世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
アギト ~闇からの忠告~
レストランAGITΩ
いつもは客で賑わうこの店だが、今日はOPENではなく「貸し切り」の札が出ていた。
そして現在、その原因の三人の男がこの場には集まっていた。
則ち
津上翔一、葦原涼、氷川誠である。
かつて人類の行き過ぎた進化を恐れた存在、「闇の力」の放つ怪物・アンノウンと戦ってきた、仮面ライダーアギト、ギルス、G3-Xの三人だ。
「で、本当に始めるのか」
「はい!もちろんです。これからもアギトの力に目覚める人はたくさん出てくると思うんです。だから実際に悩んで苦しんだオレや葦原さん、そしてオレたちと長く接してきた氷川さんとでアギトの会を開いてそういった人を導いていこうかと、前々から思ってたんですよ」
「それは素晴らしいことです。しかし、どうやってアギトに目覚めた人を見つけだすんです?」
この場合の「アギト」とは仮面ライダーアギトのことではない。
「アギト」とは人類の進化の可能性、すなわち超能力に目覚めた者のこと、もしくは目覚める現象のことである。
しかしその力はあまりに大きく、かつて人間を創造し「我が子」とまでいい愛した存在「闇の力」はそんな人間たちを危険とみなし排除していたのだ。
その闇の力も今は人類の可能性を理解し、アンノウンの出現はなくなったのだが・・・・
「とりあえず二、三人は目星がついていますから・・・・」
「しかし・・・最近またアンノウンの目撃情報が多々見られるようになったようですね・・・」
「そうなんですよ~~。こっちも仕事中に来られて何度困ったことか」
「僕もまたG3ユニットに戻りましたし・・・」
「しかし俺や津上が到着する頃には全滅させられていたな・・・誰だ?」
「新しいアギト・・・・か?」
そこまで話したところで、隅の客席が輝き、声が聞こえた。
《人よ、アギトよ。聞きなさい》
そこには黒いセーターを着た、中性的な顔をしたもの大人しそうな男がいた。
「―――――お前は!!」
「闇の・・・・ロード」
「ばかな!津上さんが倒したはずでは・・・」
そう、この男こそアンノウンを送り、アギトとなる可能性を持つ人間を危険として排除してきた男、いわゆる「闇の力」その人である。
いや、男だとか人という表現は間違いか。この存在は半ば神のような存在なのだ。
《私はもはやアギトを襲わぬ。あるヒトとの賭けをしていてな・・・・》
「なんだと・・・・?」
「・・・だったら、そんな奴がなんの用だ」
《アギトはヒトと共に生きて行けるのか、ヒトはアギトを受け入れられるのか。それを確かめるために、あなたたちには生きてもらわねばならない》
「だからなんだと」
《この世界に邪悪なるものが入り込みました。わたしの遣わした者も敗れ、世界の終わりが近づいています》
「邪悪なるもの?アンノウンが現れたのも、そいつを追って?」
顎に手を当て考え始める氷川だが、一番可能性の高い疑念をぶつけに言った。
「いや・・・むしろお前がそれをやってるんじゃないのか?私たちはやられたアンノウンの残骸しか見ていません」
「そうだ。今更、お前を簡単に信じられるとでも思ってるのか」
氷川と芦原の疑念。
だが闇の力・オーヴァーロードは、そんなものなどどこ吹く風といった様子。
しかし、必要な手がかりだけは残していった。
《その者が現れた最新の場所を教えます。私はアギトの・・・・人間の可能性に賭けてみることにしたのです》
「おい待て!」
《頼みましたよ・・・・》
そう言って。
言うだけ言って、そして十分だと思ったのか。
男はまるで、最初からいなかったかのように消えていなくなってしまったのだ。
「・・・・おいどうする」
最初に声を出したのは芦原だ。
いきなりやってきて、いきなり消えた。
嵐というにはあまりにも静かだったが、彼等にしてみればそれ以上のインパクトのある来客だった。
「あいつの罠かもしれません。行かないほうがいいと思います」
「ああ、オレも同意見だ。どう考えても怪しすぎる」
「でも、だったらこんな回りくどいことしますかね」
「確かに・・・アンノウンの大群で攻めればいいものを・・・なぜ?」
「津上、お前どうしたいんだ?」
「・・・とりあえず確かめます。本当ならその悪い奴を倒さなきゃならないし、罠だとしても放っておいたら大変なことになる」
「む・・・・では、行きますか?」
「仕方ない。こうなると津上は止まらん」
「じゃあ、行きましょう!!」
津上と葦原はバイクに、氷川は車に乗って闇の力が示した場所に向かう。
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「ここ、か」
蒔風が調べ物をしている。
ここは林の中である。
さっきまでここで「奴」が戦っていたようだ。
この世界にきてすでに二日、「奴」は何度かこの世界の勢力・アンノウンと衝突している。
「この世界の・・・闇の力ってのか?は、「奴」がどんなモノか何となくわかってるらしいな」
さすがは神である。
蒔風が林の中でしゃがみ込み、さらに調べを進める。
「あの野郎どこ行った?」
蒔風が地面に手を当て探る。
すると手元が輝き、何かを読み取り始めた。
探り出すのは「奴」がどっちに行ったかだ。
と、そのころ
ブォン、キキィ!
