英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第134話(第2部再開)
その後市内を見て回ったリィンはカレイジャスへと戻った。
~バリアハート・空港~
「リ、リィン君っ……!」
リィンがカレイジャスに乗船しようとするとアンゼリカと共に慌てた様子でやって来たトワに呼び止められた。
「ちょうどよかった。君も艦に戻る所か。」
「トワ会長、アンゼリカ先輩。どうしたんですか?そんなに慌てて。」
「じ、実は……艦に待機しているメンバーから連絡があったの。東の国境――――クロスベル方面で何かあったみたいで……!」
「クロスベル……!まさか……あの青白い結界がついに解けたんですか!?」
トワの話を聞いてある事を思い出したリィンは血相を変えた。
「それなんだが……どうやらそれ以上の尋常じゃない事態が起こったらしくてね。これからカレイジャスで直接確認しに行こうと思ってるんだ。」
「悪いけど、街に散らばっているみんなに連絡してもらえないかな?わたしたちはカレイジャスの離陸準備を整えておくから!」
「……わかりました。急いで声をかけます。そちらはお願いします……!」
その後、リィンはARCUSと足を使ってⅦ組の仲間や協力者たちに声をかけて回り―――空港で合流してから、離陸準備をすませたカレイジャスに飛び乗るのだった。
~カレイジャス・ブリッジ~
「東北東への針路良好―――念の為、周囲への警戒を!」
「航行速度、間もなく最大巡航速度に到達しますっ!」
「この分だとすぐに要塞方面に着きそうだな……」
「双龍橋の第四機甲師団と鉄道憲兵隊への状況の確認も順次お願い!」
「イ、イエス、マム!」
「おや、そうこうしている間に何か見えてきましたねぇ。」
艦内の船員たちが忙しく働いている中、トマス教官は呑気そうな様子で呟き
「な、何なの?この不思議な反応は―――」
観測を務めている生徒は戸惑いの表情をした。一方リィン達は甲板で要塞方面に到着するのを待っていた。
~甲板~
「あ―――クロスベル方面が見えて来たよ!」
「なにやら向こうの空がぼんやりと光っているが―――」
「な……っ!?」
甲板で要塞方面に到着するのを待っていたリィン達はクロスベル方面に見える”大樹”を見て絶句した!
「な、何よ、あれ……!?」
「ま、前に見かけた蒼い障壁は消えているみたいだけど……」
「碧い……大樹……?」
大樹を見たアリサとエリオットは不安そうな表情をし、ゲルドは呆け
「途轍もなく巨大な”何か”が現れている……!?」
「あの碧色に輝くものは一体―――」
「何かの植物――”樹”にも見えるけど……」
マキアスとリィンは厳しい表情をし、フィーは考え込んだ。
「あんな常識外れなもの、伝承でも聞いたことがないぞ……!」
「ああ、この世のものでないような”息吹”を感じる……」
ユーシスの言葉にガイウスは頷き
「クロスベル方面にいるエリゼお姉様はご無事でしょうか……」
「姉様…………」
(あれが連絡にあった”大樹”ね……まあ、空の女神達とも合流したという話だし、クロスベル方面は近日中に決着をつけられるでしょうね。)
クロスベル方面にエリゼがいる事を思い出したセレーネとエリスは心配そうな表情をし、シグルーンは真剣な表情で大樹を見つめていた。
「セリーヌ、あれは何なの……?」
「……わからないわ。”魔女”の言い伝えにだってあんなものは……」
エマに尋ねられたセリーヌは複雑そうな表情をし
「……いったいクロスベルで何が起きているというの―――?」
サラ教官は厳しい表情で大樹を見つめていた。一方その頃クロウ達もラマール州の領邦軍の飛行艦の甲板から大樹の様子を見つめていた。
~ラマール領邦軍所属飛行艦”バルクルーサ”号・甲板~
「ふう、あちらは予定通りみたいですわね。我がマスターが手助けして失敗などあり得ませんけど。ですが問題は…………」
大樹を見つめて安堵の溜息を吐いたデュバリィは表情を歪め
「なるほど―――結社の”幻焔計画”とやらの片割れの産物ってワケか。……アレに匹敵する代物をこっちでもブチかまそうってんだな?」
クロウは静かな表情で呟いた後クロチルダに視線を向けた。
「フフ……その通りよ。”零の御子”が顕現させた人による”奇蹟”の具現化―――かの大樹の出現をもって、計画の”第二楽章”もいよいよ終幕へと突入したわ。だけど問題は”アレ”がまだ掘り出せていない事よ…………ッ!」
クロウの問いかけに得意げに答えたクロチルダだったが、自分達の”計画”の為に必要なある物が未だ使えない事を思い出し、焦りの表情で唇を噛みしめた。
