英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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後日談~新たなる軌跡への系譜~ 異伝~”知”の能天使の優しさ~
―――”D∴G教団”事件終結から数週間後―――――
~クロスベル市・夜~
「フウ……ようやくあの娘を親元に帰せたのはよかったが……両親が中々帰してくれなかったお蔭で、数日間ロイドに留守をさせちまった……セシルにもロイドの面倒を見てくれて、苦労をかけるな……こんなんでお詫び代わりにはならないと思うが……何もないよりマシだろ。」
クロスベル警察のある刑事――ガイ・バニングスは弟が待っている自宅への帰り道に外国で買った土産品を取り出して、苦笑しながら帰路についていたが、あるものを見つけた。
「……ん?……!!誰か、倒れてやがる……!おい、大丈夫か!?」
闇夜の中、人らしき姿が倒れているのに気付いたガイは倒れている人物に近づいて、声をかけた。
「………………………」
ガイが声をかけた人物は何も答えず、目を閉じていた。
「………脈はあるな。服も乱れていないようだし、暴行を受けた訳ではないよな……?……にしてもなんでこんな道の真ん中で倒れているんだ??って……ん?足が蛇のように……!し、しかも羽に光の輪っかまでありやがる……!まさか……”天使”………なのか……!?」
ガイは倒れている人物の首に手を当て、人物の整った服装を見て安堵の溜息を吐いた後、首を傾げた後、倒れている人物の足の部分が蛇のようになっていて、さらに1対の羽、そして頭上に光り輝く小さな輪っかがある事に気付いて驚いた。倒れている人物――女性の髪は薄い撫子色で、腰までなびかせ、容姿は十人中十人が振り向くような整った容姿で、また体型も一般の女性よりも優れた体型をしていた女性であった。
「……ま、家で看病して、目が覚めたら事情を聞いてみるか………よっと………」
そしてガイは倒れている女性を背負って、弟が待つ自宅に戻った。
~アパルトメント・”ベルハイム”~
「今、帰ったぜ、ロイド。」
「あ、兄貴!ようやく帰って来た!」
集合住宅――アパルトメント・”ベルハイム”の自分が借りている部屋に笑顔で入ったガイに、茶髪と茶色の瞳を持つ少年――ガイの弟、ロイド・バニングスが近づいて来た。
「ハハ、セシルに迷惑かけずに良い子にして待っていたか?」
「あのな……セシル姉に迷惑をかけているのは兄貴だろう。……そりゃ、確かに夕飯とかご馳走になったけど、一人での留守番なんて、慣れているよ。」
ガイに尋ねられたロイドは呆れた表情で答えた。
「ハハ、そうか。……実はそんなお前にとっておきのお土産があるんだぜ?」
「……お土産?それなら先にセシル姉に渡せよ。いつもさんざんセシル姉に迷惑をかけているお礼を少しでも返せるだろう?」
「いや~……さすがに今回のお土産はセシルに渡しても、余計迷惑をかけるだけだから、渡す訳にはいかねえんだよ。」
「……ハア?一体どんなお土産を買って来たんだよ。」
ガイの話を聞いたロイドは首を傾げて尋ねた。
「……ま、こういう事よっと。」
そしてガイは背負っていた女性を自分が使っているベッドに降ろした。
「え。……………………」
ガイが降ろした人物を見たロイドは少しの間呆けた。
「どうだ、セシルにも負けないぐらいの凄い美人だろう?しかも、この羽と輪っかを見てみろよ。もしかしたら”天使”かもしれねえぞ?」
「………………………」
得意げに説明するガイにロイドは無言でガイの足を蹴った。
「って!?何するんだよ!?」
「何をしているのはこっちのセリフだ!何なんだよ、この女の人は!?まさか兄貴……セシル姉を裏切ったのか!?」
「ったく……あの娘の事と言い、どうしてそこでセシルが出てくるんだよ……まあいい。実はな……」
怒っている様子のロイドにガイは溜息を吐いた後、事情を説明した。
「……話はわかった。……だったらなんでそれを最初に説明しないんだよ………しかも行き倒れの人?を勝手にお土産にするなよな……」
「ハハ……お前が驚く顔が見たかったんだよ。」
呆れている様子のロイドにガイは悪戯が成功したような表情で笑って答えた。
「………ん…………」
その時、女性は目を覚まして起き上がった。
「ここは………?」
「あ。」
