英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第133話
~隠者の庭園~
庭園に仲間達と共に戻ったリースが封印石を解放すると意外な人物が光から現れようとした。
「え………」
「この人は………」
「ほう?これは意外な者が現れたな………」
光から現れようとした人物を見たエステルとヨシュア、バダックは驚き
「ま、まさか…………」
「もしかして………!」
「おいおい、マジかよ………」
「……うふふ、なるほどね。まさか”そう来る”とはね。」
ユリア大尉は信じられない様子で呟き、アネラスは嬉しそうな様子で、アガットもユリア大尉のように信じられない様子で呟き、レンは意味ありげな笑みを浮かべた。そして光が消えるとなんとそこには現在は民間の調査会社を経営しているはずだが、かつての情報部の軍服を着たリシャールが現れた!
「くっ………閃光弾か!?何者だ―――名乗りたまえ!」
光から現れ地面に膝をついていたリシャールは唸った後、一歩下がって抜刀の構えをして叫んだ!
「なっ……………………………」
しかし目の前にいるエステル達に気付いた後、呆けて黙り込んだ。
「あはは………これは予想外だったわね。」
「………やはりお知り合いの方でしたか?王国軍の方のようですが………」
苦笑している様子のエステルに気付いたリースは尋ねた。
「ええ………馴染み深い人です。」
「これは一体………エステル君にヨシュア君………そ、それにクローディア殿下にユリア大尉まで……!」
「リシャールさん。お久しぶりですね。」
「…………ご無沙汰しています。」
自分達を驚きの表情で見つめているリシャールにクローゼは微笑み、ユリア大尉は会釈をした。
「………こちらこそ。挨拶が遅れて申し訳ありません。王太女殿下におかれましてはご機嫌うるわしく………」
するとその時リシャールはすぐに臣下の態度―――地面に膝をついてクローゼを見上げて挨拶をした。
「ふふ、顔をお上げ下さい。お元気でいらっしゃいましたか?」
「は、女王陛下の格別のお慈悲を持ちまして………しかしこの状況………どう考えても判然としません。できれば詳しい事情をお教え頂けないでしょうか?」
「………それについては私の方からご説明しましょう。」
「君は………」
「初めまして。七耀教会、星杯騎士団所属、リース・アルジェントと申します。」
「星杯騎士団…………!………なるほど。尋常ならざる事態が起きているものとお見受けした。」
リースの正体を知ったリシャールは驚いた後、納得した様子で呟き、そして立ち上がった。
「………お初にお目にかかる。私の名はアラン・リシャール。元・王国軍情報部大佐にしてクーデター事件を企てた逆賊………そして現在では『R&Aリサーチ』という調査会社を経営している者だ。」
その後リース達はリシャールに状況を説明し、初対面の者達は自己紹介をした。
「なるほど。事情は一通り理解した。しかし……何と言ったらいいものか。」
「ん、どうしたの?やっぱりこんな話、いきなり信じるのは無理?」
戸惑っている様子のリシャールを見たエステルは尋ねた。
「正直な所、それもある。だがそれ以上に………『なぜ私なのか』と思ってね。」
「へ………」
「顔ぶれを拝見する限り、ここに集まった者はそれなりに縁のある者同士のようだ。………女神の導きか、何らかの意図か………まさに共に協力し合うのにふさわしい関係にあると言えよう。」
「言われてみれば………」
「え、え~と……俺はこの中の誰とも縁はありませんよ?ここにいる人達とは全員初対面ですし……」
リシャールの説明にエステルが納得している中、ロイドは気まずそうな様子で指摘したが
「うふふ、案外その”縁”があったりするかもしれないわよ?――――例えば元クロスベル刑事のフレンお兄さんとか♪」
「ちょっ、お前、そこで何で俺に話に振るんだよ!?」
(ハア……自業自得よ……)
「う、う~ん……それだと幾らなんでも縁が薄すぎると思うんだけどな……フレンさんと会ったのは今回の件が初めてだし。あ、もしかしてフレンさん、俺の兄貴と知り合いだったんですか?」
意味ありげな笑みを浮かべたレンに視線を向けられたフレンは焦り、アーシアは呆れた表情で見守り、ロイドは戸惑いの表情で答えた後ある事に気づいてフレンを見つめ
「へっ!?あ、ああ。ガイ先輩には色々と面倒を見てもらってな。実はトンファーを使った戦い方もガイ先輩直々の教えなんだぜ。」
「そうだったんですか……」
(またボロを出して……彼がクロスベル警察に就職したら嘘が判明するのに何でそんな無理がある嘘をつくのよ……)
(つーか、ルフィナもそうだがガイも何で血縁者にバレねぇんだ……?)
