英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第131話
~リベルアーク地下道~
エステルたちは急いで地下道を走っていたが、ヨシュアが突然崩れ落ちた。
「ぐっ……」
「ヨシュア!?だ、大丈夫!?どこかケガしていたの!?」
崩れ落ちたヨシュアにエステルは慌ててかけより、声をかけた。
「いや……何でもないよ。ちょっと……目眩めまいがしただけだから……」
「目眩って……ど、どうしていきなり……」
「……たぶん”聖痕”が消滅した後遺症やろね。」
「え……」
突然の言葉に驚き、エステルが振り向くとそこにはケビンがいた。
「ママ!パパ!」
「ヨシュア!大丈夫なの!?」
さらにミントとレーヴェに抱き上げられた状態のプリネがケビンの後ろから現れた。
「何しろ、意識の根っこに巣食ってた部分や。それを取り除いたら、何らかの形で揺れ戻しが起こる。目眩、頭痛、吐き気……しばらくの間は悩まされるやろ。」
「「そ、そんな……」」
「パパ………」
「……………」
ケビンの説明を聞いたエステルやプリネ、ミントは心配そうな表情をし、レーヴェは目を伏せた。
「いいんだ、エステル、姉さん、ミント……。全部覚悟した上で……ケビンさんにお願いしたんだから……姉さんにも再び会えたんだし、これぐらい安いものだよ…………」
「「ヨシュア………」」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルとプリネは何も返す言葉がなかった。
「おーい!何をやっとるんじゃ!急がんと置いていくぞ!」
その時、博士のはやし立てる声が聞こえてきた。
「あ……うん!もう走れる、ヨシュア?」
「ああ、問題ないよ」
「よーし、そんなら急ぐで!」
「うん!」
「レーヴェ、お願い!」
「ああ…………!」
そしてエステル達は再び走り出した。しかし、走っている途中、ヨシュアが何かの気配に気づき
「エステル!」
後ろを追いかけてきていたエステルを抱え後ろへと飛びのいた!すると、エステル達の前の通路が落石により破壊され、ケビン達と分断されてしまった!
「…………あ………………」
「さっきの揺れで脆かった部分が崩れたんだ……」
「だ、大丈夫か!?」
「ママ!パパ!」
「エステルさん!ヨシュア!」
「無事か!?」
分断された道を見つめて呆けているエステルにヨシュアは説明し、その時ケビンやミント、プリネを抱き上げたレーヴェが心配そうに言った。
「う、うん……何とか!」
ケビン達の言葉にエステルは答えた。
「チッ………道が分断されたのか………!」
「エステルさん……!?」
「……ヨシュア……!?」
さらにリウイ達も騒ぎを聞いて引き返してきた。
「お姉ちゃん!お兄ちゃん!」
「チッ、何てこった……。他に通り道はねえのかよ!」
「”中枢塔”に向かう通路はここだけだったはずよ……。……くっ……何か方法は……」
道が分断されている状態を見たティータは心配そうな表情で叫び、アガットは舌打ちをし、シェラザードは答えた後、周りを見回した後ある人物達に気付いた。
「!!そうだ!ファーミシルス大将軍!リスティさん!貴女達の力があれば………!」
「………そうしたいのはやまやまなんだけど、何故かこの周辺一帯に何かの力が働いているせいであまり飛べないのよ。」
「はい~。リスティ達自身はなんとか飛べるんですけど、人を抱えて飛ぶと落ちる可能性が高いんです~………」
シェラザードの言葉を聞いたファーミシルスは苦々しい表情で答え、リスティは悲しそうな表情で答えた。
「エリザスレイン、彼女達の言う通り、君もなんとかできないのかい?」
「…………ええ。だから、翼のある私達も飛ばずに走っているのよ。」
ウィルに尋ねられたエリザスレインは静かに答えた。
「え、えっと……。あたしたちに構わずにみんな先に脱出してよ。」
「僕たちは何とかして脱出の方法を見つけますから。」
エステルとヨシュアが答えたその時
「馬鹿言うんじゃないわよ!」
「そうだ!二度とそのような戯言、言うでない!」
シェラザードとリフィアが怒鳴った!
