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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第88話

~グリューネ門~



「つ、疲れた~!慣れない事はやるもんじゃないわ~!もう2度とこんな事をしたくないわ…………」

「ミントもすっごく疲れたし、緊張したよ~!」

メンフィル兵達がいなくなった後、着替えて、元の服装に戻ったエステルとミントはヨシュア達の所に戻った時、脱力して、いつもの雰囲気と口調に戻り、疲労を隠せない表情で溜息を吐いた。

「フフ、そうですか?お二人とも立派でしたよ。私もお二人を見習わないといけませんね………」

「よ、よかった~。いつもの2人に戻って…………」

2人の様子を見たクローゼは微笑み、ティータは安堵の溜息を吐いた。

「それにしてもエステル。君、いつからあんな口調で話せるようになったんだい?」

「ん?あんな口調って?」

ヨシュアの疑問にエステルは尋ねた。そしてエステルの疑問に答えるかのようにシェラザードが答えた。

「貴族の口調の事を言っているのよ。」

「あ~………さっきの口調ね………」

シェラザードの答えを聞いたエステルは苦笑した。

「フフ、デュナンにも見習わせてあげたいほど、ご立派でしたよ。」

「あ、あはは………さすがにそれは誉め過ぎですよ~。」

女王の言葉にエステルは苦笑しながら答えた。

「全く…………俺が知らぬ間に一体何があったんだ?」

そこにモルガンと共にカシウスがやって来た。

「あ、父さん。あたし達の護衛部隊の指示はしなくていいの?」

「………一応、一通りの指示は終わった。……………それでエステル。一体何があったんだ?」

「あ~…………信じられないと思うけど、実は…………」

そしてエステルはプリネと共に一連の出来事を説明した。

「お、おぬし達と姫様がメンフィルの本国に……!?」

「エステルがあの”覇王”の側室達が転生した人物…………」

「……………………」

エステル達の話を聞き終えたモルガンは驚き、ヨシュアは呆け、カシウスは考え込んでいた。



「転生………ですか。にわかには信じがたいのですが、教会では信じられているのでしょうか?」

一方話を聞いて考え込んでいた女王はケビンに尋ねた。

「いやまあ、確かにそういう説は聞いたことがありますけど、実例を聞いた事がありませんから、俺からは何とも答えられませんわ………」

尋ねられたケビンは溜息を吐いて答えた。

「フフ、私達の世界がこちらの世界と繋がった時、私達の世界の”理”が影響しているかもしれませんね。」

「…………貴女は?」

リタの言葉を聞いた女王はリタを見て尋ねた。

「………初めまして。私の名はリタ。リタ・セミフ。メンフィル帝国が治めるレスぺレント地方の南方、アヴァタール地方にある”冥き途”の見習い門番です。どうぞ、お見知りおきを。」

女王に尋ねられたリタは可愛らしい笑顔を見せて答えた。

「”冥き途”?一体それは何なのでしょうか………?」

そしてリタは自分の事や”冥き途”の存在、”魂”は転生することを説明した。

「異世界にはそんなところがあるなんて……」

「にわかには信じがたいですが……神や天使、そして幽霊まで現存するような世界ですから、あってもおかしくありませんな………」

リタの説明を聞き終えた女王は驚き、モルガンはリタに視線を向けた後、重々しい口調で答えた。

「………少し気になったのですが、異世界というのはどのぐらい広いのでしょうね……?メンフィル帝国の国力はゼムリア大陸を超えると噂されておりますし………」

一方ユリアはある事を呟いた。

「そうですね………いい機会ですし、陛下達にも私達の世界を少しだけご教授させて頂きます。」

そしてプリネは異空間よりディル・リフィーナの世界地図を出して、それを広げて女王達に見せて、説明した。

「い、異世界っていうのはし、信じられんほど、広いねんな…………しかも宗教の数もとんでもないし…………」

「メンフィル帝国でさえ、大陸の一部だなんて…………」

地図を見て、説明を聞き終えたケビンは驚きの表情で語り、女王は真剣な表情で呟いた。

「しかしそれでも国力は相当ですな………広大な土地を治め、さらに一部の内海全ての海上権を握っているとは………」

(フ~ム………彼らと本気で敵対するつもりなのかね、あの”怪物”は。初めてメンフィルの国力を知って思ったけど、少なくともゼムリア大陸以上はあるじゃないか。こんな国に勝とうと思うなんて、無謀としか言いようがないけどね。やれやれ………エレボニアを潰す気なのかね?)

