狂人の村
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
3部分:第三章
第三章
「風邪ということで話しています」
「悪質な風邪だと」
部下達もこう話す。それは大丈夫だというのだ。
「それで隔離されたと」
「発狂のことはそれによりノイローゼだったのだと」
そういうことにしたのだというのだ。
「何も問題はありません」
「それで」
「それならいいがな。しかし奇妙なこともあるものだ」
独裁者は首を捻って述べた。
「こうした病気が出て来るとはな」
「やはり鼠のダニとはペストですが」
「それとは違いですからね」
「これは」
「病気にも色々あるか」
独裁者はまた言った。
「そういうことか」
「はい、ですがこの病気が世界的に流行ったならば」
「どうなるでしょうか」
「我が国の様にだ」
指導者はここで話した。
「徹底的にできればそれで問題はないが」
「それができなければ」
「大変なことになりますか」
「時として徹底的にやらなければならない」
独裁者はまた言った。
「何があってもだ」
「しかしそれができない国は」
「大変なことになってしまいますね」
「病気でなくとも同じことが言える」
彼はまた言った。
「経済を発展させることにしろ国防にしろだ」
「どちらでもですか」
「それは」
「そういうことだ。それができない国もある」
独裁者の言葉は続く。
「独裁やそうしたことは抜きにしてだ」
「いざという時は徹底的にやらなければ」
「大事になってしまうということですね」
「その通りだ。さて、何はともあれだ」
独裁者は自分の椅子に座ったままだ。静かに言った。
「我が国ではこれで終わった」
「はい」
「確かに」
「それはよしとしよう。それではだ」
「以後毎年ワクチンを打っていく」
「そういうことで」
「それでいい。時としてはだ」
また話した独裁者だった。何処までも深く考えて述べていく。
「事実を隠すことだ」
「混乱を避ける為に」
「それは」
「その通りです」
「それでは」
「次の仕事だ」
それだというのだ。
「何だ。すぐに持って来てくれ」
「はい、わかっております」
「こちらに」
早速であった。書類の山が彼の前に出された。どさりとした置く音からかなりの量であることもわかる。
ページ上へ戻る