| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第52話

~隠者の庭園~



「………俺達が住む世界とは別に存在する異なる世界………人の想念に反応する世界………”影の国”…………」

(まさか異世界があるとは驚いただの。)

「……まさかあの空中都市にそのようなアーティファクトが隠されてあったとはな………そして闇に染まった俺か。………随分ふざけた事をしてくれたな、”影の王”………!」

リース達から事情を聞いたセリカは聞いた情報を繰り返して呟き、ハイシェラは驚き、リウイは驚いた後全身に怒気や闘気を纏った!

「………レシェンテ。ラプシィアが蘇っているというのは本当か?」

「うむ………信じたくない気持ちはわらわもわかるが、忌々しい事に奴も生き返っておる。わらわは奴と直接会ったからわかる………間違いなく奴じゃ。」

「…………………」

「エクリア様…………」

セリカに尋ねられたレシェンテは不愉快そうな表情で答え、エクリアはわずかに辛そうな表情をし、エクリアの様子に気付いたシュリは心配そうな表情で見つめた。

「そうか…………なら再び斬るだけだ。」

(うむ。………ククク………新たな戦いか。たえぎってくるだの………!)

そしてセリカは静かに答え、ハイシェラは頷いた後不敵に笑っていた。

「フッ。それにしてもまさか再びお前達と会える日が来るとは思わなかったな。」

リウイはシルフィア達―――既に逝った戦友にして側室達を見つめて口元に笑みを浮かべ、まずティナに視線を向けた。



「ティナ。ティアはお前の遺志を継ぎ、今ではイーリュンの神官長として異世界でのイーリュンの信徒たちを纏め、活動している。」

「はい、プリネさん達からあの娘の事を聞いております。………本来ならメンフィル初代皇帝の長女であるあの娘には皇族としての責務があるのに、あの娘の好きなように生きさせて欲しいという私の願いを聞いて頂いた陛下のお蔭です。………本当にありがとうございます、陛下………」

リウイの話を聞いたティナは頷いた後、優しい微笑みを浮かべた。

「気にするな。お前には色々と世話になったからな。…………それとお前もイリーナ達のように生まれ変わったそうだな?」

「はい。今はクロスベルという都市の病院で看護婦を務めております。」

「………さすがはお前が生まれ変わった人物だな。………名はなんという?」

ティナの話を聞いたリウイは口元に笑みを浮かべた後尋ねた。

「………セシル。セシル・ノイエス………それが今の私が転生した方の名前です。」

「そうか。………その名………覚えておこう。………イリーナ達のようにお前の魂が目覚めたのなら、必ず連絡をくれ。………ティアも喜ぶだろうし、何か力になれる事があるのなら力になろう。それにお前ならいつでも大使館に尋ねて来ても構わん。」

「重ね重ねありがとうございます、陛下。その時は………かつてのように愛して頂けますか?」

「お前が望むのならな。」

頬を赤らめて尋ねたティナにリウイは静かな笑みを浮かべて呟いた。

「フフ………よかったわね、ティナ。私も生まれ変わった貴女に会える日を楽しみにしているわ。」

「イリーナ様………はい、私もです………!」

そしてイリーナは微笑み、微笑まれたティナも微笑んだ。

「………それとあなた?」

ティナに微笑んだイリーナは凄味のある笑顔をリウイに向けた。

「………な、何だ………?」

イリーナの様子に気付いたリウイは冷や汗を垂らしながらイリーナを見つめた。

「”今”の側室を増やすのはほどほどにしておいてくださいね?でないと私が寂しいんですから。」

「………わかっている。」

凄味のある笑顔のイリーナに見つめられたリウイは冷や汗を垂らしながら頷き、次にティファーナに視線を向けた。



「また………貴方にこうして会えるとは思いませんでした………陛下………!」

「俺もだ。この”影の国”に感謝せねばならんな………」

視線を向けられたティファーナは微笑み、リウイは口元に笑みを浮かべて答えた。

「あの娘は………サフィナは今はどうしていますか?」

「かつてのお前のように気高き”竜騎士”として………俺の娘として………今は我が帝国の竜騎士軍団長として日々精進している。最近ではお前の名を継ぎ、当主となったツーヤに色々と教えている。……お前から見て、ツーヤはどうだ?」

