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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第216話

同日、17:15―――――



~オーロックス峡谷~



「あ……」

「お兄様の勝利ですわ……!」

リィンの勝利にアリサとセレーネは明るい表情をし

「驚いたわね……まさか”中伝”でありながら”皆伝”に勝利するなんて……」

「フン、以前に言っただろうが……オレの級友を舐めんじゃねえって。」

「クロウ……」

「姉さん……」

驚いているクロチルダに口元に笑みを浮かべて答えたクロウの言葉にエリオットは驚き、エマは静かな表情でクロチルダを見つめていた。



「ハア……ハア……」

「……フフ、私の武器に集中攻撃して私への攻撃は最小限にするなんて、本気を出すと言っておきながら手加減をしているではありませんか。」

リィンが息を切らせている中、エリゼは苦笑しながらリィンを見つめ

「……大切な女性に万が一でも一生残るような傷を残す訳にはいかないだろう?」

「フフ、ようやく私の事を”女性”として扱ってくれましたね………………」

リィンの言葉に嬉しそうな表情で微笑んだ後立ち上がり、懐から”イーリュンの息吹”を取りだして宙へと放り投げた!すると癒しの光がリィンとエリゼを包み込み、二人の傷や体力、魔力や闘気を完全回復させた!



「エリゼ?一体何を……」

「―――次の”試練”―――”最後の試練”は共に万全な状態であるべきだと思いましたので。」

「え…………」

「ね、姉様!?その言い方ですと、次の戦いも姉様がお相手をするような言い方なのですが……!?」

「―――勝負はついたのに、まだお前自身がやるつもりなのか?」

エリゼの言葉を聞いたリィンが呆けている中、エリゼは信じられない表情で声をあげ、ユーシスは不思議そうな表情で問いかけた。



「エリス、先程の問いかけの答え―――もうすぐわかるわ。」

「ね、姉様……?」

自分の言葉にエリスが戸惑っている中、エリゼはその場で祈りの動作をし始め

「――――来て、”白の神機”ヴァイスリッター!!」

ヴァイスリッターの名を呼んだ!

「ちょ、ちょっと!?ま、まさかとは思うけど……!」

「リィンのように”騎神”を呼んでいるのか……?」

「……………………」

エリゼの様子を見守り、仲間達と共にある事を察したエリオットは信じられない表情で声をあげ、ガイウスは目を丸くして呟き、リィンは呆然とした様子でエリゼを見つめていた。



「応―――――!!」

そして城館の片隅で待機していたヴァイスリッターはエリゼの意志に答えた後その場で跳躍し、空を飛んでエリゼの傍に着地した!



「なあああああああああああああああああっ!?」

「こ、これは…………!」

「馬鹿な!”騎神”だと!?」

「白い”騎神”…………」

「あ、ありえない……”白の騎神”なんてそもそも存在していないわよ!?」

「それ以前にエリゼさんは”起動者(ライザー)”ではありませんよ!?」

ヴァイスリッターの登場にマキアスは声をあげ、ラウラは目を見開き、ユーシスは驚きの表情で声をあげ、ガイウスは呆けた表情で呟き、セリーヌとエマは信じられない表情で声を上げた。



「!!あの白い人形兵器は報告にあったガレリア要塞を消滅させた機体……!」

「ええっ!?」

「何ですって!?」

「って事は”結社”の人形兵器か!」

「ど、どどどど、どうなっているの~!?」

ヴァイスリッターを見て血相を変えたクレア大尉の言葉を聞いたアルフィンとサラ教官は驚き、トヴァルは厳しい表情で声をあげ、ミリアムは混乱した。



「お、おいおい……あの機体は確かクロスベルの……」

「”神機”アイオーン!どうして貴女が”神機”を……!いえ、私の知る限り”神機”は”騎神”のように意志はなく、ましてや”神機”の”起動者(ライザー)”なんていないわよ!?」

クロウは目を丸くしてヴァイスリッターを見つめ、クロチルダは信じられない表情で声を上げた。

「あら、”パテル=マテル”だって喋る事は無理だけど自我を持っているわ。”パテル=マテル”を元に開発した”神機”なら意志があってもおかしくないし、結社ご自慢の技術力ならありえるんじゃないかしら?」

