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真田十勇士

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巻ノ四十三 幸村の義その十四

「大坂の地も見ておられるとか」
「はい」
 その通りだとだ、幸村も答えた。
「そうしています」
「地を学ぶ為に」
「ああゆる地を知ってこそです」
「万全に戦える」
「ですから」
 この考え故にというのだ。
「そうしておりました」
「左様ですか」
「戦はその地も知ってこそなので」
「では大坂で戦になれば」
「大坂城だけで戦うものではないと思いまして」
「関白様の下で」
「はい、その時はです」
 まさにというのだ。
「大坂で戦うことも考えて見ておりました」
「お見事です、やはり」
「地を知ってこそですな」
「万全に戦えます」
「どの地でどうして戦うのか」
「それがわかりますからな」
 兼続も頷いて応えた。
「見ておられましたな」
「左様でした」
「では真田殿がおられれば」
 兼続は微笑みだ、こうも言った。
「関白様は安泰ですな」
「羽柴家の家臣でなくとも」
「少なくとも羽柴家の敵になるおつもりはありませぬな」
「はい」
 その通りという返事だった。
「それは」
「では、です」
「関白様はですか」
「真田殿がおられれば」
 まさにというのだ。
「安泰ですな」
「ならいいですが」
「しかし」
「しかしとは」
「真田殿のお考えがわかる方ならいいですが」
「そうでない方ならば」
「そうした方が大坂城の主になられますと」
 その時はとだ、兼続は難しい顔で言うのだった。
「危ういですな」
「大坂城が堅固であるからと」
「それにのみ頼られる方ですと」
「はい、その時はです」
「まさにです」
「その時は敗れますな」
 例え大坂城にいてもというのだ。
「援軍のない城を囲めばです」
「もう負ける道理はありませぬな」
「間違いなくです」
 それこそというのだ。
「勝ちます」
「そうなりますな」
「どの様な城も」
「援軍なくして籠城すれば」
「攻め落とせます」
 確実にというのだ。
「何なりと策を使い」
「そうなりますな」
 こう二人で話す、そして。
 兼続は不意にだ、こんなことを言った。
「それでなのですが」
「それでとは」
「真田殿のお考えですと」
「それがしのですか」
「小田原城もですな」
「はい」
 幸村はすぐに答えた。
「確かにです」
「堅固であろうとも」
「援軍がなくです」
「囲まれれば」
「陥ちます」
 そうなるというのだ。
「あの城も」
「決して陥ちない城はありませぬ」
 兼続もこう言った。 
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