英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第155話
同日、10:15―――――
~バリアハート市~
「さてと……僕達がやる事は他のみんなと比べると楽だな。」
「はい。ツーヤお姉様に会って、お兄様とわたくしの婚約を正式に認めてもらうようにお願いするだけですから。」
「ツーヤは元々二人の仲を認めていたから、簡単に終わりそうだね。」
「ああ。後はどうやって接触するかだな……」
駅を出たマキアスの言葉にセレーネは頷き、明るい表情をしているエリオットの言葉にガイウスは静かな表情で頷いた後考え込み
「ちなみにクレアは昨日プリネ達とどうやって接触できたの?」
「私の場合はダメ元で面会を申し込んだ所、プリネ姫達が応じてくれたのです。その際に互いの連絡番号も交換しました。……まあ、皆さんでしたら全員プリネ姫達の連絡番号を知っていますから、意味はありませんけどね。」
ミリアムに尋ねられたクレア大尉は答えた後苦笑した。
「ええ。僕達がケルディックに着いた時もARCUSに連絡してプリネ達に会えましたし、今回もその方法で行きましょう。」
クレア大尉の言葉に頷いたマキアスはARCUSでツーヤに連絡すると、ツーヤが面会する場所を指定し、それに応じたセレーネ達は面会場所である宿酒場に向かった。
~職人街・宿酒場~
宿酒場でお茶を頼んでその場で待機しているとツーヤが宿酒場に姿を現した。
「あ………!」
「ツーヤお姉様、お待ちしておりましたわ。」
ツーヤの登場にエリオットは明るい表情をし、セレーネは微笑んだ。
「セレーネ……それに皆さんも。……どうやらクレア大尉に伝えたプリネさんの”助言”によるヒントに隠されていた答えがわかったようですね?」
マキアス達がいる席に近づいたツーヤは微笑み
「はい。正直”ヒント”にもならないと思える程簡単すぎる謎かけでしたが……」
ツーヤの言葉に頷いたクレア大尉は苦笑した。
「フフ、やっぱりクレア大尉はすぐに気付きましたか。―――さてと。あたしに接触したという事は、セレーネの親族であるあたしにリィンさんとセレーネの婚約を正式に認めて貰う事を頼みに来たのですね?」
「へ……」
「……どうやら予めオレ達がその為にバリアハートに来る事を予想していたようだな?」
「そりゃプリネがヒント出したんだから、ボク達が何をしに来ているのかも当然予想できているだろうね~。」
ツーヤの言葉を聞いたマキアスは呆け、ガイウスは静かな表情で問いかけ、ミリアムはツーヤを見つめて呟いた。
「お姉様……どうかリィンお兄様との婚約を認めて頂けないでしょうか……?クロウさん達を助ける為にもお願いします……!」
「え……それは一体どういう事、セレーネ?」
セレーネに嘆願されたツーヤは予想外の話に驚いて尋ねた。そしてセレーネ達はクロウとクロチルダの減刑する方法を説明した。
「……なるほど。確かにそれなら二人の罪を軽くして、”処刑”は免れるようにできますね。―――正直、驚きました。そこまでは想定していませんでしたので。」
説明を聞いたツーヤは目を丸くしてセレーネ達を見回した。
「”C”で思い出しましたが……”S(スカーレット)”にはどのような判決が下されるのかもう決まったのですか?」
「あ……」
「そ、そう言えば彼女もメンフィル軍に拘束されていたな……」
クレア大尉の問いかけを聞いたエリオットは目を丸くし、マキアスは複雑そうな表情をし
「お姉様……お兄様が決死の行動で助けたスカーレットさんを”処刑”にはしませんわよね……?」
セレーネは不安そうな表情で尋ねた。
「スカーレットさんについては安心して大丈夫だよ。メンフィルの客将の一人―――ベルフェゴールさんの”使徒”になった彼女を処刑したり傷つける罰を与える訳にはいかないから、元々彼女に危害を加えるつもりはないし、もしエレボニア帝国に引き渡した際も”処刑”や直接危害を加えるような事はしないように言い含めておくつもりだったし。」
