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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第65話(第一部終了)

~シュバルツァー男爵邸~



「――――改めて自己紹介をさせて頂く。メンフィル王公領セルノ・バルジア統合領主”ファラ・サウリン公爵家”の当主夫妻の子息、エフラム・ファラ・サウリン・マーシルンだ。此の度はユミル防衛の部隊の指揮を取る者の一人として本国より派遣されてこちらに参上した。」

「エフラムの双子の妹、エイリーク・ファラ・サウリン・マーシルンと申します。どうぞお見知り置きを。」

「―――メンフィル王公領フレスラント領主”ナクラ公爵家”の子息、ヒーニアス・ナクラ・マーシルン。エフラム達と共にユミル防衛の部隊の指揮を取る一人として本国より派遣された。」

「同じくユミル防衛の為に本国より派遣されたヒーニアスお兄様の妹、ターナ・ナクラ・マーシルンです。以後お見知り置きをお願いします。」

応接間にはⅦ組や協力者の面々はそれぞれ壁を背に立った状態で席についているエフラム達やシュバルツァー男爵とルシア夫人、そしてエフラム達の背後にそれぞれ控えている相当の使い手である雰囲気をさらけ出している騎士達の様子を見守っていた。



「……ユミルの領主、テオ・シュバルツァーと申します。皇子殿下達がはるばる世界を越えていらっしゃったというのに満足な歓迎もできず、誠に申し訳ございません。」

「気遣いは不要だ。私達は”現在は”ユミルを含めたメンフィル帝国領を守護する為に本国より派遣されてきたのだからな。」

「今後郷の警備などは私達が務めますし、エレボニア帝国軍が現れたら私達が撃退しますので、シュバルツァー卿達は普段の生活をして頂いて結構です。ただ、シュバルツァー卿は狩りが趣味だと聞いておりますが……えっと、その…………」

シュバルツァー男爵の言葉にヒーニアスは冷静な表情で答え、ターナは説明を続けた後言い辛そうな表情をし

「シュバルツァー卿……いやユミルに住まう者達には申し訳ないがエレボニア帝国との外交問題が決着するまでは狩り等単独で山中に出る事は控えて貰う。山中にもメンフィル軍を展開している事もあるが、シュバルツァー卿達自身の身を俺達の警戒を潜り抜けてくるかもしれないエレボニア帝国の刺客から守る為でもある。」

言葉を濁しているターナの代わりにエフラムが答えた。



「……承知しました。殿下達の背後に控えている方々はもしかして殿下達の護衛ですか?」

シュバルツァー男爵は静かな表情で頷いた後エフラム達の背後に控えている騎士達に視線を向けた。

「そう言えばデュッセル達の自己紹介はまだだったな。―――デュッセル。まずはお前からだ。」

「御意。エフラム皇子殿下の親衛隊の隊長を務めるデュッセルと申す。殿下達と共にこの郷に災厄を持ち込む不届き者達は全て滅するゆえ、ご安心なされ。」

エフラムの背後に控えている騎士―――デュッセルは重々しい口調で自己紹介をしてシュバルツァー男爵たちに会釈をし

(クッ、滅茶苦茶渋いオジ様じゃない……!あのアルゼイド子爵とも並ぶんじゃないの!?)

(サラ、本音本音。)

(ったく、相変わらずお前の趣味は理解できねぇぜ……)

真剣な表情でデュッセルを見つめるサラ教官の言葉を聞いたフィーとトヴァルは呆れた。



「―――エイリーク様の親衛隊の隊長を務めるゼトと申します。以後お見知り置きをお願いします。」

エイリークの背後に控えている真面目そうな雰囲気を纏わせている青年の騎士―――ゼトはシュバルツァー男爵達を見つめて敬礼をした。

「ちなみにゼトはエイリークの婚約者でもある。」

「まあ……」

(ええっ!?)

(親衛隊の隊長が皇女と婚約しているだと!?)

(何でメンフィルの皇族って結婚相手の身分をそんなに気にしないんだ……?)

口元に笑みを浮かべたエフラムの説明を聞いたルシア夫人は目を丸くし、エリオットとユーシスは驚き、マキアスは疲れた表情をし

(一体どんな経緯があったのかしらね?)

(騎士と姫の婚約なのですから、もしかしたらサーガになるような内容かもしれませんわね♪)

(うふふ、レーヴェ様とプリネ様がお付き合いを認められた話より凄い内容かもしれませんわよ?)

