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真田十勇士

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巻ノ四十一 石田三成その四

「それではな」
「そう言って頂けますか」
「そしてじゃが」
「はい、豆腐ですね」
「それを頼めるか」
「喜んで」
 明るい笑顔での返事だった。
「それでは」
「うむ、ではな」
「お酒もですね」
「それも頼めるか」
「是非共」
 こうしたことを話してだった、実際に。 
 主従は店の豆腐を肴に都の酒を楽しんだ、そしてその後でだ。
 宿に戻ろうとする時にだ、不意に。
 前からだ、編笠を深く被った浪人風の男が来て言って来た。
「もし」
「そのお声は」
「はい、拙者です」
 編笠を上げるとだ、兼続が出て来て言って来た。
「お迎えに参りました」
「忍んで宿を出たのですが」
「見ておりましたので」
 それでというのだ。
「こうしてです」
「お迎えにですか」
「来させてもらいました」
「そうでしたか」
「ではです」
「はい、これよりですな」
「家臣の方々もです」
 彼等もというのだ。
「おいで下さいますか」
「それでは」
「はい、おいで下さいますか」
「石田殿のところにですね」
「既にお待ちです」
 その石田がというのだ。
「ですから」
「わかりました、では」
「こちらです」
 こうしてだった、主従はある場所に案内された。そこは都の外れの茶室だった。
 その茶室を見てだ、十勇士達は言った。
「ふむ、ここは」
「また小さな地味な茶室」
「こうした茶室が都にあるとは」
「これはまた」
「こうした場所こそ」
 まさにと言う兼続だった。
「会うには相応しく」
「それで、ですか」
「ここに石田殿がおられるのですか」
「そしてここで、ですか」
「殿と会われるのですか」
「石田殿もです」
 その彼もというのだ。
「是非です」
「拙者とですか」
「ここでお会いしてお話したいとのことなので」
「それで、ですか」
「中にお入り下さい」
「そしてですな」
「石田殿とお話を」
 こう主従に言うのだった。
「お願いします」
「それでは」
「しかしです」 
 ここで十勇士達も言うのだった。 
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