英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第122話(第2部中断)
~バリアハート・ホテル”エスメラルダ”~
「フフッ……坊やって本当にとんでもない甘ちゃんね……」
リィンが乱れたスカーレットの病衣を直し、身支度を整えているとベッドにいるスカーレットは苦笑しながらリィンを見つめた。
「へっ!?」
「大方あたしを無理矢理犯して、あたしに坊やに対する憎しみや復讐心を抱かせて、燃えカス同然のあたしに生きる気力を与えようとしたのでしょう?」
「うっ!?な、何でわかったんだ!?」
スカーレットに図星を突かれたリィンは呻いた後信じられない表情で声を上げた。
「これでも坊やより長く生きて、様々な経験をして様々な人々に出会ってきたんだから、それくらいわかるわよ。」
「……………………」
「でもまあ……若干、結果は違うけど坊やの目論見通りになったから喜びなさい。」
「へ?結果が違うって、どういう―――お、おい!?傷はティア神官長が治したそうだけど、まだ安静にしておく必要があるだろう!?」
スカーレットの言動に呆けたリィンだったが、よろよろと身体を震わせながら必死に起き上がったスカーレットを見て慌ててスカーレットに近づいた。
「ん…………」
「んんっ!?」
するとスカーレットはリィンの唇に自分の唇を押し付けた後、リィンから離れて倒れ込むように再びベッドに戻った。
「な、ななななななななっ!?」
「フフッ、あたしを無理矢理何度も犯して中にも出し続けた上”全部”奪ったくせにキスで慌てるなんて、やっぱり坊やは坊やね。――――あたしが罪を償って自由の身になれたら、坊や……――いえ、リィン。貴方にあたしを犯した責任を取ってもらうからね。貴方に惚れている女達が貴方があたしを無理矢理犯した話を聞けば、どうなるかしらねぇ?」
「う”っ…………!?」
(アハハハハハハッ!自分を憎ませて生きる気力を与えるつもりが、逆に惚れさせて生きる活力を与えるという想定していた斜め上の結果を出すなんて、さすがはご主人様ね♪)
(ふふふ、こうなる事もある程度は予想していましたけどね。)
(……また被害者が増えましたね。)
(ま、まあ一応リィン様に対する”復讐”にはなりますね……)
(フフ……みんな、怒るでしょうけど、結局はリィンを許すのでしょうね。)
からかいの表情で自分を見つめるスカーレットの言葉を聞いたリィンは表情を引き攣らせて大量の冷や汗をかき、ベルフェゴールは腹を抱えて大声で笑い、リザイラは静かな笑みを浮かべ、アルティナはジト目で呟き、メサイアは苦笑し、アイドスは微笑んでいた。
「………………――――わかった。何年、何十年経っても待っているから、生きて今までの罪を償ってくれ。」
「ええ。」
そしてリィンがその場から退出するとスカーレットはリィンが出て行った扉をずっと見つめていた。
「リーダー達に出会うよりあの子に先に出会っていれば、あたしの人生も変わっていたかもしれないわね………………あ~あ……自由の身になる頃にはあたしも相当歳を取っているのでしょうね……好きな男に抱かれるのが今ので終わりだなんて、これも”罰”かもしれないわね……まあ、その前に生きて罪を償えるかどうか、わからないけどね。フフッ……」
目を閉じて今までの出来事を思い返していたスカーレットは溜息を吐いた後自嘲気味に笑った。
「うふふ、そんな貴女にいい話があるわよ♪」
するとその時ベルフェゴールがアイドスと共に転移魔術で現れた。
「貴女達は確かリィンと契約している”使い魔”、だったわよね?……あたしに何か用かしら?」
「まどろっこしい話は止めて、単刀直入にいうわ。貴女、私の”使徒”になるつもりはないかしら?」
「”使徒”?何なのそれ。」
そしてベルフェゴールはスカーレットに”使徒”についての説明をした。
「そう……異世界って、本当に何でもありね…………―――わかったわ。貴女の”使徒”になるからさっさとして。」
「あら、まさか悩みもせずにすぐに答えを出すなんて、ちょっと驚いたわ。私に生殺与奪権を握られて”不老”の存在になって、永遠に時を生き続ける事に恐れはないのかしら?」
スカーレットが出した答えを聞いたベルフェゴールは目を丸くして不思議そうな表情で尋ねた。
「―――好きな男にずっと若い姿の自分を見てもらえる。女として、最高の幸せに悩む必要はないでしょう?それに貴女はリィンを本気で傷つけたり殺そうとしたりしなければあたしをどうにかするつもりもないのでしょう?」
「うふふ、なるほどね♪―――なら、受け取りなさい。」
自分に微笑みながら言ったスカーレットの答えに満足したベルフェゴールはその場で集中して、小さな光の球体を両手から出し、球体はスカーレットの身体に入り、スカーレットは”七大罪”の一柱――――”怠惰”を司る魔神ベルフェゴールの”使徒”になった!
