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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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外伝~オーバルギア開発計画~前篇

―――リベル=アーク崩壊より2ヶ月後――――



~ツァイス市内~



「あれ………?えっと……何の音?」

中央工房まで来たティータは突然聞こえて来た音に首を傾げた時、ティータの目の前にそれぞれ男性と女性が乗った何かの機械が降りて来た!

「ええ~~~っ………!?え、え、えっと………?」

突然の出来事にティータが驚き、戸惑っているその時

「「しゅごー……」」

機械に乗っていた怪しいゴーグルを付け、整備服を着た男性と女性がゆっくりと近づいて来た!

「え、えとえと……あ、あの。……ど、どなたですか!?」

「しゅごおぉ………」

ティータの質問に女性は答えず、近づいて来た!

「あ、あう……」

その様子を見たティータは後ずさった。

「………ははは。ティータ、久しぶりだね。」

その時男性が苦笑しながら言った。

「へ………?」

男性の声を聞いたティータは首を傾げた。

「……あら、この子ったら。私達の声、忘れちゃった?」

そして女性はティータに尋ねた後、男性と共にゴーグルを取って、素顔を露わにした。

「お、お……お父さん!お母さん!!」

女性と男性の顔を見たティータは呆けた後、嬉しそうな表情をした。

「うふふ……久しぶりね、ティータ。」

「ごめんよ。少し驚かそうと思って。」

女性――ティータの母、エリカ・ラッセルと男性――ティータの父、ダン・ラッセルはそれぞれ懐かしそうな表情でティータを見つめた。



「も、もう!びっくりしちゃったよ!いきなり空を飛んで来るんだもん。そ、それにそんなゴーグル付けてるし………2人とも、帰ってくるならちゃんと連絡してよね!」

呆れた表情で答えたティータは嬉しそうな表情で注意をした。

「………………………」

「………お母さん?えっと、どうかしたの?」

自分の言葉に何も返さずジッと見つめるエリカにティータは戸惑い、尋ねたその時

「ティータ………ああ、かわいい!やっぱりこの子はかわいい!!ぎゅううううううぅっ………!!」

エリカは突然ティータに抱きつき、嬉しそうな表情でティータを強く抱き締めた。

「お、お母さん………ちょっと苦しい………」

エリカに抱き締められたティータは呻いた。

「ダン、やっぱり産んでよかった。私はいま幸せよ……!」

「そうみたいだね。じゃあ僕も、挨拶していいかな?」

「そ、そうね。確かにあなたにも権利があるわ。」

ダンに言われたエリカは頷いて、ティータから離れ、ダンはティータに近づいた。

「ティータ。………ただいま、随分大きくなったね。」

「……うん。お帰りなさい、お父さん、お母さん。」

ダンの言葉に頷いたティータは笑顔を見せた。

「はあ……やっぱりかわいいわ~!!どーれもう一度………♪」

「も、もうお母さんってば………」

「エリカさん、抱き締めるのは着替えてからの方がいいよ。その整備服には色々なセンサーが仕込んであるからね。」

エリカの行動を見たティータは呆れ、ダンは諌めた。

「あ、ああ……そうだったわね。じゃ…………先に済ませてしまいましょうか。さあ……例の赤毛男はどこかしら?」

そしてエリカはゴーグルをつけて、呟いた。

「えっと………??赤毛って、アガットさんのこと?」

「そう、ソレよソレ。リベールに帰ってきたからには、一度アイサツしておかなきゃね~。」

戸惑いながら尋ねたティータの言葉にエリカは笑顔で頷いた後

「……索敵モード・オン………対象、赤毛98%。………」

目を妖しく光らせ、辺りを見回した。



「アガットさんならまだボースだと思うけど………えっと、お母さん?いきなりどうしたの??」

「チッ………ツァイスにはいないのね。まあいたならいたで大問題だけど………」

ティータの言葉を聞いたエリカは舌打ちをした後、ジト目で呟いた。

「まあまあエリカさん。来月にでも2人で出向くことにしよう。僕も一度、会っておきたいからね。」

「……そーねぇ……クーデター騒動に”輝く環”事件。リベールでも色々あったのよね。その間、ティータが随分お世話になったみたいだし……ククク………きっちりお礼させてもらわないと。」

ダンの言葉にエリカは頷いた後、再び目を妖しく光らせ、不気味な笑いをした。

「えへへ、じゃあ今度紹介するね。アガットさんの家って、小さいけど暖かくてすごくいいところなんだよ。」

「え…………」

「…………」

ティータの言葉を聞いたダンとエリカは驚いて呆けた後

「ぎりいッ………!!」

エリカは怒りの表情で強く歯ぎしりをした!

