英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第95話
~アルセイユ・会議室~
「なんと……。たった1人で乗り込んだとは。いつもながら大した娘じゃわい。」
「ツァイス支部のキリカ殿といえば非常に優秀な女性だと聞いている。一度会ってみたいものだな……」
エステル達から紅蓮の塔であった事を聞いた博士は驚いた後感心し、ユリアはキリカに興味を持ち始めた。
(うーん……ユリアさんとキリカさんか。)
(優秀さでは良い勝負かもしれないね。)
ユリアの言葉を聞いたエステルとヨシュアは小声で会話をしていた。
「それはともかく……。今回も、塔は元に戻ったが屋上の装置も止まっちまったな。」
「ええ……そうですね。屋上に現れた結界の正体もいまだに分かっていませんし……」
ジンの言葉にクローゼは頷いた。
「問題は、何のために屋上を覆っているのかですけど……」
一方ティータは不安そうな表情で呟き、考え込んでいた。
「ま、悩むのは後だ。とにかく今は次の塔に急ぐしかねえだろ。」
「そうですね。今は残りの”塔”の異変を解決することが優先すべき事だと思います。
「うん……そうよね。ユリアさん。他の塔からの続報はある?」
アガットとリタの提案に頷いたエステルはユリアに尋ねた。
「ああ……。今度は”紺碧の塔”だ。現れたのは鈴の音を響かせる黒衣の女性だったそうだ。」
「あ……」
「”幻惑の鈴”ルシオラ……。たしかシェラさんの知り合いだったんですよね?」
ユリアの情報を聞いたエステルはシェラザードを見つめ、ヨシュアはシェラザードに尋ねた。
「ええ、昔馴染みよ。次はあたしの出番みたいね。」
「シェラ姉……」
「そんな顔しなさんな。姉さんは姉さん、あたしはあたしだわ。あくまで遊撃士としての使命を果たすだけよ。」
そしてアルセイユは次なる目的地、”紺碧の塔”に向かった。
~メーヴェ海道・マノリア近郊~
一方その頃、王国軍の兵士達はテレサとマーシア孤児院の子供達をマノリア村に送りとどけようとしていたが、結社の装甲獣達が執拗に追っていた。
「くっ……まだ追ってくるのか。」
「もう少しでマノリアの守備隊と援軍に来てくれたメンフィルの部隊と合流できるのに……」
「ひるむな!必ず無事に届けるんだ!」
そして兵士達は銃を撃って、敵を牽制していた。
「せ、先生……」
「大丈夫……心配いりません。あなた達には指一本触れさせませんから。」
不安そうな表情をしているマリィにテレサは優しい笑顔で諭したが
「さすがにピンチなの。」
「!!!」
ポーリィの言葉に驚き、後ろを見ると、別の装甲獣達がテレサ達に迫っていた。
「な……!」
「反対からだと!?」
新たな敵の登場、そして挟み撃ちされた事に兵士達は驚いた。
「ふええええん!」
「こ、こうなったらオイラだって……!」
「いけません!下がっていなさい!」
ダニエルは泣き、クラムは勇んだが、テレサが制止した。
(女神よ……無力な我らを救いたまえ。)
そしてテレサは子供達を守るように前に出て、祈り、そして敵達がテレサ達に向かって突進したその時!
「スパイラルフレア!!」
「エアリアル!!」
テレサ達に襲い掛かる敵達に突如、アーツが放たれた!アーツを受けた敵達は怯んだ!
「十六夜………”円舞”!!」
そして怯んだ敵達の中心地に森の中から出て来たツーヤが飛び込み、クラフトを放ってダメージを与え、1体を残して敵達を倒した!
「ハアッ!止め!!」
さらにミントが続くように森の中から飛び込んできて、クラフト――ボルカニックファングを放って、止めを刺した!
「聖なる水よ……奔流となり、我が仇名す者達に裁きを!リ・カルナシオン!!」
続けてツーヤは兵士達が牽制していた敵達に魔術を放って、ダメージを与え
「異界の円環よ!捉えし者を浄化の炎で焼き尽くせ!オキサイドリング!!」
そして止めを刺すかのごとく、ミントも魔術を放って、ツーヤがダメージを与えた敵達に止めを刺した!
