おぢばにおかえり
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第二十八話 誤解のもとその十二
けれどもうここまで来たら。少しだけ覚悟を決めました。
「こっちから右にね」
「ああ、あの山ですね」
阿波野君は右手を指し示しました。
「あそこの。緑の場所ですよね」
「そうよ。あそこよ」
私達から見てその右手は坂道になっています。その先は緑になっていますのでそこを指差して阿波野君に説明をします。
「あそこがお墓地なのよ」
「へえ、あそこですか」
「それじゃあね」
ここでまた阿波野君に顔を向けて声をかけます。
「行くのね?」
「ええ、まあ」
そして阿波野君も答えてきました。
「最初からそのつもりでしたし」
「そうだったの?」
「お話出た時からですけれどね」
その時からだったみたいです。
「じゃあ行きましょうか」
「決めているんならそれでいいわ」
私もそれで納得しました。
「阿波野君がよければね」
「どうも。それにしても先輩」
「どうしたの?」
「おぢばって本当に色々な場所があるんですね」
感心したような言葉でした。
「お墓地まであるなんて」
「そうね。場所はね」
阿波野君のこの言葉にも答えます。
「幾つでもあるわよ」
「ですよね」
「おぢばがえりの時なんかはもっと凄いわよ」
その時のことも話します。
「もうね。おぢば全体に遊ぶ場所や催し場所ができてね」
「へえ、凄いですね」
「大体六月から準備がはじまるのよ」
それでひのきしんでおぢばに入る人も出て来ます。何事も準備が一番大事なんだってことがここからもよくわかります。これもお母さんに言われたことですけれど。
「七月の末からはじまってね」
「夏休みにですよね」
「だから子供が一杯来るのよ。例えばね」
丁度青信号になりました。歩道を二人で歩きながら北寮の前で今私達の左手に見える広い空き地を指差します。丁度いいタイミングでした。
「ここだってね」
「催しがあるんですか?」
「そうよ。アスレチックジムだったかしら」
その辺りの記憶は結構以上に曖昧なので私の言葉も歯切れが悪くなっていました。
「それができるのよ」
「それでそこで遊ぶんですね」
「そうよ。子供達がね」
あと付き添いの大人の人達も入ります。
「もう凄い数なのよ。それで」
私は話を続けました。今度は道路を挟んで右手にある空き地を指差します。
「ここがね。駐車場になってね」
「へえ、色々あるんですね」
「そうなの。空き地もかなり大切なのよ」
「だからあえて場所を置いてるんですか」
「そういうことなのよ。それじゃあね」
「はい」
「行きましょう」
阿波野君に声をかけてお墓地に二人で行きました。けれどこの時は思いもしませんでした。後で物凄いスキャンダルになるなんて。大袈裟ですけれど。
第二十八話 完
2008・11・7
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