「ここであんた達を置いていったら先生とレナさんにどう顔向けすればいいの!いいから何か方法を考えるわよ!」
「お前達は余達の友!友を置いて行く”王”等、”王”としての資格等ないわ!」
「シェラ姉……リフィア………」
「すみません……」
シェラザードとリフィアの言葉を聞いたエステルは何も答えれず、ヨシュアは申し訳なさそうな表情で謝った。
「実際問題、ジャンプして飛び越せる距離じゃない……。となると……別のルートを探すしかなさそうだ。」
「別のルート………で、でも一本道なんですよね………?」
ジンの言葉を聞いたクローゼは不安そうな表情で尋ねた。
「いや、それはあくまでこの地下道に限っての話さ。どうやらこの浮遊都市には幾つもの地下道が存在するらしい。そうした道さえ見つかれば………」
クローゼの言葉を聞いたオリビエは静かに答えた後、真剣な表情で考え込んだその時
「そういや”中枢塔”の手前で別の地下ゲートを見かけたな………”カルマーレ”に通じた緊急避難通路と書いてあったような…………」
「ホ、ホント!?」
「ああ、確かにあったぜ。その”カルマーレ”ってのがお前らの船のある場所なんだろ?」
キールが呟き、ジョゼットが明るい表情をして尋ね、ドルンが頷いて答えた後ユリアたちを見た。
「あ、ああ………!」
「そこが使えれば………!」
「うむ、この状況下ならばロックは外れているはずじゃ!」
ユリアとミュラーは明るい表情をし、博士は頷いて答えた。
「エステルちゃん、ヨシュア君!もう他に選択肢はなさそうや!そっちの方から”アルセイユ”に戻るんや!」
「うん……!」
「分かりました……!」
そしてケビンの言葉にエステルとヨシュアは頷いた。
「き、気を付けてね!お姉ちゃん、お兄ちゃん!」
「待っています……”アルセイユ”で!」
「絶対に無事で帰って来て下さい、エステルさん!ヨシュアも………!」
「絶対、絶対戻って来てね!ママ!パパ!」
ティータ、クローゼ、プリネ、ミントはエステル達に叫んだ。
「うん!みんなも気を付けて!」
そして他のメンバー達は急ぎ、その場にはリウイとイリーナだけが残った。
「………エステル!万が一の時はお前が契約した魔神を頼れ!外にさえ出れば、奴も平気で飛行できるだろう!」
「あ………!うん!わかったわ!」
「お2人とも気を付けて………!」
そしてリウイとイリーナも先へと急いだ。
「さあ……僕たちも急ごう。どうやら崩壊まであまり時間はなさそうだ。」
「うん……了解!”中枢塔”前にある緊急用の避難通路よね!」
仲間達を見送ったエステル達は緊急用の避難通路を通って、外への脱出を目指した!地下道を抜け、何とか外へと脱出できたエステルとヨシュアはそのまま”カルマーレ”をめざし、外郭を走っていたその時!
~リベルアーク~
「きゃあっ……!」
「……くっ……!」
一際強い揺れが起こり、目の前の通路がひびが入り、崩れ始めた!
「……あっ……!」
「しまった……!」
エステルとヨシュアは慌てて進もうとしたが目の前で通路は完全に崩壊した!
「ああっ……」
「戻ろう、エステル!」
2人はすぐさま戻ろうとしたが、揺れで脆くなっていた通路は戻ろうとした矢先に崩壊しその結果、2人は1本の梁の上にある柱に取り残された!
「………………………………。戻れなく……なっちゃったね。」
「うん……。多分、下の細い梁じゃここは支えきれないだろう。」
「そっか……」
「ごめん、エステル……。僕があの時、足をもつれさせなければ……」
「そういう事は言いっこなし。あたしだって岩の下敷きになるところをヨシュアに助けてもらったしね。」
謝るヨシュアにエステルは苦笑しながら答えた。
「でも……えへへ……何でかな。こんな状況なのにちっとも怖くないのよね。ヨシュアはどう?」
「あ……。うん……そうだね。僕もぜんぜん、怖くないかな。」
エステルの言葉にヨシュアは優しく微笑んで答えた。その時、下の梁に亀裂が入り始めた!
「ね……ヨシュア。2つ、お願いしてもいい?」
「いいよ。」
「1つ目は……あたしのこと、抱き締めててくれる?」
「喜んで。」
ヨシュアはエステルを抱き締めた。
「えへへ……」
「……それから?」
「えっと、その……。しつこいって思われたらちょっとイヤなんだけど……。やっぱりその……悔いは残したくないっていうか……」
恥ずかしそうな表情がエステルが言おうとしたその時
「……ごめん。その先は僕に言わせて。」
エステルが言いたい言葉を察したヨシュアが制して、エステルを見つめた。
「エステル……キスしてもいいかな?」
「あ……。……うん……!」
2人が向き合いキスをすると、そのまま梁の限界がきて、2人は―――落下していった!
(お願い…………助けて、カファルー!)
落下していく中、エステルが強く願ったその時、エステルが装着している腕輪が強く輝いた!