(ふふっ、ちょっと気になりますね。)

アリサやセレーネ、シャロンとエマは興味ありげな表情でエイリークとゼトを見つめ

「あ、兄上!今はその話は関係ないでしょう!?」

「……エフラム様。不必要な情報の開示はするべきではないと思うのですが。」

周りから興味津々な様子で見つめられている視線や興味ありげな様子で小声の会話をしているアリサ達の声が聞こえていたエイリークは頬を赤らめて慌てた様子でエフラムを見つめ、ゼトは呆れた表情で指摘した。



「そうか?ゼトはモテるから、婚約者のお前の為にも今の内に言っておくべきだと思ったのだが。」

「そ、それとこれとは関係ありません!」

不思議そうな表情をしているエフラムの答えを聞いたエイリークは疲れた表情で指摘した。

「全く、貴様は一体何を考えている…………―――ジスト、次はお前だ。」

「あいよ。―――俺の名はジスト。ヒーニアス皇子の親衛隊の隊長を任されている。傭兵からの成り上がり者だが、皇子達と一緒にこの郷を全力で守るつもりだから安心してくれ。」

ヒーニアスに促された見た目は騎士に見えるデュッセル達と違い、傭兵が身に纏っているような服装で背中に巨大な大剣を背負っている者――ジストは軽く手を挙げて自己紹介をした。



(……メンフィルは実力主義とは聞いていましたが、まさか傭兵も親衛隊の隊長に成り上がる事もできるとは驚きましたね。)

(そっかな?オジサンなら平気でやりそうだと思うけど。)

真剣な表情でジストを見つめるクレア大尉の小声を聞いたミリアムは不思議そうな表情で指摘した。

「フフ、最後は私ですね。ターナ様の親衛隊の隊長を務めるシレーネと申します。シュバルツァー卿達が以前お会いした事のあるシグルーンとは同期の関係でもあります。」

ターナの背後に控えている女性騎士―――シレーネは柔らかな微笑みを浮かべて自己紹介をし

(シグルーン……”聖魔皇女”の親衛隊の副長を務めているあの騎士の事ね。)

(しかも親衛隊の隊長を務めているのだから、もしかしたらシグルーン中将よりも実力は上なのかもしれないわね……)

セリーヌの小声を聞いたエマは不安そうな表情でシレーネを見つめた。


「……よろしくお願いします。このような田舎にこれ程の戦力を割いて頂き、痛み入ります。」

デュッセル達の自己紹介が終わるとシュバルツァー男爵はエフラム達を見回して会釈をし

「フフ、田舎だなんて謙遜しすぎですよ。シュバルツァー卿もご存知の通り、シュバルツァー家の長女のエリゼはリフィアお姉様のお目付け役と共に専属侍女長を務めていますし、長男のリィンさんは”七大罪”の一柱、”精霊王女”、”女神”と交流を深め、メンフィルが目指す理想―――”光と闇の共存”に大きく貢献しています。そして何よりシュバルツァー家は将来クロイツェン州全土を納める事になるのですから、謙遜する事はありませんよ。」