「……!この流れ込んでくる凄まじい何かの”力”……!これが”使徒”になった証拠なのかしら……?」
「ええ。―――アイドス、彼女の右目、お願いしてもいいかしら?」
「わかったわ。万物に宿りし生命の息吹よ……女神アイドスの名の下に彼の者の失われし眼に再び光を…………!」
「……っ!?」
そしてベルフェゴールに視線を向けられたアイドスはその場で強く祈りを奉げるとアイドスの全身から膨大な魔力や神気がさらけ出されると共にアイドスの全身が光り、眩しさにスカーレットは思わず目を閉じた。
「…………?え。う、嘘!?あたしの右目が……!」
目を開けた後何かの違和感に気付いたスカーレットが慌てて右目を隠していた眼帯を取ると、かつての事故で酷い傷を負っていた右目は完全に治り、視力が戻っていた。
「うふふ、用も済んだし、私達はこれで失礼するわね♪―――そういう事だから、彼女を私の許可なく処刑したり傷つけちゃダメよ?彼女は”私の使徒”なのだから。」
「リィンと再び会う日を目指して、絶対に生きてね……」
ベルフェゴールは監視ビデオを見つめてウインクした後アイドスと共に転移魔術でその場から消え
「…………………………フフッ、本当に甘ちゃんな連中ね………」
ベルフェゴールとアイドスが転移魔術でその場から消えると呆けていたスカーレットは治療された右目から一筋の涙を流しながら苦笑し、そのまま眠りについた。
~バリアハート市内~
「ねえ、ベルフェゴール。どうして彼女を”使徒”にしたのかしら?」
バリアハート市内をベルフェゴールと共に歩いているアイドスはベルフェゴールに尋ねた。
「彼女が永遠に生きる存在だとご主人様が後で知ったら、自分も……という流れになるかもしれないでしょう?だからよ♪ご主人様にはずっと生きてもらいたいしね♪」
「たったそれだけの理由で”使徒”にするなんて、貴女くらいよ……」
ベルフェゴールの答えを聞いたアイドスは苦笑したが
「―――それにメンフィルの”客将”である私の”使徒”になった事を知れば、メンフィルもスカーレットの事を少なくても殺したり傷つけたりはしないでしょうし、外交的な立場からして格下のエレボニアにも処刑はしないように命令する可能性も高いでしょう?私はこれでも”七大罪”の一柱だから、メンフィルにとっては客将かつ”七大罪”の一柱でもあって、いざという時の為の戦力として頼りになる私の機嫌を損ねるか私に生殺与奪権を握られたテロリスト一人の命を助けるかを天秤にかけたら、どちらに傾くか答えは決まっているようなものじゃない。」
「ベルフェゴール…………貴女、もしかして最初からそのつもりで…………」
ベルフェゴールの口から出た更なる答えを聞くと驚きの表情でベルフェゴールを見つめた。
「うふふ、ご主人様を好きになっていなかったら、さすがに”使徒”にするつもりはなかったわよ。」
「そう………………フフッ、貴女みたいな”魔神”、滅多にいないでしょうね。」
ベルフェゴールの答えを聞いたアイドスは微笑み
「あら、それはこっちの台詞よ。貴女が以前私達に話してくれた貴女の願い――――人間であるリィン(ご主人様)を心から愛していて、いずれは自分の”神核を与えて神格者”になってもらうか、”使徒”になってもらうかの方法で”女神”である自分と一緒に生き続ける事を願う”古神”なんて、貴女が初めてだと思うわ♪」
対するベルフェゴールはからかいの表情でアイドスを見つめて指摘した。
「―――いいえ、恐らくそんな事を考えた”古神”は私で二柱目だと思うわよ?」