バイクのエンジン音と、ブレーキの甲高い音がその場に響いた。
蒔風から離れた所にバイク二台と車一台がやってきのだ。森の中にいる蒔風には聞こえないらしい。
降りてきた三人は森を見回り、やがて調べ物をしている蒔風を見つけ、驚いた。
「本当に・・・いた?」
「待ってください。一般人かもしれません」
「なんだ?手元が光ってるぞ」
「あれは?」
「わかりません。でも、アギトの力は感じられないです」
「ならば本当に・・・」
「異世界の力?」
「ということがあいつが・・・・」
「行きましょう!」
気合一発。
勇ましく声を上げ、二人を鼓舞する氷川。
なんとなく抜けたノリの津上はともかく、芦原はやる気になったようだ。
標的の男に気付かれぬよう距離を狭め、そして葦原と氷川が茂みから飛び出て蒔風に掴みかかっていった。
一方、蒔風はというと
「よし、あっちか」
「奴」の向かった方向を探知し、そちらに向かおうとしていた。
立ちあがり、そしてその方向をぼんやりと眺め、歩を進めようとした。
その時
茂みから、急に二人の男飛び出してきたのだ。
「うひゃぁ?なにが起きだ」
突然の出来事に無駄に訛った。
そんな蒔風の口調を無視して、馬乗りになっている葦原が聞いた。
「貴様!違う世界から来た人間か?」
「はい?え?なんで知ってんの?」
「っ!やはりか!」
目を真ん丸にして、口を開け、えぇ!?と驚く蒔風。
その蒔風の襟をつかんで無理矢理立たせ、芦原は横っ面を殴りつけた。
「痛っ!なんだよ!」
「貴様の思い通りにはさせん!変身!!」
蒔風を敵だと認識した芦原が、腰に手を当て変身を完了させる。
芦原と入れ替わるかのようなモーションで変身を完了したギルスが、咆哮を上げて蒔風に襲い掛かって行った。
「ァガァァァァァァァァァァァ!!」
「なんなん?なんなんだ?なんなんなんなん?」
「オォア!」
バギッ、ドゴッ!
