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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第36話

~シュバルツァー男爵邸~



「へ……」

「騎士?」

(とても綺麗な方ですわね……)

(あ、ああ……あのクレア大尉すら見劣りするほどだぞ……?)

(……しかもあの騎士、滅茶苦茶強いね。サラやシャロンも軽く越えているクラス。)

(そうですわね……わたくしどころか、レーヴェ様でも正直厳しいと思われる相手ですわ。)

女性騎士の登場にエリオットとセリーヌは呆け、セレーネとマキアスは小声で会話し、フィーとシャロンは真剣な表情で女性騎士を見つめ

「あ、貴女はシグルーン副将軍閣下!?どうして閣下ほどの方がこちらに……」

「ほえ?リィンはその騎士の人、知っているの?」

「おい、リィン!まさかその名前って、以前話していた……!」

驚いているリィンの言葉を聞いたミリアムは首を傾げ、ある事を察したトヴァルは信じられない表情で女性騎士を見つめた。



「―――お初にお目にかかります。リフィア皇女殿下親衛隊副長にしてカドール伯爵の妻、シグルーン・カドール中将と申します。以後お見知り置きを。」

するとその時女性騎士―――シグルーンは会釈をして可憐な微笑みを浮かべ

「ええっ!?ちゅ、”中将”……!?」

「と、父さんやあのゼクス中将と同じ階級で貴族の人……!?」

「しかもリフィア殿下の親衛隊の副長を務める方ですか……それ程の人物が一体何故ユミルに?もしやメンフィル帝国からの派遣する防衛部隊が到着したのですか?」

自己紹介でシグルーンの階級を知ったアリサとエリオットは驚き、クレア大尉は真剣な表情でシグルーンに尋ねた。



「いえ、残念ながら防衛部隊の到着はもう少し先になります。(わたくし)が本日こちらに参上したのはシュバルツァー卿が目を覚まされた件を知った殿下の代わりにお見舞いに参ったのです。」

「そうでしたか………シュバルツァー男爵家の当主、テオ・シュバルツァーと申します。何のおもてなしもできず、このような姿でのご挨拶となり、誠に申し訳ありません。」

シグルーンの話を聞いたシュバルツァー男爵はシグルーンに視線を向けた。



「私の事はどうかお気になさらず、今は御身の御身体の回復に務めて下さい。―――シュバルツァー卿。此の度は誠に申し訳ございませんでした。私達―――メンフィル帝国の判断が甘かったせいで、ユミルの民達に命の危機に陥らせ、御身や奥様が危害を加えられた挙句大切なご息女まで拐かされてしまいました。お忙しいリフィア殿下に代わり、謝罪を申し上げます。―――申し訳ございませんでした。殿下も時間ができた際、自ら謝罪に参ると仰っていましたので、その時に殿下が改めて御身に謝罪をなさるでしょう。」

シグルーンはシュバルツァー男爵を見つめて頭を深く下げた。

「……私の事はどうかお気になさらないで下さい。このような事になってしまったのは全て私の不徳の致すところですから、メンフィル帝国やリフィア殿下の責任ではございません。お手数ですがリフィア殿下達にもそうお伝えください。」

「お気遣いありがとうございます。それと誘拐されたエリスさんの件についてですが、エレボニア帝国各地に散っている諜報部隊からの報告によると監禁場所の候補が絞れ、数日以内にはエリスさんの監禁場所を確定できそうとの事ですので、監禁場所がわかり次第我らメンフィル帝国軍がエリスさんの救出の為の具体的な作戦を立て、必ずやエリスさんを奪還致しますのでどうかご安心を。」

「な……っ!?」

「オ、オイオイオイ……!?諜報部隊が活動し始めてまだ1週間くらいしか経っていないのに、もう候補まで絞れているのかよ!?」

「ほえ~……ボク達情報局でもそんなに早く見つけられないと思うよ?相変わらずメンフィルって凄いね~。」

シグルーンの答えを聞き、メンフィル帝国の諜報部隊の予想以上の速さの動きにクレア大尉とトヴァルは信じられない表情をし、ミリアムは呆け

「どこですか!?エリスはどこに監禁されているのですか!?」

リィンは血相を変えてシグルーンに詰め寄って尋ねた。



「兄様。シグルーン様の説明をちゃんと聞いていましたか?まだ”候補”ですから、エリスの監禁場所はわかっていませんよ?」

「あ…………早とちりをして、閣下に失礼をしてしまい誠に申し訳ございません。」

しかしエリゼに指摘されるとすぐに頭を冷やしてシグルーンから距離を取って頭を下げ

「フフ、心から大切にされている”家族”であるエリスさんが誘拐された事によって、彼女の身を心配して焦っている貴方の気持ちも十分理解しておりますので、どうかお気になさらず。」