「…………確かにあの男を始めとした”十三工房”の技術力なら可能かもしれないけど、さすがに”起動者”の有無の設定をできるはずが―――」

レンの指摘にクロチルダは複雑そうな表情をしたが、ある事に気付くとすぐに自分の推測を否定したが

「その辺りは”零の至宝”の仕業ではないのか。」

「!!嘘でしょう!?どうして別次元の”零の至宝”がそんな事を……!?というかそもそもアイオーンを一体どこで手に入れたのよ!?」

レーヴェの指摘を聞いて全てを察し、信じられない表情で声を上げた。



「……声が聞こえたのです。オルキスタワーで自身の身の危険を悟った”蛇の使徒”―――ノバルティスがオルディーネを呼び出した際に、ディーター・クロイスが魔導の力で操縦していた”神機”から。」

「何だって!?」

「ええっ!?ディ、ディーター・クロイスって、クロスベルの!?」

「”試練”を乗り越えた”起動者(ライザー)”が”選ばれた”時の状況と似ているわね……」

エリゼの話を聞いたリィンとアリサは驚き、セリーヌは目を細め

「姉さん、もしかして姉さんは”騎神”の設計もわかっていて、その設計を”結社”に教えたの………?」

「貴女も知っての通り、”騎神”には様々な謎が未だ残されてあるわ。幾ら私でも”騎神”の設計なんて知らないわよ……でも、”神機”は”騎神”を参考にして創られた人形兵器よ。”パテル=マテル”もその一つでもあるわ。」

「ええっ!?という事は”パテル=マテル”も”騎神”を参考にして創られたのですか!?」

「道理でオルディーネとも互角以上に渡り合える訳だな……」

エマの問いかけに答えたクロチルダの話を聞いたツーヤは驚きの表情で声を上げ、ユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。



「エ、エリゼさん。まさか”最後の試練”の内容は……」

「その”騎神”によく似た人形で、ヴァリマールとオルディーネとの決着の代理をするつもりなのね。」

一方ある事を察したアルフィンは不安そうな表情をし、ゲルドは静かな表情で問いかけた。

「―――いえ、私がお二人の”約束”の代理を務める等、そのような傲岸不遜な事をするつもりはありませんし、お二人の”約束”の代理をこの私が務められる訳がありません。私は状況を考えれば仕方ないとは言えオルディーネを破壊し、お二人の”約束”を踏みにじってしまったせめてもの償いに、兄様とクロウさんの”約束”を可能な限り再現しただけです。」

「エリゼ…………」

「………………」

エリゼの答えを聞いたリィンとクロウはそれぞれ辛そうな表情をしていた。



「―――ヴァイスリッター、私を中に。」

「承知――――」

そしてエリゼはヴァイスリッターの中へと入り、ヴァイスリッターは太刀を取りだした!

