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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第30話

~ラクリマ湖畔・グエンの家~



「”導力波妨害装置”……!?」

「うむ、例の監視塔のてっぺんにそんな機器が設置されているようじゃ。それも、かなり大掛かりなものがな。」

「あの監視塔にそんなものが……」

「なるほどね……詳しいことはわからないけど。つまりそれが導力通信が使えなくなった原因というわけね。」

グエンの話を聞いたガイウスは真剣な表情をし、セリーヌは頷いた後話の続きを促した。



「うむ、まず間違いない。一種の”妨害導力波”を断続的に発生させることで、通信を妨害しておるのじゃろう。」

「んー、確か”情報局”にも似たようなキカイがあったっけ?」

「鉄道憲兵隊も作戦によっては運用することもありますが……この広大な高原全体をカバーできるほど高性能なものは見た事がありません。」

グエンの話を聞いてある事を思い出したミリアムに尋ねられたクレア大尉は自分が知る機械を思い返した後真剣な表情をした。



「うむ、その上で特定の通信器には影響が及ばないようにできるようでな。つまりは現在、貴族連合だけがこの高原で通信を使えるわけじゃな。」

「連絡が取り合えないと色々と不便になるでしょうから、戦いにもきっと有利になるのでしょうから、貴族連合は通信の妨害をしているのでしょうね……」

グエンの説明を聞き終えたセレーネは不安そうな表情で推測をした。



「第三機甲師団はそんな状況で必死に渡り合っているんだな。そして戦闘は日に日に激しくなってしまっている……」

「多分、あの装置がある限り状況は変わらないでしょうね。何とかできないか私達も手を尽くしたんだけど……」

「ガーちゃんなら近づきさえすればぶっ壊せると思うんだけどなー。侵入できそうな空からのルートもあらかた警戒されちゃっててさー。」

アリサに続くようにミリアムは残念そうな表情で答えた。



「―――とにかく、高原の状況はやはり芳しくないようだ。我々も、今は湖畔に身を寄せて戦火から逃れてはいるが……やはり、すぐにでも高原を離れた方がいいのかもしれない。」

ラカンが呟いた言葉を聞いたリィン達は血相を変えた。

「それは……」

「……わかった。オレも準備くらいは手伝おう。リィンたちについていくのはそれからでも構わないな?」

「あ……」

「ガイウス……」

「んー、やっぱりそうなっちゃうか。」

「ふむ、改めて避難の準備を整えておく必要があるじゃろうな。門に父親がおるシャルのことは考えておかねばならんが……」

それぞれが暗い表情をしている中、黙って考え込んでいたリィンが制止した。



「―――待ってください。戦に巻き込んでしまった責任はどう考えてもメンフィル帝国の件同様、エレボニア帝国にあります。なのにノルドの人々が故郷を離れなければならないなんて……そんなのは筋が通らないでしょう。」

「リィン……」

「お兄様……」

「……だが、どうしようもないことだ。実際、あのような猟兵まで放たれてしまっている。集落のみんなの安全には代えられない。」

(……………人間達の愚かな争いに介入するつもりはありませんでしたが………遥か昔からこの大自然との共存をしてきた彼らについては”精霊王女”―――いえ、”精霊”としての義務を果たすべきかもしれませんね……)

リィンの意見を聞いたアリサとセレーネは辛そうな表情をし、片を落として答えたガイウスはすぐに気を取り直し、リィンの身体の中で静かな表情で黙り込んでいたリザイラは真剣な表情でガイウスやラカンを見回していた。