「……寛大なお心遣いありがとうございます。」

優しげな微笑みを浮かべるシグルーンの答えを聞き、会釈をした。



「シュバルツァー卿、ルシア夫人。我らメンフィル帝国、必ずや卑劣にして愚かなるエレボニア帝国の魔の手からエリスさんを無事救い出し、シュバルツァー家の元にお返ししますので大変申し訳ないのですがもう少しだけ、ご辛抱をお願いします。」

(”卑劣にして愚かなるエレボニア帝国の魔の手から”って…………)

(い、幾ら何でも言い過ぎだよ……)

(悪いのは全部貴族連合なんだぞ……!?)

(……シグルーン中将閣下――――メンフィル帝国の言い分は何一つ間違っていません。”エレボニア帝国がメンフィル帝国領を襲撃し”、エリスさんを誘拐したのは”事実”なのですから……)

男爵夫妻に敬礼をするシグルーンの口から出たエレボニア帝国に対する棘のある言葉を聞いたアリサやエリオットは不安そうな表情をし、マキアスは唇を噛みしめてそれぞれ小声で会話し、クレア大尉は辛そうな表情で3人に答え

「……よろしくお願いします。」

シグルーンに敬礼をされたルシア夫人はアリサ達に視線を向けて複雑そうな表情をした後すぐに気を取り直して頭を深く下げ

「どうかよろしくお願いする。そしてリィンと”Ⅶ組”の諸君。できれば……皇女殿下を……」

シュバルツァー男爵は頷いた後再び眠り始めた。



「あ……」

「眠っちゃったみたい。」

「まだ、完全に体力が戻っていないようですから。郷の皆さんに顔を出せるのはもう少し先になるでしょうね。」

「そうですか……」

「父様……」

ルシア夫人の話を聞いたリィンとエリゼは残念そうな表情でシュバルツァー男爵を見つめた。



「まあ、仕方ないだろうな。」

「わたくしも色々とお手伝いさせていただきますわ。メイドとして、力になれることはいくらでもありそうですし。」

「ふふ、ありがとうございます。とにかく皆さん、明日一日はしっかりと体を休めるのですよ。」

「……ええ、わかりました。」

「どうか奥様も無理をなさらないでください。」

「フフ、ありがとうございます。エリゼとシグルーン中将閣下も泊まっていかれますか?」

アリサの言葉に微笑んだルシア夫人はエリゼ達に視線を向けて尋ねた。



「いえ、父様の状況を確かめる為に来ただけですので、私達はこれからまた本国に戻り、それぞれの職務に戻らなければなりませんので今夜はこれで失礼します。」

ルシア夫人の問いかけにエリゼは静かな表情で答え

「……シグルーン中将閣下。一つだけご質問があるのですがよろしいでしょうか?」

「クレア?何を聞くのー??」

シグルーンを見つめて尋ねるクレア大尉の様子を見たミリアムは首を傾げた。



「失礼ですが貴女は何者ですか?見た所プリネ皇女達が通われている学院のクラスメイトや教官の方には見えませんが。」

「ハッ。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。エレボニア帝国軍鉄道憲兵隊大尉クレア・リーヴェルトと申します。現在は様々な事情によってこちらに滞在させて頂いており、ユミルの防衛を手伝わさせて頂いています。」

シグルーンに尋ねられたクレア大尉は敬礼をして自己紹介をした。



「そうですか、ユミルの防衛を手伝って頂いている事に関しましてはメンフィル帝国を代表し、感謝致します。それで私に聞きたい事とは何でしょうか?」

「…………単刀直入に聞きます。メンフィル帝国はエレボニア帝国との開戦を決定したのでしょうか?トヴァルさんから中将閣下の事を少々お聞きしました。中将閣下はメンフィル帝国軍の中でも相当高い地位についている事に加えて”伯爵”の爵位をお持ちであるとお聞きしていますので、そう言った(まつりごと)の情報にも詳しいかと愚考しています。」

「あ…………」

「………………」

シグルーンへの質問にリィンは呆け、セレーネは不安そうな表情で仲間達と共にその様子を見守っていた。


「申し訳ありませんがメンフィル皇家の許可もなく他国の方達においそれと”国家の情報”をお話することはできませんわ。ですが防衛部隊の到着までユミルの防衛を手伝って頂いているお礼に一つだけ良いことを教えて差し上げましょう。――――メンフィル帝国は”最優先に滅ぼすべき大国”との戦争に向けての準備を始めていますわ。」