「ははは、まあまあ落ち着いて落ち着いて。ティータも、無闇に刺激しないようにね。」

「へ………???」

エリカを諌めた後、自分を見て言ったダンの言葉の意味がわからないティータは首を傾げた。

「アガットさん……アガットさん………!?……お、おのれ……!私のティータによくも!!」

一方エリカは怒りの表情で呟いた後、どこかに向かった。そして入れ替わるようにラッセル博士が2人に近づいて来た。

「?な、なんじゃ、これは。」

「あ、お祖父ちゃん。あのね………」

状況が理解できていない博士にティータが説明しようとした時、ダンが進み出て頭を軽く下げた。

「お義父さん……ご無沙汰しております。帰国の連絡もせずに申し訳ありませんでした。」

「いやいやダン君、そんなことはどーでもええんじゃ。それよりもなんじゃ、この装置は……?見た所ブースターを装備した乗り(ビーグル)のようじゃが………」

ダンの言葉に博士は笑った後、尋ねた時

「私が開発した有人着陸装置(ランディングユニット)よ。導力技術の無い辺境に行くとね、飛行船の発着場はおろか、空き地すらないことも多いのよ。ウチの船で出かけても、着陸できないでしょ?……だからこれを使うワケ。ふふん、お久しぶりね。アルバート・ラッセル。まだ生きてたみたいで何よりだわ。……生憎、今回の勝負は私の勝ちみたいね。」

エリカが近づいて来て説明をし、不敵な笑みを浮かべて博士を見た。

「フン、またケチ臭いものを作りおって。エリカ、その程度の発明でこのワシに勝てるとでも思っとるのか!?そのユニット、見た所有効稼働はせいぜい5分じゃ。それではハナシにならん。実用化できんのー。」

一方博士は鼻を鳴らした後説明をし、勝ち誇った笑顔でエリカを見たが

「あーら残念。わたくし、今日はコレでカルバードの国境付近から飛んできたのよ?」

「な、なぬ!?」

エリカの説明を聞いて驚いた。



「ククク……確かにこのユニットの飛行能力は限られているわ。……だけど。だけどよ、アルバート・ラッセル。船から導力式カタパルトで射出すれば約120セルジュを飛行可能なの。今回は導力回路を改良して382,2秒の稼働を記録したわ!」

「!120セルジュ、382,2秒……じゃと!?」

「おーっほっほっほ!さすがに驚いたようね。老人には少し、刺激が強すぎたかしら~?」

自分の説明を聞いて驚いている博士を見たエリカは笑った後、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「むきー!!何を言うか!!ワシが開発したカペルに較べればこんなもの、オモチャに過ぎんわ。わっはっは~、こんなものワシなら昼寝しながらでも作れそうじゃの~。」

「な、なにをっ……!このクソジジイが……!」

博士の言葉を聞いたエリカは怒りの表情を浮かべた後

「ふぬっ……!」

「ぬううっ……!

博士とつかみあった!

「ああ、もう……また始まっちゃった……お母さん、お祖父ちゃんってば……!」

2人の行動を見たティータは呆れた後、2人に近づいて諌めようとした。一方エリカと博士はティータの言葉に耳を貸さず、つかみあった状態で会話を始めた。

「資料を読んだわよ、アルバート・ラッセル……ティータをあんなに危険な目にあわせておいてよくもヌケヌケと……おまけに悪い虫まで寄りつけて……!!」

「な、なんじゃい……今の今まで、大陸中をほっつき歩いとったのはそっちじゃろ……お前に非難されるような筋合いは無いのう……!」

そして2人は喧嘩を始めた!

