英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第58話
~温泉郷ユミル~
「フフ、少しは楽しませてもらったが……まだまだ諸君には精進が必要なようだな?」
アリサ達との戦闘に勝利したルーファスは不敵な笑みを浮かべてアリサ達を見つめた。
「くっ……!」
「……つ、強い……」
「わ、わたくし達全員を相手に……」
「こ、ここまでなんて…………」
ユーシスは唇を噛みしめ、アリサやセレーネ、エリオットは信じられない表情をし
「もしかしてサラと互角以上じゃ……?」
フィーは不安そうな表情でルーファスを見つめた。
「みんな―――!?」
仲間達の敗北に気付いたヴァリマールはアリサ達に視線を向けた。
「オラ、人の心配をしている場合か?こっちも行くぜ―――肚を括れや、リィン!!」
「っ……望むところだ!!行くぞ―――クロウ!!」
そしてすぐにオルディーネとの戦闘を開始したヴァリマールだったが、オルディーネの圧倒的な戦闘力により、為す術もなく敗北した。
「―――これで終いだな。」
オルディーネはヴァリマールに刃をつきつけ、勝利宣言をした。
「ぐうっ……!!……まさか……あの”奥の手”すら出さずに……」
「チッ、やっぱりこの間は完全に手を抜いてたワケね……!?」
トリスタでの戦いを思い出したリィンは悔しそうな表情をし、セリーヌは舌打ちをした。
「クク……全力を出す必要もなかったからな。―――これが現時点での明確な”力の差”ってヤツだ。半端な修羅場をいくら潜ろうが簡単には埋まらないくらいのな。」
「っ……!」
クロウの言葉にリィンが唇を噛みしめていると浮遊するクロチルダがグリアノスと共に飛行して来た。
「どうやらそちらもカタがついたみたいね?」
「ヴィータか。」
「フフ、予想通りすぎてちょっと詰まらないわね。さすがは私の自慢の”蒼の騎士”と言う所かしら?」
「だれがアンタのだ、誰が。上の方はどうなんだ?」
「あちらも決着はつきそうだけど……あまり郷に迷惑はかけたくないし、この一帯が”おかしなこと”になっていて、ちょっと嫌な予感がするからこのくらいにしておきましょう。」
「”おかしなこと”だと?」
「ええ……転移の魔術が何故か発動しないのよね。――まあ、いいわ。Fenestram phantasma(幻想の小窓よ).」
クロチルダが杖を掲げると何とカイエン公爵の顔がユミル上空に現れた!
「高いところから失礼するよ、”有角の若獅子”諸君。私はラマール州の統括者にして”貴族連合”の総主宰を務める者だ。」
「あ、あの人はレグラムで出会った……!」
「カイエン公……!!」
「貴族連合のトップがお出ましってわけか……!」
「……………………」
カイエン公爵の顔が現れるとセレーネとラウラは驚き、トヴァルは真剣な表情をし、クレア大尉は唇を噛みしめてカイエン公爵を睨んだ。
「フフ、聞いていた以上に奇妙な面々が揃っているようだな。ユーシス君とラウラ嬢は以前、レグラムで会って以来か。親元を離れて胡乱なる面々と行動を共にしているようだが……まあ、それに関しては”若さゆえ”と言ったところか。アルバレア公は激怒していたが社会勉強もたまにはいいだろう。」
「………っ………」
「くっ……わかったようなことを……」
「……そんなことを告げにわざわざいらしたのですか!?」
カイエン公爵の言葉を聞いたユーシスとマキアスは怒りの表情をし、ラウラはカイエン公爵を睨んで叫んだ。
「フフ、もちろん違うとも。リィン・シュバルツァー。今回は君に用があってね。突然だがこのような場を用意させてもらった次第だ。」
「……俺に……!?」
「フフ、直截に言おう。”灰の騎士”殿―――君を我が艦に”招待”したい。」
「っ……!?どういうことだ!?」
「フフ、帝国各地での華々しい活躍は耳にしている。それで、一度君とじっくり話し合ってみたいと思ったのだよ。これまでのこと……そしてこれからの事も含めてな。」
「それは……」
「ま、まさか……リィンを貴族連合に!?」
「そ、そんな……」
カイエン公爵の言葉を聞いてある事を察したガイウスは呆け、エリオットとセレーネは表情を青褪めさせた。
「招待に応じてくれればこのままユミルから引き上げる。それ所か、内戦が終わるまで一切の干渉をしないと約束しよう。……それでどうかな?」
