英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~白き魔女との邂逅~
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
「ええっ!?お、女の子!?」
「見た目はオレ達と同年代に見えるが……」
「何なの、その娘~!?」
倒れている娘を見たエリオットは驚き、ガイウスは戸惑い、ミリアムは混乱し
「これは……ARCUSか。クオーツどころかマスタークオーツすらもはめ込まれていないようだけど……」
「ど、どうしてその娘がARCUSを持っているんだろう……?」
傍に落ちている戦術オーブメント―――ARCUSを調べたジョルジュの説明を聞いたトワは戸惑いの表情で娘を見つめた。
「………まさかとは思うけど、結社の”執行者”とかじゃないでしょうね?」
「いえ、少なくとも私が知る限りは”執行者”の中に目の前の方はいませんわ。」
サラ教官に視線を向けられたシャロンは静かな表情で答えた。
「おい、あの娘の傍に落ちている武器は……!」
「”杖”!?まさか……!」
「”魔女”か……」
杖に気付いたトヴァルとセリーヌは血相を変え、ユーシスは真剣な表情で推測した。
「エマの知り合い?」
「い、いえ。少なくとも私や姉さんと同じ”魔女”ではありません。私達の隠れ里にも目の前の方はいませんし……」
アリサに尋ねられたエマは戸惑いの表情で答え
「一体何者なのでしょう?恐らく先程の閃光と共に現れたのでしょうが……」
「現れた方法はレン姫達のように恐らく転移魔法の類だと思うのですが……」
「私達の”敵”ではありませんよね……?」
「ああ……少なくとも貴族連合の協力者ではないと思うんだけど……」
シグルーンとクレア大尉は真剣な表情で娘を見つめ、エリスの言葉にリィンは考え込む動作で答えた。
「ねえ。前にも似たような事がなかったっけ?」
「い、言われてみれば僕も覚えがあるぞ……あれは確か……」
「―――帝都の公園でセレーネが現れた時だな。」
「あっ!マーテル公園にセレーネが現れた時も似たような状況だったよね!?」
「ええっ!?わ、わたくし、先程のような現れ方をしたのですか!?」
フィーの問いかけを聞いたマキアスは考え込み、ラウラの答えを聞いたエリオットは目を丸くして声を上げ、自分が現れた状況を聞いたセレーネは驚き
「フム……”影の国”に取りこまれた”封印石”の中に入っていた仲間達を解放した時の現象と若干似ているようだったが……」
「一体どこのどなたなのでしょう……?」
オリヴァルト皇子は考え込み、アルフィン皇女は戸惑いの表情で娘を見つめた。
「……ん……」
「あ……」
「――――どうやら目覚めるようだな。」
娘が目を覚ます様子を見たリィンは呆け、アルゼイド子爵は真剣な表情で呟いた。
「…………?貴方達は…………?ここは一体………?」
「―――ここは巡洋艦”カレイジャス”の会議室だ。そして私はエレボニア帝国皇子、オリヴァルト・ライゼ・アルノール。」
不思議そうな表情で自分達を見つめる娘の言葉を聞いたオリヴァルト皇子は自己紹介をした。
「”カレイジャス”……?”エレボニア帝国”……??」
「えっと……貴女の名前は何と言う名なのでしょう?」
不思議そうな表情で首を傾げ続けている娘にアルフィン皇女は戸惑いの表情で尋ねた。
「…………ゲルド。ゲルド・フレデリック・リヒター。……え……ど、どうなっているの……!?どうして名前しかわからないの……!?」
娘―――ゲルドは名乗った後混乱し始め
「え、えっと……?」
ゲルドの様子を見たエリオットは戸惑いの表情をした。
「……気を失う前に何か衝撃的な事があって記憶に混乱が生じているのではないですか?」
「もしかしたらそうかもしれないわね。―――殿下。彼女への事情聴衆はあたし達に任せて、殿下達はそれまで艦内で身体を休めて下さい。」
「―――わかった。よろしく頼むよ。」
クレア大尉の言葉に頷いたサラ教官の言葉を聞いたオリヴァルト皇子は頷き
「あ、私も事情聴衆に立ち会わせて下さい。もしかしたら”魔女”の秘術でお役に立てるかもしれませんし。」
「―――わかったわ。」
エマの申し出にサラ教官は頷いた。その後会議室を出たリィン達はサラ教官達の事情聴衆が終わるのをブリッジで待っていた。
~ブリッジ~
「参ったわね………」
リィン達がブリッジで待っていると疲れた表情をしたサラ教官がエマとセリーヌと共にブリッジに戻ってきた。
