英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第143話
トリスタを……トールズ士官学院を奪還したその夜、離れ離れになった学院生達が互いの再会を喜び合っている中、リィンは一人カレイジャスの甲板にいた。
~夜・カレイジャス・甲板~
「………………(やっと取り戻せた……みんな、そんな気分なんだろうな。……たとえそれが一時のものだったとしても……それにしてもクレア大尉もそうだけど、クレイグ中将達の様子もどことなくおかしかったな……?)」
安堵の表情をしていたリィンは4時間前の出来事を思い出した。
4時間前―――
~カレイジャス・ブリッジ~
「……そうか。ようやく悲願を果たしたか。お前達の悲願が叶った事、心より祝福する。――――エリオット、本当に成長したな。父さんは嬉しいぞ。」
「えへへ……みんながいたお蔭だよ。」
モニターに映るクレイグ中将の笑顔を見たエリオットは恥ずかしそうに笑いながら答えた。
「自分もお前達が自分達の手でトリスタを……トールズ士官学院を奪還した事、心から祝福させてもらう。」
「ナイトハルト少佐……」
「フフッ、少佐が素直に褒めるなんて、明日は槍でも振るかもしれませんね?」
「サ、サラ教官。」
ナイトハルト少佐の言葉を聞いたリィンは驚き、からかいの表情をしているサラ教官の言葉を聞いたエマは冷や汗をかいた。
「ガイウスも……よくぞ成し遂げた。トールズ士官学院に推薦した者として誇らしいぞ。」
「……恐縮です。」
ゼクス中将の言葉にガイウスは静かな表情で会釈し
「私もトールズの卒業生として皆さんがトリスタを……トールズ士官学院を自分達の手で取り戻せた事、心から誇らしく思っています。」
「クレア大尉がわたくし達の願いを聞いていただいたおかげです。本当にありがとうございました。」
「ああ……それに僕達がここまで来れたのもクレア大尉達の助けがあったからことです。本当にありがとうございました。」
クレア大尉の言葉を聞いたセレーネは微笑み、マキアスは静かな表情で会釈した。
「それでクレア、トリスタを取り戻せたけど帝都にはいつ攻めるの~?ノルティアは不干渉、クロイツェンはメンフィル領になったから、帝国東部の貴族連合は消滅したから、今なら帝都も制圧できるんじゃないの~?」
「た、確かに言われてみればそうね……」
「帝都を制圧すれば内戦を終結させられるはずだ……そうすればメンフィルとクロスベルによるエレボニア侵攻も避けられるな。」
「うむ。これも”期間”を延長するように動いてくれたエリゼのおかげだな。」
「はい……姉様は私達の為に私達の知らない所で色々と動いてらっしゃいましたからね……今回の件が終わったら、姉様に改めてお礼を言わなければなりませんね、兄様。」
「ああ、そうだな。」
ミリアムの推測を聞いたアリサは目を丸くして真剣な表情をしているユーシスと共に頷き、ラウラの言葉に続いたエリスの言葉にリィンは静かな笑みを浮かべて頷き
「「………………」」
その様子をシグルーンとゲルドは静かな表情で見守っていた。
「そうだ……帝都と言えば、帝都近郊にあるカレル離宮にいる父さん達を助けないと……!」
「内戦への直接介入を控えていた僕達ができるとすれば、陛下達やレーグニッツ知事閣下の救出だね。」
「うん!学院の関係者は何としても保護する――だね!」
ある事を思い出したマキアスの言葉に続いたジョルジュの言葉にトワは嬉しそうな表情で頷き
「問題は以前のメンフィルによる襲撃を受けて、エリスを奪われた事によって幽閉場所がメンフィルにバレた影響で幽閉場所を変えられていないかだね。」
「確かに私達が陛下達を取り戻す為に動く事は向こうも想定しているだろうからね。」
「あ……あ、あの………お父様達は今もカレル離宮にいるのですか……?」
フィーの推測に続いたアンゼリカの話を聞いたアルフィン皇女は不安そうな表情で尋ね
「……はい、殿下。情報局の調査ではメンフィルの襲撃以降も変わっていないとの事です。」
クレア大尉は静かな表情で答えた。
「そうですか……それで帝都制圧の可能性が出て来た今、正規軍は今後どうされるのですか?」
クレア大尉の答えを聞いて安堵の表情をしたアルフィン皇女は真剣な表情で尋ねたが
「…………………………」
スクリーンに映っている全員は黙り込み
「ちょっと?何でそこで黙るのよ。」
