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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第176話

同日、20:30――――



ユミルに到着したリィン達は最初にシュバルツァー男爵邸を訪ねた。



~温泉郷ユミル・シュバルツァー男爵邸~



「リィン……エリス……皆さんも無事で何よりです。」

「よくぞ無事に戻ってきた。それにアルフィン殿下とオリヴァルト殿下もご無事で何よりです。」

ルシア夫人と共にリィン達を温かく迎えたシュバルツァー男爵はアルフィン皇女とオリヴァルト皇子に視線を向けた。



「そんな………!おじ様達こそお元気そうで本当に何よりです……!わたくしが郷にいなければあのような出来事は起こらなかったというのに……」

「御心遣い痛み入ります。エレボニアの内戦にこの郷を巻き込んでしまった上ご子息達に何度も危険な目に遭わせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」

「ユミルが内戦に巻き込まれた件については殿下達の責任ではないと私達は思っていますし、息子達は息子達の意志で内戦に関わると決めたのですから殿下達を責めるつもりはありません。」

アルフィン皇女とオリヴァルト皇子に謝罪されたシュバルツァー男爵は静かな表情で二人に慰めの言葉を送った。



「おじ様……おば様……」

「それで何故今になってユミルを訪ねてきたのでしょうか?その……昨日のお昼ごろに”戦争回避条約”の”猶予期間”が終わった事をエイリーク皇女殿下より既に聞いていますが……」

「……実はその件なんですが――――」

リィン達は二人にユミルに来た経緯や事情を説明した。



「た、確かにその方法ならエレボニアが存続できる可能性が出てきましたね……フフッ、それにしてもまさかリィンの重婚がエレボニアを救う事ができるかもしれないなんて夢にも思いませんでした。」

