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ロボット選手

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3部分:第三章


第三章

 彼等はじれるあまり判断を誤った。甘いボールを甘い場所に投げてしまったのだ。
 それを観てだ。彼は。
「もろた!」
 そのボールを一気に振り抜いた。そうしてだ。
 ホームランを放ちだ。そのピッチャーから点を奪った。これがシリーズの流れを決めてしまった。
 阪神は日本一になり彼は見事シリーズMVPに輝いた。言うまでもなくロボットとしてははじめての日本シリーズMVPである。
 彼は甲子園で胴上げされた。その時だ。
 ナイン達からは苦笑いと共にこう言われた。
「おい、重いな」
「やっぱりダイエットした方がいいだろ」
「それに身体も硬いぞ」
「ロボットやから仕方ありまへんわ」
 これが彼の言葉だった。
「けどこの体重でホームラン打って硬いからデッドボールも平気でっせ」
「ははは、そうだよな」
「確かにそうだよな」
 彼のその言葉にだ。ナインもついつい笑ってしまった。彼の力で阪神は日本一になったのだ。そしてそれだけではなくだった。
 チームの雰囲気もだ。彼によってだ。
 明るくなりそれでいて。練習もよくなっていた。
 そうしてだ。その次の年もまた次の年もだった。
 阪神はペナントを制していった。日本一にもなった。まさに黄金時代だった。オマリーはその中でだ。またしても言うのであった。
「もう巨人の時代やないで!」
「そや、阪神の時代や!」
「巨人はもう終わったんや!」
「あんなチームはカスやカス!」
 こうだ。他の選手達も言う。まさにオマリーの言う通りだった。
 オマリーは練習を続け成績を残しチームを優勝に導いていった。だが、だった。
 やがて選手として満足に動ける限界が来た。それを受けてだ。
 彼は引退を決意した。その引退試合においてだ。
 最後の最後の打席でもホームランを打ちだ。チームを勝利に導き。彼は試合終了後グラウンドにおいてマイクを手にしてだ。甲子園の満員の観客達に言うのだった。
「おおきに!」
 まずはこの一言からだった。
「わてロボットやけれど選手として愛してくれた皆さんおおきに!」
 こうだ。涙を流しながら言うのであった。
「阪神ファンはサイコーや!わて阪神に入ってよかったですわ!」
「あんたは確かにロボットだ。けれどな!」
「阪神の選手だよ!」
 こうだ。ファン達はその彼に応えて声をかけた。
「最高の阪神の選手の一人だったよ!」
「野球選手だったんだよ!」
「ロボットでも?」
 これにはだ。オマリーの方が驚いた。涙に濡れたまま呆気に取られた顔になってだ。そのうえで彼等の言葉を聞いてであった。
 彼はだ。こう言ったのだ。
「阪神の選手。わてが」
「そや。阪神の為に野球してくれて夢見せてくれた!」
「それが証拠や!」
「あんたは最高のロボットで最高の阪神の選手やったで!」
 熱い声援だった。まさに彼等の愛する阪神の選手に対するそれだった。
 そしてだ。彼等は。
 グラウンドに雪崩れ込みそのうえでだ。ナイン達と合流して。
 オマリーを囲みそれから。高々とあげたのだった。
「おおきに!」
「あんたのことは忘れんで!」
「絶対にや!」
「日本一有り難うな!」
「あんたのお陰や!」
 こうだ。彼がロボットかどうかなぞ最早どうでもよかった。彼を阪神の選手として胴上げしたのだった。
 胴上げをされながらオマリーは宙を舞いつつ号泣していた。そしてだった。
 その涙の中でだ。こう叫んだ。
「ほんま、阪神ファンは最高や!」
 こうして彼の阪神の選手としての活躍は終わった。だが彼はその後でだ。
 阪神記念博物館、阪神の歴史資料や選手達の逸話、使用していたユニフォームやグローブ、バットなどを集めたそれを造りだ。その館長になり言うのだった。
「最高のチームの為にこれからも働きますねん」
 そして自分がロボットでありその彼を温かく受け入れた彼等のことも話すのだった。オマリーはロボットである。だがそれと共にだ。彼は素晴しき野球選手、阪神を愛する野球人だった。その心は紛れもなく人間の熱いものだった。


ロボット選手   完


                 2011・7・17
 
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