英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第73話
~カレイジャス・ブリーフィングルーム~
「え―――――」
「ええっ!?レ、レン姫にシグルーン中将!?」
「な、何で二人がこの艦に乗り込んでいるんだ!?さっきまでどこにもいなかったはずだぞ!?」
「……一体どんな方法でこの艦に乗り込んだんだい?」
レン達の登場にリィンは呆け、セレーネとマキアスは驚き、オリヴァルト皇子は真剣な表情で尋ねた。
「うふふ、レンは一度この艦に乗った事があるからね。近くに滞空している”モルテニア”から”カレイジャス”の位置を割り出した後転移魔術で来たのよ♪」
「ええっ!?て、転移魔法でですか!?」
「―――”殲滅天使”。あらゆる”才”に愛されている人物である事は知っていたけど、まさかこれ程とはね……」
「あ、あの戦艦がカレイジャスの近くに……」
「はわわっ……!?」
「………………」
レンの説明を聞いたエマは驚き、セリーヌは目を細めてレンを見つめ、エリオットは表情を青褪めさせ、トワは慌て、アルゼイド子爵は真剣な表情でレンを見つめ
「現れるタイミングがユミルの件同様絶妙だったけど……今度はハッキングあたりであたし達の会話を盗み聞きしていたのかしら?」
「イリーナ会長の端末にまでハッキングできるレン姫なら容易だと思われる為、可能性は高いでしょうね。」
「ええ……」
サラ教官とシャロンの言葉に頷いたクレア大尉は厳しい表情をした。
「……それで何しにきたの、”殲滅天使”。」
「まさか今度はボク達に何かする気なの~?」
フィーとミリアムは警戒の表情でレン達を見つめ
「フフ、最初に言っておきますが私達がここに現れたのは皆さんが気になっていると思われるエレボニア帝国がメンフィル帝国との戦争を回避する方法についてお話する為に参上しただけで、皆さんに危害を加えるつもりは一切ありませんのでご安心ください。」
シグルーンは微笑みながら答えた。
「あ…………」
「……エフラム皇子殿下達とシュバルツァー卿との話に出て来た例の件ですか。」
「………………」
「え……ど、どういう事だ!?まさかエフラム殿下達がユミルにいるのか!?」
シグルーンの話を聞いたアリサは不安そうな表情をし、ラウラは重々しい様子を纏い、ユーシスは辛そうな表情で黙り込み、リィンは呆けた後血相を変えて尋ねた。
「その、お兄様。実は――――」
そしてアリサ達はリィンがパンダグリュエルに向かった後の話――――多くの貴族連合の協力者達がリウイ達に討ち取られた事やエフラム達―――メンフィル帝国からのユミル防衛の部隊がようやく到着した事、そしてメンフィルが帝都を奇襲し、エリスを救出する作戦を実行しようとしている事を説明した。
「何だって!?それは本当なのか!?」
「はい……プリネ様とツーヤお姉様は”怪盗紳士”ブルブランを討ち取りました……」
「―――リウイ陛下は御一人で執行者No.1―――”劫炎”のマクバーンを討ち取りましたわ。」
「……ゼノとレオはエヴリーヌ達――――”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”と”空の覇者”ファーミシルスに討ち取られた……」
「……そしてノルド高原でオレ達と対峙したアルティナという少女はエリゼとリフィア殿下が討ち取った。」
驚いているリィンにセレーネ、シャロン、フィー、ガイウスはそれぞれ説明した。
「な……っ!?エ、エリゼが……!?」
「そ、そう言えば……脱出の時道を阻む貴族連合の”協力者”がやけに少なかったですわよね……?」
「うふふ、レン達がユミルで半分以上も減らしてあげたお蔭で、リィンお兄さんとアルフィン皇女の脱出も楽になったんだから、感謝してね?それと一人で”C”に勝つなんて、やるじゃない♪見直したわよ♪」
驚いているリィンと戸惑っているアルフィン皇女にレンは可愛らしい微笑みを浮かべた。
「え……ど、どうして俺が甲板でクロウと戦った事を知っているんですか!?」
「…………―――!まさか……”パンダグリュエル”はメンフィルに……!?」
リィンが驚いている中、ある事に気付いたクレア大尉は真剣な表情でレンを見つめ
「大正解♪”パンダグリュエル”はレン達―――メンフィル帝国が”グロリアス”の件同様領邦軍の兵士達を皆殺しにして、制圧した後メンフィル帝国の所有艦にしたわ♪」
レンは笑顔を浮かべてとんでもない事を口にした!
