英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第68話
~パンダグリュエル・主賓室~
「………………?………どちらさま?どうぞ入ってください……」
「(こ、この声は……)――失礼します。」
声を聞いたリィンは驚いた後部屋に入ると何とアルフィン皇女が部屋にいた!
「え――――……………………」
リィンの姿を見たアルフィン皇女は呆け
(あら、あの娘は。)
(ア、アルフィン皇女!?一体どうしてここに……)
(何らかの為に連れてこられたと思うのですが……)
(何にせよ、これで彼女を取り返すチャンスができたわね。)
アルフィン皇女を見たベルフェゴールは目を丸くし、メサイアは驚き、リザイラとアイドスは考え込んでいた。
「やっぱり……殿下でしたか。まさかとは思いましたが……」
「……っ…………リィン…………さん…………リィンさん……っ!リィンさん、リィンさんっ!!」
リィンがアルフィン皇女を見つめているとアルフィン皇女は涙を流しながらリィンにかけより、身体をリィンの胸に預けた。
「殿下……」
「ど、どうしてここに……!ああ、夢でも見てるみたいです!ぐすっ……本当に夢とか幻なんて言いませんよね……!?」
「ええ、もちろん。……半月ぶりくらいですか。本当によくご無事で……すみません……俺が不甲斐なかったばかりに。」
「ぐすっ……どうか謝らないでください。こうしてまた会えただけでわたくし……ううっ……」
安堵の涙を流し続けるアルフィン皇女を慰めるようにリィンはアルフィン皇女の頭をポンポンと優しく叩いて、髪を優しく撫でた。
「……心細い思いをさせてしまったみたいですね。頼りないかもしれませんが……俺はちゃんとここにいます。どうか安心してください。」
その後リィンはアルフィン皇女に今までの経緯を説明した。
「そうですか……あの後、そんな事が。」
「ええ……仲間達とは無事、何とか再会できました。ですが昨日、カイエン公になかば強制的に招待されて……俺一人が乗艦したんです。」
「そうですか……妙に慌しい雰囲気でしたけどそんな事があったなんて。ふふ、結果的にですけど公爵には感謝しないと。こうしてリィンさんと再び巡り合えたのですから。」
「……すみません。助けに来たわけではなくて。それに……今回の件をメンフィル帝国が知ればエレボニア帝国に対する怒りの炎に油を注ぐ事になると思います…………」
「……………領邦軍、正規軍共に”殲滅”できるほどの圧倒的な戦力を揃え、更にはリウイ陛下を始めとした多くの勇将達が率いるメンフィル帝国軍によるエレボニア帝国侵攻、ですか。わたくしがユミルに滞在しなければ、そのような事態に発展しなかったのでしょうね……」
リィンの話を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情で肩を落とし
「……………………その―――殿下。付かぬ事をお聞きしますが……」
周囲を見回してある人物がいない事に気付いたリィンはアルフィン皇女を見つめて尋ねた。
「……わかっています。エリスの事ですね?残念ですが、エリスはこの船には乗っていません。おそらく、わたくしの両親たちと共にいると思います。」
「皇帝陛下達と……!?」
「父や母、弟たちが幽閉されているのはご存知かと思いますが……どうやらエリスは、その幽閉場所に移されたみたいなんです。皇帝家の身の回りの世話をする侍女という名目にしたようです。」
