっと待ってください!そ、それって……!」
「さっき”殲滅天使”達が話してくれた”鉄血宰相”の計画と結構似ているかも。」
「リィンまで利用するなんて酷いよ……!メンフィルはシュバルツァー家を重要視しているんじゃなかったの……!?」
一方説明を聞き終えたセレーネは複雑そうな表情をし、ある事に気付いたアリサは血相を変え、フィーは真剣な表情で呟き、エリオットは不安そうな表情をした。
「シルヴァンお兄様の”代理”で来ただけのレンに文句を言われても困るわよ。文句を言うなら、二人を利用する条約を思いついた”発案者”のエリゼお姉さんに言ってくれないかしら?」
「ええっ!?」
「エリゼ君が発案者なのですか!?」
「なっ!?エリゼ……それは本当なのか!?」
レンの答えを聞いたアルフィン皇女とマキアスは驚き、リィンは信じられない表情でエリゼを見つめて尋ねた。
「―――はい。私が発案し、プリネ姫にその案の説明をした後皇族の方達の前で出してくれるように嘆願し、プリネ姫が快く引き受けてくれ、その結果”救済条約”が追加されたのです。」
「プリネさんがですか!?」
「……一体何故そのような案を考えられたのですか?」
エリゼの答えを聞いたエマは驚き、プリシラ皇妃は困惑の表情で尋ねた。
「うふふ、わからないかしら?―――リィンお兄さんが大好きなエリゼお姉さんはリィンお兄さんのエレボニア帝国の人々に対する”罪悪感”を少しでも和らげる為にその案を考えたのよ?それにこれなら政略結婚としても成り立つから、エレボニアの面子も守られるでしょう?」
「あ………………」
「エリゼさん……」
「姉様…………」
「全てはリィンの為か………」
「確かに双方に”利”が生じる上、”政略結婚”としても成り立つ事は否定できませんが……」
レンの説明を聞いたリィンは呆け、アルフィン皇女とエリスは辛そうな表情でエリゼを見つめ、ガイウスは静かな表情でエリゼを見つめ、アルゼイド子爵は真剣な表情で考え込み
「―――アルフィン皇女が兄様に懸想していなければ、この条約も提案しなかったと思います。」
「エリゼさん……」
「アルフィン自身の”救済”も考えた上での救済条約か……」
「下手をすれば結婚相手までもメンフィルに決められるかもしれないアルフィンの為にも考えてくれたのですね……」
「……エレボニアの皇として……そしてアルフィンの親としても、お主には礼を言うべきだな。」
エリゼの答えを聞いたアルフィン皇女とオリヴァルト皇子とセドリック皇太子は複雑そうな表情でエリゼを見つめ、ユーゲント三世は重々しい様子を纏って呟いた。
「うふふ、アルフィン皇女にとっても悪くない話でしょう?元々リィンお兄さんに恋しているみたいだし、祖国も救える上民達のエレボニア皇族達に対する信頼を回復できるんだから、”皇族の義務”を果たして堂々と大好きなリィンお兄さんの許に嫁ぐだけで、自分が作った失態を帳消しにできるんだから♪」
「そ、それは………………………」
レンに指摘されたアルフィン皇女は言い辛そうな表情で答えを濁したが目を閉じて考え込み、やがて決意の表情になってリィンを見つめた。
「―――リィンさん。」
「は、はい。何でしょうか、殿下。」
「突然で申し訳ありませんが今この場でわたくしをリィンさんの妻の一人として娶って頂けませんか……?」
「そ、それは…………」
「ふえええええっ!?」
「な、ななななななっ!?」
「む、むう………」
「ア、アルフィン!?本気で今リィンさんと結婚する気なの!?」
「ま、まさか本当にこの場で……」
「だ、大胆ですわね、アルフィン皇女……」
「!!!!!!!!????」
(私が発案したとはいえ、目の前で兄様へのプロポーズをされると、色々と複雑ね……)
アルフィン皇女の告白にリィンは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、その様子を見ていたトワとアリサは慌て、ユーゲント三世は唸り、セドリック皇太子は信じられない表情をし、ジョルジュとセレーネは表情を引き攣らせ、エリスは目を見開いて混乱し、エリゼは疲れた表情をし