クレア大尉達の様子を見たセリーヌは不思議そうな表情で尋ねた。
「……その件については明日皆さんにお知らせしますので、私達はこれで失礼します。」
「……エリオット、今のお前なら大丈夫だと父さんは信じているぞ。」
そしてクレア大尉は静かな表情で答え、クレイグ中将は重々しい口調で呟いた後ナイトハルト少佐達と共にスクリーンから姿を消した。
「……さっきの父さんの言葉はどういう意味なんだろう……?」
スクリーンからクレア大尉達が消えた後エリオットは考え込み
「それにクレア大尉達の様子もどことなく変でしたわよね……?」
「そうだね~。あのクレアが時間を遅らせて情報を渡すなんて今までなかったよ~?」
セレーネとミリアムもそれぞれ考え込んでいた。
「……色々と疑問に思う事はあるかもしれませんが、クレア大尉が仰ったように明日になればわかるのですから、今は悲願を果たした事を素直に喜ぶべきだと思いますわよ。」
「うん……それにもしかしたらみんなの為に、難しい話は明日にしてくれたのかもしれないよ……?」
その時シグルーンが静かな表情でリィン達を見回し、シグルーンの言葉に頷いたゲルドが微笑みながらリィン達を見つめた。
「……なるほどね。しかしあの女がそんな気遣いまでするなんて、これも男ができた影響かしらね~?」
「え、えっと……そこで何故俺を見るのですか……?」
ゲルドの言葉に納得した後口元をニヤニヤさせるサラ教官に視線を向けられたリィンは冷や汗をかき
「リ・ィ・ン~~~~??」
「に・い・さ・ま~~~??」
「……………………」
そして膨大な威圧を纏ったアリサとエリスに微笑まれると表情を青褪めさせて身体を震わせ、その様子を見ていたその場にいる全員は脱力した。
~現代~
(気のせいか……?何か俺達の知らない所でとんでもない事が起こっている気がする……一体どうして……)
「アンタは回らないの?」
リィンが一人考え込んでいるとセリーヌが近づいてきた。
「セリーヌか。委員長はどうしたんだ?」
「さあ、文芸部あたりにいるんじゃない?先輩ってのに『大切な愛蔵書が無くなっていないかチェックしないと!』とか引っ張られていったし。」
「はは、ドロテ先輩か。」
セリーヌの話を微笑ましそうに聞いていたリィンはふと黙り込んだ後やがて口を開いた。
「……何だか胸が一杯になってさ。どれだけ自分がこの学院が好きだったか―――改めて実感していたんだ。」
「ふぅん。ま、せいぜい楽しんでおきなさい。ヴィータと”蛇”が関わっている以上、ここからが本番なハズよ。バンダナ男と決着をつける前に悔いは残さないようにするのね。」
「そうだな……あ、ひょっとして気遣ってくれたのか?いつも憎まれ口を叩きながら面倒見がいいっていうか……」
セリーヌの言葉に頷いたリィンだったがある事に気付いた後セリーヌの前に座り込んでセリーヌの喉を撫でた。
「ゴロゴロ……―――じゃないっ!アンタねぇ、そういうのは番いたい相手にだけしなさい!節操なさすぎるわよ!?……って、ああ、そう言えばあんたのその節操の無さで番う相手がたくさんいるんだったわね。」
「う”……」
(うふふ、その通りね♪というか今夜あたりにまた増やすと思うわ♪)
(皆が勝利に酔いしれ、最後の戦いに向けて決意を固めているのですから、これを機会にご主人様と……という方達がいてもおかしくありませんね。)
(……その可能性は100%かと思われます。……問題は何人の被害者が増えるかですが。)
(ア、アハハ……今夜で何人増える事になるのでしょうね……)
(そして後でそれを知ったアリサ達にまだ怒られるのでしょうね……)
セリーヌの指摘にリィンが唸り声を上げている中、ベルフェゴールとリザイラの念話にアルティナがジト目で答え、メサイアは遠い目をし、アイドスは苦笑していた。
「アタシに構うよりとっとと回って来なさい。それと、ヴァリマールの所にも顔を出してきなさいよね。……フン、まったくどうしてアタシが……ブツブツ。」
そしてセリーヌはブツブツと呟きながら去って行った。
「……確かにここでまったりしてても仕方ないか。(久々の学院とトリスタ……一通り回ってみるかな。みんなとも改めて話をして……帝都方面を守ってくれているヴァリマールにも声をかけるか。)」
その後リィンは久しぶりのトリスタや士官学院を回り始めた。
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