「何だとっ!?」
「み、”皆殺し”って……」
「き、貴族連合の旗艦がメンフィルに奪われただって!?」
「なるほどね~……”パンダグリュエル”にメンフィル兵を潜ませたのはそれが”真の狙い”だったんだ~。」
レンの答えを聞いたトヴァルは厳しい表情をし、エリオットとマキアスは表情を青褪めさせ、ミリアムは真剣な表情でレンを見つめ
「……だからリィンさんがパンダグリュエルに向かう所を見逃していたのですね。」
「―――制圧するついでに救出できる上エレボニア帝国の罪を更に増やせるって寸法ね。」
エマは複雑そうな表情をし、セリーヌは目を細めてレンを見つめた。
「!!レン姫!今、領邦軍の兵士達を殲滅したと仰っていましたが……まさかクロウ達も”殲滅”したのですか!?」
「あ……」
「そ、そう言えばクロウはパンダグリュエルに……」
血相を変えたリィンの言葉を聞いたセレーネとアリサは不安そうな表情をし
「フフッ、心配しなくても”C”を含めた帝国解放戦線のメンバーと”神速”はリウイ陛下の御慈悲によって見逃され、パンダグリュエルから撤退しましたわ。」
シグルーンは微笑みながら答えた。
「よ、よかった~……」
「クロウは生き延びたのか……」
シグルーンの答えを聞いたエリオットとラウラは安堵の表情をし
「……それでレン姫、そろそろメンフィル帝国のご用件―――――エレボニア帝国がメンフィル帝国との戦争を回避する方法をお聞きしたいのですが。」
アルゼイド子爵は真剣な表情で先を促した。
「うふふ、その前に今まで色々と頑張ってきたリィンお兄さんに”ご褒美”をあげるわ♪二人とも入ってきていいわよ♪」
そしてレンが指を鳴らすとエリゼとエリスが部屋に入って来た!
「兄様……それに姫様も……」
「……ご無事で何よりです、兄様。」
エリスは嬉しそうな表情でリィンとアルフィン皇女を見つめ、エリゼは静かな表情で会釈した。
「エリス!?」
「エリスお姉様……!それにエリゼお姉様も……!」
二人の登場にアルフィン皇女は目を見開き、セレーネは明るい表情をし
「兄様……!」
「エリス……!」
互いにかけよった二人は互いを抱きしめ合った。
「……グス……兄様……兄様……!」
「……すまない。俺自身の力で助けることができなかった……俺に力が足りなかったばかりに…………」
「いいえ……いいえ……こうしてまた会えただけでそれだけで十分ですから……それにわたし……今まで兄様に酷いことを……」
リィンの言葉に首を横に振って答えたエリスはリィンを見つめた。
「……わかってる。もう何も言わなくていい……とにかく良かった……こうしてお前を抱きしめられて。レン姫……エリスを助けてくれてありがとうございます…………」
「フフッ、レンは何もしていないわよ。直接エリスお姉さんを助けたのはエリゼお姉さんやリフィアお姉様達だし。」
リィンに視線を向けられたレンは微笑みながら答え
「そうだったのですか……エリゼ、本当にありがとう……」
「―――いえ。私はエリスの姉として当然の事をしたまでです。礼を言うべき相手はエリス救出の為に動いてくれたリフィア殿下を含めたメンフィル帝国の多くの人々です。」
リィンに視線を向けられたエリゼは静かな表情で答えた。一方その様子をアリサ達は冷や汗をかいて見守っていた。
「ハッハッハッ!早速見せつけられちゃったねぇ♪」
「グス……まったくもう……」
「シスコン極まれりだね。」
「ふふ……微笑ましいわね。」
「えへへ……でもよかった。」
「ああ……」
「フフッ、わたくしはちょっと羨ましいですわ……」
「はは……本当に良かったな。」
「はい……本当に……グス……」
オリヴァルト皇子達と共に微笑ましそうに見守っていたアルフィン皇女はエリスに近づいた。
「姫様……姫様もご無事で何よりです。」
「……っ!」
エリスに微笑まれたアルフィン皇女は辛そうな表情でエリスを抱きしめた。
「ごめんなさい!わたくしがユミルに滞在しなければ、ユミルの人々やおじさま達が傷つけられ、貴女が囚われる事もなかったのに……!」