あからさまな嘘でロイドを納得させている様子を見たアーシアは呆れ、ルークは疲れた表情でリースとロイドを見つめていた。
「ボクは別にあんたと協力したくないけどね。ノーテンキが移りそうだし。」
「あ、あんですって~!?」
「………2人とも。」
一方いつものように口喧嘩を始めようとしたジョゼットとエステルをヨシュアは呆れた様子で見つめて制止した。
「コホン………だが、この私はどう考えてもこの場にいるのに相応しい人物だとは思えない。かつて大それた陰謀を巡らし、君達、いやリベールそのものを窮地に陥れた大罪人………いったい何の間違いかと思ってね。」
「リシャールさん………」
リシャールの話を聞いたクローゼは心配そうな表情で見つめた。
「で、でも………!大佐だって王都が襲われた時、駆けつけてくれたじゃない!?」
「そ、そうですよ!あの部下の人達と一緒に街のみんなを助けてくれて………」
「ふふ………正直、あれは助かったわね。」
「その後も、ハーケン門に向かった僕たちやクローゼの代わりに王都の守りを引き受けてくれました。」
「たしかに、そういう意味じゃ協力者だったと言えなくもねぇな。」
「それに大罪人でしたらリシャールさんと同じく情報部の少尉として暗躍し、そして結社の”執行者”としてリベールを窮地に陥れたロランス少尉―――レーヴェも同じですけど、レーヴェもリシャールさんと同じようにこの”影の国”に取り込まれている可能性もあるんですよ?」
リシャールの言葉を聞いたエステル、ティータ、シェラザード、ヨシュア、アガット、カリンはリシャールを納得させる為に言葉を尽くした。
「しかし………」
「フッ、リシャール殿。それを言うなら、まさにその時、エステル君やリベールの敵として立ち塞がっていたのはこのボクだ。そのボクが何のためらいもなく仲間として身分を謳歌している………それを考えたら、貴方がそんなに葛藤する必要はないと思うけどねぇ。」
「……お前はもう少し葛藤した方がいいと思うのだがな。」
それでも納得していない様子のリシャールに助言をしたオリビエにミュラー少佐は顔に青筋を立てて指摘した。
「ですが、皇子………あなたは最初から帝国軍の陰謀を食い止めるために動いておられた。やはり私とは立場が違うでしょう。」
「それを言うならボクは?ボク達だって、あんたたち情報部に利用されていたとはいえ、空賊をしてたことには変わりないよ。ま、色々あったけど今は女王陛下に赦してもらって民間の運送会社なんかやっている。似たような立場なんじゃないの?」
「それは……」
「ま、大切なのは過去じゃない。現在と未来ってことでしょう。」
「そうですよ!リシャールさんの剣があれば私達もすごく助かりますし………ここは是非、ご協力をお願いします!」
オリビエの話を聞いてもまだ納得していないリシャールにジョゼット、ジン、アネラスはそれぞれ納得させる言葉を言った。
「………アネラス君。」
「って、アネラスさん。何気に大佐と知り合いだったりするの?」
「あ、えへへ………この前、カシウスさんと会った時にちょっとあって。」
「へ、父さんと?」
アネラスの口から出た予想外の話を聞いたエステルは驚いた。
「―――話を伺っている限り、あなたの協力を拒む理由はどこにもなさそうですね。むしろ是非とも力になって頂ければと思います。何でしたら、星杯騎士団への協力という名目でも構いません。いかがでしょうか?」
「…………………解った。どうかよろしくお願いする。」
「やった!」
「ふふ………良かった。」
「よろしくお力添えください。」