「戯言を!ユミルはメンフィル帝国領です!カイエン公爵!貴方のしている事はメンフィル帝国に対する領地不法侵入並びに脅迫、誘拐、そして侵略行為です!これ以上エレボニア帝国がメンフィル帝国に対する”罪”を重ねれば、メンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛けた際兵士達だけでなく、民達までも虐殺される可能性もあります!貴方はそれすらもわからないのですか!?」
カイエン公爵の言葉を聞いたクレア大尉はカイエン公爵を睨んで叫び
「黙れ!下賤の輩には聞いていない!」
クレア大尉の反論に対し、カイエン公爵は聞く耳を持っていなかった。
「……………………――わかりました。そちらの申し出に応えさせていただきます。」
するとその時ヴァリマールからアリサ達にとって予想外の返事が返ってきた。
「ど、どういうつもり!?わざわざ本拠地に来いなんて、罠に決まっているじゃない!?」
「ありがとう、心配してくれて。だが、これは俺達にとってもチャンスなんじゃないかと思う。―――ヴァリマール、セリーヌを降ろしてくれ!」
セリーヌの忠告を聞いたリィンは静かな表情で答えた後予想外の指示をヴァリマールにした。
「フム……?」
「ちょっ……何を言い出すの!?」
「大丈夫―――こんな内戦の状況下でも”Ⅶ組”は再会できたんだ。委員長と一緒にしばらく待っていてくれ。――頼む、ヴァリマール!」
「承知シタ―――」
「ま、待ちなさい―――!」
そしてヴァリマールはセリーヌの反論を聞かず、セリーヌを外に出した。
「フフ、我が弟ともしばしのお別れだな。アルバレアの人間として気骨を見せてみるがいい。そなたの誇りと信念を己自身に証明するためにも。」
裏の協力者たちと共に光に包まれたルーファスは口元に笑みを浮かべてユーシスを見下ろし
「兄上っ……!」
ユーシスはルーファスを睨んだ。
「―――ルーファス卿!」
するとその時いつの間にか外に出たシュバルツァー男爵とルシア夫人がルーファスを見つめていた。
「これは男爵閣下……ご無沙汰しております。父が失礼をいたしました。いずれメンフィル帝国にも改めて謝罪を致し、必ずや二国間の外交問題を解決してみせます。」
「それはいい……リィンをどうするつもりだ!?それに―――君ほどの若者がどうして……!」
「……ご子息はしばしの間お借りすることになりますがどうかご心配なさらず。それではこれにて―――御身をお大事にされますよう。」
そしてルーファスが恭しく礼をしたその時、ルーファス達を包み込んでいた転移魔法の光は消えた!
「……………?」
「おい、どうなっているんや?何で転移魔法の光が消えるんや?」
「―――イレギュラーが起こった模様。クロチルダ様、これは一体……?」
転移の光が消えた事に気付いたルーファスは不思議そうな表情をし、ゼノは戸惑い、状況を分析したアルティナはクロチルダに視線を向け
「わ、わからないわ!私の転移魔法がキャンセルされるなんて…………一体この郷に何が起こっているの!?」
クロチルダは困惑した様子で周囲を見回した。するとその時ヴァリマールはオルディーネと共に”パンタグリュエル”に向かった。
「リィン………!」
「リィンさん……!」
「お兄様……!」
「そんな……せっかく会えたのに!」
「すまない、みんな―――だが、必ず戻ってくる!どうか無事でいてくれ―――!」
ヴァリマールは一瞬アリサ達に視線を向けた後”パンタグリュエル”に向かい
「リィンさ――――んッ!」
「リィィィン――――!!」
「お兄様――――!!」
それを見たクレア大尉、アリサ、セレーネは悲鳴を上げた。
「フフ、リィンさんはエリスさんの件同様メンフィル帝国が必ず取り返しますのでご安心ください。」
するとその時聞き覚えのある女性の声が空から聞こえて来た!
「え……」
「こ、この声って……!」
声を聞いたセレーネは呆け、アリサは目を見開き
「―――上ですわ!」
「な――――」
「瞬迅槍!!」
デュバリィが空を見上げて叫び、上空にいる信じられない存在―――ペガサスに騎乗するシグルーンを見たクロチルダが絶句したその瞬間、上空にペガサスを滞空させていたシグルーンがクロチルダに向かって突進して聖槍で強烈な突きを放った!
