英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~白き魔女の軌跡~
学院を徘徊していたリィンは屋上で一人で外の景色を見ているゲルドに気付き、ゲルドに近づいた。
~トールズ士官学院・屋上~
「…………………(”異界の月”がこの世界でも具現化してしまうのは、”ユリス”によって具現化してしまったのでしょうね……けど、どうして”異界の月が具現化してからの先が見えない”の……?…………もしかしてキーア。これも貴女の”因果”の操作によるものなの……?いえ、それよりも”異界の月”をどうにかする方法ね。”異界の月”を消滅させて、双界を救うにはやっぱり”前と同じ方法”を取るのが確実でしょうね…………)」
不安そうな表情で外の景色を見つめていたゲルドはかつての出来事を思い返して辛そうな表情をしたが
(本当ならあの時に私は世界から消えていた…………キーアのお蔭でずっと欲しいと思っていた友達がたくさんできたし、好きな人もできたわ………一度死んだ者が手にするには大きすぎる幸せよ。そんな幸せをくれたキーアやリィン達の未来の為にも私は――――)
やがて決意の表情になり、夜空を見上げた。
「ゲルド?こんな所で何をしているんだ?」
するとその時ゲルドに近づいたリィンが声を掛けた。
「え……リィン。えっと……リィン達の学院がどんな所なのか前から気になっていてね。それで学院中を廻った後最後はここから景色を見ていたの。」
「そっか。……………………ハハ、会長達と”約束”してからまだ1ヵ月も経っていないのに、何だか懐かしいな……」
ゲルドの話を聞いた後リィンはゲルドと並んで外の景色を見つめ、学院を奪還した夜トワ達とした”約束”――――”クロウを連れ戻し、トワ達と卒業させる約束”を思い出し、懐かしそうな表情をした。
「?トワ達と?一体どんな”約束”をしたの?」
「えっと、実は学院を奪還した夜―――」
事情がわからないゲルドにリィンはトワ達との約束を説明した。
「トワ達とそんな”約束”をしたんだ…………フフ、リィンって、凄いね。状況を考えれば”不可能”としか思えない”約束”を守ったんだから。」
「ハハ、運が良かっただけだよ。それにクロウとの”約束”は結局守れなかったしな……」
「リィン…………その、もしかしてエリゼやキーアの事を心の中では許せていないの?」
ヴァリマールとオルディーネによる決着ができなかった事に後悔している様子のリィンをゲルドは心配そうな表情を見つめて問いかけた。
「いや、そういう訳じゃないよ。確かに一時期はキーアさんに対して思う所はあったけど……以前”槍の聖女”が言ったように俺達が戦争を甘く見過ぎていた事が一番悪かったと今では思っている。”本来の運命”と違ってメンフィルとクロスベルがエレボニアにいつ攻めて来てもおかしくない状況だったのに、俺達は心の中の片隅で今までのように何となるって楽観視していたから結局内戦を終結させる事ができなかったんだろうな。”本来の運命”では死ぬはずだったクロウや元締め達を救ってくれたキーアさんを恨むなんて筋違いだし、ましてや当然の事をした上、俺とクロウの為に”約束”を可能な限り再現してくれたエリゼにはむしろ感謝しているよ。」
「そう…………」
穏やかな表情で語るリィンの答えを聞いたゲルドは安堵の表情になった。
「それに……”本来の運命”では出会う事がなかったベルフェゴール達やエリス、セレーネ、メンフィルやクロスベルの人々……そしてゲルドとも出会えたんだからキーアさんには感謝しないとな。」
「リ、リィン……」
(うふふ、やるわね、ご主人様♪その娘の好感度を上げながら、私達の好感度も上げるなんて♪)
(ふふふ、さすがはご主人様。相変わらずこちらの予想の斜め上な答えを出してくれますね。)
(フフ、それがリィンだものね。)
(……私の場合はどうなのでしょう?”本来の運命”では敵対関係のままだったでしょうし。)
(フフ、心配しなくても勿論アルティナさんと契約できて良かったとリィン様は思っていると私は思いますよ?)