「………解放されてからその娘を時折見ていましたが………私の名を………”ルクセンベール”を継ぐ者として相応しいかと。これほどの者を見つけるとは、さすが陛下です。」

「………恐縮です。」

リウイに尋ねられ答えたティファーナの言葉を聞いたツーヤは軽く会釈をした。

「フッ。見つけたのは俺でなくプリネだがな………再びお前の力を俺達の為に貸してくれるか?」

「陛下が私に頼むような事等ございません。私はあの時………貴方に私の純潔を捧げたあの時、私の全てを貴方に捧げ、生涯貴方に仕えると誓ったのですから!」

「そうだったな………お前の力、期待しているぞ。」

「ハッ!!」

リウイに微笑まれたティファーナは嬉しそうな表情で答えた。

「あら………私は初耳ですよ、あなた?………詳しい経緯を後で教えてもらいますからね?」

「…………わ、わかった………」

一方2人の会話を聞いていたイリーナは顔に青筋を立てながら凄味のある笑顔をリウイに向け、イリーナに笑顔を向けられたリウイはイリーナの様子に気圧されながら頷いた。

「……………純潔を忠誠の証とするなんて………ティファーナさんは本当に一途にして気高く、誇り高い”騎士”ですね………」

「ええ。同じ”騎士”として彼女からは学ぶべきことがたくさんあります。」

クローゼは顔を赤らめた後眩しそうな表情でティファーナを見つめ、クローゼの言葉にユリアは頷いた。

「ああ!どうして我が親友たるミュラーは女性じゃないんだ!それならばこのボクにも可憐で美しきナイトがいるのに………!」

「………ティファーナ殿の忠誠を貴様の下らん妄想に使うな、阿呆………!」

オリビエはいつもの調子で呟き、それを聞いたミュラーは顔に青筋を立ててオリビエを睨んだ。



「それにしても………生まれ変わったエステルがここにいるのに、お前達まで現れるとはな。………ラピス、リン。」

ティファーナからラピスとリンに視線を変えたリウイは一瞬エステルに視線を向けた後苦笑しながら2人を見つめた。

「フフ………私達も最初は驚きました。」

「ええ。それに同化したはずの私達がいるのに、エステルが私達の力を解放できるのを見て驚きました。私には全く理解できない世界ですよ………」

リウイの言葉に頷くようにラピスは微笑み、リンは苦笑していた。

「陛下。セルノの森は今も変わらず、あのままですか?」

「ああ。アリアがグラザと共に守り続けている。………”森の守護者”の娘として。」

「本当にラピスお姉様とそっくりですね、あの娘は………陛下、グラザはどうですか?」

「今もセルノ・バルジア統合領主としてアリアと共に日々政務に追われている。………2人は早く自分達との間に産まれた双子に継いでもらい、俺のように表舞台から身を退いた気楽な隠居生活を望んでいるがな。孫達も跡継ぎとして日々成長しているようだし、その日が来るのは近いかもしれん。」

「フフ………そうですか。」

「クスクス………」

リウイの話を聞いたリンとラピスはそれぞれ微笑んだ。

「お前達2人の力………期待しているぞ。」

「ハッ!」

「リン共々、全力を持って陛下達を元の世界への帰還を手伝わさせて頂きます。」

口元に笑みを浮かべたリウイに見つめられたリンは力強く返事をし、ラピスは静かな笑みを浮かべて答えた。



「それにしてもエステルが私達の記憶を使って、陛下に脅しをかけたのを見て、本当に驚きました。」

「エステル、さすがにあれはやり過ぎよ。」

「ギクッ!べ、別にいいじゃない~………イリーナさんっていうちゃんとした奥さんがいるのに、次々と女の人を落とす女たらしでロリコンな奴にはあれくらいの罰は必要よ~。」