~グロリアス・甲板~
「………………」
一方その頃、メンフィルに強奪された事を知らないヴァルターが「リベル=アーク」が崩れる様子を見つめていた。なぜ、ヴァルターが知らないのかと言うと、ジンとの一撃で気絶すると同時に通信機が破壊され、脱出艇をリウイ達に見つからない所にようやく位置づけたカンパネルラの連絡が来てもわからなかった為、”グロリアス”が強奪された事に気付かなかった。
「チッ…………俺以外戻っていないなんて、どうなってやがんだ…………?」
ヴァルターは舌打ちをした後、煙草に火をつけて吸った。
「祭りの…………後か…………」
そしてヴァルターが呟いたその時
「失礼します!」
一人の猟兵がヴァルターに近づいて来た。
「あん?どうした。」
「ハッ!”教授”より”執行者”達は至急、”聖堂”に集まるようにとの事です!」
「何?教授達が戻っていたのか………?チッ。戻っているなら戻っているで顔を見せればいいものを………仕方ねえ。」
猟兵の言葉を聞いたヴァルターは舌打ちをした後、猟兵の案内によって聖堂に向かった。
~グロリアス・聖堂~
「…………?おい、どういう事だ。誰もいねえぞ。」
聖堂に到着したヴァルターだったが、そこには誰もおらず、自分より距離をとって背後に控えていた猟兵を睨んだ。
「フフ………情報の中にあった”執行者”達の中で一番騙し易いとは思っていたが、まさかこうも簡単に引っかかるとはな。これで俺も出世できる。」
「…………何だと?」
不敵な笑みを浮かべて笑っている猟兵の言葉を聞いたヴァルターが警戒した表情をしたその時!
「ゴフッ!?」
ヴァルターの背中を矢が貫き、ヴァルターは血を吐いて呻いた!
「………よくやった。お前の功績は後で俺がリウイ様達に報告しておこう。」
するとボウガンを持っているルースが柱の陰から出て来て、猟兵に言った。
「ハッ!ありがたき幸せ!」
ルースの言葉を聞いた猟兵は敬礼をして答えた。
「何者だ、テメエは………!」
一方ヴァルターは背中に刺さった矢を強引に抜いた後、ルースを睨んだ。
「我が名はルース!メンフィル帝国軍の将の一人にして、”空の覇者”ファーミシルス大将軍の副官!」
「”覇王の狼”………だと?なぜ、こんな所にいやがる…………!?」
ルースの名乗りを聞いたヴァルターは信じられない表情でルースを見た。
「…………貴様が”中枢塔”より脱出する少し前、この”グロリアス”は我等メンフィルが完全に制圧した。」
「なっ…………!?」
ルースの言葉にヴァルターが驚いたその時、次々とメンフィル兵達が柱の陰から現れ、さらにヴァルターの背後からもメンフィル兵が武器を構えて現れた!
「………のヤロウ!姑息な真似をしやがって…………!この”痩せ狼”を舐めたら、どうなるか思い知らせてやる……!」
それを見たヴァルターは怒りの表情でルース達を睨み、そして拳を構えたが
「グッ………!か、身体が動かねえ………!?」
身体が思い通りに動かない事にヴァルターは狼狽えた!
「無駄だ。先ほど貴様に放った矢には特製の麻痺毒を塗りこんである。…………アルセイユの一行との戦いで疲弊しているとはいえ、念には念を入れさせてもらった。」
「ふざけやがって―――――!」
ルースの言葉を聞いたヴァルターは吠えた!
「弓隊、撃て!」
「ハッ!!」
そしてルースの指示の元、弓を持っているメンフィル兵達は矢を番えて、ヴァルターに放った!
「ガッ!?」
身体のあちこちに矢が刺さったヴァルターは全身血だらけになり、呻いた!
「今だ!”痩せ狼”を討ち取れ!」
「オオッ!!」
そしてルースの指示によって、鞘から剣を抜いたメンフィル兵達がヴァルターに突撃した!
「チクショウ………チクショウ…………!俺が望んでいた最後はこんな最後じゃねえ………!」
身体が動かないヴァルターはなんとか身体を動かそうとしたが、身体は全くいう事を聞かず、悔しそうな表情で突撃して来るメンフィル兵達を睨んだ。そしてメンフィル兵達は剣でヴァルターを串刺しにした!
「グアッ!?ク、クカカ…………我ながら情けねえ最後だ………ぜ…………」
「止めだ!!」
メンフィル兵達の剣に串刺しにされたヴァルターは皮肉気に笑った後、頭を崩れ落とし、そしてヴァルターを誘導したメンフィル兵が剣を振るって、ヴァルターの首を身体から切断し、ヴァルターを絶命させた!
こうして、”執行者”の一人、”痩せ狼”ヴァルターはあまりにもあっけない最後を遂げた………
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