焼き鳥ハイスクールD×D ~ ちょいワルホスト系に転生した男 ~
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少女の正体
「もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ……」
「…………………………」
俺ことライザー・フェニックスは、今、謎の少女と一緒にフェニックス家の食堂にいる。といってもいつも俺たち家族が使っている食堂ではなく、使用人が使ってる方の食堂だが。
なぜかというと、目の前の少女が、俺がなにを言っても、「お腹へった」しか言わなかったからだ。仕方なく俺はこの少女を食堂まで連れてきたというわけである。
ちなみに彼女の食事を用意したのは俺の後ろにいる女性。
「よろしかったのですか、ライザー様?旦那様にご連絡しなくて」
このメイド服を着て眼鏡をかけた、ツリ目の女性の名前は、『レーレン・アンドロマリウス』。
実はこの女性、今は没落した元七十二柱の一柱である、『アンドロマリウス家』の生き残りである。アンドロマリウス家は彼女を残して全員戦争で死亡しており、本来ならば政府の保護を受けるはずだったのを、彼女の父親と友人だった母親が家に引き取ったのだという。
彼女はそれを恩義に思い、学校を卒業した後は、自ら希望してフェニックス家の使用人として仕えてくれている。
今じゃメイド長として、この屋敷で俺たちのために毎日一生懸命働いてくれている、俺たち兄弟の姉のような存在だ。少なくとも俺たちはそう思っている。
「ああ、父上も忙しいだろうし、報告するのは帰ってきてからでいいだろう。それに…」
俺が少女に視線をむけると、レーレンもつられて少女の方を見る。
「もっきゅ、もっきゅ…。?食べる?」
俺の視線を、食べ物を欲しての視線だと思ったのか、少女はフォークに突き刺した肉の塊をこちらに差し出してくる。
「いや、俺はいいや。自分で食べな」
「ん。わかった」
そう言うと、少女は食事を再開した。
俺はレーレンへと視線を戻す。
「な?敵意はないようだし、大丈夫だろ」
「…そうですね」
レーレンも少女を安全だと判断したのか、それとも目の前の少女の食事する風景の可愛らしさにあてられたのか、ほほ笑みながらそう返した。
「それに、正体もわかってるしな」
手元に視線を落とすと、そこにあったのは、彼女が現れた部屋の机の上にあった一つの書類。
この書類によれば、どうやら彼女が初代様が残した研究結果で間違いないらしい。
しかし、まさか、こんな…。
「……ごちそうさま」
おっと、考え事をしていたら、いつの間にか少女の食事が終わったらしい。
少女の前には十枚ほどの皿が積み重なっていた。…よく食うなこいつ。
「落ち着いたか?」
「(コク)満足…」
「そりゃよかった」
まぁ、こんだけ食っといて、まだ足りないって言われたら困るけどな。
さて…、
「そんじゃそろそろ話をききたいんだけど」
そう言って、俺は今まで持っていた書類の束を、少女の目の前に置いた。
「お前は初代フェニックス。シルバ・フェニックスが生み出した、人工悪魔。
―――――――悪魔の肉体を素体にして造られた、英雄、『呂布奉先』のクローン。それで間違いないな?」
俺の言葉に目の前の赤い髪を持つ少女は、ただ無言で、
「ん(コク)」
頷いた。
☆
晩年、シルバ・フェニックスはいくつかの研究に取り組んでいた。
その研究の一つこそが、『英雄の能力(ちから)を持つ悪魔のクローンの創造』である。
『英雄』。
それは、人間の中で稀に産まれる、人外をも凌駕する力を持った、英雄の能力を継ぎし者たち。シルバが生きていた時代にもその存在はいた。
そして、シルバは、その者たちの戦ぶりを見て思ったのだ。
『人間として産まれてきてあれだけの強さならば、悪魔として産まれてきたのなら、どれほどの能力を発揮するのだろうと。』
それは馬鹿げた発想と言ってもいいだろう。
英雄とは人間にして人外を超えるから英雄と言うのだ。悪魔に産まれた者が、英雄の能力を手に入れることは有り得ない。
しかし、シルバはこう考えた。
『産まれることがないなら、造ってしまえばいい』と。
彼がやったことは単純明快。自らが造った人工悪魔創造技術。その人工悪魔を産み出す過程で、採取した英雄の血を混ぜて造りだす。ただそれだけ。
そうして産まれたのが、
「お前さんというわけか?」
「(コク)たぶんそれであってる」
俺の言葉に頷く少女、呂布。
どうやら、彼女も、自分がどのような存在なのか、ちゃんと把握しているらしい。
しかし、こんなほのぼのしたのがあの三国志最強の武将のクローンでいいのかねぇ?そんなことを考えながら、俺は気になっていたことを呂布に聞いてみることにした。
「それで、なんでお前はあそこに封印されていたんだ?」
そう、俺が気になっていたのはそこなんだ。
シルバが目の前の少女を造り上げるために使った悪魔のクローン技術。
作り上げた理由はどうであれ、これはかなり凄い技術だということは、あまり頭のよくない俺でもわかる。
なにせ、シルバ・フェニックスが生きていた時代は、未だに悪魔の駒がない時代。晩年にやっとあの大戦争が始まったというほど昔の話だ。そんな時代に悪魔を産み出せる方法と言えば、当時の魔王(旧ルシファーたち)様の力か、単純に人間たちと同じ方法で子供をつくるしかなかった。
そんな中で産み出された目の前の人工悪魔の創造技術。世間に認められるかどうかはわからないが、少なくとも悪魔の駒(イーヴィルピース)に匹敵する歴史的な発明に間違いない。
しかし、俺はそんな話を聞いたことはない。初代様がそんな技術を産み出していたのなら仮にもフェニックスの俺も知っていていいはずだ。
一応、レーレンにも聞いてみたが、やはり知らないと言うし。
なぜそんな技術の成果である呂布を隠す(・・・)ように封印していたのか、俺にはそれが理解できなかった。
そんな俺の疑問に答えたのは、しかし目の前の少女ではなく、
シュイィイィン!
「ッ!?」
「それはネネが説明いたしますぞー!」
突然どこからともなく現れた、翡翠色のネズミだった。
・・・・・・・・・今度はなんだよいったい。
後書き
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