艦隊コレクション 天を眺め続けた駆逐艦
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第四海
「か~り~、暇だよ」
「鷺・・・文句言わない」
入渠が終わった二人は鎮守府内を散歩していた。
この鎮守府は結構広いため、歩き回るのにはそこそこ時間がかかるのだ。
それで歩いていたのだが、ただ歩くのが暇で仕方がない鷺が、ついに文句を言い始めたのだ。
「綾川さんがここの司令さんと話してるから、それまでは自由だって」
「自由って・・・ならさ、演習もいいの?」
私の妹の鷺は、かなり落ち着きがないのです。
私たち鴻型姉妹の中では断トツの落ち着きのなさなのです。
その代わり私は、話すときの口数が少ないと、鵲姉さんに言われたことがあります。
でも、それはどうすることもできないんですよね。
「雁姉、演習しようよ。えんしゅう!」
「旗艦がいない・・・無理」
川上さんがいれば哨戒隊としての陣形は組めるけど、二人では無理。
水雷艇の私たちだけだと水雷戦隊にすら勝てない。
まだ最新鋭の二人がいれば勝てるかもしれないけど、軽巡洋艦には苦戦するはず。
いったいどうすれば…
水雷艇の本来の役割から考えると大型艦の撃破はほぼ不可能であり、小型艦艇との戦闘や潜水艦の撃破等ならできるかもしれない。
速力は高速であるためか、回避率は高いのだが、装甲はかなり薄いため、被弾した際のダメージはかなり高くなってしまうのです。
ですが、彼女たちの魚雷では遠距離からの命中率は限りなく0に近いため、嫌でも接近しなければならないのです。
なので先の戦闘では業と遠距離から魚雷を放ち、威嚇行動をとったのです。
「鷺、・・・私とやる?」
「へぇ~、雁は僕に勝てると思っているんだ」
「私のほうが・・・お姉ちゃん」
「いいよ、久しぶりに戦おうか!」
鴻姉さん、もしかしたら鷺は間違った方向に進んでいるかもしれません。
ですが私に任せてください。
私が鷺を再教育して見せます。
雁と鷺は工廠に預けてあった艤装を取りに向かった。
彼女たちのいたところから工廠まではさほど遠くないためすぐにたどり着くことができたのだが、二人の偽装は此処の工廠責任者であろう艦娘よりも後ろに置かれていたのです。
普通であればここで断念してもおかしくはないのですが、火のついた鷺は止まることなく、
「かり、とってくるから待ってろよな」
「・・・うん」
こっそりと工廠の中に入っていた。
もちろん工廠の中には妖精さんたちもいるわけなので、そう簡単にはいかないはずなのです。
きっと演習やる以前に鷺が怒られて終わっちゃいそうだね。
これであの性格も変わってくれればいいよね。
鴻姉さん、これを機に頑張って見せます。
今度会うときには、きっと普通の女の子みたいにして見せます。
「・・・もどr「とってきたぞ!」・・・みたいだね」
鴻姉さん、前言撤回します。
鷺の教育はかなり厳しいかもしれません。
「とっとと演習やりに行こうぜ」
「・・・うん」
私の妹にまともな子はいないのでしょうか?
鴻姉さん、ほかの子たちのことよろしくお願いします。
色々とあきらめた雁は鷺に連れられて演習場に向かったのですが、そこには偽装を身に着けた二人の少女がいたのです。
雁たちと比べると若干背が高いことから駆逐艦と簡単に予想ができたしまった。
だが装備している物を見る限りは特型以前であることも簡単に判断することができ、鷺は異様なまでに目を輝かせていた。
「さっきの話聞かせてもらったよ」
「あたし達が相手してあげるよ~」
えーと、この二人は確か睦月型の
「ほんとうですか!!よろしくお願いします!!」
・・・・なんてテンションなんだろう。
私には絶対まねできないよ。
「ところで、どちら様ですか?」
そこまで言うからには、鷺も二人のことは知ってい・・・ないの?
前に鵲姉さんが教えてくれてた覚えがある。
その時は鷺も隣にいたよね?
まさかわかっていてやってるの?
私はそっと鷺の顔を見たのですが、鷺の表情は嘘をついているものではなく、本当にわかっていないものなのです。
「ボクは皐月だよっ。よろしくな!」
「あたし、文月っていうの。よろしくぅ~」
やはりお二方でしたか。
「僕は鴻型水雷艇の七番艦、鷺さ。よろしくな」
「・・・私は六番艦の雁。・・・よろしく」
自己紹介をすることなんてほとんどなかったから、緊張しちゃうよ。
鷺はなんであんなに元気なのかわからないけど、私があそこまで元気に自己紹介をすることはないんだろうな。
あんなことしたら恥ずかしくて気絶しちゃうよ。
鷺は胸を張りながら元気よく挨拶をするのに対して、雁は目を少しそらしながら自己紹介をしていた。
皐月や文月からすると、雁は人見知りをする子に見えていたかもしれないが、そんなことを気にする余裕は雁にはなかったのです。
一方、皐月と文月は自分たちよりも幼そうな子を見て、目を輝かせていた。
僕より小さい子なんて初めて見たよ。
二人ともかわいいね!
文月よりも小さい子がいるなんてびっくりしたよぉ~。
でもさぎちゃんもかりちゃんもいい子みたいでよかったぁ~。
友達になれるかなぁ~?
「皐月さん、文月さん。自己紹介も終わったことですし、演習やりましょうよ」
「鷺・・・せかしちゃ、だめ」
「仕方がないじゃんか!」
鷺は身内以外での演習が少なかったから仕方がないけど、あれは節度なさすぎでしょ。
あれは何とかしてでも治さないと。
鴻型が全員、鷺みたいだと思われたくないから。
これは絶対治して見せます。
「まあまあ」
「ケンカはだめだよ~」
大丈夫です、これはいつものことですので。
私と鷺ではよく見かける光景なんですよ。
それにケンカじゃないです。
鷺は雁のほうを向きながらいろいろ言っていたのだが、雁はそれを受け流していた。
しまいには、鷺が雁をポコポコと軽く叩かれていたため、見ていた二人が止めに入ったのです。
まぁ、二人にとっては日常茶飯事みたいであったため、雁は叩かれても少し笑っていたのです。
「それじゃ演習場にいこっか。僕の後についてきて!」
「はいっ!!」
「・・・了解」
この後二人は皐月と文月に連れられて演習場に向かうのですが、そこには入渠上がりの川上と鎮守府を回っていた綾川と合流するのでした。
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