英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第172話
~ウルスラ間道~
「……フフ…………まさかこれ程とはな……これならばロイド達に届くかもしれんな……」
地面に膝をついているアリオスは静かな笑みを浮かべ
「はぁ……はぁ……か、勝ったの……?」
「ハァ……ハァ……ああ……信じ難い事にな……」
「ハア、ハア………これが姉様が辿り着いた”剣聖”の力……」
「凄まじい剣技の嵐でしたわね……」
「さすがにエリゼ嬢ちゃんはアリオスさんクラスではないと……信じたいがな……」
「それは幾ら何でもありえないでしょう……」
アリサ達はそれぞれ疲労を隠せていない様子でアリオスを見つめ
「…………アリオスさん。八葉一刀流の”皆伝”であり……ロイドさん達の”壁”であった貴方を超える事ができ……ようやくロイドさん達に届ける所まで来ました。俺達の”試練”の相手役を受け入れてくれ……ありがとうございます。」
リィンは静かな表情でアリオスを見つめて会釈した。
「フフッ、老師からお前の事は聞いていたが……とても”中伝”で収まり切っている”器”とは思えん剣だったぞ……」
「いえ……正直俺には早すぎたと今でも思っています。」
「フッ、謙遜する必要はない。――――先に進むがいい……この先に控えているのは大切なものを取り戻すための道を切り拓き、見事その手に取り戻す事ができたクロスベルの……いや、”零の至宝”の”守護者”にして”英雄”達だ…………彼らを超えられるかどうか……お前達の全てをぶつけてみろ…………」
そしてアリオスはリィン達に助言をした後気絶して地面に倒れた!
「……………………」
「兄様…………」
アリオスを見つめて黙り込むリィンをエリスは静かな表情で見守っていた。
「はは…………これでやっと……ロイドさん達に届けた気がする。ありがとう……みんなのおかげだよ。」
「フフ、お礼を言いたいのは私達の方よ。」
「フッ、これで奴等とようやく並べたな。」
「フフッ、兄様のお役に立てて何よりです。」
リィンの感謝の言葉に対し、アリサとユーシス、エリスは微笑みを浮かべて答え
「まさか”風の剣聖”にまで勝利するなんてね……フフッ、アンタ達の担任教官であった事を今ほど誇りに思った事はないわ。」
「ハハ、将来が楽しみな連中ばかりだぜ。マジで一人くらい遊撃士に来て欲しいくらいだぜ。」
「もう、トヴァルさんったら。それにしても……―――次で”試練”はようやく最後ですわね。」
サラ教官と共に口元に笑みを浮かべてリィン達を見つめるトヴァルの言葉に苦笑したメサイアは気を取り直してリィン達を見回した。
「”特務支援課”か。まさか俺達があいつらとやり合う日が来るとはな……」
「……クロスベルを解放した経験やあの”碧の大樹”を消滅させた経験によって、以前とは比べ物にならないくらい力をつけているでしょうね。」
メサイアの言葉で気を取り直したトヴァルは複雑そうな表情をし、サラ教官は静かな表情で推測した。
「……気を引き締め直してウルスラ病院に行こう。それと気絶したアリオスさんも運ばないと。」
「それなら、俺がアリオスさんを運ぶぜ。」
その後道具等で回復したリィン達はトヴァルにアリオスを背負ってもらい、ウルスラ病院に向かった。
同日、16:20―――――
~ウルスラ病院~
「ここがウルスラ病院……」
「ここのどこかにお母様がいらっしゃるのですね……」
ウルスラ病院の敷地内に入ったリィンは呆けた表情でウルスラ病院を見つめ、メサイアは周囲を見回していた。
「――――驚いたな。まさか本当にあの人達を退けるなんて。」
「!!」
そして聞こえて来た聞き覚えのある青年の声を聞いたリィンが表情を引き締めたその時ロイド、エリィ、ティオ、ランディがリィン達に近づいてきた。
「”特務支援課”……!」
「こ、この方達が……」
「…………」
ロイド達を見たアリサの言葉を聞いたエリスは呆け、ユーシスは真剣な表情でロイド達を見つめていた。
「ハハ、お前らも成長したじゃねえか。俺達でさえリーシャちゃんと”キリングベア”のコンビもそうだが、ツァイトを退けた事はないんだぜ?」
「それ以前に敵対し合っていたあの二人が手を組んでわたし達と戦う事自体もそうですが、ツァイトがわたし達の敵に回る事もありえませんからそのような事は起こらないと思うのですが。」
「フフッ、確かにそうね。あら?エ、エリゼさん……?どうしてリフィア殿下の元に戻ったはずのエリゼさんがリィンさん達と一緒にいるのかしら?」
リィン達を称賛するランディにジト目で指摘するティオの言葉に苦笑しながら答えたエリィはエリスを見て目を丸くした。
「―――お初にお目にかかります。私の名はエリス・シュバルツァー。エリゼの双子の妹になります。クロスベルでは姉がお世話になりました。」
「エリゼさんの妹……!」
「そう言えば双子の妹がいると言ってましたね。」