「お、お父さん。何とかしてよ~!」

一方ティータはダンに助けを求めた。

「ははは、大丈夫だよ。2人とも、久しぶりに会って照れてるだけなんだから。」

「で、でもこんなところで喧嘩しちゃったら、通行の邪魔にもなっちゃうし……」

「うーん、そうだね。ランディングユニットも格納しなきゃいけないし……この2人も家の方に連れて帰らないとね。ティータ、手伝ってくれる?」

ティータの言葉に頷いたダンは笑顔でティータを見て頼んだ。

「うん、了解っ!」

そして2人は喧嘩をしているエリカと博士を引き離した後、用事を済ませ、家族そろって家に戻った。



~ラッセル家~



「ふう、やっぱり我が家はいいわね~。」

玄関をくぐった白衣姿のエリカは嬉しそうな表情で呟いた後、椅子に座った。

「ダン、コーヒーお願い。ミルクたっぷりで。」

「はいはい。左藤は3つだね。」

「あ、わたしも手伝うね。

エリカの言葉に頷いたダンはティータと共にコーヒーを作り始めた。

「相変わらず邪道じゃのう。コーヒーはブラックに限るわい。」

「フン、これだから頭の固い老人は……」

「邪道を邪道と呼んで何が悪いんじゃ?おまけに、まだ砂糖を3つも入れとるのか。はぁ~、嘆かわしいのう……」

「ムカッ………」

呆れて溜息を吐いている博士をエリカは睨んだ。そして少しするとダンとティータがコーヒーを持ってきた。

「ほらほら、エリカさん。ご注文のものだよ。」

「はい、熱いうちに飲んでね。」

ダンとエリカはコーヒーを2人の前に置いた。

「チッ、一時休戦ね……」

「どーれ、頂くとするかのう……」

そしてエリカ達は家族揃って、一息ついた。



「ふう………さてと。アルバート・ラッセル。……お土産は?」

コーヒーを飲み終わったエリカは博士を見て尋ねた。

「ミヤゲ?どーしてワシが土産を用意せにゃならんのじゃ?外国旅行を満喫しとったのはお主らのほうじゃろ。」

エリカに尋ねられた博士は首を傾げて尋ね返した。

「むっ………ユリア様やミントちゃんと一緒にアルセイユに乗ったあげく、プリネ様やツーヤ様とも会ったくせに……4人の写真とかハンカチとか制服や普段着のボタンとかリボンとか幼い頃の写真とかもらってきてよ!!」

博士の言葉を聞いたエリカは怒りの表情で呟いた後、怒鳴った!

「せ、制服や普段着のボタン……!?と、というか何でミントちゃん達のまで……!?」

「はは、エリカさんは士官学校時代からのユリアさんファンで、プリネ姫達は新聞で姿が公になってから、ファンになったんだよ。」

エリカの言葉を聞いて驚いているティータにダンは苦笑しながら説明した。

「エリカよ、くだらんこと言っとるヒマがあったら論文の一つにでも目を通したらどうじゃ。まったく、これじゃから……」

「……いま、ユリア様達を侮辱した?」

呆れて言った博士の言葉を聞いたエリカは静かな怒りを見せて、席を立って博士を睨んだ。

「さー、なんのことじゃ?ユリア大尉とはアルセイユ搭乗中によくお茶した仲じゃからのう。ちなみにプリネ姫やツーヤにはお菓子を作ってもらい、ミントにはコーヒーを入れてもらった事もあるし、ミントとツーヤの幼い姿も知っとるぞ。うむ、みな見どころのある………」

自分を睨むエリカに博士は勝ち誇った笑みで話し続けたその時、エリカは博士の胸ぐらを掴んだ。

「このクソジジイが……その減らず口を塞いでくれるわっ……!

「どーじゃ、羨ましいか?羨ましいかの~?」

そしてエリカと博士はまた喧嘩を始めた!