「勿論わたくしはリィンさんが今後わたくし以外の他の女性と何人結婚しても受け入れますし、正妻や側室にするのも嫌なら愛人でも構いませんわ!」
「で、殿下!?お気を確かにしてください!」
「アルフィン……さすがに愛人はどうかと思うわよ……?」
「ちょ、ちょっと待ってください!?殿下をそのような扱いにする等陛下―――いえ、エレボニア皇族の方達に失礼すぎます!」
真剣な表情で言ったアルフィン皇女の言葉を聞いたレーグニッツ知事が慌て、プリシラ皇妃が呆れている中リィンは慌て始め
「フッ、ならアルフィンを正妻にしてくれるのかな♪」
「で、殿下!?」
からかいの表情をしたオリヴァルト皇子の言葉を聞くと表情を引き攣らせた。
「リ・ィ・ン~~~~~~??」
「に・い・さ・ま~~~~~??」
「お兄様…………わたくし達を正妻にはしてくれないのでしょうか……?」
「……………………」
「う”…………」
「ハア…………自業自得ですよ……」
更に膨大な威圧を纏って微笑むアリサやエリス、不安そうな表情をしているセレーネ、無言でいながらも膨大な威圧を纏って自分を見つめるエリゼに見つめられたリィンは表情を青褪めさせて身体を震わせ、クレア大尉は呆れた表情で溜息を吐き、その様子を見ていたその場にいる全員は大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ハア……お取り込み中悪いけど、少しいいかしら?”救済条約”以外にも”妥協案”があるから、それも今提示するから、それを聞いてから決めてくれないかしら。」
「え…………”妥協案”、ですか?」
するとその時呆れた表情をしたレンが制止し、レンの制止の声を聞いたアルフィン皇女は呆けた表情でレンを見つめた。
「エリゼお姉さん、ユーシスお兄さんとアルフィン皇女に例の”誓約書”を渡してあげて。」
「――かしこまりました。」
そしてエリゼはアルフィン皇女とユーシスにそれぞれ新たな書類を配った。
「これは…………”戦争回避条約”の”第6項”を必ず実行する事を約束させる”誓約書”か。―――今年度限りでトールズ士官学院を退学して、1年間帝都ミルスで領主の仕事に必要な最低限の知識を学んだ後クロイツェン州の臨時統括領主を務めるプリネ達の元でケルディックの”次期領主”として学び、プリネ達に合格をもらえれば、その時点からケルディックの領主を務めさせるとの内容だ。」
「わたくしは”戦争回避条約”の”第7項”と”救済条約”を必ず実行する事を約束させる内容の”誓約書”ですわ。内容はユーシスさんと同じで、今年度限りで女学院を退学し、メンフィル帝国領で過ごす事を誓約させる内容で、リィンさんに降嫁する時期は今から10年以内という指定がされていますわ。」
「なっ!?」
「そ、そんな……それじゃあユーシスが……」
「そ、それにアルフィンまで女学院を辞める事になるなんて……!」
「アルフィン………」
「「………………」」
ユーシスとアルフィン皇女の話を聞いたリィンは驚き、エリオットとセドリック皇太子は悲痛そうな表情をし、プリシラ皇妃は心配そうな表情をし、マキアスは辛そうな表情でユーシスを見つめ、ユーゲント三世は重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいた。
「レン姫、どうしてもこの案を呑まなければいけないのですか?トールズ士官学院は2年で卒業です。せめて後1年待つ事はできないのでしょうか?それにアルフィン殿下も一生をメンフィル帝国領で過ごすのですから、せめて卒業まで待って頂けないのでしょうか?」
その時ラウラが真剣な表情でレンを見つめて尋ねた。
「あのねぇ……”戦争回避条約”で求められている現時点での実行をそこまで”妥協”してあげたのに、まだ妥協しろっていうのは図々しすぎよ。ユーゲント皇帝は”戦争回避条約”と”救済条約”の契約書に、ユーシスお兄さんとアルフィン皇女はそれぞれに渡された自分自身の誓約書にサインをすれば、この場はそれで勘弁してあげるのよ?それに”救済条約”を実行すればその時点でアルフィン皇女は”皇族の身分を捨てて、シュバルツァー家の子息の妻という身分になる”から、内戦を終結させる”大義名分”である皇族が一人減る事はそっちにとっても、あまりよろしくない話だと思うのだけど?」