「ほえっ!?それってどういう事!?」
「”使徒”……セリカさんに仕えているシュリさん達のような存在か……」
ツーヤの説明を聞いたミリアムは驚き、ガイウスは考え込んだ。
「え、え~と……詳しい経緯は省きますが、生きる目的も無くして自暴自棄になっていたスカーレットさんにリィンさんが生きる目的を与えたんですが……その後スカーレットさんまでもがリィンさんに惚れてしまったようでして。それでスカーレットさんがリィンさんに惚れているという状況を面白がったベルフェゴールさんが彼女を庇う為にリィンさんに内緒で自分の”使徒”にしたんです。」
「ええええええええええええええええっ!?」
「あ、ああああああ、あの”S”がリィンに惚れただって!?敵同士だったんだぞ!?」
「フフ、さすがはリィン……と言った所だな。」
「ほえ~……リィンの”そう言う所”って本当に凄いよね~。」
「お、お兄様……わたくし達の知らない所でまた増やしていたのですね……」
大量の冷や汗をかいたツーヤの説明を聞いたエリオットとマキアスは驚いて声をあげ、ガイウスは苦笑し、ミリアムは目を丸くし、セレーネは疲れた表情をし
「ハア…………まさか”帝国解放戦線”の幹部までもが被害にあっていたなんて。――――ルクセンベール卿、”S”がリィンさんに惚れた詳しい経緯や説明を後で私にだけ教えて頂けないでしょうか?勿論アリサさん達を除いた他の方達には漏らしません。」
クレア大尉は片手で頭を抱えて疲れた表情で溜息を吐いた後誰もが見惚れるような微笑みを浮かべながらも背後には雪山で吹き荒れる吹雪の幻が見えるかのような雰囲気を纏ってツーヤを見つめ、その様子を見守っていたセレーネ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ア、アハハ……別に構いませんよ。―――それで話を戻しますが一つだけ”試練”を受けて頂きます。それをクリアすれば、あたし――いえ、メンフィル帝国がリィンさんとセレーネの婚約を正式に認めた事になります。」
「え……」
「へっ!?し、”試練”!?」
「何故でしょうか?ルクセンベール卿はお二人の関係を認めているとお聞きしましたが。」
気を取り直したツーヤの言葉を聞いたセレーネは呆け、エリオットは驚き、クレア大尉は戸惑いの表情で尋ねた。
「実はメンフィルとクロスベルは皆さんが”エレボニアが国として生き延びる方法がある事に気付いて、それを実行しようとしている事にも予め想定しています”。」
「あ、予め想定していたって……」
ツーヤの話を聞いたマキアスは信じられない表情をし
「――少し考えれば予想できる事です。皆さんの元にはエレボニア、メンフィル、クロスベルの皇族の一員が揃っています。”戦争回避条約”の期間以内に内戦が終結できず、エレボニア帝国全土が制圧されてしまい、それでもなお諦められない皆さんがエレボニアを救う為にその方法を取るかもしれないとヴァイスさん――――ヴァイスハイト皇帝が予想していたんです。」
「ええっ!?ク、クロスベルの皇帝がそこまで予想していたの!?」
「ほえ~……”黄金の戦王”の凄さは知っていたけど、まさかそこまで凄いなんてね……」
「”黄金の戦王”……どうやら評価を改める必要がありそうですね。……と言う事はリィンさん達にも”試練”が待ち受けているのですか?」
ツーヤの説明を聞いたエリオットとミリアムは驚き、ある事に気付いたクレア大尉は真剣な表情で尋ねた。
「はい。ヴァイスハイト陛下とリウイ陛下がそれぞれクロスベル市のある方達とリベール王国のアリシア女王陛下達に皆さんが訪ねて来たらそれぞれ”試練”を与えるように要請し、承諾してもらいました。」
「なっ!?リベールにまで!?」
「オレ達がリベールを頼る事にまで気付いていたのか……?」
予想外の話にマキアスは驚き、ガイウスは目を丸くして尋ねた。