「サラ教官。それで彼女―――ゲルドさんは何者なんですか?」
「それが……ゲルドさんはどうやら”記憶喪失”のようなんです。」
リィンの質問にエマは心配そうな表情で答えた。
「ええっ!?」
「き、記憶喪失ですか!?」
「ええ……覚えていたのは自分の名前と年齢だけで、出身や今までどこで何をしていたのか、何故ARCUSを持っているのかも全て覚えていないのよ。……というか戦術オーブメントどころか、”導力技術”自体を知らなかったわ。」
驚いているエリオットとマキアスにサラ教官は説明し
「せ、戦術オーブメントどころか、導力技術すらも知らないって……」
「おいおい……幾ら何でもそれはありえなくないか?辺境の子供でも導力技術くらいは知っているぞ?」
「それじゃあ何故彼女はARCUSを持っているんだ……?」
説明を聞いたトワは信じられない表情をし、トヴァルは戸惑い、ジョルジュは考え込んでいた。
「―――ただあのゲルドって娘、エマの暗示も効かないくらい術に対する耐性が高い上、あの娘自身に霊力が相当秘められてあるわ。あの娘の所持品である杖やローブ、装飾品も古代遺物クラスと言ってもおかしくない膨大な霊力が秘められてあるから恐らく”魔女”としての潜在能力も含めると彼女が”本気”を出せば最低でもヴィータ……いえ、下手したらそれ以上のクラスの”魔女”かもしれないわ。」
「嘘っ!?」
「結社の最高幹部をも超えるだと!?」
「装備も古代遺物クラスって、ホントに何者なんだろね~?」
「暗示というと……バリアハートの時に使っていた”術”か。」
セリーヌの説明を聞いたアリサとユーシスは驚き、ミリアムは目を丸くし、ガイウスは考え込んだ。
「更にゲルドさんは私達も知らない”魔法”を扱えるんです。」
「ええっ!?」
「……と言う事は彼女は異世界――――ディル・リフィーナの出身かな?」
エマの説明を聞いたアルフィン皇女は驚き、オリヴァルト皇子は尋ねた。
「いえ、アンタ達やプリネ達が扱う異世界の魔術とは全く異なる魔術だったわ。本人はその術の正体が”白魔法”や”黒魔法”という呼び名である事を思い出したみたいだけど。」
「”白魔法”に”黒魔法”……委員長達も知らないんだよな、その魔法の事は。」
セリーヌの説明を聞いて考え込んでいたリィンはエマ達に尋ねた。
「はい。私達も初めて聞く”魔法”です。」
「……それで彼女は?」
「今はクレアが事情聴衆を続けている所です……って、あら?エリスとあたし達の”監視役”がいないみたいだけど……」
アルゼイド子爵の質問に答えてある事に気付いたサラ教官はリィン達に尋ねた。
「エリスは今、下の階層の訓練に使える広い空き室でシグルーン中将閣下に鍛錬をしてもらっている最中です。」
「へえ?早速鍛錬なんて感心ね。ひょっとしたらエリゼ同様エリスにまで追い抜かれるかもしれないわね♪」
リィンの答えを聞いたサラ教官は口元に笑みを浮かべてリィンをからかい
「た、確かにエリゼ君と言う例があるからな……」
「エリゼは”剣聖”だから、”中伝”のリィンはとっくにぬかれているしね。」
「まあな。実際エリゼ嬢ちゃんの実力を見たが、ありゃ完全にリィンを追い抜いているぜ。」
「しかも武術を教えている方がカシウス様達同様相当の使い手であるシグルーン様……ひょっとしたらありえるかもしれませんわね♪」
マキアスは冷や汗をかき、フィーは静かに呟き、トヴァルは口元に笑みを浮かべ、シャロンはからかいの表情でリィンを見つめ
「う”っ……」
リィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「―――お待たせしました。」
するとその時クレア大尉とゲルドがブリッジに現れた。
「事情聴衆をしてわかりましたが、少なくてもゲルドさんが私達の”敵”でない事は確実に言えます。」
「フム……そうなると問題は彼女をどうするかだが……」
クレア大尉の話を聞いたオリヴァルト皇子は考え込み
「さすがにわたし達でゲルドさんを保護するのは無理があるよね……?」
「ああ……この艦だっていつ貴族連合に狙われるかわからないからね。」
トワの意見を聞いたジョルジュは重々しい様子を纏って頷いた。
「あの……でしたらメンフィル帝国に事情を説明して、保護してもらったらどうでしょうか?」
「そうですわね……少なくても今のエレボニア帝国領に安全な場所はないと言っても過言ではありませんから、それが最善だと思われますわ。」
「メンフィル帝国領だったらプリネ達がケルディックにいるから、プリネ達に事情を話せばきっと保護してくれるんじゃないかな?」
