英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第181話
~鳳翼館~
「ほえっ!?え、”英雄王”があの件を教えたの~!?」
「……一体何故リウイ陛下は”ハーメルの悲劇”を御身に話したのでしょうか?」
エイドスの言葉を聞いたミリアムは驚き、クレア大尉は信じられない表情で尋ねた。
「現代で活動する時に必要となってくる私達の偽の戸籍を作って貰う代わりに、可能ならば”ハーメルの悲劇”を世界中に公表した時、リベール王国をフォローするような発言を私自身にして欲しいという依頼をされ、その際に詳しい事情をお聞きしました。」
「何ですって!?」
「一体何故リウイ陛下はそのような依頼を出されたのでしょう……?」
エイドスの答えを聞いたサラ教官は信じられない表情で声をあげ、エリスは不安そうな表情で呟いた。
「恐らくはエレボニア帝国が”滅んで当然の存在”だとエレボニア帝国の人々やゼムリア大陸の人々に知らしめて、エレボニア帝国滅亡後の統治をしやすくする為だろうな。」
「”ハーメルの悲劇”が隠蔽されて既に12年……それを今になって公表すれば、エレボニア帝国はゼムリア大陸の全国家からリベール欲しさに自作自演で自国の民達を犠牲にした事もそうだけど、12年も隠していた事で相当叩かれる事になるでしょうね。」
「そ、そんな事になったらエレボニア帝国の社会的立場が……!」
セルナート総長に続くように呟いたルフィナの推測を聞いたマキアスは表情を青褪めさせ
「間違いなく地に墜ちるだろうね。対するリベールは完全に被害者である上、脅迫同然と言ってもおかしくない形で”ハーメルの悲劇”を黙秘させられたから、リベールの場合は同情されるだけで叩かれる事はないだろう。リベールが唯一心配なのは国民の反応だが……」
「……例え国民の中からリベール王国政府を責めるような声が上がっても”空の女神”のお言葉によって収まるという寸法ですか……」
「そんでもってついでにメンフィルはリベールとの同盟関係がより強固にできる上、下手すりゃその件を”借り”にするって事でもあるな。」
疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の説明に続くようにラウラが答え、更にトヴァルが補足した。
「それでエイドスさんはリウイ陛下の依頼を請けられたのでしょうか……?」
「ええ。それと先に言っておきますが、”ハーメルの悲劇”を公表した時、エレボニア帝国のフォローをするつもりはありませんよ。」
エマの疑問に答えたエイドスはその場にいる全員が驚く事を口にし
「そ、そんな!?どうしてリベールはよくて、エレボニアはダメなんですか!?」
「……まさかとは思うけど、あんたの子孫――――カシウスさんやエステルの祖国だからっていう理由かしら?」
エイドスの答えを聞いたトワは悲痛そうな表情で尋ね、サラ教官は厳しい表情で問いかけた。
「いいえ、違います。私がエレボニア帝国のフォローをしない一番の理由は情状酌量の余地も無い完全な加害者のエレボニア帝国にフォローする必要はないと判断したからです。」
「そ、そんな……!でも、話によるとあの件は確か……!」
「……オリヴァルト殿下。”ハーメルの悲劇”は陛下の意志ではなく、暴走した主戦派の者達の仕業との事ですよね?」
「ああ……だからこそ、その件を後で知った父上は慌ててリベールに和解を申し出る事にし、主戦派を悉く処断したのだよ。まあ、メンフィルの侵攻による被害を抑える為でもあったが……」
エイドスの説明を聞いたアリサが悲痛そうな表情で反論しようとしている中、ユーシスに尋ねられたオリヴァルト皇子は静かな表情で答えた。