「キャアッ!?クッ……何者よ!?」
咄嗟の判断で防御結界で攻撃を防御したクロチルダだったが、結界に伝わる凄まじい衝撃によって吹っ飛ばされて立ち直った後シグルーンを睨んだ。
「あら……フフ、二流魔術師の分際で今の攻撃を最小限に防ぐとは。腐っても裏組織の最高幹部と言った所ですか。」
クロチルダと対峙しているシグルーンが微笑んだその時レンやエヴリーヌ、エルフの女性の転移魔術によって現れたリウイ達が次々と執行者達や猟兵達、アルティナにそれぞれ奇襲し、執行者達はそれぞれ攻撃を回避した後リウイ達と対峙した!
「クク……まさかここでアンタが出てくるとはな。”英雄王”―――リウイ・マーシルン。」
「……………………」
好戦的な笑みを浮かべるマクバーンに見つめられたリウイは紅き魔剣『エドラム』を構えて静かな表情でマクバーンと対峙し
「な、No.2――――”剣帝”レオン=ハルト!?な、ななななななな、何故貴方がここに!?」
「フッ、騒がしいのは相変わらずのようだな、”神速”。」
自分を指刺して混乱しているデュバリィと対峙しているレーヴェは静かな笑みを浮かべた。
「ええええええええええええええっ!?」
「リウイ陛下!?リフィア殿下達まで一体いつユミルに……!」
「エリゼ……!?」
「レオン!?貴方まで……!」
「レオンハルト教官……!」
「プリネ……!」
「お姉様……!」
「しかもエヴリーヌどころか、”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”まで全員揃っている……」
リウイ達の登場にエリオットやシュバルツァー男爵、ルシア夫人は声を上げて驚き、クロチルダは驚いた後唇を噛みしめてレーヴェを見つめ、ラウラとアリサ、セレーネは明るい表情をし、フィーは呆けた。
「リ、リウイ陛下!?それにファーミシルス大将軍閣下達まで……!」
「おいおいおい……!メンフィルの腕利き達がほぼ勢揃いしている状態じゃねえか!一体どうなっているんだ!?」
「ったく、駆け付けてくるのが遅すぎよ。来るのならもうちょっと速く来なさいよね。」
「その事ですが……まるで狙いすましたかのようなタイミングで現れた所を見ると恐らくは”私達が貴族連合の協力者達と戦っていた時点で既にユミルに到着していた”かと。」
クレア大尉とトヴァルは信じられない表情をし、サラ教官は厳しい表情で”パンダグリュエル”に視線を向けた後リウイ達を見つめ、シャロンは真剣な表情でリウイ達を見つめて推測した。
「フフッ、あなた達の団長―――”猟兵王”ルトガー・クラウゼルはこの私に相応しい獲物だったけど、あなたはどうかしらね?――――”破壊獣”レオニダス。」
「団長の仇――――”空の覇者”ファーミシルス……!」
不敵な笑みを浮かべるファーミシルスと対峙しているレオニダスは厳しい表情でファーミシルスを睨み
「クスクス、眼鏡のお兄さんはレン達が”遊んで”あげるわ♪」
「キャハッ♪今、思い出したよ♪その紋章……”リベールの異変”の時にエヴリーヌ達がいっぱい殺した雑魚共がつけていた紋章だね♪」
「ふふっ、私達が直々に相手にしてあげる事……光栄に思いなさい。」
「おいおいおい……”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”全員相手とか、マジで勘弁してや……!幾ら俺でも”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”全員を一度に相手するとか厳しすぎるで!?」
凶悪な笑みを浮かべるレンとエヴリーヌ、そして睡魔族の娘――――リウイの側室の一人、シルフィエッタ・ルアシアの連れ子である紅の殲滅姫(クリムゾン・ルインプリンセス)”の異名で恐れられているセオビット・ルアシアと対峙したゼノは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「ゼノ……レオ…………」
その様子を見ていたフィーはゼノとレオニダスの勝率が限りなく低く、二人が高確率で殺される事に気付いていた為辛そうな表情をした。
「ハハハハハッ!まさかこの地にて貴女と再び邂逅する事になるとは!我が麗しの”姫君の中の姫君”!そしてもう一人の我が好敵手よ!」
プリネ、ツーヤ、アムドシアスと対峙しているブルブランは高々と笑ってプリネ達を見つめたが
