ドリトル先生北海道に行く
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第十幕その八
「ですが」
「それでもだね」
「あまりにも身体が大きくて」
「入られる穴がなくて」
「それでなんだ」
「そんなことになったんだ」
「羆は怖いよ」
それこそというのです、先生も。
「冬眠出来なかった場合は特にね」
「そうした羆にならない為にも」
シホレさんのお言葉はかなり切実です。
「ウルにはです」
「はい、冬眠出来る穴をですね」
「用意したいのです」
「冬は食べるものもないですし」
「余計に心配になります」
このことまで考えているシホレさんです。
「ですから先生にお願いしています」
「わかっています、では参りましょう」
「お願いします」
「それで先生」
ここで言って来たのは王子でした。
「一つ気になることがあるんだけれど」
「何かな」
「いや、僕達今こうして北海道の山の中にいるよね」
「うん、こうしてね」
「木とか草が本州と少し違うね」
「うん、同じ日本でもね」
それでもというのです。
「やっぱり違うんだ」
「北海道は」
「北海道は生物学、植物学では日本でもね」
それでもというのです。
「少し違う面白い場所なんだ」
「確かにそうだよね」
「日本自体が生物学的に面白い国だけれど」
「北海道はその中でもだね」
「面白いよ」
「似ているけれど」
それでもというのです。
「少し違う、そこがいいんだよ」
「先生的にも興味深いんだね」
「北海道はね」
「食べもの的にもだね」
「ははは、そうだね」
先生は食べもののお話には笑って乗りました。
「もう最高だね」
「本当に太りそうだね」
「全くだよ」
「そういえば先生は」
シホレさんも先生を見て言いました。
「随分と立派なお身体ですね」
「そうですか」
「背が高くて恰幅がもあって」
「太ってはいますね」
「適度な感じかと」
その太り方がというのです。
「ですからいいかと」
「だといいですが」
「お人柄もいいですし礼儀正しい方ですから」
シホレさんはもう先生のそうした性格を見ています。
「女の人にももてますね」
「いえ、それは全然です」
それはとです、すぐに笑って返した先生でした。
「ないですよ」
「そうですか?」
「はい、女性にもてたことは一度もないです」
「そうは思えないですが」
「先生がそう思ってるだけなんだ」
動物の皆がシホレさんに囁きました。
「これがね」
「あら、そうなの」
「そうだよ、もう先生はね」
「確かにこんないい人いないけれど」
「それでもね」
「全然なんだ」
「自分では気付かないんだ」
「何があってもね」
皆はシホレさんに先生のこのことをお話するのでした。
「僕達が見る限り普通に先生もててるよ」
「だってこんないい人いないから」
「人柄でもてるんだ」
「今もそうだけれど」
「先生を好きな人いるんだ」
「けれどなんだ」
そうした人がいてくれてもなのです。
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