「あ、あんたたちは!?」
「も、もしかして……」
「遊撃士さん……!?」
ミント達の登場に兵士達は驚き、クラムとマリィは表情を輝かせて尋ねた。
「よかった、間に合って………クラム、ダニエル。怪我はない?」
「マリィとポーリィも大丈夫?」
そしてミントとツーヤはテレサ達に近づいて来て優しい微笑みを見せて尋ねた。
「う、うん………」
「あれ………?どうして私達の名前を………?」
2人に尋ねられたダニエルは戸惑いながら頷き、マリィはある事に気づいて尋ねた。
「フフ、2人とももう、ミント達の事を忘れたのかな?」
「ミントちゃん。あたし達は”成長”したんだから、わからなくても仕方ないよ。」
クラム達に優しい微笑みを見せているミントにツーヤは苦笑しながら言った。
「へっ……………」
「う、嘘っ………!?」
「ミントお姉ちゃんだ~!」
「それにツーヤお姉ちゃんもいるの~!」
ミントとツーヤの言葉を聞いたクラムは驚き、マリィは信じられない表情をし、ダニエルとポーリィは嬉しそうな表情をした。
「フフ、よかった。ミント達の事、わかってくれたみたいだよ?ツーヤちゃん。」
「うん。久しぶり、みんな………!」
ミントの言葉に頷いたツーヤは優しい微笑みをクラム達に見せた。
「わあ………本当にミントお姉ちゃんとツーヤお姉ちゃんなんだ!!2人とも凄く美人でスタイル抜群でビックリしたわ!まさに大人の女ね!」
「そ、それに背も凄く伸びているし…………」
マリィは嬉しそうな表情をした後、表情を輝かせ、クラムは呆けた表情で2人を見ていた。
「フフ…………本当に久しぶりね、ミント、ツーヤ。………少し見ない内に本当に大きくなったわね。」
そしてテレサは優しい微笑みを浮かべてミントとツーヤを見て言った。
「はい、先生。先生達が無事でよかったです………」
「フフ、ミント達、大人になったんだよ、先生!」
ツーヤは安堵の溜息を吐いて笑顔で答え、ミントは嬉しそうな表情で答えた。
「フフ、よかったわね。それより私達を守ってくれてありがとう。」
「そんな~。ミント達は当然の事をしただけですよ。」
テレサの感謝の言葉にミントは照れながら答えた。
「………ミントちゃん!」
そこに何かに気付いたツーヤは真剣な表情で叫んだ。
「!!」
ツーヤの言葉を聞いたミントは自分達の側面である森を見た。するとそこからまた装甲獣が現れた!
「十六夜………”突”!!」
そしてツーヤはクラフトを放ってダメージを与え
「ミントの本気………見せてあげる!ハァァァァァァ…………!」
そしてミントは一瞬で敵に近寄り、さまざまな技をすざましい速さで次々と放ち
「究極逆鱗乱舞――――――ッ!!」
最後に高くジャンプし、剣にすざましい闘気と魔力を込めて敵めがけて落下して攻撃した!ミントが放ったすざましい技の乱舞で攻撃するSクラフト――究極逆鱗乱舞を受けた敵は装甲を粉々にされた後、消滅した!
「わあ…………!」
「カ、カッコいい~!それにつええ~!」
「2人とも凄く素敵~!」
「2人ともカッコいいの~。」
2人の活躍を見たダニエルとクラムは表情を輝かせ、マリィとポーリィははしゃいだ。
「フフ、ありがとう、みんな。………紹介が遅れてすみません。正遊撃士のミントです。……ここはミント達が食い止めます!」
「皆さんは先生達を連れてマノリア村に急いでください!」
「か、かたじけない!」
「みんな!我々に付いてきてくれ!」
ミントとツーヤの言葉を聞いた兵士達は頷き、テレサ達を促した。
「2人とも………無茶だけはしないでね。」
「うん!」
「はい!」
心配そうな表情をしているテレサの言葉を聞いたミントとツーヤは力強く頷いた。
「さあ、みんな。行くわよ。」
「うんっ!」
「了解なの~。」
「ミントお姉ちゃん、ツーヤお姉ちゃん!後で一杯話そうね!」
テレサの言葉にダニエルとポーリィは頷き、マリィは期待した表情で言った後、テレサと共に兵士達の誘導に着いて行った。
「?ほら、クラム。先生達が行っちゃうよ?」
一方、唯一人残ったクラムを見て首を傾げたミントは促した。
「う、うん。えっと………その………頑張って!姉ちゃんたち!!」
「クラム………フフ、了解。」
「ここはあたし達に任せて、貴方は行きなさい。」
「うん!」
そしてクラムはテレサ達の方に走って行った後、一度だけ振り返って、自分達を守るように武器を構えている2人の頼もしい背中を見つめた。
(いつか俺も姉ちゃん達みたいに先生達を守れるようになってやる!)