リンは苦笑しながらリウイを見つめ、ラピスに諌められたエステルは冷や汗を垂らした後、ラピスから目を逸らして答えた。

「そこまで言われたのは初めてだぞ…………というか、俺がいつ幼い者に手を出した。」

エステルの言葉を聞いたリウイは表情を引き攣らせて呟いたが

「ハア?何寝ぼけた事言ってんの??………今は大人だけど、当時はティータ達と見た目が変わらないセリエル姫に手を出した癖に。」

「そういえば、”幻燐戦争”時のセリエルは見た目は子供だったわね♪」

「グッ…………」

ジト目のエステルの言葉を聞いたカーリアンはからかうような表情で呟き、リウイは呻いた。

「…………妻がいながら、呆れた男だ。」

「ちょっと。あんたは人の事、言えないわよ?サティアさんの事を忘れていたとはいえ、リウイみたいにたくさんの女の人と仲良くなった挙句、リタやレシェンテ達みたいな小さな女の子まで手を出したあんたみたいな女たらしで、ロリコンには。」

「………………………」

(ハハハハハ!”神殺し”であるお前相手にここまで言う奴は初めてだの!面白い娘だの。)

「わらわを子供扱いするでない!」

「まあ~、レシェンテを抜いてもナベリウスやリタもそうだけど、シェスタとシェンナもいますから、完全には否定できませんね~。」

「マ、マリーニャさん!」

リウイの様子を見て呟いたセリカだったが、同じようにジト目で睨まれ言われたエステルの言葉に反論が見つからず押し黙り、ハイシェラは大声で笑い、レシェンテは頬を膨らませ、苦笑しながら呟いたマリーニャの言葉にシュリは慌てた。

「エ、エステル………」

「本人達を目の前によくそこまで言えるわね………それもあの”覇王”や”覇王”の上を行く実力者相手に………聞いているこっちがヒヤヒヤするわよ………」

ヨシュアは大量の冷や汗をかき、シェラザードは一瞬リウイに視線を向けた後疲れた表情で溜息を吐いた。

「フフ、私を気遣ってくれてありがとうございます、エステルさん………どうやらあの時の通信で”何か”言われたのはラピス姫とリン姫に関連する事だったようですね、あなた?」

「……………………」

一方イリーナはエステルに微笑んだ後またもや凄味のある笑顔をリウイに向け、リウイは大量の冷や汗を垂らしながら押し黙った。



「………ガタガタ…………ブルブル…………」

(ヒッ………!と、父様………!お願いだからこれ以上イリーナ様を怒らせないで………!)

その様子を見ていたエヴリーヌは表情を青褪めさせて身体を震わせ、リウイの身体の中にいるセオビットは悲鳴を上げた後、身体を震わせながら強く祈り

「よかったわね~、ウィル。セラウィが嫉妬深い女性じゃなく、理解がある女性で。」

「フフ………もし貴方の妻が私でなくユエラやエミリッタあたりなら凄い嫉妬をすると思いますよ?」

「あ、あはは………」

口元に笑みを浮かべ自分を見つめて言ったエリザスレインとセラウィの言葉にウィルは冷や汗をかきながら苦笑し

「フフ………あの様子だとあんたがリウイの子を身ごもる日なんてまだまだね~♪」

「………黙りなさい。余計なお世話よ。」

カーリアンはからかう口調でファーミシルスに言い、からかわれたファーミシルスは顔に青筋を立てて呟き

「あ、あはは………この後のお父様が大変ですね。」

「そうかな?奥さんがいながら、あんだけ他の女の人と仲良くなっているんだから、当然だと思うけど?」

「クスクス♪女の嫉妬は怖いわよ?パパ♪」

「う~む。イリーナ様は元々王族なのだから側室が何人増えようと気にしない方だと思ったのだがな………」

「フフ………リフィアも恋をすればイリーナ様の気持ちがわかりますよ。」

プリネは苦笑し、ジョゼットは首を傾げ、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、リフィアは首を傾げ、シルフィアは微笑みながらリフィアを見つめた。

