英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第161話
同日、10:20――――
トヴァルと一端別れたリィン達はそれぞれの飛行手段で無事クロスベルの国境―――ベルガード門を超える事ができ、待ち合わせの場所であるバス停でトヴァルを待っていた。
~西クロスベル街道~
「よっ、どうやらその様子では問題なくここまで来れたようだな。」
「あ……」
「トヴァルさん……!」
自分達に近づいてきたトヴァルを見たエリスとリィンは明るい表情をし
「そっちも正攻法で潜りこめたようね?国境ではどのくらいの厳しいチェックを行っていたのかしら?」
サラ教官は真剣な表情で尋ねた。
「チェックされたのは名前と出身、入国理由だけだ。入国理由が遊撃士協会の応援だって説明したら、クロスベル支部に確認されてな。予め受付のミシェルに口裏を合わせるように頼んでおいたから、特にそれ程厳しいチェックは無かったんだが……後でクロスベル帝国軍の兵士達に聞いたんだが俺が”遊撃士”だから”その程度”で済んだらしい。」
「何?」
「それってどういう意味ですか?」
トヴァルの答えを聞いたユーシスは眉を顰め、アリサは不思議そうな表情で尋ねた。
「……お前達も知っている通り今クロスベルはエレボニアとカルバードと戦争をしている真っ最中だ。本来ならエレボニア帝国人とカルバード共和国人は身体検査や荷物のチェックもあるらしいぜ。」
「それは……」
「し、身体検査まであるんですか!?」
「二大国出身の方達を相当警戒している証拠ですね……」
トヴァルの説明を聞いたリィンは複雑そうな表情をし、アリサは驚き、エリスは辛そうな表情で呟いた。
「……二大国出身という事はメンフィル帝国等二大国出身以外の旅行者等のチェックは厳しくないのか?」
「そうらしいぜ。――――それともう一つ。クロスベルがディーター・クロイスの独裁による頃に停止されていた導力バスの運行はまだ復帰していないそうだ。」
「……それも二大国との戦争の影響かしら?」
ユーシスの質問に答えた後説明を続けたトヴァルの話が気になったサラ教官は尋ねた。
「ああ、まだ完全にバスが通れるほどの安全を確認できていないからって理由でな。ただその代わりクロスベル帝国軍が装甲車で一定の時間間隔でクロスベル市を往復して旅行者達の送迎を行っているそうだぜ。」
「そうなると………密入国をした私達ではクロスベル帝国軍の装甲車を使ってクロスベル市に行く事はできませんね……」
トヴァルの説明を聞いたエリスは微かな希望が打ち砕かれた事に肩を落とし
「……ま、元々そっちの方は期待していなかったから、別にいいわ。―――クロスベルならあたしやトヴァルも遊撃士の仕事で訪れた関係で土地勘もある程度あるから、あたし達がクロスベル市まで先導するから遅れずについてきなさい。」
「わかりました。」
サラ教官の言葉にリィンは頷いた。その後リィン達はサラ教官とトヴァルの先導でクロスベル市に到着した。
同日、12:00――――
~クロスベル市・西通り~
「ここがクロスベル市……」
「ここのどこかにマルギレッタさんが………」
クロスベルに到着したアリサは物珍しさに周囲を見回し、リィンは真剣な表情で周囲を見回していた。
「?何だあの高層ビルは。」
「―――”オルキスタワー”。”IBC”のテコ入れで完成した大陸史上初の超高層ビルよ。」
「あ、あれが話にあった”オルキスタワー”ですか……」
「ここからでも一部が見えるくらい凄く高い高層ビルね………確かオルキスタワーの最上階は30階を越えていたはずだから……RFグループの本社ビルすらも比べ物にならないわね。」
ユーシスの疑問に答えたサラ教官の話を聞いたエリスは驚きの表情で遠目で見えるオルキスタワーを見つめ、アリサは苦笑しながら見つめていた。
「その”オルキスタワー”だが……クロスベル帝国軍の話では今は”クロスベル帝国”の”本城”として使われているそうだぜ。」
「ええっ!?オ、オルキスタワーがですか!?」
「フン、高層ビルを”本城”に使うとは貿易都市であるクロスベルにとっては相応しい本城かもしれんな。」
トヴァルの話を聞いたアリサは驚き、ユーシスは鼻を鳴らして呟いた。
「という事はそこのどこかにマルギレッタさんがいる可能性もありますよね………?」
「ただ、”本城”として使われているのなら警備も当然厳しいのでしょうね……」
真剣な表情で呟いたリィンの意見に続くようにエリスは不安そうな表情で推測し
「……まずはギルドの支部で情報を集めるわよ。確かクロスベルの支部は東通りにあったはずよ。時間も限られているし、行くわよ。」