ミント達の背中を見て決意の表情になったクラムはその場を去った。この時のクラムの小さな決意が後にクラムを遊撃士の道に歩ませるきっかけとなるとはこの時クラム自身すらも気づかなかった。
「フフ………王都で会った時、幼かった2人が見違たな。もはや私達とそう変わらない強さを持っているのじゃないか?2人とも。」
「ハハ、後輩に俺達の出番がとられちまったな。」
「やれやれ………2人がいればあたし達は必要ないんじゃないかい?」
「フフ、そうかもしれませんね。……それにしても可愛かった2人がこんなにも美人で可愛く強くなって、おまけにスタイルもいいなんて……うん!やっぱり可愛い事は正義だね!」
テレサたちが去った後、森の中からクルツ達が出て来た。
「あ、クルツさん達だ。」
「森の中にいた”結社”の魔獣達は掃討したんですか?」
クルツ達に気付いたミントは声を上げ、ツーヤは尋ねた。
「ああ。2人が先行して孤児院の先生達を守ってくれたお蔭で、あたし達は森の中の戦闘に集中する事ができたよ。」
「2人とも、よくやったな。」
「フフ………」
ツーヤの問いにカルナは頷いて答え、グラッツの賞賛にミントは微笑んだ。
「…………どうやら次が来たようだぞ。」
何かに気づき、槍を構えたクルツが言うと、街道の先から次々と装甲獣や人形兵器達が現れた。
「さ~てと。なかなか骨が折れそうだな。」
「だが……やるしかなさそうだね。」
「大丈夫、何とかなりますよ!”塔”に向かっているエステルちゃんたちに比べればこんなの軽いもんです!」
「ツーヤちゃん!頑張ろうね!」
「うん。ジルさん達をルーアン市に避難させている王国軍の援護の為に学園に向かったマスター達に負けないように頑張らないと!」
現れた敵の援軍を見たグラッツは大剣を、カルナはライフルを構えて苦笑し、アネラスは刀を構えて笑顔で言い、ミントに話しかけられたツーヤは頷いた。
「ふふ、そうだな。彼らが心置きなく戦えるよう最善を尽くさせてもらおう。方術―――貫けぬこと鋼の如し。いくぞ、みんな!」
グラッツ達の言葉に頷いたクルツは味方全員にクラフトを放って、自分を含めた味方全員の防御力を上げた後、号令をかけた。
「おおっ!」
「ああっ!」
「了解っ!」
「「はいっ!」」
クルツの号令に頷いたグラッツ達は戦闘を開始した!
~メーヴェ海道・ルーアン近郊~
一方その頃、ジェニス王立学園の生徒達は兵士達の誘導によって、次々とルーアン市に避難し、最後の組である学園長のコリンズ、生徒達の誘導をしていたジルとハンスが兵士達に守られてルーアン市に向かっていたが、街道の分かれ道でマノリア方面から機械人形達が現れ、兵士達は銃を撃って、敵を近づけないように応戦していた。
「クソ………後少しでルーアン市に到着できるのに………!」
「せめて接近戦を得意とするメンフィル兵を何名かこちらに廻してもらうべきだったか……!」
「ひるむな!必ずルーアンに送り届けるぞ!」
兵士達は必死の様子で銃を撃って、攻撃していた。
「あっちゃ~……こりゃ、本気で不味いかもしれないわね…………」
「おいおい、縁起でもない事を言うなよ………できるだけ避難の誘導を早くしたんだけどな………」
兵士達の様子を見たジルは溜息を吐き、ジルの言葉を聞いたハンスは指摘した後、若干後悔していた。
「後悔することはない。君達はよくやってくれたよ。………む。」
後悔しているハンスにコリンズが慰めの言葉をかけた後、避難する際通って来たヴィスタ林道方面を見て驚いた声を出した。
「どうしたんですか、学園………い!?」
コリンズの様子に首を傾げたジルはヴィスタ林道を見ると、そこから装甲獣達が迫って来ていた!