そしてリースの言葉を聞いてようやく納得したリシャールの答えを聞いたエステル達は明るい表情をした。
「はは………期待に沿えればいいのだが。それはともかく………一つ、確認したいことがある。」
「………何でしょうか?」
「私達全員、ほぼ同時刻にいきなり白い光に包まれてこちらに飛ばされてきた………―――その時の格好は皆、そのままなのだろうか?」
「へ………」
リシャールの疑問を聞いたエステルは何のことかわからず、首を傾げたが
「!そういえばリシャール殿………退役されたはずなのにどうして情報部の軍服を?」
「あ………」
「ふむ、そういうことか………察するに、白い光に包まれた時、貴方は別の格好をしていたのだな?」
何かに気付いたユリアの言葉にエステルも気付き、ミュラー少佐は頷いた後静かに尋ねた。
「…………お察しの通りだ。現在、私はルーアン市で事務所を構えているのだが………そこでかつての軍服に袖を通したことは一度もない。白い光に包まれた時もシャツにスラックスという普通の出で立ちだったはずだ。」
「それは………確かにおかしな話ですね。今までにないパターンなのかもしれません。」
「はっ、もしかして………あの”影の王”君が『やっぱり大佐には軍服だよね』ってわざわざ着替えさせたりしたとか?」
リシャールの説明を聞いたヨシュアは考え込む一方、オリビエは全員を脱力させる言葉を口にした。
「あ、あんたね………」
「そ、それじゃあただの軍服フェチじゃない。」
「あ、でもちょっとわかる気がするけど………」
「うーん、ボクも。」
「…………………」
オリビエの言葉を聞いたシェラザードとエステルは呆れたが、アネラスとジョゼットは納得した様子で頷き、クローゼは黙って何度も頷き
「君達………」
「ったく、最近の小娘どもは………」
「???」
その様子を見たリシャールとアガットは呆れ、ティータは首を傾げ
「もしそうだとしたら、公務の為に旅装をしておいて正解でしたわ。」
「万が一以前の旅の時以外の服装を身につけていたら、”影の王”に着替えさせられたかもしれませんしねぇ。」
「まあ、”影の王”っていう名前なんですからそんな陰湿な事をしてもおかしくないですものねぇ?」
「お前達な……」
「というかガイやルークは以前の服装で出て来なかったのだから、それはありえないわよ……」
「そうですの。それにご主人様の髪もそうですの!」
「いや、髪は関係ねぇだろ……」
ジト目で呟いたナタリアの意見にそれぞれ冗談交じりの様子で同意したジェイドとアニスにガイとティアは呆れ、ミュウの意見を聞いたルークは呆れた表情で指摘した。
「ま、いずれにせよ、新たな手掛かりにはなりそうだ。俺達が飛ばされてきた理由………そろそろ掴めそうな気がしてきたな。」
「ええ、僕もそんな気がします。それどころかこの”影の国”の成り立ちも………」
「そうか………ならば私も、この件については今は気にしないでおくとしよう。」
その後リース達は探索を再開した所、さらに封印石を見つけたので、解放する為に庭園に戻り、そして封印石を解放した。
「あ……っ!」
「お、あいつは……」
「フフ、貴女にとっての知り合いもようやく現れたわね。」
「知り合い……というか私が一方的に知っているだけです。あの方と直接言葉を交わした事は今までありませんでしたし。」
「イオン様………」
光の中から現れようとする見覚えがある人物を見たエステルは声を上げ、フレンは目を丸くし、アーシアに微笑まれたリースは苦笑し、アニスは辛そうな表情で光の中にいる人物を見つめていた。すると光の中からイオンが現れた!