「メ、メンフィル帝国が最優先に滅ぼすべき大国との戦争って……!」

「ま、まさか…………!」

「……エレボニア帝国に戦争を仕掛けるの?」

シグルーンの答えを聞いたエリオットとマキアスは表情を青褪めさせ、フィーは真剣な表情でシグルーンを見つめ

「チッ、やっぱりそうなってしまったか………!」

トヴァルは舌打ちをして厳しい表情をした。



「エリゼ、メンフィルは本当にエレボニアに戦争をしかけるのか!?」

そしてリィンは真剣な表情でエリゼに尋ねた。

「……申し訳ありませんがいくら兄様とはいえ、まだ民達にも発表していない国家の情報をお教えする事はできません。私は”メンフィル皇族専属侍女長”です。例え相手が家族であろうと民達にも秘匿している”国家の情報”を”守秘”する”義務”があります。」

「それは……………」

「エリゼお姉様…………」

「…………………」

しかしエリゼの口から出た答えにセレーネやルシア夫人と共に辛そうな表情をした。



「ねーねー。ちなみにそのメンフィル帝国が最優先に滅ぼすべき大国との戦争の際にはどのくらいの戦力をぶつけるのー?」

「ミ、ミリアムちゃん。」

「君な……軍事に関わる事なのに、教えてくれる訳がないだろう?」

ミリアムの質問を聞いたクレア大尉は困った表情をし、マキアスは呆れた。



「フフ、別にそのくらいの事でしたらお答えしますよ。」

「え……」

「へえ?そういうのって軍事機密じゃないのかしら?」

しかしシグルーンの口から返ってきた意外な答えにリィンは仲間達と共に呆け、セリーヌは不思議そうな表情で尋ねた。



「教えた所で支障はでませんし、それに……―――――”いずれ皆さんにとっては他人事ではなくなる”でしょうから知っておいた方がよろしいかと。」

「……っ!」

「そ、そういう言い方をするという事はやっぱり…………」

「先程誤魔化したクレア大尉の質問の答えを仰っているようなものですわね……」

そして微笑みを浮かべるシグルーンの言葉を聞いたクレア大尉は辛そうな表情で唇を噛みしめ、不安そうな表情をしているセレーネの言葉の続きをシャロンは静かな表情で答えた。



「フフ……それで先程のそちらの方の質問の答えですが……――――現時点でその戦争に参戦する兵の数はおよそ500万人になりますわ。」

「な……っ!?」

「ご、500万人!?」

「…………戦力が圧倒的に違いすぎます。エレボニア帝国は正規軍、領邦軍の総戦力を合わせても10分の1にも届きません………」

「しかも内戦で正規軍と領邦軍は互いに消耗し合っている上、”英雄王”達みたいなとんでもねぇ強さを持っている将達も参戦するだろうから、どうあがいてもエレボニア帝国の敗北は確定じゃねえか……」

「ひょっとしたら、”百日戦役”よりも早く終戦するかもしれませんわね……」

シグルーンの答えを聞いたリィンは絶句し、マキアスは驚き、クレア大尉は表情を青褪めさせ、トヴァルは疲れた表情で呟き、シャロンは考え込み

「メンフィルは皇族が自ら先頭に立って戦線の指揮を取る話で有名だけど……やっぱり皇族も参戦するのかしら?」

ある話を思い出したセリーヌは尋ねた。



「ええ。リウイ陛下とリフィア殿下は勿論エフラム皇子、エイリーク皇女、ヒーニアス皇子、そしてターナ皇女の参戦が現時点で決定していますわ。」

「なっ……!?」

「皇族が6人も参戦するだと!?”百日戦役”でも直接指揮を取ったのは”英雄王”と”聖魔皇女”だけだぞ!?」

「皇族がそんなに参戦するなんてめ、滅茶苦茶だ……」

シグルーンの話を聞いたクレア大尉とトヴァルは信じられない表情をし、マキアスは疲れた表情をした。



「そ、そんな……あのエフラム皇子達まで参戦するなんて……!?」

「リィン?」

「リィンはその皇子達の事を知っているの?」

表情を青褪めさせて呟いたリィンの言葉を聞いたアリサは首を傾げ、フィーは尋ねた。

「ああ…………――――エフラム皇子とエイリーク皇女は双子の兄妹でフィー達が以前特別実習で行ったメンフィル領―――”セルノ・バルジア統合領”の領主であられるグラザ公爵とアリア公爵のご子息とご息女だ。フィー達は会わなかったのか?」

