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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第197話

~エレボニア帝国領・上空~



「うわああああああああっ!?」

「な、ななななななな、何が起こっているんだ!?」

「……落ち着いて。多分リザイラはわたし達に撤退用の魔術をかけたと思う。」

空を飛んでどこかに向かっているエリオットとマキアスが悲鳴を上げている一方フィーは冷静な様子で答えた。



「そ、それは何となくわかるけど……」

「一体僕達はどこに向かうんだ!?」

「さあ?」

そして3人はある場所に到達すると3人は急降下した!



「うわああああああっ!?」

「お、落ちる……っ!?」

「クッ、受け身を取ろうにも身体が…………!」

急降下した事にエリオットとマキアスは悲鳴を上げ、フィーは身体が動かせない事に唇を噛みしめた。そして急降下していた3人だが地上に近づくとスピードは一気に弱まってゆっくりと地面に降り立った。



~ルナリア自然公園・奥地~



「ぼ、僕達、生きているの……?」

「ああ……僕達を逃がした事には感謝しているがせめてどこに飛ばしたとかどんな着地になるかくらい、教えて欲しかったよ……」

「…………ここ、どこ。」

地面に着地したエリオットとマキアスは安堵の溜息を吐き、フィーは周囲を警戒していた。



「どこかの森みたいだが……」

「あ―――もしかしてここ……ケルディック地方の”ルナリア自然公園”!?」

見覚えのある景色を見たエリオットは声を上げ

「ケ、ケルディックだって!?」

「ケルディックと言う事はメンフィル帝国領か……―――ラッキーだね。領邦軍もさすがに現時点で他国―――それもメンフィル帝国領には攻めて来ないだろうから、この辺り一帯が安全地帯である可能性が非常に高いだろうね。」

エリオットの言葉を聞いたマキアスは驚き、フィーは安堵の表情をした。



「それにケルディックならプリネ達もいるよ……!」

「よし、まずはこの森を出てケルディックに向かうぞ……!」

「待って。もう日が暮れているから何の準備も無しに夜の森を動くのは危険。下手したら遭難しちゃうし、魔獣による奇襲の可能性もある。今は下手に動かず朝を待って、ここで待機するべき。」

ケルディックに向かい、プリネ達に事情を説明して何とか力になってもらう為に森から出ようとしたエリオットとマキアスを見たフィーは制止した。



「うっ……た、確かに街灯もないから、危険かも……」

「とは言ってもここも危険じゃないか!?」

「大丈夫。こういう時の為に火を付けるサバイバル用の道具もあるし、火属性アーツが放てるクオーツも携帯している。一晩中焚き火をして、交替で周囲の警戒をしていれば魔獣による奇襲は防げる。」

「そ、そうか。」

「サバイバルに強いフィーがいて助かったね……」

「じゃ、手分けして焚き火に使える枝を探すよ。」

その後交替で仮眠を取りながら見張りをして一夜を過ごした3人は森を出てケルディックに向かって行った。



~エレボニア帝国領・上空~



「うわ~!凄い凄い!ボク達、空を凄いスピードで飛んでいるね~!」

「”風”はオレ達を一体どこへと導いているんだ……?」

エリオット達がルナリア自然公園に降り立つ少し前、風の結界に包まれてどこかへと向かうミリアムは興奮し、ガイウスは考え込み

「何で二人ともそんな呑気にしていられるのよ!?(ちょっと、ミルモ!リザイラは私達に何の魔術をかけたのよ!?)」

二人の様子を見たアリサは疲れた表情で指摘した後自分の体の中にいるミルモに尋ねた。



(リザイラ様は周囲にいる風の精霊達の力を借りてアリサ達を安全な場所に逃がす魔術をかけたんだよ。)

(それはわかるけど、どこに向かうのよ!?)

(さあ……?精霊達が安全と思った場所だと思うけど……)

そしてアリサ達は自分達にとって見覚えのある場所まで飛んできた!



~ノルド高原~



「ここって……!って、キャアアアアアア――――ッ!?」

「ノルドの地か……!クッ……!?」

「わわっ!?お、落ちる~!?」

見覚えのある景色を見たアリサとガイウスが驚いたその時、3人は急降下したが、地上に近づくとスピードは一気に弱まり、かつてA班がミリアムと出会い、戦闘をした場所であるストーンサークルの中心に降り立った。



「えへへ、面白かったね~!」

「グリフィンに乗って大空を翔けた時の感覚とはまた違うな……」

「あ、貴方達ねぇ……――まあいいわ。とりあえずノルドの民達がいる集落を目指しましょう。徒歩なのはちょっとキツイけど……ガイウス、道案内、任せてもいいかしら?」

ミリアムとガイウスの呑気な意見に呆れたアリサはガイウスに視線を向けた。

「それはいいが、既に日も暮れている。今夜はここで夜を明かして明日の朝まで待ったほうがいい。」

「うっ……まさか野宿する羽目になるなんて……ハア……」

その後交替で仮眠を取りながら見張りをして一夜を過ごした3人はノルドの集落に向かった。



~エレボニア帝国領・上空~



「クッ……俺達は一体どこに向かうんだ!?」

「精霊達を統べる存在であるリザイラさんの魔術なのですから、恐らく精霊達が”安全”と思った場所に連れて行ってくれると思います。」

「フム……――!あれは……レグラム!?なっ!?」

エリオット達やアリサ達のように上空を飛んでいた3人はレグラムに続く街道―――エベル街道に降り立った!