「姫様…………―――お気遣いありがとうございます。ですが私や父様達はユミルの件は決して姫様の責任ではないと思っている……―――それだけは偽り無き私達の想いです。」
「エリス……!」
自分を慰めるエリスの優しさに心を打たれたアルフィン皇女は涙を流してエリスを抱きしめ続けた。
「うふふ、感動の再会も終わった事だし、そろそろ”本題”に入ってもいいかしら、オリビエお兄さ―――いえ、オリヴァルト・ライゼ・アルノール皇子?」
アルフィン皇女が落ち着いた後席に戻るとレンは意味ありげな表情でオリヴァルト皇子を見つめ
「……ああ。その前に……――――此の度は誠に申し訳なかった。私達エレボニア帝国の内戦に、エレボニア帝国とは無関係である貴女達メンフィル帝国を巻き込んでしまった。謝って済む問題でない事は重々承知しているが、この場にはいない父上に代わり、謝罪させて頂きたい。勿論メンフィルが求める賠償や要求も全て呑む所存だ。」
「申し訳ございませんでした……!わたくしがユミルに滞在しなければ、あのような出来事は起こらなかったというのに……!」
「……殿下達の責任ではございません。全ては父―――いえ、”アルバレア公爵家”の責任です!”アルバレア公爵家”はどうなっても構いません!その代わりせめてエレボニア帝国や皇族の方達には寛大な処分をお願いします……!」
オリヴァルト皇子とアルフィン皇女はレンを見つめた後頭を深く下げ、二人に続くようにユーシスも頭を深く下げた。
「殿下…………」
「姫様…………」
「ユーシス…………」
その様子を見ていたアルゼイド子爵は複雑そうな表情をし、エリスとリィンは辛そうな表情をした。
「今更謝った所で正直”意味がない”から、別にレンに謝らなくてもいいわよ。」
「い、”意味がない”って……!」
「殿下達の思いを無下にするのは幾ら何でも殿下達に失礼ではないでしょうか……!?」
呆れた表情をしたレンの非情とも思える指摘を聞いたマキアスとラウラは厳しい表情でレンを睨んだ。
「うふふ、”これ”を見てもまだそんな事が言えるのかしら?エリゼお姉さん、昨日のリフィアお姉様の演説の様子を録ったデータを見せてあげて。」
「―――かしこまりました。」
「私も手伝うわ、エリゼ。」
そして異空間から映像を見せる導力機等を取りだしたレンの指示によってエリゼとシグルーンはそれぞれ用意をした後、帝都ミルスで民達を前に演説をするリフィアの映像をリィン達に見せた。
「こ、これは……!」
「み、みんな、滅茶苦茶怒っているよ……」
「――――もはや民達もエレボニア帝国を滅ぼすべき”敵”と見てますわね……」
「はい………まさかこれ程だったとは……………」
「そ、そんな……」
「これがメンフィルの”怒り”か…………」
「話には聞いていたが、ここまで悪化していたのかよ!?」
「恐らく先日の襲撃でついに怒りが爆発したのでしょうね……」
映像を見ていたジョルジュは目を見開き、エリオットは不安そうな表情をし、シャロンの言葉にクレア大尉は表情を青褪めさせた状態で頷き、トワは辛そうな表情をし、ガイウスは重々しい様子を纏い、トヴァルとサラ教官は厳しい表情で映像を見つめていた。
「自分達に危害を加えられたわけでもないのに、ここまで怒るなんて……民達の仲間意識が強い証拠ですわね。」
「……そしてそれがエレボニアにとって仇になったみたいだね。」
辛そうな表情をしているセレーネの言葉に続くようにフィーは真剣な表情で映像を見つめ
「「「…………………………」」」
アルフィン皇女は辛そうな表情で身体を震わせ、オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵は重々しい様子を纏って映像に集中していた。すると処刑台にいるゼルギウスの前にルーファスが連れてこられる映像になった。
「う、嘘……!?あの人って……!」
「ルーファスさんにゼルギウス将軍閣下!?」
