Three Roses
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第一話 運命の薔薇その七
「何といっても」
「はい、ロートリンゲン家は大陸第一の権勢を誇っています」
「領地、兵数、富喜とな」
「どの家も遥かに凌駕しています」
「アントワープ家ともな」
「アントワープ家です」
大公の目がまた光った。
「我々の最大の敵は」
「あの家は何百年も前から我が国を狙っている」
「領地や産業を巡って争ってきました」
「我等が勝ったこともあれば敗れたこともある」
「まさに仇敵です」
「エヴァンズ家にとってな」
「しかしです」
ここで大公は王に言った。
「アントワープ家の仇敵は当家だけではありません」
「ロートリンゲン家もだな」
「はい」
こう言うのだった。
「アントワープ家はロートリンゲン家とも数百年来の仇敵関係にあります」
「彼等の敵は一つではない」
「つまり我等は同じ敵を持っているのです」
「敵の敵は味方」
「ですから」70
それ故にというのだ。
「あの家とです」
「結ぶべきか」
「アントワープ家が周辺諸国、そして国内の諸侯を煽っています」
「常にな」
「そして我が国を脅かしていますので」
「我々としてはだな」
「はい、あの家を抑える為に」
是非にというのだ。
「婚姻を進めましょう、ただ」
「そのロートリンゲン家もだな」
「あの家も用心しなければなりません」
縁戚を結ぶこの家もというのだ。
「何しろ縁戚を結んだ相手の家はです」
「よくあるな」
「位の継承者立ちが次々に急死しています」
「そしてあの家から入った者の子達だけが残りな」
「あの家に入っています」
「不思議なことだ」
いささかシニカルにだ、王は玉座から言った。
「それが幸運と思うか」
「表向きは」
これが大公の返事だった。
「そうなっています」
「そうだな」
「あくまで、です」
「表向きはだな」
「証拠はありません、ですから」
「不幸にもな」
「どなたもです」
大公はいささかシニカルな声で言った。
「そうなったのです」
「ものは言い様だな」
「全くです」
「こうした話はどの国にもあるが」
王も玉座で苦い顔になっている、そのうえでの言葉だ。
「しかしな」
「ロートリンゲン家については」
「特別に多いな」
「そうです、ですから」
「縁戚は結ぶべきでもだな」
「あくまで、です」
「王位継承にまで及ばない様に」
王はまた言った。
「留意すべきだな」
「そう考えます」
「わかった」
王は大公のその言葉にも頷いた、そしてだった。
大公にだ、強い声で言った。
「その件よしとする」
「では」
「しかしこちらの相手はだ」
「どの方にすべきかは」
「これからですね」
「考えよう」
「わかりました、そして」
大公はさらに言った、二人で話を進めていった。
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