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破壊ノ魔王

作者:紅蓮刃
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一章
  25

墜ち人
簡単に言えば罪人の子供。それだけならこんなかんじに揉め事も起きなかっただろうが、罪人つっても第一級犯罪者で、世界最大の牢獄で無期懲役をくらったやつらが無責任にもそこで生んで牢獄のなかで育った人間のことだ。そこから出られるなんてまずありえない。親の罪を償って、能力が高くて、それでやっと出れたとしてもあーんな感じに差別を受ける。出られることがありえないというより、出たいヤツが早々いない
まぁそりゃそうだ。隠そうにも、誰が見てもわかるように真っ赤な髪に染められ、利き手に鎖の烙印を刻まれる。髪にしろ烙印にしろ隠したらその瞬間死刑確定。ムショがどんなところか知らねぇが、だからといって外だ夢を抱けるような生き方はまずできない。身分としては保証されてるから仕事にしろ買い物をするにしろ好きにしていいんだが、まぁそれを快く思うやつはいない。それに対して訴えることは不可能。墜ち人には自分を縛る法はあっても、守る法は一つもない。
いろいろと飛び回ってる俺だがそれでも初めて見る。しかも、まぁ強気なもんだ。墜ち人ってだけで殺されたっておかしくねぇのに


「て、てめぇ!墜ち人のくせに何て口をききやがるんだ!!」

「永遠に敬語を使え、なんて出るときに説明されなかった」

「関係ないだろうが!空気よめや!!」

「ここの法は犯してないし、あなたたちにも何かしたわけでもない。文句さえ言ってない。…………それで、なにか問題ありますか?」


ほう。これまた冷静な女だ。面白いねぇ。怒りも屈辱もなんもなし、か


「問題!?大有りだよ!!お前がここにいることだよ!墜ち人がぁ!!」

「いかれた親から産まれて、いかれたやつらと育って、存在していいわけねぇだろうがよ!」


……あ?
なんだ。コレには怒りを感じるのかよ


「……あんたらほどじゃないよ。まともな親に育てられて、そこまでイカれてたらね」

「っっんな!?こ、このクソ墜ち人がぁ!!!!」


拳が振り上げられる。女の怒りは押さえきれてない

……おいおい、まじか?
それはまずいだろ


「……っっってぇ!!!!」

「な、なんだよ!あんた!!」


あー……


「墜ち人をかばうのか!?」

「おいおい、今あのひと何したよ……」

「どこから現れた?」

「なんか怖い……」

「え?かっこいいでしょ」


ひそひそひそひそと……
あー…………うるせーめんどくせー。出るんじゃなかった


「……なに?誰?」

「墜ち人が人殺したらまずいだろ」


俺は極力声を落として言った。少しだけ生意気な女の顔が変わる。ま、女はここまで。まずいのは俺も同じなんだよ


「なんだー?墜ち人をかばって……体でも狙ってるのか?にいちゃん」

「いやいや。こんな栄養不足に興味はない」


あ。後ろから殺気


「じゃあなんだ?その赤い髪の意味を知らねぇ訳じゃねぇだろ」

「知ってるから、止めてほしいんだよなぁ。あんた、殺す気はねぇみたいだし、どなって暴力ふるうだけのしょうもねぇことするなら、この街の景観を損ねないでくれねぇか?うるせぇし見苦しい。そこまで言うくらい不愉快なら、さっさと殺せよ。崖から突き落とせば死体も見えねぇよ?」


息を飲む男たち。動揺、困惑。仲間同士で顔をあわせる

は。情けねぇ


「憂さ晴らしがしてぇなら派手にやれよ。それくらいやるなら見世物として許してやる」

「な、なんだよ!それ……許してやるって何様だよ!」

「店側の不利益、交通の妨げ、騒音……だれにも迷惑かけてねぇとでも思ったか?うざってぇことこの上ねぇ。でもこれが愉快なピエロによる公開処刑っていうなら、騒がしいのも無理はねぇだろ?」


あーあー
口を開くのもだりぃわ
チキン三人組の相手なんかするもんじゃねぇな
ひびりくさりやがって。後ろの女くらいの殺気を飛ばしてみろってんだ

もうしまいだな、おわりおわり


「……殺す気どころか傷つけることすらできない臆病なA、あまやかされてきたみてぇだな?殴るどころか殴られたこともねぇか。口調も荒いしリーダー面してるが、なにかが起きれば残り二人おいて真っ先に逃げるつもりだろ?優しいお姉ちゃんにでも守られて育ったか?で、それに付き従うB、ここまで俺に言われて頭に来てるかよ。でも怒りより恐怖心か。なんだ?俺はまだなにもしてねぇよ?昔を思い出すか?折られた腕の痛みが甦るか?……んで残り。お前が一番賢いよ。俺が出てきた瞬間逃げたくて逃げたくてたまんねぇらしいな。……なんだ。おまえ……俺を知ってるのか?」

「い、いこう!……ほらはやく!」

「おおおおう」


わー。もう追う気もおきねぇわ。まさに脱兎のごとく
ま、いっか
太陽もでてきたし、ギャラリーも離れたことだし……宿に戻って試験まで寝るか


「……ちょっと」

「あ?」

「どうして助けたの」

「あ?」

「憐れみとか、そういうの?」

「誰が殺気飛ばすようなやつに情けなんざかけるかよ。ただ面白いと思っただけだ」

「面白い?わたしが?」

「あぁ。栄養不足にキレるとことか」

「それは助けたあとの話でしょ」


煽りも通用せず、か
ち。面白くない

面白くねぇけど……


「まぁ確かに面白いだけじゃねぇな」

「じゃなに?」


指をさらさらと赤い髪が流れる。細く艶のある乱れのない真っ直ぐな髪。口元に近づけると甘いかおりがした


「すきなんだよな、赤」


……………………おいおい
なんだ、その顔
ほんと読みづれぇやつだな


「は、はなせ!はなして!」

「仰せのとおりに。じゃあ達者で」


少し小走りで女から離れ、影の下を歩いた。


「リオ・アカツキ、か……」


女の入国証を身に付けるのは、なんかシャクだがあいつなら無くしても壊しても取り合うような奴はいねぇだろ


「ま、いい買い物だったな」


めんどくさかったし、時間もリスクもかかったが、これであの面倒な作業をすることはなくなった。安い買い物だろ?






 
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