「自国の非を認めて和解を申し出るのは当然です。―――ですが自分達が犯した”大罪”――――”ハーメルの悲劇”によって自国の立場が地に墜ちる事を恐れて闇へと葬り、被害者であるリベールや自国の安寧の為に”ハーメル”の人々を犠牲にした”償い”すらしていない所か、”空の至宝”――――”輝く環”を悪用しようとしていた”結社”とやらが起こした”リベールの異変”を利用してリベール領内にエレボニア帝国軍を駐在させようとしていた話を聞いた時はエレボニア皇帝を含めたエレボニア帝国の人々は”ハーメルの悲劇”やリベールに戦争を仕掛けた事について本当に反省しているのかどうか怪しいと今でも思っています。」
「そ、それは………」
「ハハ……さすがは”白面”をも言い負かせたエステル君の先祖だけあって、正論かつとんでもなく厳しい意見だね……」
「ク…………ッ…………!」
エイドスの指摘にアルフィン皇女は悲しそうな表情で顔を俯かせ、オリヴァルト皇子は疲れた表情をし、反論が見つからないラウラは唇を噛みしめた。
「そして”貴族派”と”革新派”を纏めきれず、他国をも巻き込む内戦を引き起こしてしまい、自身は幽閉の身であり続け、抗う事もしなかったユーゲント皇帝。”ハーメルの悲劇”や”百日戦役”の件も含めて、民達から相当責められる事になるでしょうね。――――それとも情報操作とやらで、”ハーメルの悲劇”や”百日戦役”の件も含めて皇帝に非は一切無い事をするおつもりですか?」
「……………………恐らく御身のお言葉がなければ、そうするつもりだったと思います……」
「でも、情報操作をしなかったら、それこそエレボニア帝国内でまた混乱が起きると思うんだけど~。」
「下手したら今度は民達による内戦が起こるかもしれないね……」
「そ、そんな……」
目を細めて自分達を見つめるエイドスの言葉を聞いたクレア大尉は複雑そうな表情で答え、ミリアムは不満そうな表情で反論し、アンゼリカの推測を聞いたトワは悲痛そうな表情をした。
「だから先程言ったではありませんか。いっそ、今滅亡した方がエレボニア帝国に住まう人々の為であると。混乱によってまた民達の中から犠牲者が出るくらいなら、責任を取る形で国とその国の皇族が滅亡し、民達を大切に扱うと宣言している二国に後の事を委ねた方がよいと思いますよ。幸いエレボニア皇族である貴方達”アルノール家”はメンフィル帝国が保護してくれる上アルフィン皇女がリィンさんと結婚すればある程度の特権も手に入れられるとの事ですから、特権階級を持つ者として生き続ける事もできるではありませんか。」
「……非情な答えだけど理にかなっているわね。」
「はい……”人”あってこその”国”ですから。」
エイドスの答えにクレハやフィーナはそれぞれ複雑そうな表情で同意し
「それに話を聞く限り、貴方達はチャンスを与えられているんですよね?だったら、自分達の力で何とかするのが”筋”だと思いますよ。」
「肝心な所だけ神様に頼るなんて、ダメだと思うの。」
「神に頼るという”前例”を作ってしまえば、もしまたエレボニアが窮地に陥ったら空の女神に――――エイドスに頼るという事を思いついてしまうよ。」
「もしそうだとすれば、虫がよすぎる話ですね。」
ナユタの意見に同意するようにノイが静かな表情で答え、アドルとエレナはリィン達を真剣な表情で見つめて意見した。
「……………………」
エイドス達の厳しい意見に対する反論ができないリィン達はそれぞれ重苦しい雰囲気を纏って黙り込み
「……アンタ、見方を変えれば”暴君”といってもおかしくない発言をしている事に気付いている?」
「セリーヌ!」
やがて口を開いたセリーヌにエマは悲痛そうな表情で声を上げて制した。
「ええ、理解していますよ。――――ですが皆さんも理解していると思いますが国の”王”の言葉は絶対。それは王政の国ならどの国も同じ事でしょう?」
「はい……勿論文官や武官の方々の意見も尊重されますが、最終的に”国の判断”をするのは”王”ですわ。」