「ならばまずはケルディックか―――」
アルフィン皇女の提案を聞いたシャロンは頷き、エリオットが提案し、アルゼイド子爵が操縦士達に指示を出そうとしたその時
「―――待って。私も貴方達についていく。」
ゲルドが静かな表情で制止して予想外の言葉を口にした。
「へ……」
「わ、私達について行くって……」
「一体何故だ?」
ゲルドの申し出を聞いたマキアスは呆け、アリサは戸惑い、ガイウスは尋ねた。
「……私には”見える”の。貴方達について行けば、私が貴方達と一緒に笑い合っているとても暖かくて明るい光景が。」
「え、えっと……?」
「意味不明なんだけど。」
「一体どういう意味なのだ?」
ゲルドの答えを聞いたエリオットは戸惑い、フィーはジト目になり、ラウラは不思議そうな表情で尋ね
「……………」
「えっと……俺の顔に何かついているのか?」
ゲルドにジッと見つめられたリィンは不思議そうな表情で尋ねた。
「…………ううん、何でもないわ。ただの気のせいだから。(彼を見た時に一瞬”見えた”光景は一体…………)」
リィンの問いかけを誤魔化したゲルドはリィンをジッと見た時に一瞬見えた光景――――真っ白なウエディングドレスを身に纏い、頭に被ったヴェールから見える自分の容姿によく似た大人の女性の光景が見えた意味を考え
「……もしかしたらだけど”未来”の事を言っているのかしら?と言う事はアンタは今”未来が見えた”訳だから…………――――!まさかアンタ……”予知能力”があるの!?」
するとその時考え込んでいたセリーヌはある事に気付いて信じられない表情でゲルドを見つめた。
「ほえ?”予知能力”って何なの~?」
「”予知能力”とは”未来が見える”能力です。過去”予知能力”を持つ”魔女”もいたと記録に残っています。」
ミリアムの疑問にエマは答え
「ええっ!?」
「み、未来が見えるって……そんなの作り話の中だけじゃないのか!?」
エマの答えを聞いたアリサは驚き、マキアスは信じられない表情で声を上げた。
「アタシも半信半疑なんだけどね……ゲルドって言ったっけ?アタシ達を見て、何か”見える”かしら?」
疲れた表情で答えたセリーヌはゲルドを見つめて尋ね
「…………………………!貴方と似た容姿の髪の長い女の人が青色の服を着た兵士の人達にどこかに連れて行かれる所が”見えた”わ…………」
尋ねられたゲルドはリィン達を見回した後エリオットの顔をジッと見つめて呟いた。
「ええっ!?ぼ、僕と似た容姿の髪の長い女の人っても、もしかして僕の姉さんの事!?」
「青色の服を着た兵士達に連れて行かれただと……?」
「青色の服の兵士……―――!まさかクロイツェン州の領邦軍の事か!?」
「そ、そう言えばクロイツェン州の領邦軍の服の色は青色でしたわよね……?」
ゲルドの答えを聞いたトヴァルは眉を潜め、心当たりがあるユーシスは目を見開いて厳しい表情をし、セレーネは不安そうな表情をし
「な、何で領邦軍がフィオナさんを連れて行くんだ!?」
「……可能性で考えられるとしたら、クレイグ中将に対する”人質”ですね。」
マキアスは戸惑い、クレア大尉は真剣な表情で呟いた。
「あ…………」
「……確かに今も抵抗を続けている正規軍”最強”と謳われている”第四機甲師団”を降伏させる方法としてはうってつけだな……」
クレア大尉の推測を聞いたアルフィン皇女は心配そうな表情で真剣な表情をしているアルゼイド子爵と共にエリオットを見つめ
「父ならやりかねん……父は貴族連合の”主宰”になる為にユミルの件のように形振り構わず何らかの手柄を立てようとしていたからな……」
「ユーシス………」
辛そうな表情をしているユーシスをリィンは心配そうな表情で見つめ
「!!ゲ、ゲルドさん!姉さんは……姉さんはどこに連れて行かれたの!?」
目を見開いたエリオットは血相を変えてゲルドを見つめて尋ねた。
「……大きな橋の真ん中にある建物……そこに連れて行かれるのが見えたわ……」
「大きな橋ですって……?」
「橋の中心にある建物……――――!まさか”双龍橋”か!?」
「……第四機甲師団が陣を展開しているのはガレリア要塞跡。領邦軍に拘束されたクレイグ中将のご息女が本当にそちらに連れて行かれたのなら、間違いなくクレイグ中将への人質として使うでしょうね。」
ゲルドの答えを聞いたサラ教官は考え込み、すぐに心当たりを思い出したトヴァルは厳しい表情で声を上げ、クレア大尉は真剣な表情で考え込んだ。
「い、今の話を聞く限り信憑性がかなり高いよな……?」