「……その件だがリィン。エイリーク皇女殿下よりお前がエリゼやエリスを含めた多くの女性達を婚約した話も聞いているぞ。」

事情を聞いたルシア夫人が苦笑している中、シュバルツァー男爵は真剣な表情でリィンを見つめた。



「う”っ……!?そ、それはその……」

「―――全て終わって落ち着いた後でいいから色々と聞かせてもらうからな。」

「はい……そ、それよりも父さん、母さん。ロイドさんからユミルに二国に意見できると思われる方がいらっしゃるとの事ですが……」

「お父様達は心当たりはありませんか?」

シュバルツァー男爵の言葉に肩を落とした様子で頷いたリィンと共にエリスは二人を見つめて尋ねた。



「そのような公な場で意見ができる方ですか……―――あ。」

「フフッ、確かに”あの方”なら可能だな。」

「ええっ!?そ、それじゃあ……!」

「本当にユミルにそのような方がいらっしゃるんですか!?」

「一体何者なのですか?」

心当たりがある様子のシュバルツァー男爵夫妻を見たエリオットとアリサは驚き、ユーシスは真剣な表情で尋ねた。



「フフ、会えばわかる。―――今は”鳳翼館”で休まれているはずだ。」

「”鳳翼館”ですね!?……!」

「お、お兄様!?」

「全く、焦りすぎよ……」

「わ、私達も追いかけましょう!」

シュバルツァー男爵の答えを聞いて飛び出して行ったリィンの様子を見たセレーネは驚き、セリーヌは呆れ、エマは真剣な表情で提案した。



~鳳翼館~



「バギンスさん!」

「おや、若。いつお戻りに?それに随分慌てているようですが何かあったのですか?」

「今さっきです!それより”鳳翼館”に泊まっている方は今どちらにいらっしゃるんですか!?その方に至急お願いしたい事があるんです!」

「本日”鳳翼館”で宿泊されているのは団体様ですが……その方達の中のどなたに御用があるのですか?」

リィンの話を聞いた支配人は目を丸くして尋ねた。



「え……だ、団体ですか?」

「はい。七耀教会の関係者の方々ですが。」

「七耀教会ですか!?一体誰が……それでその方達は今どちらに?」

「先程露天風呂に入ると仰り、大浴場に向かいましたが……」

「露天風呂ですね?ありがとうございます……!」

「わ、若!……今の時間は女性なのですが……」

そして慌てた様子で大浴場に向かったリィンを支配人は冷や汗をかいて呟いた。



~露天風呂~



リィンが露天風呂に向かう少し前、ある人物達が露天風呂で疲れを癒していた。

「フッ、まさか女神とその一族達と共に湯に浸かる日が来るとはな。人生わからないもんだな。」

女性は自分と同じように露天風呂に入っている人物達―――エイドス達を見回して口元に笑みを浮かべ

「もう、アインったら……”守護騎士(ドミニオン)”の一人であり”星杯騎士団”の”総長”でもある貴女が世界が大きく動こうとしているこの時期に仕事を放り投げて、こんな所で油を売っていいと思っているの?」

ルフィナは呆れた表情で女性を見つめて指摘した。



「失敬な。ちゃんと我らが主神”空の女神”とその一族の方達に接触、そして僅か半年の滞在期間の間に是非アルテリアに訪ねて色々と話をして頂きたいという説得と共に護衛をするという重要任務についているが?」

「ハア……リース。貴女、アインに変な事を教えられなかったでしょうね?」

女性の答えを聞いて溜息を吐いたルフィナはリースに視線を向けた。

「総長には本当にお世話になった。星杯騎士としての修行もそうだけど、たまに街に飲みに連れていってもらって奢ってもらった。」

「ちょっとアイン?まさかとは思うけど――――」

「酒は飲ませていないから安心しろ。それにそもそも私達が崇めている”空の女神”がそんな細かい事を気にしていないのだからそう固い事を言うな。」

「そうですよ。”私”を崇めているのならそんな固い事は言いっこなしですよ。」

「うっ。」

女性の後に答えたエイドスの言葉を聞いたルフィナは疲れた表情をした。



「もう、この娘ったら……気持ちはわからなくはないけど、物事には限度というものがあるでしょうに。」

「う、う~ん……本当に一体誰に性格が似たのでしょうね……?アドルさんとフィーナさんはあんなユニークな性格ではないですし……」

その様子を見守っていたフィーナは呆れ、エレナは苦笑し

「当然クレハ様似でもないの。」

「当たり前よ。それにしても半年かぁ……まさか未来に来て半年の長期家族旅行をする事になるなんてね。」

ノイの言葉に答えたクレハは苦笑しながらエイドス達を見回した。


「フッ、空の女神やその一族達が降臨していた事にも驚いたがお前までもこの時代に来ていたのは本当に驚いたぞ。」

「フフ、最初は半信半疑だったんだけどエイドスさんから漂う霊圧や七耀脈が彼女を中心に集まり続けているのを見たら信じるしかないわよ。」

「リースもそうだがケビンもお前の登場にさぞ取り乱しのであろうな。」

「……私はそれ程でも。ヘタレなケビンは泣いていましたが。」

ルフィナと女性の会話を聞いていたリースは静かな表情で指摘し、その様子を見守っていたエイドス達は冷や汗をかいた。



「ア、アハハ……それにしてもよかったですね、エイドスさん、フィーナさん。お二人にとってはもう2度と会えないアドルさんと再会する事ができたんですから。」

「はい。フフ、キーアさんには感謝しないとですね。」

「ええ。彼女には本当に感謝しています……お父様とお母様、エレナお母様に会えるようにしてくれたのもそうですが、私にとって先祖にあたるクレハお祖母(ばあ)様とナユタお祖父(じい)様にも会えるようにしてくれたのですから。」

エレナの言葉にフィーナとエイドスはそれぞれ微笑み

「はうっ!?だから私の事を祖母呼ばわりしないでよ!私の場合、既に結婚した貴女と違ってナユタとはようやく恋人になったばかりなのよ!?大体そういうエイドスだってエステルとサティアにとっては”おばあちゃん”じゃない!」