「お、目が覚めたか。どうだ?どっか怪我とかしてねえか?怪我しているのなら、知り合いに看護婦がいるから手当てを頼めるぜ?」
周りを見回している女性を見たロイドは声を上げ、ガイは尋ねた。
「……別に怪我は負っていないわ。……それよりここはどこかしら?貴方達は?……一体何のために私をここに連れて来たのかしら?」
ガイの質問に女性は静かに答えた後、若干警戒した様子で尋ねた。
「俺の名はガイ。ガイ・バニングス。ここ、クロスベル警察に所属している刑事の一人だ。で、こいつは俺の弟のロイドだ。」
「……ロイド・バニングスです。」
女性の疑問にガイは答え、ガイに促されたロイドは頭を下げて自己紹介をした。
「警察……秀哉達の国の治安を維持する組織……ね。……でも、”クロスベル”……?聞いた事のない地名ね。もしかして秀哉達の国外の知られていない国かしら?秀哉達の世界の国は一通り覚えたはずなんだけど……」
「世界……?ってことはやっぱりあんたは異世界出身の”人”か。」
「私は”人”ではなく、”天使”なんだけどね……まあ、異世界出身である事に違いはないわ。」
「”天使”!?異世界には天使までいるんだ……!」
「ま、”神”も現存しているって話だし、”天使”が実在していてもおかしくないだろ。」
女性の話を聞いたロイドは驚き、ガイはどこか納得した様子で頷いた。
「……”神”が現存……?どういう事かしら?」
「ん?そっちの世界では様々な宗教があって、各宗教が信仰している”神”が現存しているって聞いたことがあるけど……”天使”のあんたが知らないのかよ??」
「………どうやら、ここは私が知る両世界ではないようね………ガイと言ったわね?”この世界”や貴方の言う異世界の事を説明してくれないかしら?」
ガイに尋ねられた女性は考え込んだ後、尋ねた。
「別にいいが……その前にまず、俺達に教えるべきことがあるだろう?」
「教えるべき事?」
「名前だよ、名前。俺達は名乗ったのにあんたはまだ名乗っていないぜ?」
「………失礼したわ。私の名はルファディエル。第6位”能天使”よ。」
ガイの言葉を聞いた女性――ルファディエルは静かに目を伏せて言った後、目を開いて静かな口調で名乗った。そしてガイ達は自分達が住む世界――ゼムリア大陸の生活や数年前に突如現れた異世界の国――メンフィルや”闇夜の眷属”、異世界の宗教――アーライナ教やイーリュン教の事を説明した。
「………どうやらここは私の知る両世界とは完全に異なるようね………あの時、いきなり私の目の前で光った謎の光が原因として………まいったわね………ラグタス将軍や秀哉、メヒーシャ達が私がいなくなってしまった事に気付いても、私を見つけられる可能性は0に等しいわね……まずは情報収集をするとして………それから、どうしようかしら………」
ガイ達の説明を聞いたルファディエルは疲れた表情で溜息を吐いた。
「………よくわからんが、ルファディエルには帰る場所がないのか?」
「………ええ。フウ……私にはやるべき事がたくさんあるのに、本当にまいったわ………」
「………だったら、しばらくこの家に泊まって行くか?」
「兄貴!?」
「え……?」
ガイの突然の提案を聞いたロイドは驚き、ルファディエルも驚いた後ガイを見た。
「話を聞いた感じ、あんたは自分の元いた世界に帰る為に情報収集をするんだろう?けど、情報収集するにしても拠点が必要だ。違うか?それに俺は刑事だ。普通なら手に入らない情報も持っている。それでよければあんたに教えよう。どうだ?あんたにとっては好条件だと思うが。」
「………そうね。申し出はありがたいけど、どうして見ず知らずの私にそこまで親身になるのかしら?いくら民の為に働く警察といえど、そこまではしないでしょう?」
「ハハ、そんな細かい事はどうでもいいじゃねえか。……ただ、そうだな。俺は仕事柄よく家を留守にするんだ。ここを出て行く目途がついたらいつでも出て行っていいが……宿代代わりにここを……ロイドを守ってくれないか?」
「兄貴…………」
「…………………それぐらいならいいわ。これから、しばらくよろしくね。……それとロイドと言ったかしら。もし、よければ私の事を”お姉ちゃん”って言ってもいいのよ?」
ガイの話を聞いたロイドはガイを見つめ、ルファディエルは考え込んだ後、微笑みながら答え、そしてロイドに微笑んだ。
「お、ルファディエルは”姉”に憧れているのか?」
「フフ、少しね。……それでどうかしら?」