「……………………」
「……セドリック殿下が残っているとはいえ、できればアルフィン殿下も一緒に”Ⅶ組”の”大義名分”になってくれた方が後々の事を考えると、”妥協案”を呑んだ方がいいかもしれねぇな。」
「そんな……ユーシス君まで……」
「”Ⅶ組”のほぼ半分が今年度で去ってしまう事にもなるな……」
「…………ッ!」
呆れた表情になったレンの指摘を聞いたラウラは反論できず黙り込み、トヴァルは複雑そうな表情をし、トワとジョルジュは辛そうな表情をし、サラ教官は唇を噛みしめてレンを睨み
「それと3人がそれぞれの書類にサインをすれば、メンフィル帝国領内に”カレイジャス”が停泊する事を許可する上メンフィル帝国領内での転移魔法陣を使った移動も許可するし、正規軍のメンフィル帝国領の通過の許可も降りる事になっているわ。」
「そうなると……帝都に進撃する際どうしてもメンフィル帝国領の通過が必要な第三機甲師団や第四機甲師団の通過も認めると言う事ですか?」
レンの説明を聞いたクレア大尉は真剣な表情で尋ねた。
「ええ、更にメンフィル帝国領内での補給も許可するわ。後シグルーンお姉さんをしばらくの間、”Ⅶ組”に同行させてもらうわよ。」
「え…………」
「わたし達に同行するって……」
「もしかしてボク達と一緒に戦ってくれるの!?」
レンの話を聞いたリィンは呆け、フィーは目を丸くし、ミリアムは目を丸くしてシグルーンを見つめた。
「はい。期間以内は皆様の”協力者”として、助力致しますわ。」
「…………”監視役”の間違いじゃないのかしら?」
「か、”監視役”って……」
目を細めるサラ教官の言葉を聞いたエリオットは不安そうな表情をし
「まあ、それもあるわね。わかっているとは思うけど、メンフィル帝国のエレボニア帝国に対する信頼度は”0”どころか、マイナス100%よ。」
「ま、まさかわたくし達がメンフィル帝国に対して、貴族連合がやったような事をすると思っているのでしょうか……?」
「つまりはオレ達も疑っているのか……」
「レン姫!彼らはそのような事をする人物ではないと今までの行動を考えればわかるはずです!失礼ですが彼らまで疑うのはどうかと思われます!」
レンの説明を聞いたセレーネは信じられない表情でレンを見つめ、ガイウスは真剣な表情でレンを見つめ、レーグニッツ知事は真剣な表情で反論した。
「シグルーンお姉さんにⅦ組を監視させるのはあくまで”念の為”よ。」
「”念の為”って……!」
「我らは決して貴族連合が行ったような卑劣な真似は絶対にしませんし、我が国に全面的な非があるというのにメンフィルが推測しているような”人として”恥知らずな真似は絶対にしません!」
レンの答えを聞いたアリサとラウラは厳しい表情をし
「うふふ、逆に考えてみてよ。貴方達がメンフィル帝国に対する敵対行動をするつもりが全くないのならば、シグルーンお姉さんは貴方達にとって強力な戦力になるわよ?シグルーンお姉さんはメンフィル軍のペガサスナイトの中でも一、二を争う実力を持つ優秀なペガサスナイトである事や地上戦でも槍と剣を使える事に加えて治癒魔術と神聖魔術も扱えるし、シグルーンお姉さんの実力の一端はその目で見たわよね?」
「ま、魔術まで扱えるのですか!?」
「そう言えば結社の”使徒”との戦いの時に使っていたね。しかも治癒魔術も使えるって事は回復もできるのか……臨機応変な戦いができるから、戦力としてはありがたい存在だね。しかも実力もサラより確実に上だし。」
「……そうね。その騎士の実力があたしよりも上なのは確かね。」
「た、確かにシグルーン中将閣下の実力が凄まじいのは事実ですね……」
「あのヴィータ相手に終始圧していたものね。」
「――正直な所、シグルーン様の実力はあのレーヴェ様より上と思われますから、レン姫の仰っている事も強ち間違ってはいないかと。」
レンの問いかけを聞いたマキアスは驚き、フィーの分析を聞いたサラ教官は複雑そうな表情で頷き、エマが複雑そうな表情をしている中セリーヌは静かな表情で呟き、シャロンは真剣な表情でシグルーンを見つめた。
