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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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外伝~アルバレア公爵家の最後~

~ケルディック郊外~



「誰か!この縄を解いて!私はクロイツェン州の統括領主であるアルバレア公爵の夫人ですよ!?」

「グッ……!ユーシス!貴様、こうなる事がわかっていて私達を拘束したのか!?貴様、それでも私の息子か!?皇女殿下!誇りある四大名門のアルバレア公爵家の当主夫妻を拘束した上、他国に引き渡すとは一体どういうおつもりですか!?」

「ううっ……」

「嫌だ……!死にたくない……!」

鉄の十字架に縛りつけられたアルバレア公爵夫人は悲鳴を上げ、アルバレア公爵はユーシスを睨み、猟兵達は表情を歪めたり涙を流したりしていた。

「よくも俺達の大市を……町を焼いてくれたな!」

「アルバレア公爵!とっとと地獄に落ちろ!」

ケルディックの民達は怒りの表情で猟兵やアルバレア公爵を睨み

「…………アルバレア公爵閣下。最後に一つだけ聞かせてくだされ。公爵閣下は儂ら―――民達を一体何だと思っていたのですか?」

目を伏せて黙り込んでいたオットーは静かな表情でアルバレア公爵に問いかけた。

「ええい、黙れ!他国に奪い取られたにも関わらず、それを黙って受け入れた恥知らずな愚民等存在する価値もない!」

「こ、こいつ……!」

「領主様!早くアルバレア公爵達を処刑してください!!」

「…………そうですか。それが閣下の答えですか。―――今までお世話になりました。どうか良き来世を。」

オットーの問いかけに対するアルバレア公爵の答えを聞いたケルディックの市民達は怒りの表情で声を上げ、オットーは疲れた表情で呟いた後その場で帽子を取って頭を軽く下げた。



「…………ッ…………!」

猟兵達の様子を見ていたサラ教官は辛そうな表情で唇を噛みしめ

「…………父上…………」

アルバレア公爵の様子を見たユーシスは辛そうな表情で肩を落とし

「…………メンフィル帝国との戦争を回避する条約にアルバレア公爵。貴方と貴方の正妻、そしてルーファス卿の身柄をメンフィルに引き渡し、”アルバレア公爵家”の爵位剥奪並びにクロイツェン州全土や”アルバレア公爵家”の全財産をメンフィル帝国に贈与する内容があります。そして……ルーファス卿はメンフィル帝国によって”既に処刑されました”。」

「姫様…………」

「なあっ!?」

「そ、そんな!?ルーファスが!?」

アルバレア公爵の問いかけに対して身体を震わせながらアルバレア公爵を見上げて真剣な表情で言うアルフィン皇女の様子をエリスは辛そうな表情で見つめ、アルフィン皇女の言葉を聞いたアルバレア公爵は驚き、アルバレア公爵夫人は表情を青褪めさせた。



「―――なお、ユーシスさんはユミル襲撃を指示したアルバレア公爵の代わりにメンフィル帝国並びにユミルの領主であるシュバルツァー家に償いをする為に、彼はシュバルツァー家に仕える立場になると共にメンフィル帝国より”男爵”の爵位が与えられ、ケルディックの領主になる事がエレボニア帝国がメンフィル帝国との戦争を回避する条約の内容の一部でもあります。」

「なっ!?ユ、ユーシス、貴様……ッ!我が身可愛さに祖国であるエレボニアを裏切って私達をメンフィルに売ったのか!?貴様、それでも私の……いや、誇りある”四大名門”の”アルバレア家”の一員か!?」