「―――”リベルアーク”で止めを刺さず、むざむざと撤退を許した結果私の友人達を傷つける事になってしまった私の責任………今、ここで果たさせて頂きます!」
「貴方の命運も今日で終わりです。―――”怪盗紳士”ブルブラン!貴方はここで仕留めます!」
「我と”美”を巡った好敵手よ。せめてもの手向けとして我自らの手でお前を”冥き途”へ送ってやろう!」
「なっ……!?」
決意の表情をしたプリネとツーヤ、そしてアムドシアスから向けられた膨大な殺気に圧されると共に自分の殺害宣言を聞き、絶句した。
「し、”仕留める”って、まさか……!」
「プリネ達は”怪盗紳士”を”殺す”つもりなのか……」
「お姉様……」
ツーヤの発言を聞き、プリネ達がブルブランを殺害しようとしている事に気付いたマキアスは信じられない表情をし、ガイウスは真剣な表情をし、セレーネは複雑そうな表情でツーヤを見つめた。
「ようやく会えたな、我が”友”の家族を拐かした下手人が!貴様は余達自らの手で”処刑”してくれる!子供であろうと、余達メンフィルの怒りに触れた愚か者は決して許さん!」
「エリスを誘拐した事……絶対に許しません。例え相手が子供であろうと、メンフィルが”処刑”認定した者であるならば”容赦はしません”。メンフィルとエレボニアの外交に罅を入れた元凶の一人である貴女にはその命を持って償ってもらいます!」
「”聖魔皇女”と”守護の剣聖”……!戦力はこちらが圧倒的不利。クロチルダ様、早急に撤退をお願いします……!」
怒りの表情をしているリフィアとエリゼに膨大な殺気を向けられたアルティナは不安そうな表情で呟いた後慌てた様子でクロチルダに視線を向け
「エ、エリゼ!?」
「………………」
「………そっか~。君達とはここで”永遠のお別れ”か~。色々話したかったんだけど、相手が悪すぎたね~。」
「ミリアムちゃん……」
リフィアとエリゼが子供にしか見えないアルティナを殺そうとしている事にルシア夫人は信じられない表情をし、二人の言葉―――子供であろうと貴族の子女を誘拐した上外交問題にまで発展させた者は”処刑”になってもおかしくない事を理解していたシュバルツァー男爵は重々しい様子を纏って黙り込み、二人の処刑宣言を聞いて静かに呟いたミリアムの言葉を聞いたクレア大尉は複雑そうな表情をした。
「さっきから転移魔法の発動を何度もしているわよ!なのにどうして発動しないのよ!?一体この郷で何が起こっているというの……!?」
そしてアルティナの嘆願に対してクロチルダが混乱した様子で声を上げたその時
「―――何度やっても無駄です。この一帯にいる精霊達に呼びかけ、精霊達の力によって私達に仇名す者達の転移手段は発動しないように精霊達が妨害しているのですから。」
エルフの女性―――リウイの側室の一人であるシルフィエッタ・ルアシアが静かな表情で答えながらシグルーンと共にクロチルダと対峙して杖を構えた。
「何ですって!?」
「ええっ!?せ、精霊達に直接呼びかけて姉さんの転移魔法を妨害するなんて……!?そんな事ができるのは”精霊王”のリザイラさんくらいなのに、一体どうやって……!」
「―――!”精霊王”であるリザイラのように精霊達に直接呼びかけられる事といい、その容姿や耳といい……まさか――――”エルフ”!?」
シルフィエッタの説明を聞いたクロチルダとエマは驚き、アリサ達の元に駆け寄ったセリーヌはシルフィエッタを見て驚いた。
「馬鹿な……一体いつ、どのような方法でユミルに現れたというのだ……!?」
自分達が圧倒的不利であり、撤退もできないまさに”四面楚歌”にして”絶対絶命”の状況に陥ってしまった事に気付いていたルーファスが唇を噛みしめて呟いたその時
「――――メンフィルは各領に緊急時の際の転移魔法陣を街や村の郊外にも設置している。万が一”敵”に街中に設置している転移魔法陣を抑えられた時の為にな。」
漆黒の鎧を纏った男性がルーファスと対峙した!
「……っ!?貴殿は何者だ?メンフィル帝国軍に所属する者と見受けられるが。」
男性がさらけ出す闘気に呑み込まれ、男性の強さの片鱗を感じ取っていたルーファスは表情を歪めて男性に問いかけ
「――――我が名はゼルギウス・カドール。偉大にして大恩あるリフィア皇女殿下の親衛隊の隊長の任を務めている者だ。」
男性――――ゼルギウスは堂々と名乗り、大剣を腰につけている鞘から抜き、大剣であるにも関わらず苦も無く軽々と片手に持った状態でルーファスに剣の切っ先を向けた!