「はい。」
サラ教官はリィン達を促し、歩きはじめようとした。
「ちょっと待った。お前さん達の場合、クロスベル市を歩き回る時はくれぐれも周囲を警戒しながら歩く必要がある事を覚えておけ。」
「?それはどういう意味だ。」
トヴァルの忠告を聞いたユーシスは不思議そうな表情をし
「……”特務支援課”には以前やった”特別模擬戦”であたし達の顔が割れているわ。警察でもある彼らがエレボニア帝国の士官学院出身のあたし達をクロスベル市で見つけた場合事情聴取をして来る可能性があるって事よ。」
「あ……っ!」
「そう言えばロイドさん達は俺達の事を知っていますものね……」
サラ教官の推測を聞いたアリサは声をあげ、リィンは複雑そうな表情をした。
「加えてエリゼお嬢ちゃんもクロスベル帝国建国まで”特務支援課”に協力していたから、エリゼお嬢ちゃんの双子の妹であるエリスお嬢ちゃんも見かけたら声をかけてくるだろうな。」
「はい……私と姉様が見間違われる事は今でもありますし……」
トヴァルの推測を聞いたエリスは辛そうな表情で頷いた。
「―――目立つ行動は避けながらギルドの支部へ向かうわよ。―――行きましょう。」
その後リィン達はサラ教官とトヴァルを先導に東通りにあるギルド支部に到着した。
~遊撃士協会・クロスベル支部~
「邪魔するわよ、ミシェル。」
「あら……フフ、懐かしい顔ぶれね。―――久しぶりね、サラ、トヴァル。」
受付のミシェルは先頭とその次に入って来たサラ教官とトヴァルを見て目を丸くした後口元に笑みを浮かべた。
「えっと……貴方がギルドの受付の方ですか?」
「ええ、あたしの名はミシェル。クロスベル支部の受付をしている者よ。よろしくね、特科クラス”Ⅶ組”の坊やたち♪」
リィンに尋ねられたミシェルはウインクをし、ウインクをされたリィン達は冷や汗をかき
(何だ、この男は……)
(男性なのに女性の喋り方をしていますよね………?)
(シッ!そこは気にしたらダメなのよ、きっと……!)
ユーシスは真剣な表情で呟き、苦笑するエリスの小声を聞いたアリサは真剣な表情で指摘した。
「ハハ……どうやらこの様子だとクロスベルが解放された事で一気に仕事が増えたようだな?」
ユーシス達の小声が聞こえていたトヴァルは苦笑した後依頼版に貼ってある膨大な量の依頼書が目に入り、ミシェルに尋ねた。
「ええ、復興の関係で支援課の坊や達の為にクロスベルに応援に来てくれたエステル達も総動員してみんな、クロスベル市内や市外で活動しているわ。何ならあなた達も臨時で助っ人をしてくれるかしら?トヴァルやサラは勿論だけど、”Ⅶ組”の坊や達も大歓迎よ♪」
「え、えっと、申し訳ありませんが遠慮しておきます。」
自分達を勧誘するミシェルの行動に仲間達と共に冷や汗をかいたリィンは苦笑しながら仲間達を代表して答えた。
「あら?という事はエステル達もクロスベルにいるのかしら?」
「ええ。エステル達どころか、エオリアやセリカ達もクロスベルに戻って来ているから随分助かっているわ。しかも未来から来ているというエステルの娘かつセリカの妻って女性もSランクだから、予想外の戦力が来てくれたおかげでもう大助かりよ♪」
「ハアッ!?み、未来のエステルの娘でおまけにSランクだと!?」
「し、しかもあのセリカ殿の奥方ですか……!?」
(…………まさか。アストライアお姉様、貴女なのですか……?)
サラ教官の質問に答えたミシェルの口から出た予想外の人物にトヴァルとリィンは驚き、アイドスは呆けた後信じられない表情をした。
「―――ただいま。」
するとその時サティアがギルドに入って来た。
「あら、噂をすれば本人が帰ってきたわね。」
サティアの登場にミシェルは目を丸くし
「ええっ!?じゃあ、貴女が……!」
「……よく見れば”ブレイサーロード”と容姿が似ているな……」
ミシェルの言葉を聞いて驚いたアリサはサティアを見つめ、ユーシスは信じられない表情でサティアを見つめ
「貴方達は…………――――フフ、”この時代”では”初めまして”ね。リィン、エリス、”Ⅶ組”のみんなに、トヴァルとサラも。」
リィン達を見回したサティアは目を丸くした後微笑んだ。
「なっ!?」
「兄様達だけじゃなくわ、私の事までご存知なのですか……!?」
サティアが自分達の事を知っている事にリィンは驚き、エリスは信じられない表情をし
「ええ。―――それと。久しぶりね、アイドス。」
サティアは頷いた後リィンが身につけている”神剣アイドス”に視線を向けた。すると”神剣アイドス”からアイドスが現れた!
