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SAO オンラインゲームの中で拳闘士は生き残れるのか?

作者:ハト胸
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第一層ではやることがない!

 
前書き
新屋樹
 プレイヤーネーム:Ituki
 Lv1 
 スキル:片手剣 気配察知 

 
 「ここが、ソードアート・オンラインの世界・・・」

 芽場の依頼を受けてから、あっという間に製品版のサービス開始日になっていた。
 俺はナーブギアを被り、アインクラッドへ来ているのだ。

 身長体格は現実世界のままだが、顔は弄らせてもらった。
 鼻を高くして、目を大きく。髪と瞳の色を青に変更したのだ。

 服装は布のシンプルなもの。濃いグレーだ。その上から革の胸当てを装備している。
 手には指貫グローブ、足はブーツ。そして背中には、片手直剣が背負われている。

 見るからに初心者。いや、そのままなんだけどな。
 見るからにというか、見たまんまと言うか。βテストを受けられて奴なんてこの中の10人に一人の割合だ。じゃあ皆初心者ってことでいいじゃねーか。と単純解決する。

 「先ずは・・・、市場でも覗くか?」

 今日は休日にしてはいるが、夕方からロードワークに出ようと思っている。
 なので、5時にはログアウトしなければならない。
 どうせ俺は練習や試合の関係上、頻繁にインできない状況が続くため、先陣切って攻略するなんて事は出来ないだろう。
 目標としては、マイペースに行くことだ。あと、拳闘士のスキルを見つけること。
 芽場は“拳闘士”はエクストラスキルだって言っていた。つまり通常では出現しない物で、条件を満たさなきゃいけないんだよな。
 俺はこの世界で剣で戦うつもりは無い。剣の世界をあえて拳で攻略するのが男の夢ってもんだろ。
 そんな、一風変わったプレイスタイルがあってもいいと思うんだ。
 それに、その方が俺は強いだろうしな。

 「おお~、焼き鳥とか売ってんのか」

 市場というか、露店が立ち並んでいる。沢山のプレイヤーでひしめき合い、そこら中でパーティ勧誘やフレンド勧誘などの声が聞こえてくる。
 俺はその中をつっききって、料理が売っている屋台の前に立った。

 「らっしゃい!なんにするんだ?」

 屋台の親父はNPC──ノンプレイヤーキャラクターと言って、決められた台詞や行動しかしない登場人物、例えるなら村人Aみたいな感じだ。
 頭に鉢巻、筋骨隆々で腕まくり、がたいのいいおっちゃんは屋台のにぴったりだ。

 「そうだな、焼き鳥2本くれ」
 「まいどありっ!二本で4コルな」
 「ほいよ。あんがとな」
 「確かに貰ったぜ。またこいよ~」

 小さめの紙袋に、焼き鳥2本。焼き鳥つっても、この肉は鳥なのか?たしかに美味いが、いまいち怪しいところだ。2本でそんなに腹も膨れない。
 このSAOの中では、食べ物を摂取すると満腹度がたまる。それは現実世界にも反映されるらしく、ログアウト前に飯を取ると現実で食事を取れなくなるって事も起こるかもしれないんだそうだ。
 その逆も然り。ゲームの中でも腹が減るってのは斬新だよな。

 店での購入方法は三つ。ウィンドウでの操作、店主との掛け合い、商品を持ったまま店をでる。
 この世界では万引きってものは存在しない。やりようがないからな。商品を持ったまま店を出ると、その分の代金が所持金から自動で引かれるって訳だ。これが所持金が足りないと商品は自動で店側に返却され、そいつは街中に存在するガーディアン(鬼みたいな強さを誇り、誰も勝てないんだそうだ)に追い掛け回されるって話だ。プレイヤーが店を出している場合は、商品を購入しないで持ち出す事は出来ないらしい。
 
 焼き鳥を頬張りながら、俺は露店通りを抜けた。
 この街は広い。たしか、東京都の世田谷区がそのまま入る大きさだっけか?いや、それはこの第一層の話か。
 そうだ、この街は確か半径1キロだったっけか?たしかそんなもんだ。
 あれ?なんだか狭く感じるのは気のせいか?

 「おお、もう外に出ちまった」

 いろいろ考えている間に、街の外へ出ていたようだ。
 Out Areaという表記が頭上に上がっている。

 「ほ~、こりゃすごいな・・・」

 どこまでも広がっていそうな草原が、其処にはあった。
 風に草が靡いている。しゃがんで触ると、その質感も若干の違いがありながらも、現実に酷似している。さすがに匂いまでは、正確に表現できなかったみたいだが。
 
 「あれが、モンスターか・・・」

 背中の鞘から剣を抜いておく。今の俺のスキルは、片手剣と気配察知。ソロで活動するにはこれがいいんだとさ。芽場が最初の進め方くらいは教えてあげようつって、少し話してくれた。
 ちょっと先に、青紫色の猪がいる。フゴフゴと鼻を鳴らしながら、何かを探しているように頭を振っている。

 「さてと、行くか」

 ダッシュ。地面を蹴って前へ。グングンと速度が上がるが、一定のところで留まる。まだ現実の体とは違うようだ。ステータスの限界って奴か?Lvを上げればなんとかなりそうだな。

 「先ずは、小手調べ」

 戦闘は、モーションを撮る時に何度か行っている。その時は素手で、2mもの怪物と戦ったりしたもんだ。だから、足運びなんかは覚えてる。モンスターがどの程度反応してくるのかも。

 走りながら構えた剣が、光を帯びる。
 システムに定められた始動モーションを取ると、武器が光を帯びてソードスキルが発動する。
 すると体が自動で動いて、通常攻撃より威力が遥かに高いスキルが発動するんだ。

 「おらっ、と・・・。どうだ!」

 斜めの一閃。片手剣 基本単発技 スラント。上から斜めの軌道を描いた振り下ろしだが、走る勢いと地面を蹴った勢いが加算され、猪の鼻面に当たったと同時に大きな衝撃を生む。

 ぷぎー、と情けない声を上げてよろめいた猪。後退した猪を追って、前へ。左下へ振り下ろした剣を、中段で横一閃。通常攻撃だが、これで十分だ。
 猪のHPバーが全部削れた。同時に、仰け反った猪が不自然な格好で止まり、ポリゴンの欠片へと変わり飛び散る。

 「ふー、なかなか出来るもんだな?」

 汗を掻いたんでもないが、額を右手で拭う。剣を背中の鞘に仕舞うと、ぐぐっと伸びをひとつ。
 いい感じに動けている。速度の面では不満がでるが、戦闘システムは上々って感じだ。

 Lv1 HP250/250

 これが今の俺のステータス。今の戦闘で経験値が多少入ったが、同レベルの敵を一体屠ったところで俺のLvは上昇しない。ま、そんなもんだ。Lvを上げるには何十体も倒さなきゃならないんだからな。

 「さて、と。・・・時間になるまで戦うか」

 20メートル前方に湧いた猪をターゲットに、地面を蹴って駆け出した。





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