~エベル街道~



「ここは……レグラムへと続く”エベル街道”か。フフ、まさかあのような状況になって真っ先に故郷に帰る事ができるとはな……」

「さすがにここまではまだ領邦軍の手は伸びていないと思うのですが……」

「―――とにかくまずはレグラムに向かって状況を把握するぞ。」

そして3人は街道を歩いてレグラムに向かって行った。



~エレボニア帝国領・上空~



「あ、あの、ベルフェゴールさん。わたくし達、どこに向かっているのですか?」

ベルフェゴールに抱き上げられた状態のセレーネはリザイラと共に凄まじいスピードで飛行してどこかへと向かっているベルフェゴールに尋ねた。

「そんなのご主人様の元に決まっているじゃない。――――ご主人様と”契約”している貴女も、ご主人様との”繋がり”を感じられるでしょう?」

「え?…………あ……っ!」

「―――――いましたね。」

そしてベルフェゴールとリザイラはヴァリマールの傍で倒れているリィンを見つけた後、着地した。



~アイゼンガルド連峰・峡谷地帯~



「なっ!?一体いつの間にその子の身体から抜け出したのよ!?」

地面に降り立った二人を見たセリーヌは驚き

「お兄様ッ!」

ベルフェゴールから降りたセレーネは気を失って倒れているリィンの元へと向かった。



「お兄様ッ、大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

「今のその子は初めての”同期”で消耗しきっているから、当分目を覚まさないわよ。」

「そんな……っ!?セリーヌさん、一体どうすればいいのですか!?」

セリーヌの説明を聞いたセレーネは悲痛そうな表情をして尋ねた。



「……ヴァリマールがその子の回復を優先して力を分け与えているけど、初めての”同期”の影響もあって相当消耗しているから、次に目覚めるのは何日かかるかわからないわ。」

「―――でしたらわたくしはパートナードラゴンとして、お兄様の看病をします!例え何日経とうと、お兄様の傍を片時も離れませんわ!」

「その意気は買うけど、貴女、この状況でどうやって生活するつもりよ。リィンはヴァリマールからの補給があるからこの状態でも凍死しないし、何も食べなくても大丈夫だけど貴女はそうは行かないでしょう?」

「それは……」

セリーヌの指摘にセレーネは辛そうな表情をし

「大体貴女達もその娘を連れてくる余裕があるんだったら、エマを連れて来て欲しかったんだけど?」

「へ、へえ?あれだけ勝手な事をしておいてよくもそんな図々しい事を口にできるわね……?―――あの眼鏡の娘も含めたご主人様のクラスメイト達も全員リザイラの精霊魔術の力で逃がしたからとりあえず、しばらくは大丈夫なはずよ。」

「―――少なくとも全員それぞれ”現在”は安全な場所にいるはずです。―――それとセレーネ。心配しなくても食料等は私が用意しますよ。」

セリーヌに睨まれたベルフェゴールは笑顔の状態で口元をピクピクしながら顔に青筋をいくつも立ててセリーヌを見つめ、リザイラは呆れた表情で指摘した後セレーネを見つめて微笑んだ。



「え……?」

そしてリザイラの言葉にセレーネが呆けたその時

「大地の精霊達よ、精霊王女たる我が呼びかけに応えよ!」

リザイラが地面に種をまいてその場で詠唱をすると種がまかれた場所から芽が出て来た後どんどん成長し、あっという間に木へと成長し、成長した木にはそれぞれ様々な果実が実っていた!

「ええっ!?」

「………………」

それを見たセレーネは驚き、セリーヌは絶句し

「後は寒さを防ぐ為に家も必要ですが……肝心の木がありませんね。―――ベルフェゴール、少し手伝ってもらいますよ。」

「オッケー。」

そして二人は転移魔術でその場から消えて少しすると数本の切り倒したと思われる木や山となっている何かの草と共に現れ

「精霊達よ!」

リザイラが膨大な魔力を解放すると木は勝手に切り刻まれてまるで意思を持つかのように自ら動いて小さな家となり、家の中には暖炉に加えて草のベッドと小さな風呂があった。



「こ、これ全てがリザイラさんの魔術によるものなのですか……!?こんな事までできるなんて、リザイラさん、まるで神様みたいですわね……」

「ふふふ、精霊王女たる私からすれば造作もない事ですよ。」

家ができた後リザイラに促されて家に入ったセレーネは家の中にある物を見て信じられない表情をし、リザイラは静かな笑みを浮かべ

「うふふ、さすが自然や精霊達の力を借りればある程度の事なら何でも解決できる”精霊王女”ね♪一家に一人は欲しい存在ね♪」

「……呆れた。”精霊王”だからと言って、普通、精霊達や魔法をそんな事に使うかしら?」

ベルフェゴールはからかいの表情になり、セリーヌは呆れた表情でリザイラを見つめた。



「後はそこら辺にいる野生の動物や魚を狩って調理すれば、バランス良く栄養が取れるわね。さてと――――お仕置きを受けたくなかったら、その鉄屑を使ってあの場から勝手に撤退した事や貴女達の事情とかも全て吐いてもらうわよ?」

「先に言っておきますが出し惜しみは一切許しませんよ?」

「……わかっているわよ。」

それぞれ顔に青筋を立てて笑顔で自分を見つめるベルフェゴールとリザイラを見たセリーヌは溜息を吐いて事情を説明し始めた。



そして翌朝、森で一夜を過ごしたエリオット達は森を出て街道を進み、ケルディックに到着した。




 
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