「アストライアお姉様……本当にお姉様なのですか……?」
「――――セリカの妻にしてセリカの”第七使徒”サティア・ブライト・シルフィル。それが”今の私”よ。勿論エステルの娘として生まれ変わる前の”記憶”――――”正義の大女神アストライア”としての記憶もちゃんとあるわよ。」
呆然としているアイドスにサティアは微笑み
「お姉様……私……私……」
微笑まれたアイドスは辛そうな表情で言葉を濁していた。するとその時サティアがアイドスを抱きしめた。
「あ………」
「……キーアのお蔭で貴女も生まれ変わる事ができて、本当によかったわ…………先に言っておくけど、”昔の事”は気にしていないわ。貴女が今こうして私の目の前で生きている……それだけ私は嬉しいわ……」
「アストライアお姉様……!う……あ……ああっ………!」
そしてアイドスはサティアの胸の中で声を押し殺して涙を流して泣き続けた。
「……もう、大丈夫かしら?」
「ええ……みんなもごめんね、幻滅するような所を見せてしまって……」
その後泣き止んだアイドスはサティアから離れて苦笑しながらリィン達を見回した。
「いや……気にしていないよ。アイドスのお姉さんの事情はある程度知っているし。」
「ようやくお姉様に会えて本当によかったですね、アイドス様……」
「グスッ……ええ……」
リィンは静かな表情で答え、エリスは微笑み、もらい泣きをしていたアリサはエリスの言葉に頷き
「それに俺達は女神も人の子であると、どこかのふざけた女神で存分に思い知っているから今更だ。」
「まあ確かに”アレ”と比べれば、天と地の差だよなあ?」
「そりゃあ、”アレ”は”女神”である事自体を否定しているものねぇ?」
ユーシスの意見に続くようにトヴァルとサラ教官はそれぞれ苦笑しながら答えた。
「?誰の事を言ってるのかしら?」
「あ~……アタシにも何となくわかったわ。そう言えばアナタ達もレグラムで会っていたんだったわよね?”ただの新妻”を自称するアタシ達ゼムリア大陸の人々が崇めている女神様に。」
アイドスが首を傾げている中、既に察していたミシェルは苦笑しながら問いかけた。
「え……ゼムリア大陸の人々が崇める”女神”ってまさか……!」
「ええ、エイドスの事よ。」
ミシェルの問いかけに驚きの表情をしたエリスにサティアは苦笑しながら頷いた。
「そう言えば空の女神とその一族とやらもこっちに来ているんだったわね……今もクロスベルに滞在しているのかしら?」
「いいえ。今朝クロスベルを発ったわ。家族と一緒に西ゼムリア大陸内を回って”観光旅行”をする為にね。」
サラ教官の問いかけに疲れた表情で答えたミシェルの話を聞いたリィン達は冷や汗をかいて脱力し
「ええっ!?め、女神様が観光旅行ですか??」
エリスは驚いた後戸惑いの表情をした。
「そ、そう言えばエイドスさん、別れ際にそんな事を言っていたな……」
「まさか本当に実行するとはな……」
「今の情勢で観光旅行等、酔狂にも程があるだろう。」
「一体どれだけ私達の”空の女神”のイメージを破壊すれば気がすむのよ~!?」
一方既にある程度納得していたリィンは苦笑し、トヴァルは疲れた表情をし、ユーシスは呆れ、アリサは声を上げた。
「フフ……―――そう言えばお姉様。私が謎の復活を遂げた理由を知っているような口ぶりでしたが……私が復活できた理由を知っているのですか?」
「あ……」
「そう言えばそんな事を言っていたわね……確か特務支援課が保護している子供の名前も出て来たわね?」
アイドスの質問を聞いたリィンは呆け、サラ教官は真剣な表情でサティアを見つめて尋ねた。
「……………………ええ、知っているわよ。私がエステルの娘として生まれ変わってセリカと結ばれた事もそうだけど、”本来の歴史が改変されて”今に到る理由も全て知っているわ。」
「”本来の歴史が改変された”とは……一体どういう意味ですか?」
複雑そうな表情で答えたサティアの話を聞いたエリスは戸惑いの表情をし
「ちょっと、サティア!?それをその子達に話すのは不味くないかしら!?」
ミシェルは血相を変えて問いかけた。
「大丈夫………彼らなら例えそれを知ってもちゃんと黙っていてくれるし、”本来の運命”を改変された彼らには”知る権利”があるわ。」
「俺達の”本来の運命”……?」
「―――”歴史の改変”ね。」
サティアの答えを聞いたリィンが不思議そうな表情をしている中、アイドスは静かな表情で呟き、それを聞いたリィン達は血相を変えた。
「れ、”歴史の改変”って……!?」
「……一体何を根拠にそんな非常識な事を言えるのだ?」
アリサが信じられない表情をしている中、ユーシスは真剣な表情でサティアを見つめて尋ねた。
「―――未来のキーアはロイド達やエステル達には話さなかったけど、彼女より更に未来から来ている私にだけ教えてくれたの。―――貴方達”Ⅶ組”の”本来の運命”――――クロウ達と自分達の手でちゃんと決着した話を。」
「な……っ!?」
「……一体どういう事なのか、詳しく説明してもらってもいいかしら?」
サティアの話を聞いたリィンは驚き、サラ教官は厳しい表情で尋ねた。
そしてサティアはリィン達にロイド達の”大目標”であるキーアの奪還、キーアの正体がクロイス家が遥か昔から”銀行家”という表の仮面を被って裏で密かに作り続けていた”幻の至宝”に変わる完成体にして”幻の至宝”をも超える”至宝”―――”零の至宝”について説明した。
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