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機械の女

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5部分:第五章


第五章

「最近のはね」
「アンドロイドも随分変わった?」
「そう思っているのね」
「まあね。ただ」
「ただ?」
「いや、違和感はあるね」
 スルーはこう話すのだった。
「随分とね」
「あるの」
「うん、あるね」
 スルーの言葉は続く。首を傾げさせながらだった。
「それはね」
「アンドロイドが食べることが」
「エネルギーを電池とかで補給するとか思っていたんだけれどね」
 これは今までのアンドロイドだった。彼の中にはそのイメージが強く残っているのだ。
 そしてだ。また話すのだった。
「けれどどうなのかな」
「どうなのって」
「アンドロイドはものを食べるものかな」
 腕を組みながら考えての言葉だった。
「何か違うんじゃないかな」
「そうなの」
「んっ!?」
 エリザベスは話を聞いているうちにだった。ついにその表情が変わるのだった、それを止めることができなくなっていたのだ。
 そしてであった。彼もそれに気付いてだ。
「本当にどうしたの?」
「別に」
「何もなかったらいいけれど」
 こう言ってからまた話すのだった。
「顔が暗くなってるから」
「そうなの」
「悩みがあるとか?」
 彼女を気遣う言葉だった。
「それだったらだけれど」
「別にないから」
「そう。だったら」
「ええ」
「今日の晩御飯は何がいいかな」
 気さくにこの話に移してきた。
「今日は」
「スパゲティはどうかしら」
 エリザベスが出してきたのはこれであった。
「トマトソースの」
「スパゲティね」
「ええ、それ」
 それをだというのだ。
「チーズはお家にあるし」
「いいね」
 どちらもスルーの好物だ。話を聞いて微笑まずにはいられなかった。
「それじゃあそれでね」
「ええ、それでね」
「あとワインは」
 何気なくワインも話に出した。
「赤をね」
「そうしましょう」
 こんな会話だった。何処にでもあるごく普通の若い夫婦の会話だった。スルーは幸せを感じていた。そしてその幸せを疑う様なことは全くなかった。
 しかしである。ある日のことだ。
 二人はこの日はドライブをしていた。その帰り道だ。
 正面から居眠り運転のトラックが来た。かわそうとしたがかわしきれない。
「!?」
「危ない!」
 何とかかわそうとした。だがトラックに跳ね飛ばされた。二人の乗った車は激しくスピンしそのうえでガレージに激突した。スルーは運転席で倒れていた。
「うう・・・・・・」
 しかしエリザベスは無事だった。何とか起き上がりだった。
 夫を運転席から出した。彼は全身から血を流し誰がどう見ても瀕死の重傷であった。意識さえ失っていた。
 エリザベスもダメージを受けている。しかし彼女は血は流れてはいなかった。そう、血はである。それは流れていなかった。
 夫を担いでそのまま車から出て携帯で救急車を呼ぶ。その間彼を仰向けにさせて手当てをしていた。こうした迅速な対応もあり夫は助かった。
 
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