「ま、まさか……!」
「―――”公開処刑”か!?」
映像に映る人物達を見たアリサは目を見開き、リィンは驚き、ある事に察したマキアスは表情を青褪めさせ、ラウラが真剣な表情で声を上げたその時、ゼルギウスは大剣を振り上げた。
「兄上――――――ッ!!」
その瞬間ユーシスが声を上げたその時、ゼルギウスが大剣をルーファスの首目掛けて振り下ろす所でレンが映像を消した。
「さすがにここまで見れば、ルーファス・アルバレアが”どうなった”かはわかるでしょう?」
「そ、それは…………」
「公開処刑をするなんて、異世界ではこんな過去の歴史でやっていたような古臭い事をまだやっているのね…………」
レンの問いかけにエマは辛そうな表情をし、セリーヌは重々しい様子を纏って呟き
「そ、そんな……ルーファスさんが…………」
「惜しい者を亡くしてしまったな…………」
「……女神よ、どうか彼に安らかな眠りを…………」
アルフィン皇女は表情を青褪めさせ、オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏い、アルゼイド子爵はその場で祈りを捧げた。
「………………」
エリスは悲しそうな表情で黙り込み
「兄………上…………う…………く……っ…………」
「ユーシス…………ッ!―――レン姫!どうしてルーファスさんを処刑したんですか!?」
身体を震わせながら涙を流して声を押し殺しているユーシスを見て辛そうな表情をしたリィンはレンを睨んだ。
「どうしても何もルーファス・アルバレアの処刑はアルバレア公爵達に対する”処分”同様”始めから決まっていた事”よ?”戦争回避条約”の中にもアルバレア公爵夫妻、カイエン公爵夫妻並びにそれぞれの家の長男、そして先日リフィアお姉様が処刑したアルティナ・オライオンと”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダをメンフィルに引き渡す事があるし。」
「何だとっ!?」
「え…………ね、姉さんまで!?ま、まさかエリスさんの誘拐の件ですか………!?」
「…………ヴィータもメンフィルのターゲットに入っているのね……」
レンの答えを聞いたトヴァルは厳しい表情で声を上げ、エマは表情を青褪めさせ、セリーヌは複雑そうな表情で呟いた。
「”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダに関しましてはレオンハルト少佐の時同様メンフィルに忠誠を誓うのならば命は助けて、ある程度の自由は許す所存ですよ?彼女に関しましては魔術師としての腕前はそれなりにある上、歌姫でもあったのですから、色々な方法でメンフィルの”利”を生み出す事もできるでしょうし。」
「……………それは…………」
「あのヴィータが負けた相手に忠誠を誓うなんて、どう考えてもありえないわね。」
シグルーンの説明を聞いたエマは複雑そうな表情をし、セリーヌは呆れた表情で呟いた。
「そうそう、”白兎”の貴女と”氷の乙女”のお姉さんもルーファス・アルバレアの死を悲しんだ方がいいと思うわよ?」
「え…………それは一体どういう意味ですか!?」
「!まさか……ルーファスお兄さんも”そう”だったの?」
レンの指摘が一瞬わからなかったクレア大尉は呆けた後血相を変え、ある事に気付いたミリアムは真剣な表情で尋ねた。
「ちょ、ちょっと待ってください!?ま、まさかとは思いますがルーファスさんは……!」
「”鉄血の子供達”の一人だって言うの!?」
ある事を察したマキアスとサラ教官は信じられない表情で声を上げ
「大正解♪――――”鉄血宰相”から与えられた二つ名は”翡翠の城将(ルーク・オブ・ジェイド)”。”紫電”のお姉さんの推測通り”鉄血の子供達”の一人……――それも”筆頭”だったのよ♪」
レンは笑顔で驚愕の事実を答えた!
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