西瓜
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4部分:第四章
第四章
「西瓜だよな」
「ああ、どう見てもな」
「ただのな」
そうとしか見えなかったし思えなかった。
「何でそれで武装してなんだ?」
「冗談でもないみたいだしな」
「これが訓練なのか?」
こんなことを言い合いながら西瓜畑に近付いていく。そうして先頭の一人がその畑の中に足を踏み入れるとであった。その瞬間に。
西瓜達が一斉に飛び上がってきた。そうしてである。
その丸いところに手足が出て来て目と口まで出て来た。口は三日月形で見事に裂けていて目は笑ったようになっている。そこから西瓜の赤い中身と種が見えている。
その西瓜達がだ。自衛官達に襲い掛かってきたのだ。
「な、何なんだこれは!」
「西瓜だよな!」
「ああ、西瓜だ!」
「それは間違いない!」
どう見てもであった。しかしである。
その西瓜達から手足が生えてそのうえ目と口が出て来たのだ。そのうえで彼等に対して襲い掛かって来たのである。
音もなく飛び掛って来る。そうして。
体当たりを仕掛けて来た。自衛官達に向かってである。
「痛っ!」
「西瓜が体当たりを仕掛けて来たぞ!」
「しかもこいつ等!」
「素早いぞ!」
猛スピードで向かって来てそれで西瓜がぶつかるのだ。これは痛かった。
ヘルメットで頭を守っているのでそこは安全だった。しかし身体にぶつかるとかなりのダメージである。しかも服もそれでべとべとになる。
西瓜の液がかなりまとわりつく。皆そのことに困っていた。
「西瓜って痛いんだな」
「そうだな」
しかもである。それだけではなかった。
西瓜達はその口から種を飛ばしてきた。まるでマシンガンの如く。
それもまた痛かった。種も猛スピードで数がぶつかるとかなり痛い。
さらに。
彼等の足元に来ると爆発する。それに巻き込まれまたしても痛い目を見る自衛官達だった。
「何でこんな目に遭うんだ?」
「西瓜に」
彼等は皆唖然としながら言う。
「まさかと思うけれどこれってな」
「だよな、あの博士だよな」
「絶対にな」
皆そのことを察しだした。これまでの訳のわからない攻撃を受けてだ。
それで反撃に出ようとする。しかしである。
西瓜達は次から次に出て来る。そのうえで自衛官達を攻撃してくる。その攻撃を受けて遂に、であった。
「撤退だ!」
「は、はい!」
「何かわからないが!」
「今はとりあえず!」
こう言って撤退する彼等だった。彼等にとってみれば全くもって訳のわからない話だった。
しかしである。博士はその話を聞いてた。その不気味な古城の中で笑うのであった。
「成功だな」
「自衛隊の人達にとっては酷い話ですけれどね」
「だがそれがいい」
「いいんですか」
「人の迷惑になる」
ここでそのことについて言った。
「それは兵器としてはいいことだ」
「だからいいんですか」
「左様、それではだ」
博士はまた窓を見ながら健次に話している。窓の外では暗鬱な空が広がっている。海も鉛色になってしまっており暗い世界があった。
その暗い世界を見ながらだ。博士は言うのであった。
「これからはだ」
「これからは?」
「あの西瓜を防衛省に売りつける」
「防衛省は即刻研究を中止しろと言っていますが」
「何っ!?」
博士は健次のその言葉を聞いて不機嫌そのものの顔で応えた。顔を彼に向けている。
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