「所詮は下賤な輩が産んだ人間ですわね!ルーファスがあれ程貴方を可愛がっていたというのに、そのルーファスを処刑した国の”狗”に成り下がるなんて!」

プリネの説明を聞いたアルバレア公爵夫妻は怒りの表情でユーシスを貶し

「………………ッ…………!」

「ユーシス…………」

「………………」

「貴方達という人は……!」

辛そうな表情で唇を噛みしめているユーシスをリィンとマキアスは心配そうな表情で見つめ、ツーヤは怒りの表情でアルバレア公爵夫妻を睨んだ。



「――――フウ。呆れ果ててものも言えないわね。」

「ええ。―――これより公開処刑を始める!全員、十字架から離れなさい!」

呆れた表情で溜息を吐いたレンの言葉に頷いたサフィナが指示するとアルバレア公爵達を囲んでいたリィン達やケルディックの民達はアルバレア公爵達から離れ

「―――始めろ。」

「ハッ!!」

レーヴェに指示をされた兵士達は何かの液体を十字架やアルバレア公爵に振りかけた。



「この匂いは確か……」

「油……それも可燃性の高いのだね。」

風によって匂って来た液体の匂いを嗅いだガイウスは眉を顰め、フィーは真剣な表情で呟いた。するとその時松明を手に持つ兵士達が現れ

「松明……?一体何の為に……?――――!!」

「火!?ま、まさか……!」

「”火刑(かけい)”か――――!」

松明を見て何かを察したジョルジュは血相を変え、セレーネは表情を青褪めさせ、ラウラが厳しい表情で声を上げたその時、兵士達は松明を十字架の足元に次々と投擲した。すると油をかけられていた十字架やアルバレア公爵達は勢いよく燃え始めた!



「ガアアアアアア―――――ッ!?」

「イヤアアアアア――――――ッ!?」

「熱い!熱いよ―――――ッ!?」

「ウアアアアアア――――ッ!?」

炎に包まれたアルバレア公爵夫妻や猟兵達は悲鳴を上げ

「これが怒りに満ちたメンフィルの”裁き”か…………」

「よりにもよって”火刑”とは……ユミルとケルディックに火を放った猟兵達やそれを指示したアルバレア公爵にとっては”因果応報”になりましたな……」

「怒りに満ちたメンフィルは”ここまで”するのですね……」

その様子を見守っていたクレイグ中将やナイトハルト少佐、クレア大尉はそれぞれ重々しい様子を纏って呟いた。



「”火刑”だなんて、ルーファスさんの時と比べるとあまりにもむごすぎるわよ……!」

「い、幾ら何でもこんなの酷いよ……!」

「公開処刑でよりにもよって”火刑”をするなんて……でも考えてみればユミル襲撃の際に火を放ち、更にケルディックの”焼討ち”を行ったアルバレア公達に対する相応しい”報復”ね……」

「”目には目を歯には歯を”という諺のように……”火には火を”と言う意味で”火刑”にしたのでしょうね……」

アリサとエリオットは辛そうな表情をし、セリーヌとエマは複雑そうな表情をし

「確かにアルバレア公はケルディックを焼くように指示したけど、だからと言ってこんな余りにもむごい処刑をするなんて酷すぎるよ……」

「……だが、民達にとってはこの処刑法が最も効果的のようだったみたいだね。」

悲痛そうな表情をしているトワにアンゼリカは重々しい様子を纏って指摘した。

「え…………あ……………」

アンゼリカの言葉を聞いたトワはアルバレア公達が焼かれている事に喜んでいる風に見える民達を見て悲しそうな表情をした。

「ざまあみろ、アルバレア公爵!」

「そのまま地獄の業火に苦しみながら死ね――――ッ!!」

「…………チッ、趣味の悪い殺し方をしやがって。”紫電”が先走らないといいが…………」

市民達の様子や燃え続けるアルバレア公爵達を見回したアガットは舌打ちをして不愉快そうな表情をした後サラ教官に視線を向けていた。



「…………ッ…………!」

「……サラ…………」

「………父……上…………う……く……ッ!」

「ユーシス………」

燃え続ける猟兵達を見て唇を噛みしめて辛そうな表情をするサラ教官をフィーは心配そうな表情で見つめ、地面に崩れ落ちて声を押し殺して涙を流すユーシスをミリアムは心配そうな表情で見つめた。

「……ッ……!くそおおおおおおっ!!」

「リィン…………」

「………………」

そして空を睨んで声を上げるリィンを見たゲルドは辛そうな表情をし、シグルーンは目を伏せて黙り込んでいた。



こうして……アルバレア公爵夫妻は北の猟兵達と共に処刑された。処刑されたアルバレア公爵夫妻の遺体はプリネ達の配慮と手配によってアルバレア公爵家の墓に丁重に埋葬され……それらをリィン達と共に見届け、プリネ達に感謝の言葉を述べた後ある嘆願をしたユーシスは”アルバレア公爵家の子息として”の”最後の務め”を果たす為に予め元アルバレア公爵家の城館であった建物の前に集まらせた使用人達の所へと向かい、事情を説明した。


~バリアハート・クロイツェン州統括領主城館~



「え……ユ、ユーシス様……今何と仰いましたか……?」

事情を聞き終えたアルバレア公爵に付き従っていた執事は呆然とした表情をし

「――――アルバレア公爵家はエレボニア皇家が調印した”戦争回避条約”の一部を実行する為に本日をもって”取り潰し”となった。皆、今までよく公爵家に仕えてくれた……アルバレア公爵家を代表し、心より感謝する。」

