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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第75話

~カレイジャス・ブリーフィングルーム~



「何だ、この滅茶苦茶な内容の条約は!?確かに全面的にエレボニア帝国に非があるとはいえ、幾ら何でも理不尽すぎるぞ!?」

「滅茶苦茶搾り取ろうとしているね、この内容だと。」

「というか、これだと隷属も同然の扱いだよね~。」

「この条約を全て実行したらエレボニア帝国にまた混乱が起きるだろうな……」

「うん………それに『帝国』の名を捨てたらエレボニアの人達みんな、凄いショックを受けるし、入国料とかあったら旅行や商売でメンフィル領に行きにくくなるよ……」

条約を読み終えたトヴァルは怒りの表情で声を上げると共に机を叩き、フィーはジト目になり、ミリアムは真剣な表情でレン達を見つめ、ジョルジュとトワはそれぞれ辛そうな表情をし

「難民達の生活費等の支払いはまだ支払える範囲だと思いますが、幾ら何でも1000兆ミラはエレボニア帝国全土からかき集めても現実的に不可能な金額です………」

「もし集める事ができたとしてもエレボニア帝国の経済は完全に破綻するだろうな……」

「そ、そんな…………」

「そ、それにクロイツェン州とラマール州全土に加えて、残りの”四大名門”の本拠地も全部贈与しろって事は……!」

「間違いなく”ルーレ”もその中に入っていますわ。加えてザクセン鉄鉱山の所有権までメンフィルに贈与されてしまった場合、”ラインフォルトグループ”にも確実に影響が出てしまいますわ……」

表情を青褪めさせているクレア大尉と重々しい様子を纏っているアルゼイド子爵の言葉を聞いたマキアスは表情を青褪めさせ、血相を変えたアリサの言葉に続くようにシャロンは真剣な表情で呟いてレン達を見つめた。



「レン姫!何故アルフィン殿下やユーゲント陛下、それにユーシスまで責任を取らなければいけないのですか!?」

リィンは真剣な表情でレンを睨んで反論したが

「――フウ。ユミルが襲撃された”理由”は何だったのか、それはリィンお兄さん自身が一番良く知っているでしょう?」

「!!そ、それは………………」

呆れた表情で溜息を吐いたレンの指摘に目を見開き、辛そうな表情でアルフィン皇女に視線を向け

「―――間違いなくわたくしがユミルにいたせいですわね…………ユミルが襲撃される事になった”原因”であるわたくしが責任を取るのは当然の事ですわ……」

「姫様…………」

「そして処刑する予定になっている父上達に代わり、俺がメンフィル帝国や”シュバルツァー家”に”アルバレア公爵家”の”罪”を償えと言う事ですか……」

「ユーシス…………」

「……………”国自身”を不幸にする切っ掛けを作った張本人の一人であるヴィータは本当に馬鹿な事をしたものよ…………」

「姉さん…………」

肩を落としているアルフィン皇女とユーシスの様子をエリスとラウラはそれぞれ辛そうな表情で見つめ、セリーヌが複雑そうな表情をしている中、エマは悲しそうな表情をした。



「ちなみに何故父上自身も責任を取る必要があるのかな?」

オリヴァルト皇子は真剣な表情でレンを見つめて尋ね

「その条約にも書いてある通りよ。―――皇帝の癖に”貴族派”と”革新派”を纏めきれずに内戦をみすみすと引き起こしてしまった上メンフィル帝国領にまで迷惑をかけたんだから、エレボニアの皇として、そして”人”として責任を取るのは当たり前でしょう?それにアルフィン皇女の件と比べればたいした事ないじゃない。迷惑をかけた人達の所に直接出向いて迷惑をかけた本人が直接頭を下げて”お詫び”をするのは”人として”当然なんだから、皇帝以前に”人として”この程度の事をするのは当たり前でしょう?」

「それは…………」

「「………………」」

レンの正論を聞くと複雑そうな表情で黙り込み、その様子を見たマキアスは辛そうな表情で黙り込み、アルゼイド子爵は目を伏せて黙り込んでいた。



「あの……レン姫。オズボーン宰相閣下御自身も責任を取る内容が書かれてありますが……」

「うふふ、さっきのレンの話を聞いているんだから、”鉄血宰相”にも責任を取ってもらう”理由”はわかっているでしょう?これでも血縁者と思われるリィンお兄さんに気を遣って、”その程度”にしてあげたのよ?本来ならアルバレア公爵達同様”処刑”なんだから。」