「そうだったんですか……少し安心したような、そうでもないような気分ですね。」
アルフィン皇女の話を聞いたリィンは複雑そうな表情をした。
「ふふっ……そうですね。わたくしも同じ気分です。でも、メンフィル帝国がエリス救出の為に動いているとの事ですから、もしかしたら案外早くエリスがメンフィル帝国によって救出されるかもしれませんわね。……メンフィルが救出するのはエリス”のみ”でしょうね。いつエレボニア帝国に戦争を仕掛けてもおかしくないメンフィル帝国がエレボニア皇族を救出する可能性は絶対にありえませんわ…………―――いえ、それどころかエレボニア皇族であるお父様達に危害を加えるかもしれませんわね…………わたくしがユミルに滞在していたせいで…………」
「殿下……しかし……どうして殿下だけこちらの戦艦に?何か事情がおありなんですか?」
寂しげな笑みを浮かべた後辛そうな表情で身体を震わせるアルフィン皇女を辛そうな表情で見つめたリィンは別の事に意識を向けて雰囲気を変える為に話を変えた。
「どうやら貴族連合の……カイエン公の狙いみたいです。内戦が始まって占領した地域にわたくしが顔を出して声をかける……そうする事で民の反発を抑え込もうとしているのでしょう。」
「……それは…………」
アルフィン皇女の説明を聞いたリィンは表情を厳しくした。
「別にその程度の事なら構わないと思っているんです。内戦の最中、不安な人々を少しでも安心させることができればわたくしだって……」
「……だから、無理はしないでください。傀儡となって民を騙すなんて気分がいいものじゃないでしょう。おまけに家族とも会えずにエリスとも離れ離れになって……」
「リィンさん……もう……本当にお見通しなんですから。」
両肩に手を置かれて慰める言葉をかけられたアルフィン皇女は苦笑しつつもどこか嬉しそうな様子でリィンを見つめた。
「そ、それはともかく……これからどうなさるんですか?このままカイエン公の言いなりにはなりませんよね?」
「それは……―――正直、迷っています。このまま内戦が続けば多くの人が苦しむ事になる。しかも貴族連合はメンフィルに対する”切り札”のような物も持っている。だからといって貴族連合に味方するのが正しいとは思えない。それは正規軍に対しても同じです。」
「…………それは……」
「そして、殿下がこんな風に利用されようとして……エリスにも不自由をかけている状況を放っておくわけにはいきません。」
「リィンさん……」
アルフィン皇女が複雑そうな表情でリィンを見つめているとリィンはアルフィン皇女に背を向けた。
「……12年前にシュバルツァー家に引き取られて。俺はずっと……あいつとエリゼの兄であり続けたんです。父と母に愛されて……二人の兄である事を通じて俺は、俺になれたんだと思います。……殿下も見られたでしょう?俺の”あの姿”を―――」
「あ……」
リィンの言葉を聞いたアルフィン皇女はユミルで変貌し、猟兵達を殺戮したリィンを思い出した。
「幼い頃、似たような事があって……二人は怖かったはずなのに変わらずに俺と接してくれました。―――あの時に誓ったんです。何があっても二人は……妹達だけは守りぬいて見せると。だから……つい考えてしまうんです。たとえ自分がどうなっても……たとえ”信念”を曲げても妹達を優先すべきじゃないかって……」
「……リィンさん……………………」
リィンの言葉を聞いたアルフィン皇女は複雑そうな表情で黙り込んだ後決意の表情でリィンを見つめて声を上げた!