「というか何でその”監視役”が”聖魔皇女”の親衛隊の副長なの?プリネ達やレーヴェじゃダメなの?」
その時フィーが不思議そうな表情で尋ねた。
「クラスメイトとして貴女達と親しい間柄であるプリネお姉様やツーヤの性格を考えると”監視役”としての役目を果たせない可能性が高いでしょうし、そもそも臨時領主としてケルディックを護るプリネお姉様や、お姉様の護衛であるツーヤやレーヴェを長期間貴女達に同行させるなんて論外よ。エヴリーヌお姉様の場合は定期報告とか、そういうのは無理でしょうし。その点シグルーンお姉さんはメンフィルとリフィアお姉様に忠誠を誓っているし、Ⅶ組とも面識があるからちょうどいいでしょう?」
「それだったら、”守護の剣聖”はダメなの~?」
レンの答えを聞いたミリアムは興味ありげな表情でエリゼを見つめた。
「―――前にも説明したと思いますが、私は”特殊任務”がある為不可能です。」
「”特殊任務”……前にも言っていたが、今度はその内容を話してくれるんだよな?次に会った時に説明するみたいな事を言ってたし。」
エリゼの答えを聞いたリィンは真剣な表情でエリゼに尋ねた。
「フフ、エリゼさんは”特務支援課”――――ロイド君達に力を貸して、クロスベル解放並びにクロスベル帝国建国を手伝うという任務についているのよ。」
「え…………」
「ええっ!?」
「クロスベルの……」
「エ、エリゼ君が”特務支援課”の人達に……!?」
「”特務支援課”……かの”教団”による襲撃事件やマクダエル市長の暗殺を未遂に防いだ事等で色々と話題になっているクロスベル警察の新しい部署か………」
ルイーネの説明を聞いたリィンは呆け、アリサは驚き、アルゼイド子爵は真剣な表情をし、マキアスは信じられない表情で声を上げ、レーグニッツ知事は考え込みながら呟いた。
「ええ、そうよ。クロスベル解放並びにクロスベル帝国建国については基本”クロスベル自身”にさせるからメンフィルは直接手を貸さないけど、ロイドお兄さん達に個人的にお世話になったリフィアお姉様がエリゼお姉さんにロイドお兄さん達に力を貸すように指示したのよ。ちなみにレンも”個人として”、ロイドお兄さん達に協力するつもりよ。ロイドお兄さん達には世話になったしね。」
「ブーブー。”守護の剣聖”に加えて”殲滅天使”までクロスベル解放を手伝うなんて反則じゃないかな~?」
レンの説明を聞いたミリアムは驚いた後頬を膨らませて反論し
「そうかしら?現クロスベル政権に力を貸しているのは”結社”の”蛇の使徒”や”執行者”、”鉄機隊”に加えて”風の剣聖”。そして”赤い星座”の猟兵達どころか”赤の戦鬼”や”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”もいるのよ?」
「か、”風の剣聖”が現クロスベル政権に力を貸しているんですか!?」
「アリオスさんか……確かにあの人は手強いだろうな……」
「ええ……S級に最も近いA級正遊撃士だったんだから……」
「ユン殿も誇っていたほどの人物が一体何故……」
「”鉄機隊”……あの”神速”とやらが率いる部隊か。」
「しかも”赤の戦鬼”や”血染め”までクロスベルにいるんだ。」
レンの指摘を聞いたリィンは驚き、トヴァルとサラ教官は複雑そうな表情をし、アルゼイド子爵は考え込み、ラウラとフィーはそれぞれ真剣な表情をした。
「……ちなみにクロスベルにいる”蛇の使徒”は誰なのよ。」
「一人は”十三工房”の統括者―――F・ノバルティス博士よ。」
「じゅ、”十三工房”……?聞いた事のない工房だな……」
セリーヌの質問に答えたレンの答えを聞いたジョルジュは戸惑い
「どんな工房なのかシャロンは……知っているのよね?」
アリサは真剣な表情でシャロンに尋ねた。
「はい。――――”十三工房”。”十三工房”とは”身喰らう蛇”の多くの古代技術の研究機関の総名称になります。ノバルティス博士は先程のレン姫の説明にあったように十三工房の統括者でして。ガレリア要塞を消滅させた兵器も彼の手によるものですわ。」
「ええっ!?」
「ほえっ!?そうだったの~!?」
「やはり、”結社”が絡んでいましたか……」