「さすがは双子だけあってとても似ているわね……正直エリゼさんと並んだら見分けがつかないわ。」
「ああ…………―――ロイド、さっさと始めてやったらどうだ?あいつらにとっちゃ、一分一秒が大事だろうし。」
エリスの自己紹介を聞いたロイド達が驚いている中、エリィの言葉に頷いたランディはロイドに視線を向けた。
「そうだな…………―――もう既に知っているとは思うけど、俺達―――いや、”俺”が君達”Ⅶ組”の”試練”の最後の相手だ。」
ランディに促されたロイドはリィン達と対峙し、トンファーを構えた。
「お、おいおい。まさかお前さん一人で俺達を相手にする気か?」
「随分と舐められたものだな。”情け”でもかけているつもりか?」
自分だけ武器を構えるロイドの様子を見たトヴァルは戸惑い、ユーシスは目を細めてロイドを睨んだ。
「いや、俺と戦うのは君達の中から一人だけだ。」
「ええっ!?そ、それってまさか……!」
「”一騎打ち”ですわね。」
「……”一騎打ち”をする理由を聞いてもいいかしら?」
ロイドの説明を聞いたアリサは驚き、メサイアは静かな表情で呟き、サラ教官は真剣な表情で尋ねた。
「非常時でもないのに、病院の敷地内で集団戦をする訳にはいきません。人払いは一応していますが、万が一何も知らない一般人が俺達と皆さんの戦闘に巻き込まれる可能性も考えられますので”試練”は”一騎打ち”という形でこちらで先に決めさせて頂きました。」
「なるほどな……」
「こっちの代表者は誰でもいいのかしら?」
ロイドの説明にトヴァルは納得し、サラ教官はある事を尋ねた。
「二つ条件があります。」
「条件だと?」
「はい。一つは攻撃アーツ並びに攻撃魔術を使わない事。二つは遠距離武器―――例えば銃等を使わない事。この二つを守って頂ければどなたでも構いません。」
「え……何故その条件を守らなければいけないのでしょうか?」
ユーシスの質問に答えたロイドの話を聞いたエリスは不思議そうな表情で尋ねた。
「戦闘の際、誤って建物を傷つけたり何も知らずに現れた一般人を巻き込まない為です。当然俺も銃は使いませんし、攻撃アーツも使いません。」
「…………なるほどね。そうなるとリィン。この中で純粋な接近戦の戦闘能力が一番高い君しかいないわ。」
ロイドの説明に納得したサラ教官はリィンに視線を向け
「――――はい。」
リィンは迷うことなく決意の表情で頷いてロイドと対峙した。
「兄様、どうかご武運を……!」
「頑張って、リィン……!」
「特別模擬戦で受けた借りを纏めて返してやれ。」
「今のリィン様なら必ず勝てますわ……!」
エリスとアリサ、ユーシスとメサイアはそれぞれ応援の言葉を送った。
「……局長から”試練”の”支援要請”を受けて、”試練”の方法を”一騎打ち”に決めた時、何となく君が来るような気がしていたよ。―――”蒼の騎神”の件も含めた君達の事情はエリゼさん達から聞いていた。だけど俺達はクロスベルを守る為に……そしてキーアを取り戻す為に君達に気を使う訳にはいかなかった。許してくれとは言わない。だが一言だけ謝らせてくれ。――――すまなかった。」
「いえ、元々俺達はロイドさん達がクロスベルを解放する為に動く事を承知の上で、内戦終結の方法を探り続けていましたし、オルディーネの件についても状況を考えれば仕方ありません。――――ですがせめてエレボニア帝国の滅亡の阻止をする為に……クロウ達を助ける為に全力で行かせて頂きます!神気――――合一!!」
ロイドに謝罪されたリィンは静かな表情で答えた後”力”を解放した!
「な、なんだぁ!?」
「そ、その姿はティオちゃんやレンちゃんと同じ……!」
「…………―――なるほど。それがエリゼさんが言っていたリィンさん自身が畏れているという”力”ですか。あの特別模擬戦の時に聞いてきた事は”それ”の事だったのですね。」
”力”を解放したリィンの姿を見たランディとエリィが驚いている中、ティオは静かな表情でリィンを見つめていた。
「凄い”力”だ……正直ティオやレンが”本気”を出した時よりも凄まじいかもしれないな……―――だけど、”それだけ”でエリィ達と共にアリオスさんを含めた多くの”壁”を乗り越えた俺に勝てると思ったら大間違いだ。」
紅き闘気をさらけ出しているリィンと対峙しているロイドは驚いた後決意の表情になり、膨大な闘気を全身に纏い、蒼き闘気をさらけ出した!
「―――クロスベル警察”特務支援課”リーダー、ロイド・バニングス。クロスベル皇帝ヴァイスハイト・ツェリンダーからの”支援要請”に従い、これより戦闘を開始する!」
「―――八葉一刀流、中伝。リィン・シュバルツァー、参る!」
「おおおおっ……!」
「はあああっ……!」
そしてロイドとリィンは戦闘を開始した!
今ここに!クロスベルの”英雄”と後にエレボニアの”英雄”として称えられる若き”英雄”同士による”一騎打ち”が始まった……!
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