「リフィアが恋って………普通に考えてありえないんだけど。(実際リフィアの父親も貰い手がいるか凄く心配しているし。)というか、そんな変わり者、この世に存在するかどうか怪しいし。」

「エヴリーヌ、何か言ったか?」

そしてエヴリーヌが呟いた言葉を聞いたリフィアはエヴリーヌを細い目で睨んだ。

「ナユタ………ナユタはあんな風にならないでね?」

「ノ、ノイ!?僕は女の子にモテた事なんてないよ!?」

一方ノイは心配そうな表情でナユタを見つめ、見つめられたナユタは慌てた。

(もう………!クレハ様がなんでアーサにナユタのお弁当を作るのを自分がするって言った事や自分が作った食事の感想を聞く気持ちがわからないの!?う~………元の世界に帰ったらクレハ様にライラに先を越されないように、この鈍感ナユタに積極的に迫って行くように提案しないと、クレハ様の初恋がいつまで経っても叶わないの!)

ナユタの様子を見たノイは心の中で怒り、溜息を吐いた後、両手の拳を握って決意の表情で異空間となっている空を見上げた。

「フフ………私は旅先でたくさんの女の人と仲良くなっても気にしませんよ?アドルさん。貴方は女性を惹き付けやすい方なんですから。」

「えっと………フィーナ?なんだか言葉に棘が入っていないかい?」

「気のせいですよ。私もそれをわかっていながら、貴方に恋をしたんですから。」

(やっぱり、言葉に棘が入っているよ、フィーナ…………)

一方アドルは表面上穏やかな笑みを浮かべて言ったフィーナの言葉を聞いて冷や汗をかいていた。そして気を取り直したリウイはシルフィアに視線を向けた。



「…………お前と会う事は完全にないと思ったが…………まさかこうして再会する事になるとは夢にも思わなかったぞ、シルフィア。」

「陛下、それは私もです。………私の死後、イリーナ様と再び出会えて、ようやく肩の荷が降りました。………イリーナ様と陛下が再会できて、本当によかった………」

「シルフィア様…………」

シルフィアの言葉を聞いたイリーナは微笑みながらシルフィアを見つめた。

「………シルヴァンを私に代わって立派に育てて頂き、本当にありがとうございます、陛下………」

「気にするな。シルヴァンはお前が遺した息子であると同時に俺の息子でもある。………それに礼を言うなら母親代わりに娘であるティア同様本物の母のように接し、世話をしたティナに礼を言っておけ。」

「そうだったんですか………ありがとう、ティナ。」

「そ、そんな。私に出来る事と言えば、陛下のお世話や陛下と皆様の御子達のお世話ぐらいでしたし………」

リウイの話を聞いてシルフィアに感謝されたティナは恐縮した様子で答えた。

「何を言っている、ティナ。その役目こそが私達にはできない重要な役目だぞ?」

「ええ。信頼できる貴女にしかできない役目よ。」

「お二人の言う通りだ。………サフィナを含めた他の子達もお前の事をもう一人の母として慕っているぞ。」

「はい。私もシルヴァン陛下達のお世話はしましたが、神官長としての務めや神格者へ到る修行に行ってしまって、あまりお世話ができませんでしたし………」

ティナの様子を見たリンは意外そうな表情で言い、リンの言葉にラピスとティファーナ、ペテレーネは頷いた。

「まあ………それではティナ様はお兄様達の乳母代りでもあったのですね。」

「余も父や母からティナ様は自分達にとってもう一人の母だと聞いた事がある。………2人から見たティナ様はどのような方か余は聞いたが………その時2人はティナ様の事を一言で示すなら”聖母”と言っていたな………」