シャロンの説明を聞いたエリオットとミリアムは驚き、クレア大尉は真剣な表情で呟いた。
「どうして古代技術をそんな方向にしか使えないのだろう……他にももっと世の為に役立つ使い方もあるだろうに……」
「ジョルジュ君……」
複雑そうな表情で呟いたジョルジュをトワは心配そうな表情で見つめた。
「そしてもう一人は”鋼の聖女”アリアンロードよ。」
「!!よりにもよって”鋼の聖女”まで現クロスベル政権に力を貸しているですって!?」
「クロスベルの皆様も厳しい戦いになるでしょうね……」
(”鋼の聖女”……”神速”の”マスター”か……)
レンの説明を聞いたセリーヌは血相を変え、シャロンは真剣な表情をし、リィンは考え込んでいた。
「”鋼の聖女”……と言う事はその”蛇の使徒”は女性なのですか?」
その時ある事が気になったラウラはレンに尋ね
「ええ。ちなみにレーヴェの話では”鋼の聖女”は”槍の聖女”と瓜二つの容姿で、得物である”騎兵槍”を使えば一軍すらも圧倒できるそうよ?」
「な―――――」
「なっ!?」
「ええっ!?」
「かのサンドロッド卿と……」
「というかその話だとまるっきり”槍の聖女”と同じだよね……!?」
「”槍の聖女”は250年前の人物………さすがに本人ではないと思うが……」
「も、もしかしてサンドロッド卿の子孫の方なのでしょうか……?」
「一体どういう事なのでしょう……?」
「少々気になる話ですね……」
質問に答えたレンの話を聞いたユーゲント三世は絶句し、ラウラとセドリック皇太子は驚き、アルゼイド子爵は呆け、エリオットは信じられない表情をし、ガイウスやアルフィン皇女、プリシラ皇妃とエリスは考え込んでいた。
「話を戻すわね。”神殺し”を始めとした多くの”協力者”が力を貸しているとは言え、ロイドお兄さん達―――”特務支援課”はまだはぐれた仲間全員と合流できていない上ヴァイスお兄さん達――――”六銃士”達も膠着状態にある状況…………対する”Ⅶ組”は仲間全員が揃って、レン達のおかげで”裏の協力者”達が半数以上いなくなった上、バリアハートとオルディスをレン達メンフィルが制圧した事によって貴族連合の勢力が低下したから今まで不利な戦いを強いられていた正規軍にとっても少しは改善される状況だと思われるから、状況としては互角―――いえ、下手をすればⅦ組やエレボニアの方が若干有利だと思うわよ?」
「それにクロスベルを覆う”結界”……あれを何とかしない限り、クロスベルに攻め入る事もできませんわ。」
「……少なくとも”結界”を解かない限り、我々は膠着状態と言ってもおかしくありません。」
レンの説明に続くようにマルギレッタ、リ・アネスはそれぞれ答え
「と言う事はクロスベルを覆う”結界”が消えた時が、クロスベル解放並びにクロスベル帝国建国が近いサインでもありますね……」
マルギレッタ達の説明を聞いたクレア大尉は真剣な表情で考え込んだ。
「先程”期間以内”と言っていたが、その”期間”はどのくらいになるんだ?」
その時トヴァルがレンに質問した。
「期間はクロスベル帝国建国後、メンフィルがクロスベルと共にエレボニアに侵攻するまで。―――つまり、”戦争回避条約”の最後の一文にあるタイムリミットまでがシグルーンお姉さんが”Ⅶ組”に協力する”期間”と思ってもらっていいわ。期間が過ぎたらシグルーンお姉さんは”Ⅶ組”から離れてリフィアお姉様達に合流する事になっているわ。」
「!それは…………」
レンの答えを聞いたリィンは仲間達と共に血相を変えた。
「……その”妥協案”を私達が呑めば、期間以内の間はメンフィルはエレボニアへの攻撃を中断するのだな?」
「ええ。それとオリヴァルト皇子達の行動を知ったパント卿から他の”妥協案”の提案があってね。その案を呑めば、ユーシスお兄さんとアルフィン皇女がわざわざその誓約書にサインしなくても、メンフィルはエレボニアへの侵略行為を中断するし、Ⅶ組もそうだけど正規軍もメンフィルから様々な恩恵を受けられるわ。」
ユーゲント三世の問いかけに答えたレンは静かな表情で答えた。
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