エイドスの言葉にショックを受けたクレハは涙目でエイドスを睨んで言い返した。

「うっ!?や、やりますね……さすがは私の先祖です……」

「一体何の勝負をしているの……というかクレハ様がエイドスの悪影響を受けているの~!」

エイドスに対する反撃をしたクレハの様子を呆れた様子で見守っていたノイは疲れた表情で声を上げた。



「あ、あの~。私達も余波でショックを受けるのでその不毛な争いを止めて欲しいのですけど……」

「頭で理解はしていても孫もいないのにそんな風に呼ばれたら女性としてショックですよね……」

エレナとフィーナはそれぞれ疲れた表情で指摘し

「ハッハッハッハッ!つくづく”規格外”だな。我らの主神とその一族達は。」

「……エステルさんの”規格外”すらも霞んで見える程ですよ……」

「これ以上”空の女神”のイメージを壊すのは本当に止めて頂きたいわ……」

その様子を見守っていた女性は大声で笑い、リースとルフィナは疲れた表情で呟いた。



「―――すみません、折り入って頼みがあるのですが話を聞いて頂けないでしょうか!?」

その時リィンが服を着たまま露天風呂に現れ

「キャアッ!?」

「だ、誰ですか!?」

「今は女風呂の時間なのに男が入ってくるなんて何のつもりなの~!」

リィンの登場にフィーナは悲鳴を上げ、エレナとノイはリィンを睨んだ。



「皆さんはどうか私達の後ろに!」

「私達どころか女神とその一族達の入浴している所を乱入するという不埒すぎる罪、絶対に許しません。」

ルフィナとリースはすぐに立ち上がってエイドス達を庇うように移動してエイドス達の湯着姿をリィンに見せないようにしながらリィンを睨み

「ん?あの少年は確か―――――」

「…………とりあえず。―――お久しぶりですね、リィンさん。」

リィンを見て何かに気付いた女性は目を丸くし、エイドスは静かな表情で立ち上がってリィンを見つめた。



「あ、貴女はエイドスさん!?―――そうか!ロイドさんが言っていた人物というのは貴女の事だったんですね!?確かにゼムリア大陸の人々が崇める”空の女神”である貴女がいれば――――」

エイドスに気付いたリィンは驚いた後すぐに明るい表情をしたが

「……一体何の事を言っているのかよくわかりませんが、落ち着いて今の状況を確認して頂けませんか?」

「え?………あ”。」

無数の青筋を顔に立てて微笑むエイドスの指摘で我に返った後女性達が入浴している所に乱入した自分に気付いて大量の冷や汗をかき表情を青褪めさせた。

(アハハハハハハッ!さすがはご主人様!)

(ふふふ、本当にこういった予想外の出来事に出くわす縁に恵まれていますね。)

(リィン様……どうして温泉から上がるまで待つという事ができないのですか……?)

(まあ、事情が事情だから仕方ないと言えば仕方ないかもしれないけど……)

(……マスターには学習能力が無いのでしょうか。―――特に不埒過ぎる事に関しての。)