エイドスの問いかけに対してセレーネは辛そうな表情で答え
「では、ここで皆さんに尋ねますがゼムリア大陸の人々が崇めている私―――”空の女神”はゼムリア大陸の人々にとってどんな”存在”なのでしょうか?」
「”空の女神”がゼムリア大陸の人々にとってはどのような”存在”かと言われても答えは当然決まっていますが……」
「はい。私達にとって貴女は祈る存在にして称え続ける”存在”―――”女神”ですが……」
エイドスの問いかけにガイウスとエリスは戸惑いの表情で答えた。
「……―――言い換えれば私は”ゼムリア大陸全土の王”です。そして皆さんは私にそんな風に振舞って欲しい事を頼んでいるようなものですよ。」
「確かに二国に”勅命”とかをして、実際それが通ってしまったら、”空の女神”がそんな風に見られてもおかしくないな……」
エイドスの答えを聞いたトヴァルは複雑そうな表情で答え
「”神”とて感情があり”人”でもあるのですから、人々の”王”同様間違った選択をする事もあります。例えば現代のエレボニア皇帝のように。……まあ、さすがに現代のエレボニア皇帝のような”無能”にして”愚か”な事はしていませんが。」
「む、”無能”に”愚か”って幾ら何でも言い過ぎじゃないんですか!?」
「貴様、何様のつも―――いや、”空の女神”だからと言ってユーゲント陛下を侮辱していいと思っているのか!?」
エイドスの痛烈な意見を聞いたマキアスとユーシスは厳しい表情でエイドスに問いかけた。
「民達を纏める立場である皇帝でありながら二つに分かれた民達――――”貴族派”と”革新派”を一つにまとめきれず、内戦が起こってからはずっと幽閉の身であった事は”皇”として無能であり、自国の安寧を守る為に”ハーメルの悲劇”を闇に葬り去った上、自身が重用している宰相が行った行政によって産まれた民達の怨嗟の声を無視し続けた事は”愚か”であると思うのですが。実際その怨嗟の声を無視した結果”帝国解放戦線”――――テロリストが産まれてしまったのでしょう?”帝国解放戦線”の登場は”鉄血宰相”とやらにも当然責任がありますが、”鉄血宰相”を重用し、彼の者の政策によって産まれた民達の怨嗟の声を無視し続けた現エレボニア皇帝も責任の一端を担っていると思いますよ。」
「それは……ッ!」
「「………………」」
「姫様…………クレア大尉……」
「ハハ……父上がこの場にいなくて本当によかったよ……」
エイドスの答えを聞き、反論できないラウラは悔しそうな表情で唇を噛みしめ、辛そうな表情で顔を俯かせているアルフィン皇女とクレア大尉をエリスは心配そうな表情で見つめ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた。
「―――話を続けます。実際私も過去間違った選択をした事もありました。そして私は”神”の判断にゼムリア大陸の人々が左右される事や”神”や”奇蹟”に縋る事で人々が堕落する事を恐れ、”神”や不確かな”奇蹟”に頼らずに自分自身で”選択”して”本当の幸せ”を掴みとって欲しいと願い、”七の至宝(セプト=テリオン)”を人々に授けたのです。」
「それが御身が人々に託した”七の至宝(セプト=テリオン)”に隠された”真の意味”ですか……」
(教会の上層部が聞いたら、間違いなく卒倒するだろうね。)
(そら崇めている存在自身が自分を頼るなって言っているようなもんやからな……)
エイドスの説明を聞いたリースは驚き、ワジに囁かれたケビンは疲れた表情で答えた。
「……貴女の話は理解しました。ですがその話ですと、エイドスさんが”女神としてハーメルの悲劇の件でリベールをフォローする”のは”筋が通らない”と思うのですが。」
するとその時リィンが静かな表情でエイドスを見つめて指摘した。
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