「?その言い方だと貴女よりも先にそんな変わった事を考えていた”古神”を知っているのかしら?」
しかしアイドスの口から出た想定外の答えを聞くと目を丸くして尋ねたが
「フフッ、それについては答えてもいいけど残念ながら”時間切れ”よ。」
「?あら、残念。ちょっとだけ興味はあったのに。」
ある方向を見つめるアイドスに指摘された後、アイドスが見つめる方向にいるリィンを見て残念そうな表情をした。
「フフ、残念がらなくても機会があったら、話させてもらうわ。(アストライアお姉様…………未来で生まれ変わったお姉様はセリカと再会して、セリカと共に”幸せ”に生きていますか……?)」
ベルフェゴールの表情を見たアイドスは苦笑した後空を見上げてある人物の顔を思い浮かべていた。
~30分後・クロイツェン州統括領主の城館~
「助けを呼んでも無駄だ。ベルフェゴールがこの部屋に結界を張って外に声が聞こえないようにしている上アイドスによる認識障害の結界も展開しているから、今は誰もこの部屋に入ってこれないし、この部屋の存在に誰も気付かない。」
「なっ……!?い、嫌……や、止めて……!」
「な、なななななななっ!?」
30分後、スカーレットがいる部屋の監視ビデオに録画されてある映像を早送りしながら確認をしていたツーヤだったが、ある映像―――スカーレットと会話をした後突如スカーレットにのしかかって、犯し始めたリィンの映像を見ると顔を真っ赤にして混乱したがすぐに気を取り直した。
「リィンさん………一体何故こんな事を…………」
やがて信じられない表情をしながらも早送りをし、犯し終えた後病衣を整わせたスカーレットとの会話の所で通常再生にして二人の会話の様子を見守っていた。
「大方あたしを無理矢理犯して、あたしに坊やに対する憎しみや復讐心を抱かせて、燃えカス同然のあたしに生きる気力を与えようとしたのでしょう?」
「うっ!?な、何でわかったんだ!?」
「…………あ……………………」
二人の会話を聞いていたツーヤは呆けた後複雑そうな表情をしたが
「ん…………」
「んんっ!?」
「ええっ!?」
スカーレット自らリィンの唇に口付けをする映像を見て驚き、その後リィンが部屋を出るまで石化したかのように固まって映像を見続けていた。
「リ、リィンさん……あ、貴方って人は…………それにしてもリィンさんがこんな方法を思いつくとはとても思えな――――あ。睡魔族のベルフェゴールさんあたりなら、そんな入れ知恵をしたのかもしれないわね…………ハア…………本来なら例え相手がメンフィルでは認められている性的暴行を加えてもいいとされている最上級レベルの犯罪者とは言え、あたし達に許可もなく性的暴行を加えるのはどう考えても犯罪ですよ……?ですが、自棄状態のスカーレットさんに生きる気力を与えましたし、結果的には合意という形になりましたから今回は特別に見逃してあげますよ…………」
そして我に返ったツーヤは顔に無数の青筋を立てて口元をピクピクさせながら身体を震わせていたが、リィンが契約しているある人物――――ベルフェゴールの事をふと思い出した後疲れた表情で溜息を吐いた。
「うふふ、そんな貴女にいい話があるわよ♪」
「え……ベ、ベルフェゴールさん?しかもアイドスさんも何故一緒に…………」
更にベルフェゴールとアイドスが現れる映像を見ると戸惑い
「えええええええええええええええええええっ!?」
スカーレットがベルフェゴールの”使徒”になる経緯の映像を見ると大声を上げて驚いた!