「メンフィルとクロスベルの両国に口利きしてもらえ、二国が応じる可能性がある国家や組織で適格なのはリベールしか存在しませんので。」
「……まさかそこまで予想されていたとは……という事はその”試練”をクリアできれば、それぞれ私達の頼みに応じて頂けるのですか?」
ツーヤの答えを聞いて真剣な表情で考え込んでいたクレア大尉は尋ねた。
「はい。――――”オーロックス峡谷”の特別実習の際にユーシスさんとマキアスが喧嘩をした際、リィンさんがお二人を撃破し切れていなかった手配魔獣から庇った場所……先にそこで待っていますので、準備を整えた後に来てください。その時に皆さんに”試練”を与えます。―――それでは一端失礼します。」
クレア大尉の質問に答えたツーヤは伝票を持ってレジで精算した後宿酒場から出て行った。
「な、何だかおかしな話になってきたな……」
「”準備を整えて”……この言葉だけでわたくし達の”試練”はどんな内容なのか何となく想像できますわよね……?」
ツーヤが去った後マキアスとセレーネは不安そうな表情をし
「……ルクセンベール卿の仰った通り、入念な準備をしてから向かいましょう。」
クレア大尉は静かな表情でセレーネ達を促した。その後準備を整えたセレーネ達は指定された場所に向かった。
~オーロックス峡谷~
「―――来たか。」
セレーネ達が指定された場所に到着するとそこにはレーヴェが待ち構え、レーヴェと対峙しているセレーネ達の中心のあたりでツーヤが離れてその様子を見守っていた。
「レオンハルト教官……!?どうして貴方が……!」
「お前達の”試練”は俺が受け持つ事になっているからだ。」
「ええっ!?」
「レ、レーヴェさんが”試練”を受け持つ……ですか?」
「まさか……」
驚いているマキアスの疑問に答えたレーヴェの話を聞いたエリオットは驚き、セレーネは不安そうな表情をし、ある事に気付いたガイウスが真剣な表情をしたその時、レーヴェは剣を構えた!
「俺に示してみろ。お前達――――エレボニアの揺るぎなき”意志”を。」
「なっ!?それじゃあ”試練”の内容はまさか……!」
「アハハ、やっぱそう来るよね~。」
「”剣帝”に勝利する事……―――それが私達の”試練”ですか?」
レーヴェの話を聞いたマキアスは驚き、ミリアムは意味ありげに笑みを浮かべ、クレア大尉は真剣な表情でツーヤに問いかけた。
「勝利する必要はありません。あたしとレーヴェさんが”合格”と判断できる”力”を示す事ができれば、皆さんの”試練”はクリアになり、リィンさんとセレーネの婚約が正式に結ばれた事になります。―――まあレーヴェさんに勝利できれば、その時点で合格である事は否定しませんが。」
「”紫電”を膝につかせたお前達が内戦に関わった事による経験で成長した事に加えて”氷の乙女”の加勢もある状況だ……勝率は低いが、俺に膝をつかせる事ができるかもしれんぞ?エレボニアを呑み込もうとするメンフィルとクロスベルの意志と覚悟より、エレボニアを生かそうとするお前達の意志と覚悟が上回っているのなら……力をもって証明してみせるがいい!」
ツーヤの説明に続くようにレーヴェは不敵な笑みを浮かべてセレーネ達を挑発した後真剣な表情で声を上げた。
「―――皆さん!皆さんもご存知のように”剣帝”は相当な使い手ですが私達にも勝機はあります!決して最初から諦めないで下さい!」
「はい!」
「ううっ……よりにもよってレオンハルト教官が相手だなんて。でも、絶対に負けられない!」
「ガーちゃん、いっくよー!」
「―――――」
「風よ……女神よ……どうか俺達に力を!」
武器を構えたクレア大尉の号令を合図にセレーネ達はそれぞれ闘志を高めて武器を構え
「Ⅶ組B班、全力で行くぞっ!!」
「おおっ!!」
マキアスの号令に力強く頷いた仲間達はレーヴェとの戦闘を開始した!
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