「なっ!?まさかあの”太刀”は……!」

「”ゼムリアストーン製の太刀”……!一体どこで大量の”ゼムリアストーン”を……それに一体誰が創ったんだ!?」

「東部による”精霊窟”にある”ゼムリアストーン”は私達が全部回収したはずだが……まさか西部にある”精霊窟”から手に入れたのかい?」

ヴァイスリッターが持つ見覚えのある太刀を見たマキアスは驚き、ジョルジュは信じられない表情で声を上げ、アンゼリカは真剣な表情で自身の推測を口にして問いかけた。



「うふふ、わざわざゼムリアストーンを探さなくても”ゼムリアストーン製のスクラップ”ならたくさんあるじゃない。」

「ゼ、”ゼムリアストーン製のスクラップ”…………?」

「!まさか……破壊したオルディーネを解体してそれらやオルディーネが持っていた双刃剣を材料にして”ゼムリアストーン製の太刀”を創り上げたのか!?」

レンの言葉にエリオットが戸惑っている中、何かを察したクロウは信じられない表情で声を上げた。



「あ………」

「そ、そう言えば”騎神”であるオルディーネもそうですが、オルディーネの武器も”ゼムリアストーン製”でしたわよね……?」

クロウの言葉を聞いたアリサは呆け、セレーネは不安そうな表情で呟き

「―――ちなみに”太刀”を作成したのはウィル――――”匠王”ウィルフレド・ディオンだ。余達がウィルに”霊剣・荒鷹”と名付けられたその”太刀”の作成を依頼した。」

「何ですって!?」

「あの”匠王”がその”太刀”の作成をしたのですか!?」

「ハハ……ウィル君に創らせるなんて反則じゃないか。」

「下手したら性能で言えば、あの”太刀”の方が上かもしれないね。」

「しかもあの機体自身、”騎神”にはない兵装とかもありそうだよね~。」

リフィアの話を聞いたサラ教官とクレア大尉は信じられない表情で声をあげ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、フィーは警戒の表情で呟き、ミリアムは意味ありげな表情でヴァイスリッターを見つめていた。



「余談ですが、ディオン卿は”太刀”の作成にご家族や仲間の方達の助力を受けていましたが、設計はお一人でされ、更に”太刀”を僅かな期間で完成させたとの事です。」

「僅かな期間って、一体どのくらいの時間で完成させたんですか!?」

シグルーンの話を聞いたジョルジュは血相を変えて尋ねた。

「―――5時間で完成させたとの事だ。なお”太刀”の設計はディオン卿一人で僅か10分で完成させたと聞いている。」

「作成がたった5時間で設計が僅か10分…………」

「シュミット博士やジョルジュ君達が試行錯誤して何日もかけてようやく完成させた”太刀”をたったそれだけの時間で完成させるなんて……」

「ウィルさんの技術力は凄いってわかっていたけど、幾ら何でも滅茶苦茶よ……!」

「ハハ……もはや神がかっているとしか思えない技術力だね。」

「だってウィルだし。」

「エ、エヴリーヌお姉様……それでは答えになっていませんよ……」

ゼルギウスの口から出た信じられない答えを聞いて相手と自分達の技術力の圧倒的な差を思い知ったジョルジュは愕然とし、トワは辛そうな表情をし、アリサは悲鳴を上げるかのように声をあげ、アンゼリカは疲れた表情で呟き、エヴリーヌが呟いた言葉を聞いたプリネは疲れた表情で指摘した。



「それとエリゼはヴァイスリッターを手に入れてから一日も欠かす事無く乗り続けて操縦に慣れ、エレボニア侵攻の際もヴァイスリッターを操縦して貴族連合軍の機甲兵達とも戦闘している。」

「という事は”神機”を操縦しての戦闘経験もリィンと同じ―――いえ、下手したらクロウ以上かもしれないって事ね……」

「姉様はこの日の為にその人形に乗り続けていたのですね……」

リフィアの説明を聞いたサラ教官は厳しい表情で推測し、エリスは辛そうな表情でヴァイスリッターを見つめ



「――――”最後の試練”は既におわかりかと思いますがヴァリマールとヴァイスリッターによる一騎打ちです。兄様、準備はよろしいですか?」

「ああ……!来い――――”灰の騎神”ヴァリマール!!」

ヴァイスリッターから聞こえるエリゼの言葉に決意の表情で頷いたリィンはヴァリマールの名を呼び

「応――――!!」

カレイジャスの格納庫にいるヴァリマールはリィンの呼びかけに応え、カレイジャスの格納庫から自力で出て行った後飛び立ち、ヴァイスリッターと対峙する位置に着地し、リィンとセリーヌがヴァリマールに乗り込もうとしたその時クロチルダが呼び止めた。



「リィン君、セリーヌ!私が知る限りアイオーン――――いえ、ヴァイスリッターの兵装には特殊障壁やグレネード弾、後は”切り札”である霊子砲が搭載されてあるわ!それらにも気を付けておきなさい!それとその”神機”はガレリア要塞を消滅させた機体と同じだけど、あれは”零の至宝”の”力”によるものだから、ガレリア要塞を消滅させたような攻撃はできないからその点に関しては安心して構わないわ!だけど話を聞く限り彼女も君やクロウ同様”騎神”――いえ”神機”を操縦した戦闘になれていると思うわ。”準契約者”達と協力しながら全身全霊で立ち向かいなさい……!」