「もう、2人とも!すぐに喧嘩するんだから………………………………」

その様子を見たティータは呆れた表情で席を立って、じっと見つめた。

「………ティータ?どうかした?」

ティータの様子に気付いたダンは席を立って、不思議そうな表情でティータに近づいて尋ねた。

「う、ううん……こうやってお母さんとお祖父ちゃんが取っ組み合いしてるのを見るのも……え、えへへ……久しぶりだなぁと思って……」

「うん、そうだね………」

ティータの言葉に頷いたダンはティータと共に微笑ましい表情で喧嘩をしている2人を見つめた。そして少しの間見つめたダンはティータを見てある提案をした。

「ティータ、後で一緒にお買い物に行こうか。今日の夕飯は僕が作るよ。」

「えっ、本当……?……お父さんの作るご飯も久しぶりだね。」

「しばらくはお仕事も入ってないからね……今日からしばらく僕がご飯を作ります。」

「え、えっと………じゃ、じゃあ私も手伝うね……」

ダンの提案を聞いたティータは嬉しそうな表情でダンを見て言った。

「あはは………よろしくね、ティータ。」

その日の夕食は、とびっきりのご馳走だった。ティータは久しぶりに家族に囲まれ、幸せな時間を過ごした。そして夕食後……



~夜~



「ティータ、もういいよ。あとはやっておくから、今日はもう休みなさい。」

「ううん、このくらいいつもやってるから。お父さんこそ、先に休んでいいよ。本当はお仕事、大急ぎで片づけてきたんでしょ?」

ダンの提案を聞いたティータは断り、尋ねた。

「え、ええっと……はは、ティータも鋭い事を言うようになったね。わたしももうすぐ13だよ。子供じゃないんだからぁ。」

ダンの言葉を聞いたティータは笑顔で答えたその時

「こ、これは……!」

工房がある部屋から博士の驚く声が聞こえてきた。



「エリカよ、本気でこれを作るつもりなのか?」

「……そのために帰って来たのよ。こんなものを制作できるのはリベールの中央工房(ZCF)しかない。少なくとも私はそう信じているわ。」

驚いた様子で問いかけて来た博士の言葉にエリカは真剣な表情で答えた。

「む、むう……しかしじゃな……」

エリカの言葉を聞いて博士が唸ったその時

「……お母さん?お祖父ちゃん?」

ティータが工房に入って来た。

「あらティータ、まだ起きてたの?もう12時回ってるんだから、早く寝なさい。」

「えっと、それって設計図……?なにない、わたしにも見せて。」

エリカの言葉にティータは答えず、エリカ達に近づこうとしたが、エリカが道を阻んだ。

「ほら、お風呂上りなんだし風邪引いちゃうじゃない。」

「ええ~わたしにも見せて見せて!」

エリカの言葉を聞いたティータは頬を膨らませて言った後、博士の傍にある設計図らしきものを何とか見ようとしたがエリカに阻まれた。

「すごく複雑そうだけど……その右隣のやつって、オーバルエンジンだよね。かなりコンパクトなタイプ……あ、新しい飛行船かな?それとも………お母さん、わたしにも見せてよ!」

「ああもう、この子ったら。相変わらず、機械のことになると目の色変わっちゃうのね……」

「……お母さん!?誤魔化さないで!!」

苦笑しているエリカを見たティータは頬を膨らませて言ったその時、ダンもやって来た。



「こちらは片付きました。そろそろ始めましょうか。」

「あらダン、丁度いいところに。この子、頼むわね。」

ダンに気付いたエリカは笑顔でダンを見て頼んだ。

「ああ、そうだね。もう遅いし……」

「ええ~っ!?」

ダンの言葉を聞いたティータは声を上げた。そしてダンはティータに近づいた。

「さっ、ティータ。」

「ちょ、ちょっとだけでいいから見せて!あのコンバーターのトルクが小さいのが気になる……」

ダンに促されたティータは頬を膨らませて言った。

「(うーん、ちょっと見ないうちにパワーアップしてるな……)ほらほらティータ、もう寝ようね。」

「で、でもぉ~……」

ダンの言葉を聞いたティータは渋々寝室に行こうとしたが、3人の会話が気になり近づいたがダンに気付かれ、翌日には絶対教えてくれることを約束し、ダンと共に寝室に向かった。



「いい、お父さん。……絶対だよ!わたしが知らない内に作っちゃダメだからね!」

「うん、わかってるよ。女神様達に誓って約束は守ります。おやすみ、ティータ。」

真剣な表情のティータに念を押されたダンは頷いた。

「う、うん……おやすみ……なさい……すー、すー………」

そしてティータは眠った。

(ティータは時々、エリカさんと同じ事を言うね。)