「………………」

「けど、そのオジサンが死んでるから、この条約は絶対に守れないと思うんだけど~。」

クレア大尉の質問に答えたレンの話を聞いたリィンは複雑そうな表情で黙り込み、ミリアムは真剣な表情でレンを見つめた。



「それはもしオズボーン宰相が”生きていたら”効力を発する条約よ。あの時狙撃されたオズボーン宰相が”影武者”とかだったら今も生きている可能性も考えられるでしょう?」

「”影武者”……確かに”鉄血宰相”なら用意していてもおかしくないかも。」

「それはありえません。宰相閣下の影武者がいる事など聞いた事がありません。あの場で狙撃され、殺害されたのは間違いなく宰相閣下本人です。」

レンの話を聞いたフィーは真剣な表情で考え込み、クレア大尉は反論したが

「あら、貴女達の”筆頭”が誰であるのかも教えてもらっていなかったんだから、ひょっとしたらありえるかもしれないわよ?」

「それは…………」

レンの指摘を聞き、複雑そうな表情で黙り込んだ。

「ちなみにオズボーン宰相が本当に死んでいるのなら、その件は実行したと判断されるからその点は安心していいわよ。他に質問はあるかしら?」

「あ、あの!レン姫!レン姫はアンちゃんを助けてくれてアンちゃんをレン姫の秘書兼護衛として傍に置いているのに、この条約について何も思わないんですか!?」

「トワ…………」

真剣な表情でレンに質問するトワの様子をジョルジュは辛そうな表情で見つめていた。



「ハア……帝国解放戦線による夏至祭襲撃やザクセン鉄鉱山襲撃の際の影の功労者として活躍した士官学院の優秀な生徒会長がどんな質問をするかと思ったらそんな”下らない質問”とはね。――――あのねぇ?外交問題に個人の感情が通じる訳がないし、たった一ヶ月ちょっとしか働いていない人の為に何でレンが同情しなくちゃならないのよ。というかむしろアンゼリカお姉さんはレンに感謝するべきだと思うけどね。」

トワの質問を聞いたレンは呆れた表情で溜息を吐いて指摘し

「え……ど、どういう事ですか?」

レンの指摘を聞いたトワは戸惑いの表情で尋ねた。



「内戦を終結する方法を探る為に長期間の休暇を取る事を許可した事もそうだし、メンフィル皇女であるレンの傍にいる事でメンフィル帝国の貴族や皇族達とも会える機会も増えるから、色々な”交渉”ができる機会もあると思うわよ?ログナー侯爵にはレンが”成人するまで”と約束したから、その約束をした本人であるレン自身が約束を破る訳にはいかないから、アンゼリカお姉さんを解雇しないし、内戦が終結したらまたレンの秘書兼護衛を務めてもらうつもりよ。レンは今年で13歳になったからアンゼリカお姉さんはレンが成人の年齢に達するまでの間である約7年間もメンフィルの皇族や貴族達に加えて、各国のVIP達とも顔見知りになって、様々な交渉ができる機会(チャンス)があるのよ?」

「そ、それは…………」

「……………………」

「ゼリカさん………」

レンの説明を聞いたトワは反論できず、ジョルジュは目を伏せて黙り込み、アリサは複雑そうな表情をした。



「レン姫に感謝するならエリスさんもそうですわね。」

「え…………ど、どういう事ですか!?」

シグルーンがふと呟いた言葉が気になったリィンは血相を変えた。

「姫様……大変心苦しいのですが姫様の付き人は本日限りで辞めさせて頂きます……それがメンフィル帝国の私に対する”処分”の一つでもありますので……」

「え……ど、どういう事、エリス!?」

「!まさか……ユミル襲撃の責任をエリスにまで押し付けたの!?」

エリスに謝罪されたアルフィン皇女は驚き、サラ教官は厳しい表情でレンを睨んだ。



「押し付けるだなんて、心外ね。ユミル襲撃の件で話し合っている時にユミルが襲撃されたのはアルフィン皇女と”親しすぎた”エリスお姉さんにも責任の一端があるという声もあったのよ。夏至祭の件でエレボニア皇族の傍にいれば危険がある事を自分自身で体験したにも関わらず、アルフィン皇女と一緒にユミルに帰省したんだから。その結果、例の襲撃が起こったじゃない。」

