未定
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プロローグ
人は皆平等ではない。 僕の敬愛する作品でもそう言っていている。 生まれも、育ちも、能力も平等ではない。 平等であるものか。 人は皆平等ではないが、差異のある能力を競い合って高め合うことができる。 それは幸せなことだ。
ーーーが、それすら出来ない者もいる。 そう、人に平等に与えられたもの•••••それはすなわち“死” だけだろう。 中絶され生誕出来ぬ者、障害がある者、高齢だろうが誰にでも訪れる死だけが平等と言える。 死ぬ気になって頑張ればとか、やれば出来るとかは持っている、いや生きている者だけが言える特権である。 俺が何を言いたいかって? つまりは俺達は生きて、五体満足で、さ程の障害がないからこそこうして生を実感し、人生を送ることが出来ている。 障害を持っているもの馬鹿にしているわけではない。 彼らにもまた、持っているからして生まれてきたのだ。 彼らにも何か出来ることがある。
さて、話を戻そう。 こうして僕らは生きている。 無論、終着点は“死” であるが、死ぬまでに生きていくために皆足掻く。 なぁなぁと生きていくのもいいし、絶望しながら生きていくのも構わない。 だけどもたまには思い出して欲しい。 生まれ落ちた時点で我々は幸福であり、終着点はまでの道半ばである。 終着点まで生きていくプロセスを楽しむのも、そうでなかろうとしても、行き着く場所は同じ、平等で公正な“死” であると。
幸福は既にそばにある。 幸福とは掴むものではなく、訪れるものでもなく、気付くか、気付かないかの差でしかない。 死に近づけば近づく程、それに気付く者は多いという。 ならばこの場で自覚しよう。 私は今、幸せであるとーーー
これは中々鮮烈な考えであるな。 タイトルは平等と幸せ。 こんなモノを高校の図書室に置いておくなんて、中々ユニークな先生なんだろう。 いや、これを出版した出版社も中々凄いがーーー出版元は書いてない。 自費出版か? いや、それでも社名は多分載る。 となるとーーー
「同人? いや、自主制作での配布とかか? これは中々度胸というか、堅忍不抜の主だな」
非常に感心できる人物であるが、それ故にというか。
「宗教思想の強い文言ではあるがね」
これは共感できるところもあるが、あえて健常者のみに発している言葉というのが気になる。 別段障害者を侮辱する気はないのは見てとれるが、過激なうえ、蚊程触れてもいない。 一体何のためなのか、それは気になるところだ。 がーー今は置いておこう。
「平等な死、か••••• 一高校生が悩むような議題ではないけど、私は今幸せであるにはどうかと思うがね」
「そんな事言ってる時点で君は既に一高校生ではないと思うがね」
ふと後ろから声がする。 チラリと後ろを見やると20代半ば位の眼鏡をかけた知的な女性。 スタイルは少し胸部の厚みがいささか足りない気がするが、スラリとしたウェストとヒップと足は、女性らしさを感じる。 落ち着いた声色で少しウェーブしたセミロングの髪。 顔のパーツも整っているが、少しばかり論理的な物言いが彼女を人気から遠ざけている。 無論俺も少し苦手である。
「一(にのまえ)先生。 俺は至って普通の高校生ですよ」
その言葉にやれやれと首を振り、ジト目でこちらを見た。 彼女はやはり美しい。 夕陽が余計に神々しさを増させる。
「君は一高校生が、そんな哲学や思想が混ざり合った物を読むと思うかね。 私が君の年頃は、ライトノベルや純文学も読んでいたが、そのような哲学を語るようなものを読んだ事はないよ。 精々推理小説位のものだよ」
「それはーー図書室で目をつぶって適当に本を持って面白そうとか言ってる人の言葉じゃないと思います」
実際この人は雑食で、何でも読む。 本当に何でも。 正直四次元がどうとか、アカシックレコードがどうとか、ヒトラー生存とかどうでもいいと思う。 第一、ヒトラーは生存してても今頃老衰でお亡くなりになっているはずだ。
と、ずれた思考をしている時、彼女は自分の胸を持ち上げるかのように(持ち上げるようなものはないが) 腕を組んだ。 そしてこちらを見つめ、口を開く。
「その境地に入ったのは大学に在学中の時だ」
「まぁ、俺は触発されて今現在やってますがね」
そう、俺は彼女のその姿が本当に楽しそうだったので、自分も真似をしてみているだけだった。
