おぢばにおかえり
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第二十九話 お墓地でその五
「本当にね。しっかりしなさい」
「けれど天理教は女の人が支える宗教ですから」
「誰に聞いたのよ、それ」
そんなこと、とは言えないのが天理教です。教祖が女性の方ですし教会は本当に女の人が大事ですから。大体七割か八割は女の人のような気がします。
「いえ、詰所で普通に」
「普通にってあそこに顔見せてるの」
「まあ大抵の日は」
何だかんだ話している間に歴代の大教会長さんのお墓の前に来たのでお参りです。それが終わってからまた話すのを再会です。何か意外な方向に話がいってきました。
「遊びに行っています。お菓子貰いますし」
「図々しくない?」
「そうですか?何も言わなくてもお菓子くれますよ」
「だから。遠慮しなさい」
私が言いたいのはこういうことでした。
「そんなことしてると太らなくても虫歯になるわよ」
「毎朝毎晩磨いてますけれど」
「そういう問題じゃなくてよ」
ああ言えばこう言うって状態が続きます。
「遠慮しなさいってこと。私が言いたいのは」
「何か皆さんいいですって言ってもくれますし」
「全く。何でこう阿波野君には甘いのよ」
それがわかりません。こんないい加減な子なのに。
「けれど私は違うからね。びしびしいくわよ」
「先輩が一番優しいような」
「阿波野君以外にはねっ」
何か段々腹が立ってきました。
「阿波野君には厳しくしているつもりなんだけれど」
「そうなんですか」
「そうなんですかってね」
今の言葉だけは言ってる意味がさっぱりわかりませんでした。どうしてこんな状況で平然とこんな言葉が言えたりするんでyそうか。不思議ですらあります。
「私の顔見て何も思わないの!?」6
「ですから優しい人だなって」
「何でそう思えるのよ」
「だって色々と案内してくれるじゃないですか」
阿波野君の反論はこうでした。話しながら下っていきます。
「だからですよ。それは」
「案内って。当たり前じゃない」
やっぱり何を言っているの、ってなりました。
「そういうのは。後輩なんだし」
「後輩だからですか?」
「誰でもだけれどね。こういうことはしないと」
いけないだって思っています。誰でも親切にしなさいっていうのもお父さんとお母さんに子供の頃から言われて教えられていたことで私自身もそうしなければって思っています。
「だからよ」
「じゃあやっぱり優しいんじゃないですか」
「そうかしら」
「そうですよ。まあとにかくですね」
「ええ」
とか何とか言っている間にもうお墓地の出口です。出口といっても普通に入り口から帰るだけなんですけれど。そこの周りの木々を見ながら阿波野君と話をします。
「これからどうするんですか?」
「そうね。まずは神殿に参拝して」
「それからは」
「寮に帰るわ」
上を見て考えながらの言葉でした。
「まあそれで終わりね」
「もうちょっと案内してくれます?」
「何処に?」
今度は阿波野君に顔を向けて問い掛けました。
「何処に行きたいの?」
「とりあえず天理教に関係ありそうな場所です」
こう私に言ってきました。
「何処か。ありますか?」
「そうね。ありますかって言われると」
少し考えてからまた阿波野君に答えました。
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