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象牙

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2部分:第二章


第二章

「鹿の角と同じ要領で。象を品種改良します」
「というと象牙が幾らでも生えるように」
「そうするのですね」
「はい」
 まさにその通りだと。博士は答えた。
「そうします。どうでしょうか」
「それができるのですか」
「実際に」
「やろうと思わなければ何もできません」
 博士の返答は実に前向きなものだった。まさにその通りだ。
「ですから」
「やってみるのですね」
「最初に」
「そうします。お任せ下さい」
 博士は胸を張って同志達に述べた。
「必ずや。象を殺さずに何度も象牙を手に入れられるようにしてみます」
 彼もまた象牙愛好家であった。それならば余計にだった。博士はその象を殺さずに象牙を何度も手に入れる方法をだ。研究に移したのである。
 研究は難航した。しかしであった。
 彼は何とかそれに成功した。実際に象をのその牙をだ。何度も取れるようにしてみせた。
「まさかと思いましたが」
「やりましたね」
「実際に」
「はい、鹿の角のあれを応用しました」 
 やはりそれだというのである。
「それでなのです」
「では角と同じくですか」
「切っても何度も生える」
「そういうことですね」
「はい」
 博士は胸を張って答えた。
「その通りです」
「素晴しい、それでは」
「これからは象を殺さずに」
「象牙を手に入れられますな」
 これは喜ぶべきことであった。彼等にとってはだ。
 この技術は早速実用に移され実際に品種改良され象牙が幾らでも生える象が家畜化された。こうして象を殺さずとも象牙が手に入るようになった。
 博士はその象牙の指輪を見ながらだ。満足している顔で同志達に話した。
「いいものですね」
「はい、やはり象牙は奇麗です」
「美しいものです」
 象牙を愛する者達は彼の言葉に笑顔で応えた。
「これまで象牙を手に入れるには象を殺さなければなりませんでした」
「それで後ろめたかったし批判も受けてきました」
 彼等とても気にせずにはいられなかった。人間には良心があるからだ。中にはそれがない者もいるにはいるが大抵はある。
「しかしこれからは」
「はい、象を殺さずに手に入ります」
「実にいい」
「最高の結末です」
「その通りです」
 ここで博士も話した。
「私も自分のこの研究が成功して何よりです」
「そうですね。他の動物にも応用できそうですし」
「これはいい」
「誰も困らないし死なない」
「得をすることばかりです」
 彼等はこう言い合い喜び合う。しかしであった。
 象達はだ。何度も何度も牙を取られる。鋸やそういったもので切られてそれを使われるのだ。伸びればそのそばから切られていく。 
 その為に家畜として飼われている。その彼等は言うのだった。
「何度も何度もな」
「ああ、牙を取られてな」
「嫌だよな」
「全く」
 こうその象牙用の象の牧場で話していた。そこは広い草原でかなり頑丈な鉄やコンクリートの覆いで囲まれている。象の巨体とパワーを意識しての覆いであることは間違いない。高く厚い。それは刑務所以上だった。
 
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