「……本当にそれでいいのか?ガイウスだって、この前の実習で言っていたじゃないか。”故郷を愛している”って―――”ノルドの地の全てを愛している”って。」

「あ…………」

「………………………」

リィンの指摘にアリサはかつての実習でガイウスが士官学院に入学した理由を思い出し、図星を突かれたガイウスはリィンから視線を逸らして黙り込んでいた。



「だから―――やってみよう。俺達の手で、出来る限りの事を。」

リィンの提案を聞いた仲間達はそれぞれ表情を引き締めた。

「それは……」

「導力通信の妨害装置をボクたちが止めるってこと?」

「その通りだ。貴族連合はあくまで第三機甲師団との戦闘に力を注いでいる。この地における”イレギュラー”である俺達なら―――連中の裏をかくことも可能なんじゃないか?」

「確かにそうですわね……」

「うん。もちろん簡単じゃなさそうだけど……」

リィンの話を聞いたセレーネとエリオットは考え込み

「………ですが、いいのですか?結果的に貴族連合と対立する事になりますが。」

クレア大尉は真剣な表情で問いかけた。



「もちろん、正規軍に直接協力することはできません。ですが貴族連合は、通信を封じることでノルドの人々とゼンダー門の連絡すら断ち切っています。その際に、猟兵団を使って高原を制圧しようとしている……せめてそれだけでも何とか阻止するべきでしょう。」

「そうね……私も同じだわ。集落の人にはさんざんお世話になってしまったし。」

「まあ、きっちりとお返しするのがスジかもねー。」

「そうですわね。」

「こうなったら僕達も頑張るしか!」

「……ふふ。決意は固いようですね。」

リィンの言葉に次々と答えたアリサ達を見たクレア大尉は苦笑した。



「………………ありがとう、みんな。オレも”Ⅶ組”の一員としてそれに参加させてもらいたい。この故郷を守る為―――改めてみんなの力を貸してくれ。」

「ああ、もちろんだ!」

「毎度毎度、面倒事にばっかり首を突っ込むんだから……って言いたいところだけど、それがアンタたちなんでしょうね。」

ガイウスの言葉にリィンは力強く頷き、セリーヌは呆れた表情でリィン達を見つめていた。



「ハハ、若さというやつかのう。羨ましい限りじゃな。」

「……そうですね。大切なものを守る意志―――改めて教えられた気がします。ゼクス中将への連絡はこちらに任せておくがいい。この件についてはお前達に全てを委ねる。風と女神の導きを。」

「ああ……行って来る!」

その後グエンの家を出たリィン達はこれからの方針について話し合っていた。



「それでは、さっそく行動を開始しましょう。監視塔に侵入する方法をなんとか探さなくては。」

「そうですね……さすがに正面からというわけにもいきませんし。」

「んー、あの機甲兵の守りを突破するのは難しそうだね。それも貴族連合に気付かれずにとなると……」

「どこかに死角になっているルートはないかしら……?あ―――そう言えば!」

「何か心当たりがあるのですか?」

突如声を上げたアリサを不思議に思ったセレーネは尋ねた。



「ええ……以前の実習で調べた場所よ!ほら、監視塔を爆撃した”迫撃砲”が設置されていた……!」

「あ……!」

アリサの話を聞いたリィンは以前の特別実習で見つけた迫撃砲が設置されていた場所を思い出した。



「そうか……あの高台は監視塔からは死角になっていた。それに、貴族連合はおそらく前回の高原での事件は知らない。あそこからなら発見されずに敷地内に忍び込めるかもしれない。」

「ほ、本当に……!?」

「うんうん、可能性はあるかも!」

「よし……それでいこう。準備ができたら馬で向かうとするか。」

「そうだ、余裕があったら長老の所に寄ってみましょう。色々大変そうだし、困っている事があるかも。」

「あ、そーだね。すっごくお世話になったしそのくらいお返ししたいかも。」

「そうか……だったら一度訪ねてみるか。」

「……恩に着る。」

その後長老の元に向かい、事情を説明した後長老からもらった”依頼”の消化や高原内で見つけた謎の遺跡を探索を終えたリィン達はいよいよ”監視塔”への侵入を開始する為に集落を経とうとした所、ミルモが突如出て来てリィン達を呼び止めた。 
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