リン達の会話を聞いていたプリネは驚き、リフィアは尊敬の眼差しでティナを見つめた。

「………しかしまさかお前まで生まれ変わっていたとはな………マーズテリアの者共が知れば、さぞ歯ぎしりをするだろうな。………どのような人物に生まれ変わったのだ?」

そしてリウイは口元に笑みを浮かべた後、尋ねた。

「………今はとある方に仕える騎士として生きています。」

「フッ………ラピスとリン以外は皆、生前と変わらぬ生き方をしているものだな。」

「ちょっと~………それ、どういう意味よ!?」

シルフィアの話を聞いて口元に笑みを浮かべて呟いたリウイの言葉を聞いたエステルはジト目で睨んだ。

「………もう俺達の元には来れないのか?」

「今は。ですが、仕える方に義理を果たしたら、再び陛下達の元に参上し、もしお許しを頂けるのなら仕えさせて下さい。」

「ああ。その時を楽しみに待っている。」

そしてリウイはシルフィアに微笑んだ後、目を細めてエクリアを睨んだ。



「………”神殺し”が巻き込まれた時点でお前がいる事にも察しはついていたが………よりにもよってその姿で現れるとはな。………”姫将軍”。」

「………………」

リウイに睨まれたエクリアは辛そうな表情をし

「あなた…………」

「…………………」

イリーナはその様子を心配そうな表情で見つめ、セリカは無言でリウイの視線から庇うかのようにエクリアの前に出た。

「セリカ様、私は大丈夫です。………リウイ様と話をさせて下さい。」

「………わかった………」

しかしエクリアの言葉を聞き、セリカはエクリアの前からどいた。

「リウイ様。まずは貴方がイリーナと再び出会え、そして再び結ばれた事………心よりお祝いを申し上げます。式の際のイリーナの幸せそうな笑顔………あれほどの笑顔は今まで見た事がありません。………今度こそイリーナと共に末永く幸せに生きていく事……心より願っております。」

「…………何?…………!!…………まさか式に参列していたのか………!?誰がお前に招待状を送った………!」

エクリアの話を聞いたリウイは眉を顰めた後、すぐに察しがついて驚きの表情で見つめた。

「私が招待状を送りました、あなた。………”家族”の姉様を招待して当然でしょう?」

「………………………」

そしてイリーナの言葉を聞き、目を伏せて黙り込んだ。

「貴方が今でも私を許せない気持ちは私自身わかっております。………セリカ様を託せる者達も今はいます。ですので、いつでも貴方に裁かれる覚悟は持っております。………ですがその前にセリカ様を含めた皆様を元の世界に帰還させたいのです。………どうか裁きは元の世界に帰還をしてからに…………」

「エクリア様!?」

その場で跪いてリウイに頭を下げ、懇願したエクリアの話を聞いたシュリは驚きの表情でエクリアを見つめ

「……俺の”使徒”を害するのならいつでも斬る。」

セリカは武器を構えた。

「………………本来ならお前の顔等二度と見たくなかったが、元の世界への帰還の為にお前の力が必要である事は理解している。………それにイリーナが蘇った今、お前を裁けば、イリーナは決して許さないと思うしな。今の俺はお前を裁くつもりは無い。」

「え…………」

一方静かに語ったリウイの言葉を聞いたエクリアは驚いた表情で見つめた。

「………イリーナが生きている今、もうお前に用はない。それが今の俺が出した答えだ。」

「…………そんな…………私は…………どうすれば…………」

しかしリウイの言葉を聞いて辛そうな表情で呟いた。そしてリウイは次にリシャールに視線を向けた。



「それにしてもまさか、かつてエステル達と争ったお前がこの場にいるとはな………元・王国軍情報部大佐アラン・リシャール。」

「ハッ。私自身その事に関して戸惑っておりますが、殿下達のご好意により、共に戦わさせて頂いております。………かつて情報部を率いていた時は部下達が陛下に無礼を働き、申し訳ありません。………これも全て私の責任。もし、今生きている部下達を裁くおつもりなら、部下達に代わり私が全ての裁きを受けます。ですので、どうか彼らには慈悲を………」