「―――兄様、しっかりしてください!」
「……え……」
アルフィン皇女の口調や言葉を聞いたリィンが呆けたその時アルフィン皇女はリィンを後ろから抱きしめた。
「で、殿下……?」
「エリスの事は良く知っています!たぶん兄であるリィンさんが知らないようなことも……!8年前のことにしても……もう、大体のことはわかります!その事が原因で、リィンさんが剣の道に進んだことも……!リィンさんがそれをトラウマに思っていることも……!あの子は―――エリスはそのことを申し訳なく思いながらどこか心地よく感じていた……!貴方の関心を、貴方の責任感を自分が独占していることに……それはエリゼさんも恐らく同じでしょう。でも、それはエゴに過ぎないって二人も気付いていたんです!」
「……!」
「あの子が女学院行きを決めた理由は他にもありますけど……それでも、これ以上リィンさんを無用の罪悪感で縛りたくない―――それが一番の理由だったんです!エリゼさんが侍女の道を選んだのもエリスと同じ理由だと思います!」
「……それは……」
「……だからリィンさん。どうかエリゼさんとエリスを”理由”にしないであげてください。だって二人は、貴方が本当に望む道を見つけることを誰よりも願っているから……だから、貴方が士官学院に入って共に歩む仲間と出会って―――――エリスは妬いたり寂しく思いながらも心から嬉しそうだったんです……!それはエリゼさんもきっと同じ気持ちです!双子なのですから………!」
「……ぁ………」
アルフィン皇女の言葉を聞いたリィンはアリサ達と談笑している自分を見つめるエリゼとエリスの目を思い出した。
「……そうか…………守っていたはずなのに……守られていたんだな……エリゼとエリスだけじゃない……父さんも、母さんも、ユン老師も……士官学院のみんなにも……」
リィンは仲間達の顔を次々と思い出した。
(そうか……俺に足りなかったのはこれだったのか……人が人に影響を与え、支え合い、お互いがお互いを生かし合う……力以前に、そんな当たり前のことすら俺にはわかっていなかった……師匠にもらった中伝……やっぱり早すぎたんだな……エイドスさんの……”空の女神”のあの言葉はこの事だったのか……)
”呑み込まれない”方法はリィンさん、”貴方自身が気付かなければならない”のでこれ以上は教えられ……――いえ、教えては”達する事ができない”のです。
(でも……今なら。この心に宿った光があればきっと……!)
強き光の心を手に入れたリィンは新たな境地に達した!
(あら?ご主人様……何だか以前と比べて雰囲気が変わった気がしない?)
(え、ええ………私も感じました。)
(…………ふふふ、なるほど。どうやら新たなる”光”を手に入れたようですね。)
(リィン………………フフッ、ますます貴方の事を愛おしくなったわ…………)
リィンの様子にベルフェゴールとメサイアが戸惑っている中、リザイラとアイドスはそれぞれ微笑んだ。
「リィン、さん……?んんっ!?……ん……ちゅ……ふぁ……れる……リィンさん…………ちゅる……」
アルフィン皇女が戸惑っている振り向いたリィンはアルフィン皇女と深い口付けを交わし、リィンの突然の行動に驚いたアルフィン皇女だったが幸せそうな表情でリィンと深い口付けを交わした。
「ありがとう……気付かせてくれて。殿下の―――アルフィンのおかげだ。」
「あ……~~~っ~~~………」
リィンに見つめられたアルフィン皇女は顔を真っ赤にしてリィンから視線を逸らした。
「そろそろ俺は行きます。これ以上待たせたら仲間達に悪いですから。」
「そう、ですね……ふふっ、もう少しこうしていたかったですけど。……どうかお気をつけて。エリスの事はお任せ下さい。カイエン公と取引をしてでも何とか解放して―――」
リィンの言葉を聞いたアルフィン皇女は寂しげな笑みを浮かべた後決意の表情をしたがリィンが首を横に振った。
「え……?」
「当然、殿下も一緒です。妹の親友を……俺に想いを寄せてくれる女性をこれ以上、こんな場所に置いておけません。何とか切り抜けますからどうか俺について来て下さい。」
「あ……………………はいっ……!」
リィンの言葉に呆けたアルフィン皇女だったがすぐに嬉しそうな表情で力強く頷いた。
「それでどうやってこの船から脱出を?」
「甲板にヴァリマール―――”灰の騎神”が拘束されています。そこまで辿り着ければきっと活路が見出せるはず……まずはこのエリアから目立たずに抜け出せる方法を探ってみましょう。」
「了解しましたわ。ふふっ、まさかリィンさんと逃避行することになるなんて……エリスやアリサさん達に知られたら完全に妬かれてしまいますね。」
リィンの話を聞いたアルフィン皇女は微笑みを浮かべてウインクをした。
「はは……それじゃあ行きましょう。」
いつもの調子に戻ったアルフィン皇女に安堵を感じたリィンは苦笑した後行動を開始した。
リィンがアルフィン皇女と共に脱出手段を探し始めたその頃、メンフィル帝国軍はエリスの救出、そしてエレボニア帝国に対する”報復”をする為に帝都ヘイムダルを襲撃していた……!
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