「ええ……これが”予知能力”なのですね……」
「まさに”未来を見ている”な……」
一方マキアスは不安そうな表情をし、エマとガイウスは真剣な表情でゲルドを見つめ
「ゲルド様。イリーナ会長――――アリサお嬢様のお母様について、何かわかりませんか?」
「…………」
シャロンのゲルドに対する問いかけを聞いたアリサは懇願するような表情でゲルドを見つめた。
「その人の特徴はどういったものなの?」
「か、母様の特徴って言われても……」
「会長の特徴は―――」
ゲルドの問いかけにアリサが戸惑っている中、シャロンが出来る限りわかりやすくゲルドに伝えた。
「………………その人は鉱山の中にある長い紅い鉄……?の塊の中にある豪華な部屋にいるわ。」
特徴を聞き終えたゲルドはアリサとシャロンをジッと見つめた後静かな表情で答えた。
「長い紅い鉄の塊の中にある豪華な部屋…………あ、あれ……?」
「う~ん、その特徴にな~んか覚えがあるんだよな~?」
ゲルドの答えを聞いて考え込んでいたトワはある事に気付いて戸惑い、ミリアムは首を傾げて考え込み
「もしかして”アイゼングラーフ号”の事じゃないかい?」
「あ……っ!」
「そ、そう言えば”アイゼングラーフ号”は真っ赤な列車でしたわよね……?」
「――――”アイゼングラーフ号”は貴賓や政府の役人の方々を乗せる為に内装もVIP用の列車に相応しい内装がされてある車両ですから、”豪華な部屋”という言葉にも一致しますね……」
オリヴァルト皇子の推測を聞いたアリサは目を見開き、セレーネは戸惑いの表情をし、クレア大尉は真剣な表情で考え込んだ。
「そうなると問題は”アイゼングラーフ号”が停車している”鉱山”がどの鉱山かだな…………」
「―――エレボニア帝国全土に存在する鉱山内に駅がある鉱山はそれなりに存在していますが、”アイゼングラーフ号”が停車しているとなると情報を絞り込み、場所の特定もしやすくなりますわ。―――ありがとうございます、ゲルド様。ゲルド様の”予言”、参考にさせていただきますわ。」
真剣な表情で考え込んでいるアルゼイド子爵の言葉に続いたシャロンはゲルドに会釈し
「私は自分に見えたものを言っただけ……」
ゲルドは静かな表情で答えた。
「………もし、その娘の言っている通りに本当にそうなったらその娘の”予知能力”は”本物”って事になるわね。その娘の”予知能力”が本物なら、”魔法”の才能も含めてその娘の”力”は貴方達にとって大きな助けになる事は確実よ。」
「そ、それは……」
「……確かに未来がわかれば、それに対する行動がとれるね。」
セリーヌは真剣な表情で呟いてリィン達を見回し、トワとジョルジュはそれぞれ考え込み
「フム……君達はどうするつもりだい?」
セリーヌの言葉を聞いたオリヴァルト皇子はリィン達に問いかけ、リィン達は少しの間黙って考え込んだ後互いの顔を見合わせて頷いてリィンが代表して答えた。
「―――ゲルドさん。俺達はいつ自分達の身に危険が迫ってもおかしくない状況に立たされています。そんな俺達について行く覚悟はありますか?」
「勿論あるわ。私の”魔法”ならきっと貴方達の助けになると思うから、どうか私を連れて行って。」
リィンの問いかけに対してゲルドは静かな表情で頷いた後決意の表情でリィン達を見つめた。
「こりゃ決まりだな……」
「そのようですわね。」
ゲルドの表情を見たトヴァルは苦笑し、シャロンは微笑み
「殿下。」
「ええ。―――”Ⅶ組”の”協力者”として、”カレイジャス”の所有者であるエレボニア皇女アルフィン・ライゼ・アルノールがゲルドさんの”カレイジャス”の乗艦を歓迎いたしますわ……!」
リィンに視線を向けられたアルフィン皇女はゲルドに微笑んだ。
こうして……記憶喪失であり、リィン達と同年代でありながらも強力な魔力をその身に秘め、”予知能力”というとてつもない能力を持つ謎の”魔女”――――ゲルドはⅦ組の面々に暖かく迎え入れられ、更に年齢も18歳とリィン達と年齢が近いと言う事もあって互いに呼び捨てや気軽な呼び方で呼び合う仲となるのに時間もかからなかった。
また、エリス同様ゲルドまでがヴァリマールの”準契約者”である事がすぐにわかり、旧校舎の”試練”も受けていない二人が”準契約者”である事に首を傾げたリィン達だったが、すぐに気を取り直してゲルドに本格的な活動をする前にARCUSの使い方などを教えた。
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