リィンの答えを聞いた頬を赤らめるゲルドの様子をベルフェゴールは微笑ましそうに見守り、静かな笑みを浮かべるリザイラの念話にアイドスは微笑みながら同意し、不思議そうな表情で首を傾げているアルティナにメサイアは微笑みながら自身の推測を伝えた。
「そう言えばゲルド。オズボーン元宰相との決戦が終わったら、ゲルドはどうするんだ?」
「え…………………………まだ何も決めてないわ。リィンは確かクロイツェン州の統括領主とシュバルツァー家の跡継ぎになる為にプリネ達の元で色々勉強するのよね?」
リィンに尋ねられたゲルドは呆けた後一瞬複雑そうな表情をしたがすぐに表情を戻して静かな口調で問い返した。
「ああ。以前は俺には不相応としか思えなかったけど……こんな俺を高く買ってくれるリウイ陛下達の期待を裏切らない為って言うのもあるけど、アリサ達の事を責任を取るって決めたんだから、アリサ達に相応しい男にならないとな。」
「フフ、リィンらしい答えね。」
リィンの決意を知ったゲルドは苦笑したが
「それに……俺―――いや、シュバルツァー家は間接的にとは言えユーシスの実家を滅茶苦茶にして、クロイツェン州を奪ってしまったんだ。その責任を取る為にも俺は一日でも早くプリネさん達に認められる為に努力し続けるつもりさ。」
「リィン…………」
真剣な表情で語ったリィンのもう一つの決意を知り、心配そうな表情でリィンを見つめた。
「……――ゲルド。前々からずっと思っていたけど、ゲルドは俺達と出会うまで一体何をして、その若さで死んでしまったんだ?失った記憶は既に戻っているし、アリサ達からエルベ離宮で聞いたゲルドの過去も教えてもらったぞ。」
「………………………リィンは私の過去をどのくらい把握しているの?」
リィンに問いかけられたゲルドは静かな表情で黙り込んだ後やがてリィンを見つめて問いかけた。
「そうだな……ゲルドが”異界”という所の出身でゲルドの祖父がゲルドの育ての親である事。ゲルドはその予知能力を使って旅の間によった村や町の人々に色々と警告したけど、人々は不吉な予言を残すゲルドを怖がってゲルドを迫害した事。人々から”白き魔女”と呼ばれていた事。そして――――18歳という若さで何者かに殺害された可能性が高い事だ。」
「…………一つだけ訂正させてもらうわ。おじいちゃんは私とは血が繋がっていないよ。」
「え…………」
突如指摘されたリィンが呆けたその時、ゲルドは外の景色を見つめて自身の過去を語り始めた。
「”異界”。かつて世界を崩壊させる”害周波”の塊――――”ラウアールの波”によってできた深い亀裂―――”ガガーブ”によって世界が三つに別れた世界とは異なる世界にして、”ラウアールの波”――――異界では”異界の月”と呼ばれているものが転送され、いつ爆発するかわからない”異界の月”によっておびえ続けた世界。そこが私の生まれた世界。
そして”異界”は王様―――女王が納めているのだけど……”異界”の女王は世襲制ではなくある特別な体質の持ち主の女の子が次の女王になるという決まりがあってね……産まれたばかりの私はその一人だったの。だけど普通ならその女王の資格を持った女の子はその時代に一人しか生まれないのだけど、私とは別にもう一人―――イザベルが私と同じ女王の資格を持って生まれたの。
王宮の人達は女王の資格を持った女の子が二人も産まれてしまった事に危機感を抱いていてね……その結果イザベルが女王の後継者になる事が決定した後私が狙われる事になったらしくてね……王宮の楽士だったおじいちゃん――――レオーネおじいちゃんがまだ赤ちゃんだった私を王宮から連れ出して追手の見つからない所で私を育ててくれたの。
4歳くらいの頃だったかしら……?レオーネおじいちゃんが持っている物が必要で、”異界”とは異なる世界の人達がレオーネおじいちゃんを訪ねてきたの。事情を聞いたおじいちゃんはその人におじいちゃんが大切にしていた物がどこにあるかを教えたのだけど……その時私を狙っていた人達がおじいちゃんを訪ねてきた人達の後をつけていたらしくて、その人達がちょっと留守にしている時に私の命を奪おうとしていたの。