「それは…………っ……!」

「ひ、酷すぎるよ……!」

「確かに言っている事に間違いはありませんが、お二人の友情まで否定するのはどうかと思われますが……?」

レンの正論に反論できないリィンは唇を噛みしめ、エリオットは不安そうな表情で呟き、アルゼイド子爵は厳しい表情でレンを見つめ

「――――申し訳ございません、殿下……っ!それにエリスも本当に済まない……っ!父のせいで……!」

「ユーシスさん…………」

「……………………」

ユーシスに頭を下げられたアルフィン皇女とエリスは辛そうな表情をした。



「レン姫……先程シグルーン中将閣下が仰った”エリスお姉様がレン姫に感謝する”という言葉はどういう意味ですか?」

「ああ、その事ね。―――アルフィン皇女と親しすぎるエリスお姉さんの行為はシュバルツァー家のメンフィル帝国に対する忠誠心を疑わせるような行為だという声もあってね。その際にパパやイリーナママ、それにシルヴァンお兄様達がエリスお姉さんの事を庇ったのよ。で、アルフィン皇女の付き人を即辞める事は当然として、”汚名返上”をする機会を与えてあげる事にしたのよ。―――――メンフィル皇族であるレンの専属侍女として仕える事でね。レンも専属侍女がいなかったし、エリスお姉さんとも知らない仲じゃないから、了承したのよ。」

「ちなみにエリスは今年度限りで女学院を退学し、その後私達―――専属侍女長達の研修を受けてからレン姫に仕える事になり、期間はアンゼリカ様の件同様レン姫が成人するまでです。」

「お、”汚名返上”って……!」

「他国の皇女に仕えた事がそんなにも気に入らなかったのかよ!?」

「そ、そんな…………」

「っ!レン姫!せめて女学院の卒業まで待てないのですか!?卒業まで伸ばした期間を卒業後レン姫に仕えた際に伸ばす事はできないのですか!?」

セレーネの質問に答えたレンとエリゼの話を聞いたアリサとトヴァルは厳しい表情をし、アルフィン皇女は辛そうな表情をし、リィンは真剣な表情でレンを見つめた。



「いいのです、兄様。レン姫の……メンフィル帝国の言い分は何一つ間違っていません。全ての非は姉様やリウイ陛下に忠告されていながらも、姫様との”線引き”が未熟であった私にあるのです。私の救出の為に動いて頂いた上寛大な処分にして頂いたメンフィル帝国に恩を報いる為にも、私はメンフィル帝国の処分を受け入れる所存ですし、既にこちらに来る前にユミルに戻って父様達にも今年度で女学院を退学する事を伝えました。」

「エリス…………」

「ごめんなさい、エリス……!わたくしのせいで学院を去る事に……!ううっ…………!」

「姫様……私の事は気にしないで下さい。私の場合は自業自得なのですから……」

「……………………」

エリスの答えを聞いたリィンは辛そうな表情をし、アルフィン皇女は涙を流して謝罪してエリスに慰められ、その様子を見ていたオリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。



「ああ、それと。退学で思い出したけどリィンお兄さんも今年度限りでトールズ士官学院を退学して、クロイツェン州の統括領主として色々学んでもらう為にクロイツェン州の”臨時統括領主”であるレン達の元で”統括領主”としての勉強をしてもらうからね。」

「!?」

「ええっ!?リ、リィン君まで!?」

「何ですって!?理由は何よ!?」

レンの話を聞いたリィンは目を見開き、トワは驚き、サラ教官は厳しい表情で尋ねた。



「逆に聞くけどそもそもリィンお兄さんがトールズ士官学院に入学した一番の”理由”は何だったのかしら?」

「リィンがトールズ士官学院に入学した一番の理由……」

「あ、もしかして……!」

「―――プリネ様の”護衛”ですわね。」

レンの問いかけを聞いたガイウスは考え込み、ある事に気付いたアリサは目を見開き、シャロンは静かな表情で呟いた。



「そう言う事。護衛対象であるプリネお姉様も今年度限りでトールズ士官学院を退学するんだから、プリネお姉様を護る為に留学させていた護衛も退学させて当然でしょう?」

「プ、プリネも退学するだって!?」

「……理由は何?」

レンの話を聞いたマキアスは驚き、フィーは真剣な表情で尋ねたその時

「…………戦争状態にまで陥ってしまったエレボニア帝国に自国の皇女を留学させてまで友好を結ぶ必要が無くなった……―――そう言う事かい?」

オリヴァルト皇子が真剣な表情でレンを見つめた。



「ええ。それと当然だけどツーヤにエヴリーヌお姉様、レーヴェや”臨時”で吹奏楽部の指南役をやっていたアムドシアスもみんな今年度限りでトールズ士官学院を去る事になっているから。」

