英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~”激動”の時代の幕開け~
厳重な警備の中、多くの市民達は広場にあるドライケルス像を背後にしているオズボーン宰相に注目していた。
~帝都ヘイムダル・ドライケルス広場~
「―――諸君も、ここ数日の信じ難い凶報はご存知かと思う。れっきとした帝国の属州であるクロスベルが、”独立”などという愚にも付かない宣言を行い……あろうことか帝国が預けていた資産を凍結したのである!当然―――我々はそれを正すために行動した。それは侵略ではない。”宗主国”としての権利であり、義務ですらあるといえよう。
―――しかし”彼ら”は余りにも信じ難い暴挙に出た!”ガレリア要塞”―――帝国を守る鉄壁の守りを謎の大量破壊兵器をもって攻撃……これを”消滅”せしめたのである!諸君―――果たしてそのような”悪意”を許していいのか!?偉大なる帝国の誇りと栄光を、傷つけさせたままでいいのか!?否―――断じて否!鉄と血を購ってでも、正義を執行されなくてはならない!」
オズボーン宰相の演説に応えるかのように市民達は大声を上げた。
~1年Ⅶ組~
「………………」
「……これって……」
「大した演説ぶりだが……」
「フン………予想通りの方向に持って行くつもりのようだな。」
「”戦争”……ですか……」
演説をラジオ越しで仲間達と聞いていたユーシスは鼻を鳴らし、セレーネは辛そうな表情をした。
「ミリアム……?さっきから何をしてるの?」
その時誰かと通信をしようとしている様子のミリアムに気付いたサラ教官はミリアムに視線を向けた。
「んー……ダメだ。やっぱり繋がんないや。そりゃそうだよねー。」
ミリアムが呟いた言葉を聞いたリィン達は首を傾げた。
「どういうことだ……?」
「何を言っている……?」
「んー、ボクが受けていた一番重要”だった”任務のお話。もうちょっと早く気付けばな~。でもまあ、クレアもレクターも、オジサンの読みすらも上回ってたし。――――今回ばかりは”クロウの勝ちでも仕方ない”よね。」
「はあっ……!?」
「ど、どうしてそこにクロウの名前が出てくるの!?」
ミリアムの話を聞いたマキアスは驚き、エリオットは戸惑い
「……………………」
リィンは真剣な表情で黙り込んでいた。
「―――なるほど、そう言う事か。ミリアム、あんたの調査の一つは”C”調査だったのね?」
その時何かを察したサラ教官がミリアムを見つめた。
「なっ……」
「”帝国解放戦線”のリーダー……」
「死んだ男がいったい……」
サラ教官の推測を聞いたアリサは信じられない表情をし、ラウラは呆け、フィーは真剣な表情になった。
「”C”の行動パターンから情報局がプロファイリングして導き出した”可能性”のうち……有力な可能性の一つが『トールズ士官学院の関係者』というものだったんだ。でも、”C”は徹鉱山の事件でメンバー全員とパテル=マテルの砲撃によって爆死しちゃったしその線は消えたはずだったけど……でも甘かったみたいだねー。ハァ、”鉄血の子供達”の名前が泣くってもんだよ。」
「…………まさか…………」
「……あの時、クロウは確かツーヤと一緒に助け出した鉱員を送っていって……」
「そして崩落に邪魔されたとかで結局、全部終わってから現れたんだったか……」
「はい……あの時は同じ崩落に巻き込まれたツーヤお姉様はオリヴァルド皇子達と一緒に姿を現しましたけど、クロウさんはいらっしゃらなかったですよね……?」
「で、でも……実は戻って来て別のルートから回り込んでて……」
「仮面と黒装束をまとってわたしたちと戦って……」
「飛行船で去ったと見せかけて何食わぬ顔で現れたとしたら……!」
ミリアムの話を聞いたルーレで特別実習を行ったリィン達A班のメンバーはそれぞれの顔を見合わせた。
「馬鹿な……何を妄想じみた話を……!」
「ふむ……さすがに無理があるのではないか?」
「ガレリア要塞の時もそうだが……爆発した飛行艇からも”C”の声が聞こえたのだろう?」
「そ、そうだった……」
「それにクロウ、要塞の時はずっと一緒に行動してたもんね。」
「それは確かに。そして―――」
ガイウスの指摘を聞いたマキアスはハッとし、エリオットは安堵の表情で呟き、フィーは頷いた。
「そ、そうよね……やっぱりただの勘違い―――」
「ううん―――声なんて”録音”で何とでもなるわ。」
「あ……」
仲間達の意見に頷きかけたアリサだったがサラ教官の意見を聞いてハッとした。
「爆発した飛行艇にしても単純な動きなら自動操縦できるし。確かに―――アリバイは崩せるのよ。」
「そーいうこと。この調子じゃ、”C”はもちろん他の幹部も無事っぽいかなぁ?」
サラ教官とミリアムの話を聞いたリィン達は黙り込んだ後ある事に気付いたリィンは血相を変えた。
「だ、だったら……クロウは今、もしかして!?」
「あ……」
「ドライケルス広場に行ったということは……」
「……凄腕の狙撃手に隙を見せたら終わり。もしクロウに狙撃手としての才能があるのならば―――」
「確かに―――もう”間に合わない”わね。」
フィーの推測にサラ教官が静かに頷くと、ラジオからオズボーン宰相の大声が聞こえて来た。
~ヘイムダル・ドライケルス広場~
「これは紛う事なき『国難』である!そして『国難』の前に、あらゆる対立は乗り越えられるべきものであろう!『革新派』に『貴族派』―――俗に言われるそうした名前の何と空々しいことか!既に皇帝陛下からも、心強いお言葉を頂いている―――このギリアス・オズボーン、帝国政府を代表し、陛下の許しを得て、そして私の地位を失ってでも、今ここに宣言させていただこう!」
オズボーン宰相が演説を続けている一方”C”は建物の屋上に設置したスナイパーライフルを構えていつでも狙撃できるようにしていた!
「正規軍、領邦軍を問わず帝国全ての”力”を結集し……クロスベルの”悪”を正し、東からの脅威に備えんことを―――」
「――言わせるかよ。」
オズボーン宰相の演説をラジオ越しに聞いていたCは憎々しげにつぶやいた後ライフルのトリガーを引いた!すると弾丸はオズボーン宰相の心臓を貫き、オズボーン宰相の胸の部分が血に染まり始めた!
「クク……見事だ”C”……クロウ・アームブラスト……」
「―――こいつで止めだ。」
撃たれた部分をオズボーン宰相が不敵な笑みを浮かべたその時、Cは予め装填していた特殊な弾丸で再び狙撃し、Cの狙撃によって発射された弾丸はオズボーン宰相の顔に命中した瞬間、爆発を起こし、爆発によってオズボーン宰相の首は地面に落ちると共に胸と首があった部分から出血しているオズボーン宰相の死体は地面に倒れた!
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