「リシャールさん…………」

「……………」

リシャールの言葉を聞いたクローゼは心配そうな表情で見つめ、ユリアは辛そうな表情で見つめていた。

「………今更その事を蒸し返すつもりもないし、お前もケルヴァン――――”白面”ゲオルグ・ワイスマンに操られた被害者だ。むしろお前には自分の部下を葬った俺やレンを恨む権利がある。」

「………例え操られていたとはいえ、私が率いた情報部によりリベールに混乱をもたらせ、イリーナ皇妃達に害なそうとしてしまった事は事実。お二人を恨むつもり等考えた事等ありません。」

「あら、以外ね?大佐さんには少なからず、憎まれているとは思っていたけど。」

リシャールの話を聞いたレンは驚いた後、不思議そうな表情で見つめた。

「私には誰かを恨む権利等ありません。………むしろ守るべき民達を傷つけた大罪人として恨まれる側です。………ここにいるミント君とツーヤ君にとって私は憎むべき男なのですから。」

「あ………」

「………ダルモア市長の指示とはいえ、情報部が孤児院に放火の上、院長のテレサ先生を襲撃しましたしね………」

静かな表情で語るリシャールの話を聞いたエステルは驚いた後ミントとツーヤに視線を向け、ヨシュアは表情をわずかに暗くして言った。

「えっと…………ミント達、大佐さんの事を恨んでなんかいないよ?」

「え…………」

しかしその時ミントは意外な言葉を言い、それを聞いたリシャールは驚いた。

「確かに貴方が現れた当初は複雑な気持ちでしたけど………今になって思えば貴方を含めた情報部の人達も”結社”の被害者です。………放火をし、先生を襲った人達はもう裁かれました。」

「それに情報部の人達や大佐さん、ミント達と一緒に必死になって王都の人達を護ったもん!みんなを護りたいっていう気持ちは一杯伝わったし、先生から憎しみや恨みを持ち続けたら悲しい人になっちゃうって教えられたもん!だからミント達、もう気にしていないよ!」

「……………………」

「フフ…………さすが先生ですね…………」

ツーヤとミントの話を聞いたリシャールは驚きの表情で2人を見つめ、クローゼは微笑んでいた。

「プリネ、あれほどの者等滅多にいない。絶対にツーヤの手を離すでないぞ?」

「はい。勿論そのつもりです、リフィアお姉様。」

一方リフィアは口元に笑みを浮かべてプリネに視線を向け、プリネは優しい微笑みを浮かべて頷いた。そしてリウイはある人物に気付いた。



「………ん?………そこの水色の髪の娘………どこかで見た顔だな………?」

「…………………」

ある人物――ティオに視線を向けたリウイは眉を顰め、視線を向けられたティオはリウイから視線を外して黙り込んだ。

「リウイ様。少しよろしいでしょうか。」

「どうした、ペテレーネ。」

その時ペテレーネが静かにリウイに近づき、リウイに耳打ちをした。

(あの娘はレンと同じ………もう一人の”教団”の”儀式”の生存者―――ティオさんです。)

(!!あの時の………黒翼の娘か………)

ペテレーネの耳打ちを聞いたリウイは目を見開いて驚いた。

「………私の事、今でも覚えているんですね……」

「聞こえていたのか?………いや、お前なら聞こえて当然かもしれんな。」

ティオが呟いた言葉を聞いたリウイは驚いたが、すぐに察しがついて納得した。

「………………」

リウイの言葉を聞いたティオは何も答えず、黙り込んでいた。

「あれ?聖女様だけじゃなく、リウイもティオちゃんと顔見知りなの?」

「ああ。その娘は少し”事情”があってな。」

「へ~………そうなんだ。」

「……………」

リウイの説明を聞いたエステルは意外そうな表情でティオを見つめ、ティオは何も語らず黙っていた。

「………レン。」

「何かしら?パパ。」

「………ティオの”事情”は知っているか。」

「………ええ。…………レンと同じ”事情”でしょう?”第五星層”で現れた”黒騎士”の言葉で察しがついたわ。まさかこんな形で会う事になるとは思わなかったけど。………貴女もまさか貴女と”同じ”レンに会うとは思わなかったでしょう?」