シュバルツァー男爵の言葉を聞いたターナは微笑みながら答えた。

「え……」

「何だとっ!?」

「シュ、シュバルツァー家がクロイツェン州全土を納める事になるって……」

ターナの口から出た予想外の話にルシア夫人は呆け、ユーシスは信じられない表情で声を上げ、エリオットは不安そうな表情をし

「……どうやら既に”エレボニア帝国を滅ぼした後の事”を考えているようね……」

「………………」

セリーヌは目を細め、サラ教官は厳しい表情で黙り込んだ。



「―――ターナ、第三者を前に余計な情報を口にするなといつも言っているだろうが!?」

「あ”。ご、ごめんなさい、お兄様。」

「まあまあ……遅かれ速かれ”Ⅶ組”の皆さんは”戦争回避条約”を知る事になるでしょうから、その一部を教えた所でそんなに問題はないかと思いますよ、ヒーニアス皇子。」

ヒーニアスに怒鳴られたターナは表情を引き攣らせた後申し訳なさそうな表情で謝罪し、エイリークは苦笑しながらヒーニアスを諌めようとしていた。



「せ、”戦争回避条約”……?」

「……まさか、エレボニア帝国がメンフィル帝国との戦争を回避する為の条約でしょうか?」

エイリークの言葉が気になったアリサは不安そうな表情をし、クレア大尉は真剣な表情で尋ねた。

「―――そうだ。そしてその条約の中にはメンフィル帝国にクロイツェン州全土を譲渡する事や”アルバレア公爵家”の爵位剥奪も入っている。」

「ほえっ!?」

「ア、”アルバレア公爵家”の爵位剥奪って……!」

エフラムの答えを聞いたミリアムは驚き、マキアスは信じられない表情でユーシスに視線を向け

「……爵位剥奪とは一体どういう意味なのだ?」

「……―――爵位剥奪とは”貴族の爵位”を剥奪される――即ち”平民”に落とされるという事です。」

「…………っ…………!」

「ユーシスさん……」

不思議そうな表情をしているガイウスの疑問にクレア大尉は複雑そうな表情でユーシスに視線を向けながら答え、辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせているユーシスに気付いたエマは辛そうな表情をし

「エレボニア帝国に全面的に非があるとはいえ、幾ら何でもえげつなさすぎる内容じゃねぇのか……!?」

「それに”一部”と言う事はまだ他にもあるという事ですわね……」

トヴァルは厳しい表情でエフラム達を見つめ、シャロンは静かな表情で呟いた。



「――――!!エフラム皇子殿下、先程”クロイツェン州全土”と仰りましたがまさかその中には”レグラム”も入っているのですか!?」

「あ……」

「そ、そう言えばラウラさんの故郷―――”レグラム”はクロイツェン州に属していますね……」

その時ある事に気付いたラウラは血相を変えて声を上げ、アリサは呆け、セレーネは不安そうな表情をし

「当然入っている。」

「ちなみに条約の中には内戦に加担したエレボニア帝国の貴族達のメンフィル帝国への帰属は許可しないという内容もありますが、”アルゼイド子爵家”は中立の為、メンフィル帝国への帰属は許されていますから”アルゼイド子爵家”はそのままレグラムの領主であり続けられますから、その点はご安心下さい。」

「………………」

エフラムの後に答えたエイリークの説明を聞いたラウラは複雑そうな表情をした。



「……エイリーク皇女殿下。先程内戦に加担したエレボニア帝国の貴族達のメンフィル帝国への帰属は許可しないと仰りましたが……その者達はどうなるのですか?」

「――――メンフィル帝国領となったクロイツェン州にそのまま住みたいのならば爵位を剥奪して平民に落とし、それが不服ならエレボニア帝国に引き取ってもらい、エレボニア帝国領に住んでもらう事になります。」

「何ですって!?」

「い、幾ら何でも酷いよ……」

シュバルツァー男爵の質問に答えたエイリークの説明を聞いたサラ教官は厳しい表情で声を上げ、エリオットは不安そうな表情をした。



「フン、酷いのはどちらだ?こちらはエレボニア帝国に対して敵対行動は取っていない上、宣戦布告もせずにメンフィル帝国領を襲撃した挙句、領主夫妻に危害を加え、メンフィル帝国の貴族の子女の誘拐までしたのだからな。そして極めつけは先程の貴族連合による襲撃並びに脅迫による誘拐行為だ。むしろエレボニア帝国は、メンフィル帝国との戦争を回避できる方法をエレボニア帝国に対して相当な怒りを抱いているメンフィル帝国自身が提案してやっただけでも感謝すべきだ。」

「…………………」

そして鼻を鳴らして不愉快そうな表情で呟いたヒーニアスの正論を聞いたその場にいる多くの者達は辛そうな表情や複雑そうな表情で黙り込んだ。



「―――どの道唯一虜囚の身でないエレボニア皇族であるオリヴァルト皇子とも合流できていない貴様らとこれ以上語る価値はない。―――失せろ。」

「お兄様!何もそんな言い方をしなくても……!」

Ⅶ組の面々を見回したヒーニアスの言葉を聞いたターナは真剣な表情で指摘し

「……まあ、ヒーニアスの言っている事も一理ある。シュバルツァー卿とお前達の学院の”常任理事”を務めているリウイ祖父上の顔を立てて、同席を許したが今からシュバルツァー卿と話す事は”メンフィル帝国内の話”だ。悪いが今すぐ退出してくれ。当然ツーヤの妹とはいえ、現在はエレボニア帝国の士官学院に所属しているセレーネもだ。」