その時は私とおじいちゃんの事を心配してくれた人達の何人かが私とおじいちゃんを守ってくれてね……戻って来た人たちと協力して私の命を狙った人達を無力化したの。ちなみにその人達は色々あって、私とおじいちゃんを守ってくれることになったの。」
「なっ……!?じゃ、じゃあゲルドは皇族だったのか!?」
ゲルドの過去の一部を知り、ゲルドが皇族であった事に気付いたリィンは信じられない表情で声を上げた。
「フフッ、女王候補の資格を失った時点で私は皇族じゃなくなっているわよ。」
「…………………ゲルド、怖くは無かったのか?産まれた時から命を狙われていたなんて……正直、俺はゲルドの命を狙った人達を許せない。」
「―――私の為に怒ってくれてありがとう、リィン。でも私の事は気にしないで。リィンも知っている通り私には”予知能力”があるからその時点の私達が助かる可能性が高い事はわかっていたから。」
「………………」
優しげな微笑みを浮かべるゲルドをリィンは辛そうな表情で黙って見つめているとゲルドは再び外の景色を見つめて過去の話を再開した。
「……4歳の頃にあった出来事以降はずっと穏やかな毎日を過ごしていたのだけど……私が17歳になる少し前、おじいちゃんは寿命でこの世を去ったわ。そしておじいちゃんを看取った私は”異界”とは異なる世界の一つ―――”ティラスイール”に渡って、ティラスイール中で旅をしながら村や町の人々の為に多くの予言を残して行ったわ。
ちなみに私が”ティラスイール”に渡った理由は私より早く”ティラスイール”に渡って来た”異界”の女王になって”異界”の人々と話し合って決めたイザベルの目的――――”異界”にある”異界の月”を”ティラスイール”に転送させて”ティラスイール”を含めた3つの世界を滅ぼして”異界”を救うという方法とは違う”第三の方法”――――”異界”も”ティラスイール”を含めた三つの世界が犠牲にならない方法を探る為よ。
だけどイザベルを始めとした”異界”の人々はそんな私を”裏切り者”として見ていたようでね……旅をして1年くらいしたらイザベルに仕えている部下の人が私の命を狙って…………――――私はその時に殺されてしまったの。後はリィン達も知っている通り、キーアのお蔭で生き返ってリィン達と出会えたの。」
「……………………」
「―――今の話が私―――人々から”白き魔女”と呼ばれていた頃の私の人生の全てよ。」
ゲルドの壮絶な過去を知ったリィンが辛そうな表情でゲルドを見つめている中、ゲルドは穏やかな表情を浮かべてリィンを見つめた。
「どうして……ゲルドは平気でいられるんだ……!?」
「え…………」
身体を震わせながら声を上げたリィンの言葉を聞いたゲルドは呆け
「産まれた時から命を狙われてずっと隠れ住んでて……旅をしている時はその町や村の人々の為に予言を残していったのに、迫害をされて……そしてどちらかの世界を犠牲にならない方法を探していたのに故郷の人々から”裏切り者”扱いされた上、殺されるなんて……!なのにゲルドはどうして今も平気なんだ……!?」
「リィン………………」
悲痛そうな表情で自分を見つめて一筋の涙を流すリィンの言葉を聞いたゲルドは目を丸くした後、リィンを優しく抱きしめた。
「あ…………」
「―――ありがとう、私の為に涙を流してくれて。でも”私は大丈夫だよ”……それに私は今、とても”幸せ”よ……」
リィンを優しく抱きしめたゲルドは幼い頃自分の身を心配してくれた旅人達にも見せた笑顔――――全てを受け入れた穏やかな微笑みを浮かべてリィンを見つめた。
「え……”幸せ”って一体どういう事だ?」