リウイの言葉にレンは頷いた後、儚げな表情でティオに視線を向けた。

「………そうですね。ガイさんの話で私と”同じ存在”がいるのは知っていましたけど、まさかこんな形で会う事になるとは思いもしませんでした。」

一方レンに視線を向けられたティオは表情をわずかに暗くして答えた。

(3人とも何の話をしているんだろう?)

(レンと同じ”事情”…………?…………!!まさか!もう一人の”生存者”か………!?)

(確かレンの”事情”って”教団”絡みだったわよね?………!!まさか…………!嘘でしょう………!?)

リウイ達の会話を聞いていたエステルは首を傾げ、察しがついたジンとシェラザードは信じられない表情でティオを見つめた。

「………ティオ。お前の”居場所”は見つかったか?」

「………いいえ、見つかっていません……………今でも………”どちら”として生きるべきなのか迷っています………」

「そうか……………」

ティオの言葉を聞いたリウイは重々しく頷いた。



「え~と………何だか雰囲気が暗くなって来て、聞き辛いな~とは思っていましたけど、セリカさんでしたっけ?ちょっといいですか?」

その時アネラスが言いにくそうな表情でセリカを見つめて言った。

「………俺に何を聞きたい。」

アネラスの視線に気付いたセリカは静かに呟き

「えっと………何でサティアさんと容姿が瓜二つなんですか?もしかして双子なんですか??」

「「「「!!」」」」

「あ、サリアも思ったです~。」

アネラスの疑問を聞いたサリア以外の使徒達は目を見開いて驚き、サリアは呑気そうな様子で呟いた。

「私も一つ気になった事が。セリカさん………サティアさんの事を”アストライア”と呼んでいましたが、その名前は一体何なのでしょうか?」

「えっと…………」

さらにリースが呟いた言葉を聞いたエステルは心配そうな表情でサティアを見つめたその時

「………俺の肉体がサティア―――”古神アストライア”の肉体だから似ていて当然だ。」

「セリカ様!?」

セリカが静かに呟き、それを聞いたシュリは驚きの表情でセリカを見つめた。

「古神………?ということはやはりサティアさんは………!」

「―――そう。”正義の大女神”アストライア。それが私の本当の正体よ。」

セリカの話を聞いたリースは不思議そうな表情をしたが、やがて察しがついて驚きの表情でサティアを見つめ、見つめられたサティアは静かな表情で答えた。

「なっ!?では貴女が”正義の大女神”にして”オリンポスの星女神”アストライア………!」

「”二つ回廊の終わり(ディル・リフィーナ)”になる前から存在していた女神………!」

サティアの正体を知ったセラウィとエリザスレインは驚きの表情でサティアを見つめた。

「サティアさん!?」

「いいの、エステル。私はもう偽らないと決めたのだから。」

サティアの言葉を聞いたエステルは驚きの表情でサティアを見つめ、見つめられたサティアは優しい微笑みを浮かべた。

(サティア………)

一方エステルの身体の中にいたパズモは心配そうな表情で見つめた。

「………教えてくれ、アスト………いや、”サティア”。何故俺はお前を殺したのかを。」

「ええ。………貴方を含めたこの場にいるみんなに教えるわ………貴方が私の肉体で”生きて”いる理由を…………貴方と私の”約束”を…………」

(フム。こんな形で長らく謎だったセリカの全ての真実がわかる時が来るとは我でも予想できなかっただの。)

セリカに尋ねられたサティアは静かに頷き、サティアの言葉を聞いたハイシェラは真剣な表情でサティアを見つめた。



そしてサティアは生前の話をセリカ達に説明した…………
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