「ベ、ベルフェゴールさん…………貴女、自分が何をしたのかわかっているのですか……?ハア………主従揃って、頭が痛くなる事をしてくれましたね……仕方ない。正直、報告したくないけどマスターにこの事を報告しよう…………」
一連の流れを見終えて映像を消したツーヤは片手で頭を抱えて疲れた表情で溜息を吐いた後立ち上がって、プリネの所に向かい、事情を説明した。
~執務室~
「え、えっと。ツーヤ、それってどこまでが本当でどこからが冗談なの?リィンさんが”帝国解放戦線”の幹部―――”S(スカーレット)”さんに性的暴行を加えた後その性的暴行を受けた本人である彼女自身がリィンさんを好きになって、更にベルフェゴールさんが彼女を自分の”使徒”にしたって話はどれも信じられないのだけど……」
ツーヤから事情を聞いたプリネは冷や汗を滝のように流しながら表情を引き攣らせながら問いかけ
「……残念ながら全て本当に起こった出来事です。証拠の映像データもありますが観ますか?」
「え、遠慮するわ。」
疲れた表情をしているツーヤに問いかけられると冷や汗をかいて苦笑しながら答えた。
「それで……彼女―――スカーレットさんをどうしますか?メンフィル帝国の客将であるベルフェゴールさんの”使徒”になってしまいましたけど……確かスカーレットさんはメンフィル帝国に対して犯した”罪”としては”列車砲”であたし達の命を狙って、あたし達の命を脅かした件による罪がありますよね?」
「……幸いスカーレットさんの処遇に関してはまだ決まっていない上私達全員傷一つついていなかったから、”処刑”以外の方法で罪を償わせるように手配しておくわ。それともしエレボニア帝国が”戦争回避条約”の期間内に内戦を終結した際は彼女を”処刑”しないように言い含める必要があるわね。その前に当事者のレンやリフィアお姉様にも事情を説明しておかないとね。」
「……わかりました。――――まあ、スカーレットさんの件がリフィア殿下の耳に入れば、結果的には合意になったとはいえ、スカーレットさんに性的暴行を加えたリィンさんも罰を受けた事になりますからちょうどいいですね。」
プリネの話を聞いたツーヤは笑顔になり
「え?それは一体どういう…………―――あ。ア、アハハ……た、確かにそうね。」
ツーヤの言葉に呆けたプリネだったがリフィアの耳に入れば専属侍女長であるエリゼの耳にも入る事にすぐに気付き、苦笑していた。
「というかリィンさんがスカーレットさんに性的暴行を加えている映像データもエリゼさんに渡した方がいいような気がしてきました。」
「さ、さすがにそれは…………でも、そうね。今回は私達まで巻き込んだんだし、いくら結果的に合意になったとはいえ性的暴行を加えた事は一人の女性として許せないから、エリゼさんに渡して、後の事は彼女に任せましょう。」
そしてツーヤの提案に冷や汗をかいたが、すぐに気を取り直してツーヤの提案に頷いた。
~20分後・クロスベル・ベルガード門~
「…………そうか…………う、うむ…………勿論エリゼにも伝えておく。ではな………」
20分後プリネから連絡を受けたリフィアは冷や汗を滝のように流して表情を青褪めさせて身体を震わせながら通信を終えた。
「………よりにもよってエリゼが戻ってくる直前でまた増やすとは…………”S”の件を知ったエリゼの反応が目に浮かぶな…………というか一体何時の間に余がエリゼの知らぬ間にリィンが落とした女をエリゼに報告する係になったのじゃ……?ハア…………」
そして通信を終えたリフィアは通信内容をエリゼに伝えた時のエリゼの反応を思い浮かべ、頭痛を抑えるかのように片手で頭を抑えて疲れた表情で大きな溜息を吐いた。
リィン達がバリアハートに寄航して休息を取っていたその頃、ロイド達の手によって侵入者を阻み続けていたクロスベル市を覆っていた謎の結界がついに解かれた為、クロスベルの解放を望むロイド達”特務支援課”や”六銃士”を始めとする多くの有志や協力者達による”クロスベル解放作戦”が行われようとしていた……!
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