「そ、そんな…………」

「……リィンさんの件同様、護衛対象であるプリネ姫が学院を去ればルクセンベール卿達も学院を去るのが当然なのでしょうね……」

「……………っ!」

レンの答えを聞いたセレーネは暗い表情をし、クレア大尉は複雑そうな表情で呟き、サラ教官は唇を噛みしめてレンを睨んだ。



「リィンさん。わかっているとは思いますが今年度限りでトールズ士官学院を退学し、クロイツェン州全土の統括領主として……そしてシュバルツァー家の跡取りとしてプリネ姫達の許で学ぶ事……これはメンフィル帝国軍―――いえ、”メンフィル帝国自身の命令”です。拒否権はない事はおわかりですね?」

「………………はい………………」

「リィン………………」

シグルーンに言われて辛そうな表情で頷くリィンの様子をアリサは悲しそうな表情で見つめた。

「ちなみにもう気付いていると思うけど、トールズ士官学院退学後はメンフィル軍からは除隊する事になるから、そのあたりの手続きはレン達が全部しておくわ。」

「……わかりました…………わざわざ俺の為に手間を取らせてしまい、申し訳ありません…………」

「うふふ、リィンお兄さんにはシュバルツァー家の跡取り兼クロイツェン州の統括領主として早く成長してもらって、臨時統括領主であるレン達を一日でも早くお役御免にしてもらう為にも、そのくらいの事はしてあげるわよ♪」

暗い表情をしているリィンの言葉を聞いたレンは微笑みながら答え

「リィンは”ヴァリマール”を所有しているのに、よく手放す気になったわね?」

「セリーヌ!」

セリーヌの指摘を聞いたエマは声を上げた。



「”ヴァリマール”……ああ、”灰の騎神”だったかしら?確かに機甲兵とは比べ物にならないスペックでパテル=マテルと同等……いえ、下手したらそれ以上と思われる兵器なのは認めるけど、所詮はたった一体の人形兵器。”神”や”魔神”の圧倒的な”力”と比べれば大した事はないでしょう?」

「実際”魔神”であるベルフェゴールさんやヴァレフォルさんも”蒼の騎神”相手に圧していましたね……」

「やれやれ……さすがに比較対象がおかしいと思うんだけどねぇ。」

レンの指摘を聞いたエマは複雑そうな表情をし、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた。



「あ、あの……レン姫。わたくしはどうなるのでしょうか……?」

その時セレーネが不安そうな表情で尋ね

「悪いけどセレーネも退学してもらうわ。養子縁組で遠縁とはいえ、セレーネもメンフィル皇族の一員だし。退学後は将来クロイツェン州の統括領主になるリィンお兄さんの秘書を務めてもらう為にリィンお兄さんと一緒に勉強してもらう事になるわ。リィンお兄さんの”パートナードラゴン”なんだからそっちの方がいいでしょう?」

「……わかりましたわ。」

レンの答えを聞くと重々しい様子を纏って頷いた。



「……”殲滅天使”のお姫さん。俺から質問があるがいいか?」

その時トヴァルが真剣な表情でレンを見つめて尋ねた。

「何かしら?」

「この第12項に書いてある内容をエレボニア帝国が実行したらエレボニアだけでなく、メンフィルと同盟を組んでいるリベールにまで混乱が起きる可能性が考えられるぞ?」

「第12項って…………」

「『”百日戦役”の”真実”―――――”ハーメルの悲劇”を世界中に公表する事』、か。」

トヴァルの質問を聞いたエリオットは目を丸くして条約が書かれてあるコピーの書類を読み直し、ガイウスは静かな表情で呟いた。



「”百日戦役”…………12年前に起こったリベールとの戦争の件か。」

「”百日戦役”の”真実”――――”ハーメルの悲劇”って一体どういう事なのよ……?シャロンは何か知っている?」

「…………それは………………」

ラウラは考え込み、アリサに視線を向けられたシャロンは複雑そうな表情で言葉を濁した。



「………………―――わかった。ちょうどいい機会だ。”ハーメルの悲劇”の内容をみんなにも伝える。」

「……よろしいのですか、殿下?」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたアルゼイド子爵は静かな表情で問いかけた。

「ああ。どの道メンフィルとの戦争を避けるために判明してしまう事だ。”ハーメルの悲劇”とは―――――」

そしてオリヴァルト皇子はその場にいる全員に”ハーメルの悲劇”を説明した。 
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