「リィンやみんなに会えた事よ。私の”運命”を変えてくれたキーアには今でも心から感謝しているわ。キーアのお蔭でたくさんの友達もできたし……それに一人の女の子として異性――――リィンに恋をする事もできたわ。」
「ゲルド…………その、既にアルフィンと結婚している上アリサ達とも結婚する事になっている俺なんかでいいのか?」
ゲルドの告白に驚いたリィンは言い辛そうな表情で問いかけた。
「うん。リィン……大好き…………ん…………」
「あ…………(ゲルド……)」
そしてゲルドは自らリィンの唇に口付けをし、リィンは自分に想いを寄せるゲルドを抱きしめて優しき魔女の口付けを受け入れていた。
(ふふふ、予想通りの展開ですね。)
(ア、アハハ……ゲルドさんもリィン様に想いを寄せていましたから、ようやく……と言った所ですね。)
(……今朝エリゼ様達から叱咤や折檻をされたばかりだというのに、懲りずにまた増やしましたね。)
(うふふ、この後の展開を考えたら結界を展開しないとね♪)
(……今回は場所が場所だし、念の為に私も認識障害の結界を展開しておくわ。)
二人の様子をリザイラとメサイアが微笑ましく見守っている中、アルティナはジト目になり、ベルフェゴールとアイドスはそれぞれ結界を展開した。
「あ…………これはもしかして……”結界”……?」
「へっ……って、ベルフェゴール!?幾ら何でもこんな所でしたら色々不味いだろう!?」
結界に気付いたゲルドの言葉を聞いたリィンは驚いた後ベルフェゴールに念話を送ったが
(フフ、認識障害の結界も展開しておいたから私が結界を解くまで屋上周辺は誰も来ないし、ベルフェゴールの結界でどれだけ声を上げても誰も気付かないから大丈夫よ、リィン。)
(うふふ、そう言う事だからその娘も遠慮なく美味しく頂いちゃいなさい♪)
「ア、アイドスまで……」
アイドスまでベルフェゴールに助力していた事を知り、表情を引き攣らせた。
「?ねえ、リィン。この結界の事を知っているような口ぶりをしていたけど、もしかしてこの結界ってベルフェゴールかアイドスの仕業?」
「あ、ああ……」
そしてリィンはゲルドにベルフェゴールとアイドスが展開した結界を説明した。
「そう……フフ、二人には感謝しないとね。」
「へ。」
事情を聞いた後頬を赤らめて呟いたゲルドの言葉を聞いたリィンが呆けたその時、ゲルドは外套やローブを脱ぎ、ゲルドの純粋さを顕すかのような純白の下着だけの姿になった。
「な、なななななななっ!?ゲ、ゲルド……ま、まさか……!」
「うん…………私もみんなみたいに、たくさん愛して……」
慌てているリィンに答えたゲルドは顔を真っ赤にしてリィンに抱き付いた。
「そ、その……幾ら何でもここでするのは不味い気がするんだけど……」
リィンは必死に理性と戦いながらゲルドを何とか思いとどまらせようとしたが
「フフ、ユミルの露天風呂でアルフィンの純潔を奪って、”カレイジャス”では毎晩アリサ達と愛し合って、旧校舎ではエマの純潔を奪ったのだから、”今更”でしょう?」
「う”っ。カレイジャスでの事まで気付いていたなんて……というか何でエマの事まで……って、まさか予知能力か?」
ゲルドに図星を突かれると疲れた表情になった。
「うん。それと今夜私と会う前にリィンがクレアさんとリィン達の教室で子作りをした事も知っているわ。」
「……………………」
ゲルドの予知能力の凄まじい的中率を身を持って改めて思い知ったリィンは大量の冷や汗をかいた。
「リィン……みんなはよくて、私はダメなの……?」
「ダ、ダメって事じゃないけど……その……」
「お願い、リィン……私に好きな人に愛され、求められたという”証”を刻んで……」
懇願するかのような表情でリィンに抱き付いてリィンを見つめたゲルドは目を閉じ
「ゲルド…………」
ゲルドを愛しく思ったリィンはゲルドを抱きしめてゲルドと口付けを交わし、その後ゲルドと愛し合った。
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