その様子を見守っていたベルフェゴールとリザイラがそれぞれ面白そうに見ている中メサイアは呆れ、アイドスは苦笑し、アルティナはジト目になった。



「私の肌をナユタ以外の男の人が見るなんて……!許さない!――――ロストオブエデン!!」

「ナユタ以外の男がクレハ様の湯着姿を見るなんて許さないの!――――ソル・イラプション!!」

「浄化の光よ、不埒者に裁きを!――――ゲイルフラッシュ!!」

その時リィンを睨んだ後立ち上がったクレハとノイがそれぞれ膨大な魔力を解放すると共に詠唱無しでロストアーツを発動し、二人に続くようにエレナも魔術を発動し

「どうやら頭に血が昇っているようですから一端頭を冷やしましょうか、リィンさん?――――セプトブレイカー!!」

エイドスは膨大な威圧を纏って微笑みながら異空間から取り出した神槍に虹色に光る膨大な魔力を溜め込んだ後リィンへと解き放ち

「……………………」

リィンはツァイトの話にあったエイドスが女神でありながら”ゼムリアの魔王”や”虹の悪魔”と呼ばれる理由をその身で理解しながら意識を飛ばした。



その後リィンを追って鳳翼館に到着したアリサ達はロビーの床で正座し、エイドス達に怒られているリィンを見つけた!



「に、兄様!?この状況は一体……」

「七耀教会のシスター……?」

リィンの状況を見たエリスは驚き、リースとルフィナに気付いたガイウスは不思議そうな表情をし

「ええっ!?あ、あの人はまさか……!」

「”空の女神”――――エイドスね。なるほど……確かにゼムリア大陸の多くの人々が崇めつづけている存在である空の女神ならメンフィルとクロスベルに意見できるわね。」

「ええっ!?あ、あの方が女神様なのですか……!?」

「ハハ……まさかこんな形で会う事になるなんてね。おまけに懐かしい面々までいるじゃないか。」

エイドスを見つけて驚いているエリオットと納得した様子で呟いたセリーヌの言葉を聞いたアルフィン皇女は驚いた様子でエイドスを見つめ、オリヴァルト皇子は懐かしそうな表情でリースやフィーナ、エレナとノイを見つめていた。



「ほう?まさかこんな所でお前達とも会う事になるとはな。」

その時アリサ達に気付いた一人のシスターがアリサ達に近づいてきた。

「げっ!?」

「あんたは……!」

「ええええええええええっ!?な、何でここにいるの~!?」

シスターを見たトヴァルは表情を引き攣らせ、サラ教官とミリアムは驚き

「”紅耀石(カーネリア)”アイン・セルナート……!何故貴女がユミルに……!?」

クレア大尉は信じられない表情で声を上げた。



「フッ、我らが主神たる”空の女神”がこの場にいるのだから、この私が女神の傍にいてもおかしくはないだろう?」

「あ、あの……どうしてリィン君はあの人達に怒られているんでしょうか?」

ある事が気になったトワは事情を知っていそうな女性に尋ねた。

「ああ、彼は何かよっぽど切羽詰まった事情でもあったのか、私や女神達が露天風呂の湯につかって疲れを癒している所を突入してきてね。今その事について女神やその一族達、後ついでに私の親友とその妹に怒られるという貴重な体験をしている所だ。」

「なっ!?」

「お、お兄様……」

「あの男は懲りずにまたやったのか……!」

「どうやら反省が足りなかったようだね。」

「に・い・さ・ま~~~~~??」

「フフ、さすがはリィン君だよ。まさか女神達が入浴している所を見るなんて。」

女性の話を聞いたアリサは驚き、セレーネは疲れた表情をし、ラウラとフィーは厳しい表情でリィンを見つめ、エリスは膨大な威圧を纏って微笑み、アンゼリカは口元に笑みを浮かべてリィンを見つめていた。



「お、おいおい……何か騒がしいと思ったら、なんなんやこの状況は?」

その時ケビンがアドル、ナユタ、ワジと共に近づいてきた。

「フフッ、何だかごく最近に見た事のある光景に似ているよねぇ?」

「貴方は確か………オリビエさん!どうして貴方がここに……」

「え、えっと……とりあえず、お久しぶりです。一体何があったんですか?」

ワジは興味ありげな表情でリィンを見つめ、オリヴァルト皇子に気付いたアドルは驚き、ナユタは戸惑いの表情でオリヴァルト皇子に挨拶をした後アリサ達を見回して尋ねた。



その後エイドス達の説教が終わり、落ち着いた後リィン達は改めてエイドス達との話を始めた。 
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