その結果がこの本である。
「まぁアレだ。 悪くはないだろう? 本との出会いも一期一会だと私は思っている」
「普段は論理的な物言いなのに、随分とロマンチストなんですね」
「君は私を何だと思っているんだね」
「無論、先生ですが?」
「ーーー」
見目が整った顔が少し歪む。 まるで苦虫を噛んだかのようだった。 少しばかりやりすぎたかもしれない。
「まぁ先生、このような偽善的な発言の多い書のことは置いといて、何かご用ですか?」
「むっ? 何故そう思う」
「先生は効率を重視するお方ですから、不要な会話を好まないと思っていましたが?」
「だから、お前は私を何だとーーーいや、言わなくていい。 確かに私は不要な会話を好まないが、別にコミニケーション自体を好まないわけではない。 コミニケーションを取らないというのは逆に効率が悪いからな」
成る程。 後々面倒な事になるからな。 というか••••••そういう考え方もできる人だったんだな。 てっきり不器用一辺倒の人だと思っていた。
「お前今、不名誉なことを考えていただろう。 まぁよく言われる事だと思うが、私はお前が思っている程堅物で難物ではない」
「ーーーダウ、いえ嘘です。 済みませんでした」
「全く、お前という奴は。 私が素で話す相手なのだから少しは読み取れ馬鹿者」
え、やだこの人可愛い。 何なのあざとい。 これが素なの? え、これ勘違いしていいタイプの好意持たれてる感じですか? 馬鹿な。 僕は高校生で、相手は成人してるのですが。 あ、違う。 普通に友達の好意ですよね? Likeであって、Loveではないでよね?
「先生ーーここは学校なのですから、そのような事を口にするのはどうかと思いますが」
「あのなぁ、言わせているのはお前だと思うのだが? まぁいい。用は確かにあるのだからな」
「やはりーー」
やっぱり先生は効率重視の堅物で難物だ。 顔を見やるにイラっとしてるのが分かる。 あー、やばい。 地雷踏んだわ。
「やはり、何だ? いや、お前が私の事をどういう風に思っているのか良くわかった。 門の所で待っていろ」
「いえ、先生はーー門⁇」
「そうだ。 いいか、すぐに行くから待っていろ」
「え、あ、先生?」
先生は荷物を持つと外に出る。 こちらを軽く睨んでおられる。
「何をしている。 早く出ろ。 もう最終下校時刻だ」
「え? あ、もう19時だ」
ウチの学校は進学校ではなく、どちらかというと部活動に身を入れている学校である。 19時というのは生徒の最終下校時刻で、それまでであれば残っていようがあまり言われない。
「済みません、すぐに出ます」
「全く。 お前、私が言わなければあと30分は検討していただろう」
「そうですねーーーでも話がそれたのは」
「いいから早く出て校門で待っていろ」
「は、はい」
ぱたぱたとスリッパが音を立てる。 校内履きを履いて、スリッパをきちりと揃えて図書室を後にする。
先生はというと、ガチャリと鍵を閉め、しまっている事を確認してからこちらを向いた。 若干頬をふくまらせ、眉をひそめている。 言いたい事があるという表情だ。 というか今日は先生の意外なところばかりに目がいく。
例えば先生がパンツではなくタイトスカートだったり、普段はつけていないネックレスや、ふわりと甘く香る香水を付けているところとか。 いつもすっぴんと言ってもいい位に薄い化粧だったのが、今日はいつもよりもしているとか。 まぁ似合ってますよ、えぇ。
と、随分と繁々観察していたので、ずいっと顔を近づけられる。
先生顔近いです。
「何を惚けている。 ほら帰るぞ」
「あっはい」
何故かグリグリと頭を撫でられた。 本当に今日の先生は何か違う。 何でこんなにドキドキさせられなきゃいけないんだ。
と馬鹿な事を考えながら置いていかれるので小走りについていく。
小走りで下駄箱まで行き、靴に履き替える。 外はもう暗く、学生の声や気配を感じない。 1人校門の外に歩いて行く。 後ろを振り返っても、職員室意外に明かりがついているようには見えない。 まぁ当たり前か。 19時20分。 完全下校時刻をゆうに過ぎている。
携帯電話を鞄から取り出して、メールを確認するも、特にこれといって連絡もない。 電話も来ていない。 ひとまずホッとする。
「済まない、待たせたね」
と、コツコツとヒールの音が響いている。 ほんと、普段ヒールなんて履かないのに••••••彼氏でもできたのかな?