「な………!」
「側面からだと!?」
側面の敵に気付いた兵士達は驚いた。
「クソ。こんな事なら念の為にレイピアを持って来るべきだったぜ……」
「やめときなさい。クローゼにも勝てないあんたが勝てる訳ないでしょ。それに素人が戦っても怪我するだけよ。」
「うぐっ。そうハッキリ言うなよ………それにこの状況だとないよりマシだろ?」
ジルの指摘を受けたハンスは唸った後、答えた。
(………女神達よ………私の事はどうなっても構いません。ですから未来ある子供達を守って下さい………!)
コリンズがその場で祈ったその時!
「行っくよ~!ストーンインパクト!!」
「受けなさい!メテオフォール!!」
なんと、空よりアーツが降り注ぎ、ジル達に迫っている装甲獣達に命中した!アーツに命中した敵達は怯み、そして!
「えいっ!!」
空よりペルルが強襲してクラフト――恐怖の逆ごろごろを放って大ダメージを与えた後、空に舞い戻った後
「行きなさい!粒子凝縮!!」
空よりフィニリィが放った敵達の中心地に放ち、圧縮した電撃を放電させる粒子弾の強化魔術――粒子凝縮が敵達に命中し、倒した!
「ダイヤモンドダスト!!」
さらにジル達の前方にいた機械人形達に氷のアーツが放たれ
「とりゃぁぁ!二連制圧射撃!!」
そして矢が雨のように機械人形達に降りそそいだ後、続くように矢の雨がもう一度降り注いで、敵達の身体に無数の矢が刺さり
「―――――!!」
巨大な槌が機械人形達を圧し潰して、滅した!
「な!?」
「一体今のは………!」
一方兵士達は突然の出来事に驚いた。そしてペルルとフィニリィが地上に降り、また前方からはアムドシアスを連れたプリネがジル達に近づいて来た。
「みなさん、お怪我はありませんか?」
「プリネ!うん、ナイスタイミングよ!」
「マジで助かったぜ……………」
「フフ、君達のお蔭で九死に一生を得られたよ。」
プリネに話しかけられたジルは頷き、ハンスは安堵の溜息を吐き、コリンズは微笑んで答えた。ジル達の答えを聞いたプリネは兵士達を見て言った。
「私はメンフィル軍の者です。独断で皆さんの援護に参りました。………ここは私達が食い止めます!皆さんは学園の方達の避難の誘導を最優先にお願いします!」
「か、かたじけない!」
「感謝いたします!」
「みんな!我々に付いてきてくれ!」
プリネの言葉に兵士達は頷き、そして敬礼をして感謝した後、ジル達を見て言った。
「うむ。……さあ、2人とも。」
「はい。……プリネ、頑張ってね!」
「後で時間があったら、話そうぜ!」
そしてジル達は兵士達に誘導されて、去って行った。しばらくするとマノリア方面、ヴィスタ林道方面の両方から次々と装甲獣や機械人形達が近づいて来た。
「ペルル、フィニリィ。貴女達は協力して、ヴィスタ林道方面の敵達の殲滅を。」
「うん、任せて!」
「精霊王女たるこのわたくしにかかれば、軽いものですわ!」
プリネの指示にペルルとフィニリィは力強く頷いた。
「アムドシアス、貴女は状況を見て、双方の後方からの援護を頼みます。」
「うむ!ソロモンの一柱たるこの我がいるのだ!大船に乗った気分でいるがいい。」
「フフ、わかりました。………パラスケヴァス、貴方の力………期待していますよ。」
胸を張って答えるアムドシアスの言葉に微笑んだプリネは海辺に召喚したパラスケヴァスに優しい微笑みを浮かべて言った。
「―――――――」
プリネに微笑まれたパラスケヴァスは槌を空へと掲げて、高音の音波を出した。
「謳え!奏でよ!我等の凱旋ぞ!」
そしてアムドシアスはクラフト――戦いのメロディを奏で、自分やプリネ達の身体能力を上げた!
「我等に魔の加護を!魔法領域の付術!!さあ…………行きますよ、皆さん!今こそ、それぞれの激しい戦いを生き抜いてきた皆さんの力………存分に振るって下さい!」
アムドシアスに続くようにプリネは魔術を使って、自分達の魔法能力を上げた後、号令をかけた!
「うん!」
「ええ!」
「うむ!」
「――――!!」
プリネの号令にペルル達は力強く頷いた!
そしてプリネ達は戦闘を開始した……………!
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