眠っているティータを優しい笑顔で見つめたダンはリビングに降りた。リビングでは博士とエリカが何かの会話をしていた。

「………というわけじゃ。」

「”身喰らう蛇”か……やっぱり想像以上の技術力を持っているみたいね。メンフィルはメンフィルで”導力”技術を知ってたった10年でよくそこまで成長したわね……いくら、独自の技術――”魔導”があるとはいえ、2つの技術を合わせるなんてかなりの年数を必要とするはずなのに………」

博士から今まで起こった事を聞いたエリカは真剣な表情で呟き、考え込んだ。

「……まあの。正直、連中の技術力はワシらのそれを遥かに超えておる。人形兵器(オーバーマペット)、”ゴスペル”、”グロリアス”、そして”モルテニア”………まあワシも、”身喰らう蛇”の技術力には心当たりはないわけでもないが……で、なんじゃお主ら。藪から棒に……連中の資料は一通り送ったはずじゃが?」

「実は……僕達も知っているんですよ、”身喰らう蛇”を………」

博士に尋ねられたダンは真剣な表情で驚くべき事実を言った。

「な、なんじゃと!?」

「はっきりと遭遇したわけじゃありません。しかし彼らは猟兵団や特定の資産家などを通し、確実に勢力を伸ばしている……ここ数年、大陸辺境を回ってそれをひしひしと感じます。」

「……だから、帰って来たのよ。まさかリベールに来るとは思わなかったから、今回は後手に回っちゃったけど……私達は一刻も早く、これを完成させる必要があるわ。」

「むう………」

ダンとエリカの説明を聞いた博士は唸って考え込んだ。

「それと………ティータのメンフィルへの留学の件だけど………いっそ、今から留学させる方がいいと思うわ。」

「……何じゃと?いくらなんでも早すぎないか?ワシは早くとも日曜学校に通う必要のない年齢になってからと思っているが。」

エリカの話を聞いた博士は驚き、エリカを見て言った。

「……”これ”に関わるより、メンフィル独自の技術――”魔導”に関わった方があの娘の為よ。メンフィルに留学している間は”これ”に興味を持つ暇なんてないでしょうし……」

「それに”身喰らう蛇”でさえ手の出せない場所――異世界、しかもあのメンフィルの本国なら遥かに安全だと思いますし。後、ティータからの手紙で知りましたけど、ミントさんにツーヤさん……でしたか。メンフィルの貴族の彼女達とも親しいと聞いていますし、向こうで困った時があれば力になってくれるんじゃないですか?」

「まあの。こちらの世界で遊撃士として活動しているミントと違って、ツーヤはメンフィルの皇族――プリネ姫に仕えておるからな。それに現メンフィル皇帝、シルヴァン陛下直々の報酬らしいの。その事からして恐らく向こうでの待遇はかなりよいと思うしな。」

エリカとダンの言葉を聞いた博士は重々しく頷いて答えた。

「フフ……それにしてもまさかツーヤ様達と親友だなんて、驚いたわよ。クローディア姫やオリヴァルト皇子と知り合い同士である事だけでも十分凄いのに……あの娘、下手したらそこらの貴族が持っている人脈より凄いんじゃないかしら?」

エリカは苦笑しながら言った後、呟いた。

「まあの。”輝く環”事件では”覇王”リウイ陛下をはじめとしたメンフィルの武将や皇族達に顔と名前を憶えてもらえただろうしの。……メンフィルへの留学の件も含めてみな、カシウスの娘のお蔭という訳じゃ。」

「……遊撃士であり、メンフィルの貴族でもあり、クーデター、”輝く環”、両事件を最初から関わった人の一人――”ブレイサーロード”エステル・ファラ・サウリン・ブライト侯爵ね。あのカシウスさんの娘なんでしょ?一体、どんな娘なんだか……10代で”侯爵”なんて、通常考えられないわ。」

「いつか会って、ご挨拶をしておきたいね。僕達がいない間、随分お世話をしてくれたみたいだし。」

「……ったく。何が”エステルお姉ちゃん”、”ヨシュアお兄ちゃん”よ!おのれ……!私に許可なく、よくも勝手に妹にしてくれたわね……!いつから、そいつらにもアイサツをしておかないとね~!」

ダンの言葉を聞いたエリカは怒りの表情で呟いた後、笑顔で言った。



そして翌日……………


 
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