「……くっ……今の光は一体……無事ですか、皆さん!?…………え。」
目を開けたイオンは立ち上がって真剣な表情で声をあげたが目の前にいるリース達に気づくと呆けた。
「よう、久しぶりだな、イオン。」
「フフ、お元気そうで何よりです。」
「ルーク……カリン……ええ、久しぶりですね。それよりも貴方達が一体いつの間に”メルカバ”に――――」
ルークとカリンに声をかけられたイオンが微笑んだその時
「……ッ……!イオン様……!」
顔を俯かせて身体を震わせていたアニスがイオンに抱きついた。
「え……貴女はまさか……アニス!?何故アニスがゼムリア大陸に……」
一方抱きつかれたイオンは信じられない表情でアニスを見つめ
「ごめんなさい、イオン様……!わたしのせいでイオン様が……!」
「アニス……あの時も言いましたが貴女のせいではありませんよ。それに僕はむしろ貴女に感謝しているのですよ。生まれたばかりの僕をずっと必死に守ってくれたのですから。」
「イオン様……ッ!」
「フフ、その慈悲深さ、変わりませんわね。」
「え……―――!フフ、随分と懐かしい顔ぶれも揃っていますね。」
ナタリアの声に気づいて一瞬呆けたイオンはティア達に気づくと懐かしそうな表情をした。
「……お久しぶりです、イオン様。イオン様の事情は既にルークやラルゴより聞いております。」
「あの時は本当にありがとうございました……今こうして生きていられるのもイオン様のお陰です。」
「またこうして会えるとは思わなかったぜ。」
「お久しぶりですの、イオンさん!」
ジェイドとティアはそれぞれ会釈をし、ガイは懐かしそうな表情で嬉しそうな表情をしているミュウと共にイオンを見つめた。
「ええ、またこうして皆さんとお会いできるなんて本当に嬉しいです。しかし……周りの空間の事といい、ゼムリア大陸とゼムリア大陸とは異なる世界の人々が揃っている所を見るとどうやら尋常ではない事が起こったようですね?」
「はい。詳しい事情については私の方から説明させて頂きます、ジュエ卿。」
イオンの話に頷いたリースは前に出てイオンを見つめ
「!まさか貴女は……ルフィナの妹君ですか?」
「……姉の事をご存知でしたか。―――ご挨拶が遅れて申し訳ありません。お初にお目にかかります、”守護騎士”第七位”七の導師”イオン・ジュエ卿。私は第五位”外法狩り”ケビン・グラハムの”従騎士”リース・アルジェントと申します―――――」
その後リース達は事情をイオンに説明し、初対面の者達は自己紹介をした。
「そうですか……まさかそのような事態に陥っていたとは。―――状況はわかりました。僕も星杯騎士団に所属する者として……そしてルーク達の仲間として今後の探索に協力させて頂きますのでよろしくお願いします。」
「イオン……」
「……こちらこそよろしくお願いします。所でティアさん達の話によるとジュエ卿はティアさん達の世界の宗教―――”ローレライ教団”の最高指導者である”導師”の”レプリカ”という存在であり、ティアさん達の世界では既に死亡したと伺っているのですが……」
「既にそこまで聞いていましたか。ええ、そうです。あの時僕は死亡したのですが……気が付けばアリエッタと共にアルテリアの郊外の森に倒れていたんです。」
「え……アリエッタと一緒にですか??」
「アリエッタが死んだのはチーグルの森での決闘の時だからおかしくないか?」
「そうですわね……死亡した時期が一致しませんし。」
リースの質問に答えたイオンの答えを聞いたアニスは不思議そうな表情をし、ガイの疑問にナタリアは頷き
「ラルゴ。あの時貴方はアリエッタの遺体と共に姿を消しましたが……アリエッタの遺体は結局どうしたのですか?」
「……間違いなく俺の手でアリエッタが作ったライガクイーンの墓の隣にアリエッタの遺体を埋めた。」
「ライガクイーン……俺達が殺したあの魔獣か………」
「みゅ~………」
「……………」
ジェイドの質問に答えたバダックの答えを聞いたルークとミュウは辛そうな表情をし、ティアは目を伏せて黙り込んでいた。
「う、う~ん……つくづく思ったけど何で異世界で死んだ人達がみんな揃ってあたし達の世界で生き返っているのかしら?」
