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Three Roses

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第一話 運命の薔薇その一

                 Three Roses
               第一話  運命の薔薇
 王宮の庭には薔薇が咲き誇っていた、王はいつもその薔薇を観て目を細めさせていた。
「やはりな」
「はい、薔薇はですね」
「王が最もお好きな花ですね」
「どの花よりも」
「うむ、薔薇はいい」
 あらためてだ、王は紫の衣に身を包ませたその中で顔を綻ばせた。
「観ているだけで幸せになれる」
「それでこの庭に、ですね」
「様々な色の薔薇を集められた」
「そうされたのですね」
「そうだ、薔薇だけはだ」
 まさにというのだ。
「様々な色を観ていたいからな」
「赤も白もですね」
「そして桃も紫も」
「黄色も黒もだ」
 そちらもという返事だった。
「どの色も好きだ、そしてだ」
「姫様達にも」
「いつもですね」
「贈っているのだ」
 まさにというのだ。
「それぞれの色をな」
「マリー様が赤、そしてマイラ様は黒ですね」
 控える廷臣の一人が問うた。
「そうされていますね」
「うむ」
 確かな声での返事だった。
「そうしている」
「お二人の姫様に」
「それぞれですね」
「そしてな」
 さらに話す王だった。
「マリアとセーラにもな」
「マリア様にもすね」
「そしてデュプレ公のご息女にも」
「二人はマリーの友」
 それ故にというのだ。
「あの二人にも薔薇を贈っている」
「常にですね」
「そうされていますね」
「マリアには白、そしてセーラには黄色をな」
 その色の薔薇達をというのだ。
「贈る様にしている」
「それでなのですが」
 廷臣達のうちの一人、先程の別の者が王に尋ねた。
「何故それぞれの色なのでしょうか」
「贈る薔薇のそれか」
「はい、何故分けられているでしょうか」
 問うのはこのことについてだった。
「それは一体」
「あの娘達に相応しいからだ」
 これが王の返事だった、褐色の髭に顔の下半分は覆われ目鼻立ちは気品がある。目の色は青で髭と同じ色の髪は奇麗に切られている。
 服は王のそれに相応しい、生地は絹で奇麗に彩色され紫のマントを羽織っている。カラーは清潔な白でズボンもブーツも整っている。
 その王がだ、こう答えたのだ。
「それ故にだ」
「お四方に」
「まずマリーだが」
 王は彼女から話した。
「赤薔薇だな」
「はい」
「あの娘は優しい」
 その心根を知っての言葉だった。 
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