「いえ、そんなに待っていませんが。 それで、何でしょうか」
「遅い時間だから送っていく。 それに君は夕飯も食べずにまた寝る気だろう」
「そんな事ないですよ。 偶に忘れるだけです」
「本を読み始めてそのまま寝落ちするような奴が言う言葉ではないと思うがね。 とにかく夕飯を奢ってやるからついて来い」
「はぁ、分かりましたけど。 何を食べるんですか?」
「自宅近くにイタリアンの店が出来たのは知っているか?」
自宅近く? あーーー、確かにある。 うん、最近できた。 でもそれはーー
「確かお高いはずと記憶してますが。 いくら何でも悪いので割り勘にしませんか?」
「生徒にお金を払わせるような安月給ではないよ私は。 ほら、いいから行くぞ」
コツコツとヒールはゆっくりと音を立てる。 慌てて俺もついて行く。 先生は微笑んでまたもグリグリと頭を撫でた。 一体なんだというんだ。
「先生、何かいい事でもありました?」
「んーー? 何故だ?」
「何か機嫌いいですし。 いつもより気合が違うというか」
ふふっと微笑んで、内緒だと肩を抱かれた。 柔らかくていい匂い。 ではなくて、学校の付近でそのような行為をしたらとか思ったら、パッと離されて、非常に残念である。
「私も一ついいかね」
「何でしょうか先生。 君もいつになく従順で素直ではないか。 どういう風の吹き回しだね」
「それを貴方が聞きますか? 距離を測りかねているんですよ。 随分と今日の先生は不可測な事が多いですから」
「距離なんて合ってないようなものだろ、特に君と私のは」
「親しき仲にも礼儀あり、ですよ」
「それを、君が言うのかね。 勝手に人の家に入り込んで本を読む君が」
「勝手に人の家に入り込んで掃除洗濯、炊事にゴミ出しまでする人がそれをいいますか?」
そう、この人は実はーーー
「まぁ、お隣だしね。 君は自身の事にはズボラすぎる。 放っておけという方が無理だ」
同じマンションに住んでいて、お隣なのだ。
「はぁ、感謝はしてますが。 そこまでではないと思いますが? 必要最低限のこと位しますよ俺も」
「最低限過ぎるというんだ。 何で洗濯が週2で、放っておくと昼ご飯しか食べないし。 布団は引きっぱなし、その周りにプリントや本が散乱するんだ」
「調べ物したりする時に丁度いい感じなんですよアレ」
あれ、これなんだっけとか。 そういう時すぐ手に届く範囲にないと嫌なんだよね。 疑問を疑問のままにするのが嫌だ。
「分からんでもないが、君をそれを是とするあまり、片付けなさすぎる。 もう少しでいいから片付けなさい。 不衛生すぎる」
「はーい。 分かりましたよ。 あ、先生。一旦帰って着替えてもいいですか?」
「ん? どうした」
「どうしたって••••••制服はまずいでしょう」
先生と俺が勘ぐられると、最悪先生が辞めさせられる羽目になる。 それは本意ではない。
勿論理解して頂いたのか、行って来いと追い払うかのように手を振られた。 解せぬ。
まぁいい。 さっさと行こう。 階段を駆け上がり、ささっと部屋の鍵を開け、カバンを投げる。 ブレザーも投げ捨て、ズボンも放る。 一応ボディシートでくまなく拭き、軽く香水をつける。 さマッチシャツとズボンを履いて、カーディガンを羽織る。 鏡を見ると髪がぐしゃぐしゃなので、軽く整える。 って、俺も何でこんな気合入れてんだろと思いつつ、指輪と袖をあげて、二重ブレスレットをつける。
っと、急いで行かないと。 スニーカーに履き替えて部屋を出る。 階段を降りると、すぐに先生がいた。
「随分と早いな。 しかも結構気合い入った感じじゃないか。 一体どうした」
お前が言うな! と思いながら、何でもないですよと返した。
「まぁ、いいか。 さて行くぞ」
「お伴します」
「本当に、調子狂うな。 まぁいい。さぁ飲むぞ〜」
「それはそこそこでお願いします」
「可愛くない奴め。 お前もさっさと飲めるようになれ」
「それはもう少し待ってください。 時間でしか解決出来ません」
「ほんと、可愛くない奴め」
こうして今日も夜がふける。 まぁ悪くない。 こんな日もたまにはあって良いか。
因みに部屋に帰ったら、散乱してる服とか見られて怒られた。
後書き
初めまして。 とりあえずプロローグには恋姫のこの字も入ってませんが、よろしくです。
学園ラブコメだったと思った人、残念でした!
ただの恋姫二次小説なんです。
遅筆な為お待たせする事が多いと思いますが、気長に待っててください。
よろしくです。
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