ガイに尋ねられたルファディエルは微笑んだ後、ロイドを見た。
「えっと……さすがに”お姉ちゃん”は恥ずかしいから”ルファ姉”で。」
「”ルファ姉”……フフ、わかったわ。……しばらくの間、よろしくね。」
「うん!」
ルファディエルに微笑まれたロイドは笑顔で頷いた。そうして天使との共同生活という奇妙な生活が数年続き……ある日、ガイが殺害されるという悲報が届き、ガイの葬式が滞りなく済み、ロイドが心の中である決意をした後、自宅にルファディエルと共に戻った。
~?????始動より数年前・アパルトメント・”ベルハイム”~
「………ガイの事は残念だったけど……それよりロイド。貴方はこれから、どうするの?」
自宅に戻ったルファディルは静かな表情でロイドを見て尋ねた。
「……カルバードの親戚の人が俺の世話をしてくれるって申し出てくれたから……しばらくはお世話になって、クロスベル警察学校に入学して……クロスベル警察に就職するつもりさ。」
「……ガイ殺害の真相を知る為に警察官になるのかしら?」
「ああ………今まで俺の世話をしてくれたセシル姉達を守る為に……兄貴を殺した犯人を見つける為に俺は捜査官になる……!」
「……そう。」
決意の表情のロイドを見たルファディエルは静かに頷いた。
「……えっと、ルファ姉。今まで俺の面倒を見てくれて、ありがとう………数年間の共同生活だったけど、ルファ姉との生活……楽しかったよ。」
「………フフ、もしかして今回を機に私があなたから離れると思ったのかしら?」
寂しげな笑みを浮かべてお礼を言うロイドにルファディエルは微笑みながら尋ねた。
「え?」
ルファディエルの言葉にロイドが驚いたその時、ルファディエルはロイドに静かに近づいて、ロイドの両手を握り、そして
「……”能天使”ルファディエル。これよりロイド・バニングスが”真実”にたどり着くまで、見守り続けましょう。」
ロイドの両手から伝わる魔力に同化して、その場から消えた。
「!?今の間隔は一体……?って、それより!ル、ルファ姉!?一体どこに……!?」
(フフ……驚くのも無理はないわね。)
「え!?今の声はルファ姉……!一体、どこから……?」
ルファディエルの念話に驚いたロイドは周りをキョロキョロしながら驚いていた。
(私はあなたと”契約”をして、あなたの魔力と同化して、あなたの身体の中にいるわ。)
「お、俺の!?一体どうやって……」
(………多分説明をしても今のあなたには難しいでしょうから、とりあえず私の名を呼びなさい。)
「う、うん……ルファ姉!」
ルファディエルの念話を聞いたロイドは戸惑いながら頷いた後、ルファディエルの名を呼んだ。するとロイドの身体の中から光の球が出て、そこからルファディエルが現れた!
「えっと……混乱していて、よくわからないんだけど……ルファ姉……まだ、俺の傍にいてくれるの?」
「………あなたがガイ殺害の”真実”にたどり着くまではあなたを見守ってあげるし、力も貸してあげるわ。……ガイには恩もあるし、それにセシルの頼みもあるしね。」
「セシル姉の?……そういえば兄貴の葬式が終わった後、セシル姉と2人で何か話し合っていたようだけど……一体何を話し合っていたんだ?」
ルファディエルの説明を聞いたロイドは不思議そうな表情で尋ねた。
「……セシルから頼まれたのよ。『ロイドが1人前の大人になるまで見守ってあげて』ってね。」
「セシル姉………」
「フフ……それに私はロイドの”お姉ちゃん”だしね。」
そしてルファディエルはロイドを優しく抱きしめて微笑んだ。
「うっぷ。…………はあ………セシル姉といい、2人とも俺を甘やかしすぎだよ………でも、ありがとう、ルファ姉。これからもよろしく。」
ルファディエルに抱きしめられた際、ルファディエルの豊満な胸に顔を押し付けられて、呻いたロイドはルファディエルから離れた後、恥ずかしそうな表情でため息を吐いた後、笑顔をルファディエルに向けた。
「ええ。」
ロイドに笑顔を向けられたルファディエルは優しい微笑みを浮かべた。
そしてさらに数年後、ルファディエルと契約したロイドは警察学校に入学し、休日に敷地内をトレーニング代わりにランニングをしていたその時、ある人物――悪魔のような容貌や翼を持つ男性が瀕死の状態で倒れているのを見つけ、その人物に急いで近づいた………
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