「!!あ、あの方がトヴァルさん達の話にあったリフィア殿下の…………!」
「とんでもない闘気だぜ……」
「……この凄まじい闘気……団長を軽く越えている。」
「まさかファーミシルス大将軍閣下や”戦妃”カーリアン様以外にもこれほどの使い手がメンフィルにいるとは正直驚きましたわ。例えルーファス様といえど、目の前の相手は”絶対に勝てない相手”ですわね。」
「兄上…………」
ゼルギウスの名を知ったクレア大尉は驚き、ゼルギウスの闘気を感じ取っていたトヴァルとフィーは真剣な表情をし、シャロンの推測を聞いたユーシスは複雑そうな表情でルーファスを見つめた。
「―――貴族連合の協力者共に告ぐ。ルーファス・アルバレアの身柄をこちらに渡し、更にアルティナ・オライオン並びに”怪盗紳士”ブルブランをこの場でお前達の手で処刑したのならば、この場は”見逃してやる”。さあ、どうする?」
そしてリウイはクロチルダ達を見回して宣言し、全身に膨大な覇気を纏って問いかけた!
「っ!!」
「…………」
「ほう?」
リウイの宣言を聞いたルーファスは一瞬でリウイ達―――メンフィル帝国の”狙い”を悟って唇を噛みしめ、アルティナは真剣な表情でリウイを見つめ、ブルブランは興味ありげな表情をし
「ええっ!?」
「メ、メンフィルがルーファスさんの身柄を!?な、何でだ!?」
「――――恐らくは貴族連合に対する人質にした後、彼の身柄と引き換えにリィンさんとエリスさんの返還を要求し、二人を貴族連合から取り返す為かと思います。」
驚いているエリオットとマキアスにクレア大尉は冷静な様子で自分の推測を説明した。
「なっ!?」
「お、お兄様とエリスお姉様をですか!?」
「ルーファス卿を人質にして、リィンとエリスを……」
「確かに貴族連合の”要”と言ってもおかしくない”総参謀”であるルーファス殿の身柄との人質交換ならば、幾らカイエン公と言えども応じる可能性は高いな……」
「……………………」
「ユーシスさん……」
クレア大尉の説明を聞いたシュバルツァー男爵とセレーネは驚き、ルシア夫人は複雑そうな表情をし、ラウラは辛そうな表情で黙り込んでいるユーシスに視線を向けて複雑そうな表情をし、エマは心配そうな表情でユーシスを見つめた。
「クッ…………!」
「なあっ!?この私達を見逃すですって!?舐めないでくださいまし!」
「チッ、随分と大きく出たもんやな?」
「だが……今の戦力を考えるとこちらが圧倒的に不利だ。」
リウイの宣言を聞き、リウイ達―――メンフィルの狙い通りになってしまっては”計画”が崩壊してしまう為すぐに撤退したいクロチルダだったが転移魔法を封じられている今の状況では撤退すら不可能である事に唇を噛みしめ、デュバリィとゼノはリウイを睨み、レオニダスは厳しい表情でリウイ達を見回した。
「クククク…………随分と舐められたものだなぁ?幾らメンフィルでも、この俺がいるにも関わらずそんな事をほざくとは、調子に乗りすぎだぜ?」
するとその時不敵な笑みを浮かべていたマクバーンは自分の足元から凄まじい黒き焔と闘気を吹き上げさせ始めた!
「……っ!?これはあの時と同じ―――」
「いけない……!」
「………………」
それを見たサラ教官が驚き、シャロンが厳しい表情をし、レーヴェは目を細め
「ちょっと!?貴方がここで”本気”を出したらこの郷がただではすまなくなるわよ!?郷には極力迷惑はかけないって最初に言ったでしょう!?」
「わ、私達まで巻き添えにするつもりですの!?」
クロチルダは血相を変えてデュバリィと共にマクバーンに反論した。
「テメェらの思惑なんぞ知ったことか……レーヴェの阿呆が居なくなってからどうも物足りなかったからな……」
「―――アンタが結社から抜けた事に、随分と昔の仲間に残念がられているようね?」
「俺の知った事か。」
マクバーンの言葉を聞いたサラ教官に視線を向けられたレーヴェがマクバーンを警戒しながら答えたその時!
「どこまで俺を”アツく”してくれるか試させてもらおうか――――!」
何とマクバーンは全身に膨大な黒き焔を纏い、自らを”焔”を纏った”魔人”―――”火焔魔人”と化させ
「―――ペテレーネ!このままではユミルに被害が出る!手筈通りアレを発動しろ!」
「はい!アーライナよ……!」
それを見たリウイが叫んだその時、ペテレーネの魔術によってその場にいる全員は”混沌の女神”アーライナの力によって創られた異空間に転移させられた!
ページ上へ戻る