「ブッ、ガッハ!ぃきなりなにすんだ!」
「ここに世界を崩壊させる邪悪なる者がいると聞いて来てみたら、貴様がいた!」
「しかもどうやらアギトの力ではないようです。身柄を拘束させてもらいます!!」
ギルスと、そこに参戦して拳銃を構える氷川が言う。
それに対し蒔風は小さく悪態をついた。
「決定的ってか。確かに「奴」がさっきまでいたみたいだけど・・・・」
「なにをブツブツ言っている!」
ギルスが一気にその跳躍をもって蒔風に掴みかかった。
蒔風とギルスが組み合い、地面を転がる。
その勢いでギルスを投げ、距離をとってから膝立ちに蒔風が叫ぶ。
「緑のライダーかい。なら!!」
グッ!と拳を握ると、蒔風の手首に変身鬼弦が現れる。
そしてそれを書き奈良市頭上に掲げ、落ちてきた雷を振り払って仮面ライダー轟鬼に変身を完了した。
「よっし・・・張り切っていくっスよーーー!!!」
「くっそ!!!」
姿を変えた蒔風に警戒し、ギルスが腕の爪を絵入りに尖らせ、轟鬼となった蒔風に襲い掛かる。
ギルスの爪と音撃弦・雷電が、ぶつかり合って火花を散らす。
「芦川さん!!!はぁぁぁぁぁ・・・・変身!!!」
そこにようやく津上が駆け付け、アギトに変身する。
のんびりとした彼ではあるが、戦うべき時に躊躇するような男ではない。
「やっべ!!フンッ!!」
「グガッ!!」
アギトの参戦を確認し、うかうかしていられないことを悟る蒔風。
勝負を決めようと、雷電をギルスの腹に突きたて展開。その弦を掻き鳴らし、ギルスの身体に音撃を送り込んでいく。
「音撃斬・雷電激震!!」
ギターの音が鳴り響き、突きたてた場所から火花が散り、更にその箇所が全身へと広がっていく。
見た目通り、ギルスは生身の肉体であるライダーだ。
その肉体に全く未知の攻撃を叩き込まれては、流石のギルスも倒れてしまう。
「葦原さん!!!」
「ん?おおう!?」
アギトが掴みかかり、投げとばす。
蒔風は変身を解いて着地した。
「なんだよあんたら!!世界を壊すのはオレ、ぬっはぁ!?」
「やっぱりあなたが!!絶対にさせない」
じゃない、とどうにか弁明しようとする蒔風。
だが蒔風の話す途中で、実にいいタイミングでアギトのパンチが襲いかかり、変な風に理解されてしまった。
それに加え、ギルスを倒してしまったことが、余計に彼等の警戒心を強くさせる。
ここまで来ると、どちらが悪いとかわからなくなる。
しいていうなれば、蒔風がギルスを取り押さえるべきだったか。
だが蒔風も勢いで突き進むタイプの人間だ。
故に、このような流れになったら――――
「あー、もー!!!いいぜ、いっぺんブッ倒す!!それから話を聞いてもらうぞ!!次はこいつで・・・変身!!」
やはり、行くところまで行くことになる。
蒔風が轟鬼の変身を解き、今度はクウガに変身する。
別の姿へと変身に、彼等の構えが強張る。
だがそんなことはどうでもいいと、多少イラついた声色で、蒔風が指さして言う。
「人間の進化だか可能性だか知らねーが、所詮カテゴリーはまだホモサピエンス止まりだろーが。蒔風はその上を行くぞ。人間の定義を外れてっからよぉ!!!!」
クウガの姿に拳銃を構えた氷川が、四号?・・・などと言っていたが二人には届かないようだ。
その間に、アギトがベルト・オルタリングの右腰に触れた。
するとアギトの右腕が赤くなり、フレイムフォームへとフォームチェンジした。そしてベルトの中央から、フレイムセイバーを取り出す。
「じゃぁ――――超変身!!!」
一方、それに対抗しようとクウガはタイタンフォームに超変身して、近くの棒きれを拾いタイタンソードに変える。
「「はぁあああ!!」」
ギィン!!