「その時は二人ともそれぞれの用事で留守だったらしくてな。オレ達は会っていない。」

リィンに尋ねられたガイウスは静かな表情で頷いた。



「……で、その皇子達はそんなに強いのか?滅茶苦茶驚いていたようだが……」

「はい…………エフラム皇子は”聖焔の勇槍”の異名で有名で、正義感が強く勇猛果敢かつ部下思いで多くの兵達に慕われ、戦になれば最前線で槍を振るい、多くの武勲を立てて来た方で、特に戦場での活躍ぶりはまるで若い頃のリウイ陛下のようだと称されている程です。」

「ええっ!?」

「戦場での活躍ぶりが若い頃のリウイ陛下のようだって…………」

「それはまたとてつもない皇子殿下ですわね……」

トヴァルの質問に答えたリィンの話を聞いたエリオットは驚き、アリサは表情を引き攣らせ、シャロンは目を丸くした。



「そしてそのエフラム皇子を”好敵手(ライバル)”と公言し、またエフラム皇子自身も”好敵手”と公言し、互いを競い合っているフレスラント領主のご子息である”砂漠の叡智”の異名を持つヒーニアス皇子なんだけど……勇猛果敢なエフラム皇子とは逆に冷静沈着で自信家な性格で、弓技と智謀に長けている皇子なんだ…………――――兵士達の間では”力のエフラム”と”知のヒーニアス”が組めば敵はいないと噂されている程だ。」

「ほええええ~!?メンフィルって、プリネ達以外にもそんな凄い皇族がいるんだ~。」

「リウイ陛下に加えてそのように称されているお二方までも参戦させるなんて、メンフィルは”百日戦役”の時と違い、”本気”なのですね…………」

リィンの説明を聞いたミリアムは驚き、クレア大尉は表情を青褪めさせ

「じゃあ皇女達の方もプリネみたいに強いの?」

フィーは残りの二人が気になり、尋ねた。



「――――お二方はエフラム皇子達と比べるとそれほど大した武勲は立てておられませんが、指揮官としての能力は十分備わっていますし、武術や魔術の腕前も皆様もよくご存知のプリネ皇女よりも優れていますわ。」

「ええっ!?あ、あのプリネよりも強いの……!?」

「何でメンフィルの皇族でみんな、そんなに滅茶苦茶強いんだ……!?」

シグルーンの説明を聞いたアリサは驚き、マキアスは表情を引き攣らせ

「―――そこに付け加える形になりますがエフラム皇子達の親衛隊を率いるデュッセル将軍、ゼト将軍、ジスト将軍、シレーネ将軍も過去の戦で多くの武勲を立て、その名を轟かせているメンフィルが誇る勇将達です。それと既に皆様も予想をされていると思いますが……当然ファーミシルス大将軍も参戦しますし、エヴリーヌ様も参戦する上、セオビット大尉やレン皇女も参戦する事を前向きに考えているそうです。」

「そ、そんな!?エ、エヴリーヌさんまで……!?」

「エヴリーヌが……クロウ先輩以外の”Ⅶ組”のメンバーがエレボニア帝国を滅ぼす戦争に参戦するなんて……」

「どうしてエヴリーヌはエレボニア帝国を滅ぼす戦争に参戦する事にしたのかしら……?プリネ達程じゃないけど、私達とも仲良く接していたのに…………」

「”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”の全員まで参戦したらまさに”最凶”のメンツじゃねえか……」

「……アタシ達が想定していた以上にとんでもない戦力をエレボニアにぶつけるようね。」

「下手したら戦争にすらならず、ただ虐殺されるだけの戦いになるかもしれないね。そんなに何人も勇将がいたら、幾ら”紅毛のクレイグ”や”隻眼のゼクス”でもどうしようもないよ。兵士の質も量も圧倒的に向こうが上、兵器に関しては機甲兵まである事に加えてメンフィル独自の技術による兵器があるし、将の能力も完璧で一人や二人どころじゃないんだから。”百日戦役”で数の差を引っくり返してエレボニアを撃退した”剣聖”でも無理だと思う。」

「父さん…………」

シグルーンの説明を捕捉したエリゼの話を聞いたリィンは信じられない表情をし、マキアスとアリサは不安そうな表情をし、トヴァルは厳しい表情をし、セリーヌは目を細め、フィーの推測を聞いたエリオットは心配そうな表情をし