「そうだね……それもそれぞれの死亡した状況を考えると、それぞれの世界の命運をかけた戦いの出来事の際に死亡した人達がほとんどだしね。」
「何か法則性のようなものでもあるんだろうか……?」
疲れた表情で呟いたエステルの疑問にヨシュアとロイドはそれぞれ考え込んでいた。
「まあ、それも気になる所だけど………イオン神父。貴方、”輝く環”の件とは別の”極秘任務”があったそうだけど……その”極秘情報”と今回の件は関係しているのかしら?」
「……確かその”極秘任務”とやらにはヨシュアの姉――――カリンに”結社”に正体を悟られない為にわざわざ変装をさせて偽名まで使わせていたな。」
「あ………」
「フン……そう言えば結局”極秘任務”とやらの内容は口にしなかったな。もしその”極秘任務”とやらが今回の件に関係していて、黙っているつもりなら、タダじゃすまねぇぞ……?」
シェラザードの質問に続くように呟いたジンの話を聞いたクローゼは不安そうな表情をし、アガットはイオンを睨んだ。
「ちょ、ちょっと!?何でそこでイオン様を責めるのよ!?もしイオン様に危害を加えるつもりなら、わたしが相手するわよ!?」
その時アニスがイオンを庇い、アガットを睨んだ。
「アニス、庇ってくれてありがとうございます。ですが今まで黙っていた僕に非があるのですし、いつか折を見て事情を説明するつもりでしたから貴女は下がって下さい。」
「イオン様………わかりました。」
そしてイオンに制止されたアニスは下がり、イオンは前に出た。
「―――既にリースから聞いている通りケビンは僕と同じ守護騎士です。そしてケビンと僕は”輝く環”の調査という”表向きの理由”でリベールに訪れたのです。」
「ふえ?”輝く環”の調査が”表向きの理由”ってどういう事ですか??」
「――――要するに第三者に話す訳にはいかない”真の理由”がある……そういう事でしょう?」
イオンの話を聞いたティータが不思議そうな表情で首を傾げているとレンは意味ありげな笑みを浮かべてイオンを見つめた。
「ええ。―――”結社”の”蛇の使徒”の第三柱にして最悪の破戒僧―――”白面”ゲオルグ・ワイスマン。ケビンは”外法認定”された彼の”外法”を抹殺する為に……そして僕はケビンの手伝いをする為にリベールを訪れた”真の理由”だったんです。」
「な―――――」
「ええっ!?”教授”を……!?」
イオンの話を聞き、仲間達と共に驚いたユリア大尉は絶句し、エステルは信じられない表情で声を上げ
「……やっぱりそう言う事だったのですか………」
「や、”やっぱり”って……もしかしてカリンさんは知っていたんですか?」
複雑そうな表情で呟いたカリンの言葉が気になったアネラスは信じられない表情で訊ねた。
「いえ。皆さんも既にご存知の通り私はイオン様に保護をされてからしばらく”星杯騎士団”にお世話になっていたのですが……その時に星杯騎士の任務が古代遺物の回収と”外法”の抹殺である事や”ハーメルの惨劇”の”元凶”である”教授”がその”外法”の一人である事もイオン様から保護をされた時に聞かされていましたから…………ケビンさんに”結社”に私の正体を悟られたら”極秘任務”に支障がでるから顔を隠し、偽名を名乗って正体を隠していて欲しいと言われた時に何となくですがそんな気がしたのです。」
「姉さん………」
「何で”結社”にアンタの正体が知られたら、ヨシュアの人生を滅茶苦茶にしたその”教授”の抹殺の任務の支障に出る事になるの?」
重々しい様子を纏って答えたカリンをヨシュアは心配そうな表情で見つめ、ジョゼットは真剣な表情で訊ね
「フム………恐らくは”教授”がカリンさんの生存を知った時、彼女を拉致して姿を消したヨシュア君をおびきだす可能性があった為、彼女を”教授”達の魔の手から守る為じゃないかい?何でも話によると”教授”はヨシュア君に随分ご執心のようだったし。」
「実際エステル君が一度”教授”達によって攫われた事もあるからな。」
「……………」
真剣な表情で推測したオリビエに続くようにミュラー少佐は呟き、ただ一人真実を知っているヨシュアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「それでイオン神父はケビン神父の”極秘任務”を手伝う為にリベールを訪れたと言っていたが……具体的にはどのような内容なのだ?」