二人の剣がぶつかり合う。
しかしフレイムフォームはそこまでパワータイプではない。
タイタンフォームの防御力と攻撃の重さには敵わず、弾かれてしまう。
さらに蹴りを織り交ぜながらクウガが攻める。
アギトはそれを超越感覚でかわしていくが、素早い動きに向いたフォームではないため次第に追い詰められていく。
「「そこだ!!」」
アギトの背が木に当たる。
追い詰めたクウガと、追い詰められたアギトが同時に叫んだ。
クウガがタイタンソードを突き出すと同時に、アギトはストームフォームに変わり、オルタリングからストームハルバードを取り出し、そのままクウガに突きだす。
タイタンソードが剣なのに対し、ストームハルバードは両先端に刃のついた槍である。
間合いの違いは目前であり、クウガが突っ込んだ衝撃をカウンター気味に食らう。
「ゲフッ!!っち!ならこっちは・・・・」
クウガの姿が青く変わり、ドラゴンフォームになる。と同時にタイタンソードはドラゴンロッドと変わった。
「アギトと同じような変わる力・・・いや、似ているがやっぱり違う!」
「こっちはクウガだからねえ。そりゃ違うってのよっ、とぉ!!!」
クウガドラゴンフォームがロッドをダイナミックにブン回し、クルクルと回転していき、時には止まり、コンパクトに振りまわして攻撃を仕掛けていく。
しかしアギトはひるまない。クウガの回転に合わせて、うまくかわしていく。
さすがはスピードと俊敏性に優れたストームフォーム。
そしてここぞで大振りになった時、グランド・ストーム・フレイムの三つの力を一つにした、トリニティフォームに変わり、フレイムセイバーとストームハルバードで切り殴り飛ばす。
ドラゴンフォームはスピードや跳躍力に特化するために、攻撃・防御力を捨てたフォームだ。その代わりにドラゴンロッドを装備しているのだが。
ゆえにその衝撃に耐えられるわけもなく、軽々と吹き飛ばされる。
「ドゥッガッハ!!!へっへっへ・・・フゥ」
「ハァハァ・・・・グゥゥ・・・」
クウガはたった二撃打しか喰らってないが、相手はアンノウンや闇の力と戦った男。やはりダメージはそれなりにあった。
アギトもさんざん攻撃を食らい、結構ぼろぼろである。今までの反撃も、破れかぶれに出したものだった。
「さぁて、終わらせますかい!?」
「フッ、ハァァァァ・・・・・(カチッ)」
ヴァン!!!ヴォン!!!
クウガが黒の金の姿、アメイジングマイティフォームに。
アギトが燃え盛る業火の戦士、バーニングフォームに。
それぞれ変わり、一点に力をためていく。
その一撃に両者が勝負をかけた。
「「ハアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」
クウガの足に、アギトの拳に、エネルギーがたまっていく。
「!!!オォォォアアアア!!!!!」
「!!!ハァァァァァァァ!!!!!」
二人同時に動きだし、クウガのアメイジングマイティキックとアギトのバーニングライダーパンチがぶつかり合い、大爆発を起こす。
「津上さん!!!!!」
「津上!!!」
変身の解けた葦原と、氷川が叫ぶ。
爆炎が晴れた先に、膝をついて肩で息をする変身の解けた蒔風と、地面に倒れている津上がいた。
「オレさんの・・・・勝ち、だ・・・・・っと」
「まだ僕が!!!」
「グッ、オレもまだ戦えるぞ!!!」
「俺の・・勝ち、だから!!」
蒔風が二人を威嚇するように大声を出し言葉をさえぎる。
「話を聞いてもらいます。そもそも、俺は世界を守りに来たんだ!!!お門違いもいいとこだ!!」
「「・・・・・は?」」
その言葉に、二人は固まってしまった。
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「ギ・・・お前は世界を破壊する・・・・・アギトでも人間でもない力のお前は一体・・・・・グアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ピィン!!!ドォン!!
最後の一体のアンノウンが両断され、命の消えるのを暗示するかのように頭上に光の輪が現れる。
そしてその体が爆発しその場に静寂が戻った。
「この世界の何某を利用するのは無理かなぁ・・・・なかなかやりますな、フム・・・この世界の・・・闇の力だっけ?うっとおしいんだよなぁ。あいつら」
と、ぼやく「奴」がいるのは瓦礫だらけの崩れたビル群の一角である。
「そろそろいい加減にしてくれないと・・・・ん?はぁ・・・またかよ」
うんざりしたように「奴」がその方向を見ると、複数のアンノウンのシルエットが見えた。
「いいぜ・・・かかってこいよ。オレをそんな簡単に倒せると思うなやぁ!!!!」
爆発が起きる。
黒い波動にのまれ、アンノウン達が消え去った。
そして「奴」の姿も。
これから何をしだすのかは、「奴」以外に誰も知らない。
to be continued
後書き
アリス
「次回、説明する蒔風、そして仲直りかーらーの!?」
ではまた次回
私は、人間の側からアギトを滅ぼすための使者としてあなたを復活させた。
・・・だが、その必要はなかったようです。
人間はいずれ、アギトを滅ぼします・・・
いや、あなたは人間を作りながら、人間のことを何も知らない。
人は、アギトを受け入れるだろう。人間の無限の可能性として・・・
・・・では、見守ってみましょう。あなたのことばが正しいかどうか・・・・
人間とは何なのか。もう一度、この目で・・・
ああ。きっと俺が・・・勝つさ!
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