「あ、あの……そんなに戦力を割いては本国の守りが疎かにならないのでしょうか……?」

ある事に気付いたセレーネは不安そうな表情でシグルーンに尋ねた。



「フフ、その点は心配無用ですわ。私達メンフィル帝国軍の総兵力の10分の1にも満たない人数ですので。」

「ええっ!?」

「500万人でも10分の1に満たないのっ!?」

シグルーンの口から予想外の答えにエリオットとアリサは驚き

「……ちなみに貴女はその戦争に参戦するのか?」

ある事が気になっていたガイウスはシグルーンを見つめて尋ねた。



「無論ですわ。リフィア殿下も参戦なさるのですから殿下の身をお守りし、そして殿下に勝利を捧げる為にも私や殿下の親衛隊長を務める夫のゼルギウスが参戦するのは至極当然ですわ。」

「やはりゼルギウス将軍閣下も参戦するのですか………―――!ま、まさかエリゼ……お前も参戦するのか……!?確かメンフィル皇族の専属侍女長を務めている者には緊急時に皇族を守る為に少佐の位が与えられているってプリネさん達から聞いたぞ!?」

説明を聞き、ある事に気付いたリィンは血相を変えてエリゼを見つめ

「え………エリゼ、今の話は本当なのですか?」

リィンの話を聞いたルシア夫人は娘が戦争に参戦する事に気付き、表情を青褪めさせてエリゼを見つめた。



「はい。ですが私はメンフィル帝国から”特殊任務”を与えられていますので、任務を終えるまでは参戦しません。」

「え………」

「”特殊任務”、ですか。それも先程の話に出た”大国との戦争”に関わっているのですか?」

エリゼの答えを聞いたリィンは呆け、クレア大尉は真剣な表情で尋ねたが

「―――その件に関しては”今は”お答えできません。近い内に”再び兄様達の前に現れ、説明する時が来ます”のでその時までお待ち下さい。それでは私達はこれで失礼します。行きましょう、シグルーン様。」

エリゼは明確な答えを言わず、シグルーンに退出を促した。

「ええ。それでは皆様。次の再会が”どのような形”でも私は楽しみにしていますわね?」

エリゼに促されたシグルーンは不敵な笑みを浮かべてリィン達を見回した後エリゼと共に部屋から退出し、二人が退出するとシグルーンの話の所々にメンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛ける事が確定した事に気付いていたリィン達はそれぞれ重々しい様子を纏って黙り込んでいたがやがて気を取り直し、次の出発に向けてそれぞれ身体を休ませ始めた。



同日、20:30―――



~パンタグリュエル~



「何?監視塔にいる部隊どころかノルド方面に送った援軍やアイゼンガルド方面に展開している部隊と連絡が取れないだと?」

数時間後兵士の報告を聞いたカイエン公爵は信じられない表情で尋ねた。

「は、はい……空挺部隊からの最後の通信では何やら訳の分からない事を言っていました……弓矢で軍用飛行艇が撃ち落されたとか、異種族の軍団が現れたとか……」

「何だそれは??弓矢で軍用飛行艇が落とされる訳がないだろう。」

「………異種族の軍団と言うのは気になりますね。まさかメンフィル帝国軍か?」

兵士の報告を聞いたカイエン公爵は呆れ、ルーファスは真剣な表情で尋ねた。



「いえ、そのような報告はありませんでした。ただ敵軍の将と思われる者が自然や精霊がどうのとか叫んでいたそうです。」

「精霊だと?まさか伝承でしか伝えられていない精霊が正規軍に手を貸したというのか?馬鹿馬鹿しい。夢でも見たのではないか?」

「………………真偽はともかく、どうやら尋常ではない出来事がノルド高原で起こったのかもしれませんね。念の為に西部に回していた部隊の一部と”協力者”達をノルド方面に向かわせ、連絡が取れなくなった部隊の行方を探らせます。」

「うむ、采配はルーファス君に任せる。」

そしてカイエン公爵と兵士が離れるとルーファスは一人考え込んでいた。

「……………一体ノルド高原で”何が”起こったというのだ……?凶兆の前触れのようで、不気味だな……」

後日、事の次第―――ノルドの民達とノルド高原の大自然を守る為に精霊達がノルド方面の部隊を殲滅し、今もノルドの民達を護り続けている事を知ったルーファスは自分の”計画通り”になる事を確信して配置した部隊が生身の精霊達によって”全滅”させられたことや精霊達が人間達を守護するという”普通なら絶対にありえない出来事”に愕然とした後新たに向かわせるノルド方面の部隊には絶対にノルド高原に進軍せずに戦うように指示をし、その結果ノルド方面の部隊は進軍ルートが限定されてしまい、その結果進軍ルートが一定である事に気付いた第三機甲師団に撃退され続け、無駄に戦力や兵力を減らし続け、第三機甲師団と睨みあう形で、数日後に起こるある出来事が起こるまで硬直状態となり、ノルド高原に真の一時の平和が訪れた………… 
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