ユーシスは執事や使用人達を見回して頭を下げた。



「ア、アルバレア公爵家が取り潰し!?」

「そ、そんな……!?」

「そ、それでは私達の仕事はどうなるのですか……!?」

「ユ、ユーシス様……仕事を失った私達はこれからどうすればよいのですか……?」

ユーシスの発言を聞いた使用人達は信じられない表情をしたり表情を青褪めさせたりし

「……お前達の今後については、アルバレア公爵家の城館の新たな主となるクロイツェン州の臨時統括領主であるプリネ皇女殿下を始めとしたメンフィルの皇族の方々に嘆願した際に、お前達自身が希望するのならば、引き続き城館の管理の仕事に就いて構わないとのありがたいお言葉を頂いている。引き続き城館の管理の仕事に就くか……新たな職を探すかはお前達の自由だ。」

ユーシスは静かな表情で使用人達を見回して言った。



「ユ、ユーシス様……拘束されてどこかに連れて行かれた旦那様と奥様はどうなったのですか!?」

その時執事が血相を変えて尋ね

「…………父達なら先程メンフィル帝国によって処刑され……兄上――――ルーファス・アルバレアも約2週間前にメンフィルに囚われ、処刑された。ユミル襲撃を始めとした今までメンフィル帝国に対して犯して来たアルバレア公爵家の”罪”を償わせる為にな。」

「なっ!?」

「こ、公爵閣下達が……!?」

「そ、そんな……ルーファス様まで……」

ユーシスの答えを聞いた執事や使用人達は表情を青褪めさせた。



「ユ、ユーシス様……ユーシス様はこれからどうなるのですか……?」

「……俺は”戦争回避条約”の一文にあったメンフィル帝国とシュバルツァー家に対してアルバレア公爵家の罪を償う為にメンフィル帝国の貴族となり、シュバルツァー家に仕える立場となり……畏れ多くもケルディックの領主を任される事となった。アルバレア公爵家の最後の一人として、メンフィル帝国とシュバルツァー家にアルバレア公爵家の”罪”を償う為にメンフィル帝国による命令を全うするつもりだ。」

「………………」

ユーシスの事情を聞いた使用人達は黙り込み

「―――すまない。せめて退職金を渡してやりたかったが、”戦争回避条約”を実行する為にアルバレア公爵家の全財産はメンフィルに没収されたからそれすらもできん。不甲斐ない俺を許してくれとは言わん……幾らでも罵りの言葉を受けよう。遠慮なく言うがいい。」

ユーシスは辛そうな表情で頭を下げた後使用人達を見回した。



「ユーシス………」

「………………」

その様子をリィンやマキアスは仲間達と共に辛そうな表情で見つめていた。



「ユーシス様を罵る等……使用人である我々の為にわざわざ事情を説明して恐れ多くも頭を下げて頂いたにも関わらず、そのような厚かましい事はできませぬ。」

「え…………」

その時執事が言った言葉を聞いたユーシスは呆け

「はい……!それにユーシス様は旦那様や奥様に冷遇され、お辛い立場であった事は自分達も知っています。」

「そんなユーシス様を攻める等恥知らずな真似は致しません。」

「それにユーシス様は私達の為にこの城館の新たな主となられるメンフィルの皇族の方達に頭まで下げて頂いたのですから、恩を仇で返すような真似は致しません。私達の為にメンフィルの皇族の方達に嘆願してくれて心より感謝しています!」

「今までお世話になりました!どうかユーシス様もこれからもお元気でいて……ください………っ!」

使用人達はユーシスに慰めの言葉を掛けたり、中には涙を流してユーシスに頭を下げる者もいた。



「お前達………………ッ…………!」

使用人達の心遣いに感激のあまりユーシスは言葉も出ず、涙を流して顔を俯かせて身体を震わせ

「ユーシス様……落ち着いたらどうか私にご連絡をお願いします。私は”アルバレア家”に仕える執事。ユーシス様がケルディックの領主となられた際に、私を傍に置いて下さい。」

「アルノー…………ああ……ッ!さっさと領主としての能力を身につけ、プリネ皇女殿下達より領主として任命されてくるから、それまではその時に備えて身体を休めておけ……ッ!」

そしてアルバレア公爵付きの執事の言葉に驚いたユーシスは身体を震わせながら決意の表情で執事を見つめて言った。



その後、カレイジャスはメンフィル帝国領となった事で離陸できるようになったバリアハート空港に着陸―――整備や物資などの調達も行った。



そしてリィン達は再び出発するまでの間、それぞれ街の様子を確かめながら一時の休息を取ることにしたのだった。 
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