「……ま、お前達が何をしようと俺には関係ないが、オルディーネの修理はいつ終わるんだ?ノバルティスの爺さんは2,3日内に終わると言っていたが。」
「……”十三工房”の総力を挙げても”騎神”の修理には時間がかかるわ。”灰”との決戦までには間に合わすように後で言っておくわ。」
そしてクロウに問いかけられたクロチルダは気を取り直して静かな表情で答えた。
~同時刻・帝都ヘイムダル・バルヘイム宮跡~
「ええい、一体いつになったらバルヘイム宮地下の最下層を掘り当てる事ができるのだ!?」
同じ頃カイエン公爵は領邦軍の隊長に怒鳴り
「ハ、ハッ!工事関係者の話によりますと、現在の作業進行を考えると後2ヵ月は必要との事です。」
怒鳴られた隊長は慌てた様子で答えた。
「遅すぎる!”結社”から多くの工事用の自動人形等を回してもらったというのに、そんなにもかかるのか!?」
「は、はい……急がせてはいるのですが、地下を掘り当てる前に瓦礫の山もそうですが瓦礫の山に埋もれている兵達の遺体も片付けなければなりませんので……」
「グググググ……ッ!おのれ、メンフィルめ……ッ!”アレ”さえあれば、奴等を滅ぼせるというのにっ!!」
報告を聞いたカイエン公爵は顔を真っ赤にして怒りの表情で唇を噛みしめた。
「―――こちらにおられたか、カイエン公。」
するとその時オーレリア将軍とウォレス准将が近づいてきた。
「オ、オーレリア将軍閣下!?それにウォレス准将閣下まで……!」
二人の登場に領邦軍の隊長は驚いた後敬礼をし
「おお、ようやく来たか!待っていたぞ、二人とも!」
カイエン公爵は明るい表情で二人を出迎えた。
「待っていたも何もありませんでしょう。―――”総参謀”のルーファス卿を失い、ルーレを始めとしたノルティア州の守りは消え、クロイツェン州に到ってはメンフィル帝国によって完全に制圧されちまった。帝国東部の戦線はもはや崩壊しつつあります。何故このような事態になるまで我らに声をかけてくださらなかったのですか?」
「まあ待て、准将。ルーファス卿を失ったのは痛いがノルティアは様子見、クロイツェンのメンフィル帝国軍にしても制圧したクロイツェンの治安維持を含めた事後処理の為に帝都に攻めてくるまでまだ時間があるという理解はできる。」
「うむ、全く持ってその通りだ。」
ウォレス准将の指摘を制止したオーレリア将軍の言葉を聞いたカイエン公爵は静かな表情で頷いた。
「だが―――アレはなんだ?クロスベルの地に現れたというあの不可思議な碧い大樹は?」
しかしオーレリア将軍は表情を厳しくしてカイエン公爵に問いかけ
「映像で拝見したがとんでもない代物のようだ。今の所は無害のようだが東部の民などはさぞ不安でしょう。」
ウォレス准将は真剣な表情で指摘した。
「心配無用だ。あれも『予定通り』だ。」
「フン……?」
「怪しげな”結社”とやらと繋がっているとは聞いたが……」
カイエン公爵の話を聞いた二人はそれぞれ考え込んだがやがてオーレリア将軍が制止した。
「よい、”裏”の事はいいだろう。だが我らは武人―――戦場で勲を立てる事が全てだ。次なる相手を教えてもらうぞ、”カイエン主宰殿”。」
そしてオーレリア将軍は不敵な笑みを浮かべてカイエン公爵に問いかけた。
「よかろう。―――二人には今後、帝都の守りについてもらう。いつ進軍してきてもおかしくない第三・第四機甲師団は当然として、メンフィル帝国軍を迎撃する為にな。」
「ほう……!?」
「メンフィルはともかく、機甲師団がこのタイミングで乾坤一擲の手に出ると……?」
カイエン公爵の答えを聞いた二人はそれぞれ興味ありげな表情をした。
「報告を聞く限りメンフィルは正規軍を支配下に置いた可能性が高い。バルヘイム宮爆撃等数々の卑劣な行為を行った奴等なら自分達の被害を抑える為に捨石として機甲師団をぶつける可能性が高い。”紅毛”に”隻眼”、そしてその後に来る”英雄王”を始めとしたメンフィルの将達ならば二人にとっても相手に不足はあるまい。”黄金の羅刹”に”黒旋風”――――我らが貴族連合が誇る”英雄”たる二人には。」
「「………………」」
カイエン公爵に問いかけられた二人はそれぞれ黙り込み
「……成程……この上なく”そそる”じゃないか。」
「ハハ―――いいだろう!ならばこの場は公の口車に乗るとしよう……血湧き踊る――――至高の戦場に立つためにな!」
それぞれ好戦的な笑みを浮かべて戦意を高めた!
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