「それと私達が来た事でユミルに滞在できるのかどうかを心配していると思いますが、メンフィル帝国人であるセレーネは当然ですが、セレーネ以外の皆さんのユミルを含めたメンフィル帝国領の滞在はリウイ祖父上が許可を出していますので、好きなだけ滞在してもらって結構です。」

エフラムはアリサ達を見回して指示をし、エイリークが説明を捕捉した。

「……行くわよ、みんな。」

そしてサラ教官が促し、アリサ達は応接間から退出した。



「むー!何なんだよ、あのヒーニアスって皇子!ユーシスでも比べ物にならないくらい滅茶苦茶嫌味な奴だね!」

応接間を出て別の部屋で待機し始めたミリアムは頬を膨らませ

「口を慎んで下さい、ミリアムちゃん。不敬罪に問われてもおかしくありませんよ?」

「ぶ~……!」

クレア大尉の指摘を聞き、不満げな表情をしていた。



「……あのヒーニアスって皇子はともかく他の皇族達はそれなりに話せそうな雰囲気だったな。特に皇女達なら、わりと色々と教えてくれるんじゃねえか?」

「そうですわね……ただ、護衛の方々が私達と皇族の方達との接触を許してくれるかが問題ですが。」

「……今は話が終わるのを待って、後で男爵閣下達にどんな話だったか聞きましょう。」

トヴァルの意見にシャロンは静かな表情で頷いた後考え込み、サラ教官は目を伏せて呟いた。

「……………エレボニア帝国がメンフィル帝国との戦争を回避する条約を呑めば、アルゼイド家はメンフィル帝国に帰属しなければならないのか……」

「ラウラ……大丈夫?」

複雑そうな表情をしているラウラの言葉を聞いたフィーは心配そうな表情をした。

「フフ、すまぬな、フィー。そなたは家族を失ったばかりだというのに、私は祖国が変わるだけでこんなにもショックを受けるとは何と情けない事か。」

「ん……わたしは大丈夫だから、別にいい。」

苦笑するラウラの言葉を聞いたフィーは静かな表情で答えた。



「―――すまない、ラウラ。俺がもっと早く実家に戻り、父の暴走に気付いて父を止めていればこのような事にはならなかった…………」

その時ユーシスは辛そうな表情でラウラを見つめて頭を深く下げ

「……私の事は気にするな。それよりそなたは平気なのか?先程の”戦争回避条約”の件もそうだが、ルーファス殿が………」

「…………メンフィル帝国の動きを知り、こうなる事は覚悟していた。当然虜囚の身となった兄がメンフィル帝国によってどのような”処分”を受ける事になるのかも覚悟ができている。」

複雑そうな表情をしているラウラに視線を向けられたユーシスは辛そうな表情で答えた。



「しょ、”処分”って……さっきリウイ陛下がルーファスさんの身柄と引き換えにリィンとエリス君の返還を迫ったから、ルーファスさんの身は安全じゃないのか!?」

ユーシスの言葉を聞いたマキアスは不安そうな表情で尋ねたが

「阿呆……お前達の話にあったメンフィルはエリスの救出の為に軍を編成している話をもう忘れたのか?」

「あ…………」

暗い雰囲気を纏っている為いつもより覇気がないユーシスの指摘を聞き、辛そうな表情をした。



「ちょ、ちょっと待って!?じゃあリウイ陛下は最初から嘘をついていたの!?」

「いえ……先程リウイ陛下は次の”作戦開始までが取引期間”であると仰いましたから、陛下達は嘘はついていません。」

「―――要するにヴィータはまんまと騙されたって事ね。まあ、因果応報ね。先にアタシ達を騙してエリスとアルフィン皇女を攫ったのはあいつなんだから。」

「姉さん……」

エリオットの言葉を聞いたセレーネは説明し、セリーヌは静かな表情で呟き、エマは複雑そうな表情をして呟き

「問題はその”作戦”が何なのか………そして”いつ”行われるかだな。」

「去り際のエリゼ君やプリネの話から推測するとリィンとエリスの救出作戦の可能性が高いだろうな……」

ガイウスとマキアスはそれぞれ考え込み

「リィン………………(お願い、無事でいて……!)」

アリサは心配そうな表情で窓の外を見つめてリィンの無事を祈った。



一方その頃”パンダグリュエル”の客室で軟禁に近い形で待たされていたリィンはクロチルダとクロウが見守っている中、カイエン公爵と対峙していた。 
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