「姉さん……」

「はい……!」

「まさかアンタがアタシ達に助言をする日が来るとはね…………ありがたくその助言、受け取っておくわ!」

クロチルダの助言にエマは驚き、リィンは力強く頷き、信じられない表情でクロチルダの助言を聞いていたセリーヌは静かな表情で頷いた。そしてリィンとセリーヌは光に包まれ、ヴァリマールに乗り込み、ヴァリマールは太刀を構えた。



「……っ!」

「リィン……!」

「兄様……姉様…………」

対峙するヴァリマールとヴァイスリッターの様子を見たフィーは息を呑み、アリサとエリスは心配そうな表情をし

「―――わかっているとは思うが手出しは無用だ。この戦いがエリゼにとって、そしてリィンにとっても大切な戦いになるのだからな。」

「……彼の言う通り、この戦いは二人の戦いだ。私達にできる事は信じて見守るだけだね。」

「お兄様……」

「くっ……」

「歯がゆいが……」

「信じるしかあるまい!」

ゼルギウスの言葉に続くように呟いたオリヴァルト皇子の言葉にアルフィンは複雑そうな表情をし、マキアスは唇を噛みしめ、ガイウスは重々しい様子を纏い、ラウラは真剣な表情で声を上げた。



「―――リィンさん!私達の事も忘れないで下さい!」

「あたし達も皆さんと同じ”準契約者”!あたし達の力も存分に使って下さい!」

「俺達の力も見事使いこなし、”最後の壁”を越えて見せろ。」

「ま、エヴリーヌ達も力を貸さないとエリゼに勝つのは難しいだろうから、必要なら貸してあげるよ。」

「ああ……!」

”準契約者”でありながら様々な事情によって今まで共に戦う事ができなかった仲間達―――プリネ、ツーヤ、レーヴェ、エヴリーヌの心強い申し出にリィンは力強く頷いた。



「ヴァイスリッターが”騎神”ではない事を除けば条件はほぼ同じ…………今度も手加減抜きで行かせて頂きます、兄様……!」

「……………………」

ヴァイスリッターから聞こえるエリゼの言葉に対し、リィンは何も答えず黙り込んでいた。

「兄様?」

「―――エリゼ、まずは先に礼を言っておく。俺とクロウとの”約束”をここまで再現してくれて本当にありがとう。」

「兄様………………」

「ハハ……俺は情けないな。エリゼが俺の為にここまでしてくれたのに勝つにせよ、負けるにせよ……これが最後になると思うと何かが変わってしまいそうに感じて、ちょっと震えて来たな。」

エリゼとの今までの思い出を思い返していたリィンは複雑そうな表情をしていた。



「―――甘ったれんな!」

するとその時クロウがヴァリマールを睨んで声を上げた。

「”今”を踏ん張ってこその”未来”だろうが!どんな厳しい”試練”だろうと俺とヴィータ、そしてエリゼ嬢ちゃんを連れ戻す為に今まで踏ん張って来たんじゃねえのか!?」

「!……そうだな。全てを出し切って必ず乗り越えて見せる!」

「ったく、本当に手間がかかる奴だぜ……」

「えへへ、やっぱりクロウも僕達の仲間だね。」

「はい……!」

自分の激励によって闘志を燃やしたリィンにクロウは苦笑し、クロウの激励を聞いて嬉しそうな表情をしているエリオットの言葉にセレーネは頷いた。



「さあ―――始めましょう。これが”最後の試練”です、兄様!お覚悟はよろしいですか!?」

「ああ―――行くぞ、エリゼッ!この決戦でクロウ達も、お前もみんな連れ戻す!!」

それぞれ闘志を燃やしたエリゼとリィンによって、ヴァイスリッターとヴァリマールからそれぞれ凄まじい霊圧がさらけ出され始めると共にそれぞれが持つ武器が光り輝き、膨大な霊圧をさらけ出し始めた!

「おおおおおおおおっ……!」

「やあああああああっ……!」

そしてヴァリマールはヴァイスリッターとの決戦を開始した! 
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