「―――ワイスマンにケビンが守護騎士である事が悟られない為の”囮”です。」
「あの神父の正体が敵に悟られない為の”囮”って……イオン様がですか?一体何の為に……」
リシャールの問いかけに答えたイオンの答えが気になったティアは困惑の表情で訊ねた。
「”守護騎士”は”星杯騎士団”の中でも更に秘匿された存在なのですが……ジュエ卿は他の守護騎士達と違い、”星杯騎士”としての活動の際に他勢力に正体を明かす事になれば、守護騎士の事なども説明して御自分もその守護騎士の一人である事を明かしている事からジュエ卿は結社だけに限らず、他の勢力にも顔が割れているのです。」
「―――なるほど。顔が割れているからこそ敵の注意を”星杯騎士団”の幹部であるイオン様に向け、その事によって正体が割れていないケビン神父の存在を油断させ、その隙にケビン神父が敵を仕留めるという寸法ですか。」
「ええ、その通りです。」
「実際、”教授”はイオンを警戒していて、ケビンを新米の星杯騎士として侮っていたしな……」
リースの説明を聞いてある事に気づいたジェイドは静かな表情で推測し、ジェイドの推測にイオンは頷き、ルークはワイスマンと対峙した時の出来事を思い出していた。
ケビン・グラハム……。”七の導師”を警戒していたが、まさか新米如きに小癪な真似をされるとは……!
「あ…………」
「……………」
ワイスマンとの決戦にあった出来事を思い出したエステルは呆けた声を出し、アーシアは目を伏せて黙り込んでいた。
「まさかイオンがそんな後ろ暗い事に協力するなんてな………」
「従者の性格に毒されたのじゃありませんの?」
「ちょっと~!何でそこでわたしを見るのよ~!?」
ガイは疲れた表情で溜息を吐いた後ジト目のナタリアと共にアニスを見つめ、見つめられたアニスは反論したが
「それは勿論アニスさんが真っ黒な性格だからですの。」
「ああん?ブタザル風情が調子に乗ってんじゃねぇよ。」
「みゅっ!?」
ミュウがある事を呟くと本性をさらけ出してミュウを睨み、その様子を見ていたリース達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「フン……なるほどな。で?結局あの神父は”教授”の抹殺に成功したのか?」
「ええ。屋上で戦っていた皆さんがエステル達の所に向かっている最中に抜け出して撤退中であったワイスマンの抹殺に成功したとの事です。」
「ふえっ!?あの時にケビンさん、わたし達の中から抜け出していたんですか??」
「そう言えばエステル君達の所に向かうのに夢中で全員がいるかどうかの確認はしていなかったな……」
アガットの質問に答えたイオンの答えを聞いたティータは驚き、ユリア大尉は複雑そうな表情で考え込んでいた。
「フム……と言う事はイオンの”極秘任務”と今回の件は無関係と言う事になるな。」
「ああ………今回の件を企むと思われる”容疑者”が既に死亡しているからな………」
「結局振り出しに戻っちまったな……」
バダックの推測にフレンは頷き、ジンは疲れた表情で溜息を吐いた。
「―――いずれにせよ、今は探索を続けながら封印石を見つけて、味方を増やしていくべきです。”影の王”の話が本当ならばまだ”駒”は揃っていないと思いますし……」
「確か”光と影の狭間を渡りながら白と黒の駒を揃えるがいい”……だったわよね?」
「今探索している所は景色の感じからして”光”って所みたいだから……”影”って所はまだ探索していないから、封印石もまだ残っているだろうな。」
「そうですね……準備を整えた上で慎重に進みましょう。」
ヨシュアの推測に続くようにカリンは呟き、ルークの推測にリースは頷いた。
その後探索を再開したリース達はさらに進んで行くと、先程まで探索していた光に満ちた迷宮とは真逆の闇に満ちた異空間の迷宮に出て、探索の途中で封印石を手に入れたので中にいる人物を解放する為に庭園に戻った―――――
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