一方モルガンは重々しい口調で呟き、オリビエは心の中である人物の真意を考え込んでいた。

「………プリネ姫。一つ気になったのですが、よろしいでしょうか?」

「何でしょうか?」

カシウスに尋ねられたプリネはカシウスを見た。



「現在ゼムリア大陸にて活動している異世界の宗教………イーリュンとアーライナは光と闇、相反する神殿と聞きましたが、何故双方の神殿は争う事なく、均衡を保っているのでしょうか?……プリネ姫のお話だと、基本光の神殿と闇の神殿は敵対しているとの事ですが………」

「それは双方の神殿の意向が関係しています。……イーリュンは”全ての傷ついた人を癒す”という教えの元、種族問わずに接して癒していますし、アーライナは”混沌”を望む宗教。敵対をしない限り、基本中立を貫いています。………これが私達闇の勢力を敵視している光の三太陽神の神殿や、軍神(マーズテリア)や嵐の(バリハルト)、そして闇の神殿で最大の勢力である暗黒の太陽神(ヴァスタール)等になると話は別になりますが………」

「メンフィルはその中でどちらにも傾く事なく、”共存”を謳っている………か。”覇王”達はとてつなく険しい道を歩いて来たのだろうな………」

「ええ…………一体どれほどの戦いを生き抜いてきたのでしょう、メンフィルは………」

プリネの答えを聞いたジンは考え込み、クローゼは真剣な表情で呟いた。

(”軍神”か……エラルダ大司教やったら、絶対にこっちの世界での活動に反対するやろうな………)

一方ケビンは真剣な表情で考え込んでいた。

「現神の他にも土着神という神が存在し、そして崇められている国があります。……その中でも有名な国は”水の巫女”が崇められ、そして”神殺し”セリカ・シルフィルを客将として迎え、アヴァタール地方最大の勢力と言われるレウィニア神権国です。」

(セリカ……確かパズモ達の元・主であたしがこの剣に誓った人の一人………この国にいるんだ………)

「”神殺し”!?なんや、その物騒な呼び名は!?」

プリネの説明を聞いたエステルは真剣な表情で地図を見つめ、ケビンは驚きの表情で尋ねた。そしてプリネはさらに説明をした。

「オイオイオイ………そんなとんでもない存在もいるんかいな………(”神を殺した”って………総長をも超えるとんでもない人物もおるなんて………)」

「もはやおとぎ話を聞いているような感覚ですね………」

セリカの事を知ったケビンは驚きの表情で呟き、女王は真剣な表情で呟いた。

「……”神殺しが居る所に災いあり”と語られるほど、世界の禁忌と言われる存在です。関わらない方がこの国……いえ、ゼムリア大陸の為でしょう。……まあ、”神殺し”セリカ・シルフィルは普段は自分に仕える数名の侍女達と共に自分の屋敷に籠っているので、滅多に表舞台に出てきませんし、メンフィルも”神殺し”とは関わらない方針なので、”神殺し”がこちらの世界に来るようなことはないと思いますので、ご安心下さい。」

それぞれ重々しい雰囲気を纏わせている女王達を安心させるように、プリネは苦笑しながら説明した。



「………それで話は戻るのだが、エステル。お前は本当にリウイ陛下の側室だった方達の転生した人間なのか?」

「うん。…………ほら、これならどう?」

カシウスに尋ねられたエステルは目を閉じて集中し、黒髪と翡翠の瞳になった!

「なっ………!」

「その髪と瞳は武術大会の時に見せた………!」

変貌したエステルを見たカシウスとヨシュアは驚いた。また女王達も信じられない表情でエステルを見ていた。

「ま、こういう訳って事。さっきの口調は2人の”王族”としての口調を真似ただけよ。まあちょっと、ズルした気分になっているんだけどね………」

「エステル……………」

苦笑しているエステルにヨシュアは不安げな表情で見ていた。

「な~に、心配そうな顔になっているのよ!先に言っておくけど、あたしはリウイの事は何とも思っていないから、安心してね。………確かに2人の記憶であいつを愛した記憶とかあるけど………それはあくまで”2人”の記憶。あたしには何の関係もないわ!それともあたしの事が信じられない?」

不安そうな表情をしているヨシュアに元の姿に戻ったエステルは微笑みながら尋ねた。

「いや………信じるよ。例え何があろうと変わらないのは君の取り柄だものね。」

エステルに微笑まれたヨシュアが笑顔で答えた。

「全く………リウイ皇帝陛下を呼び捨てにする度胸を持つ事といい、一体お前の家はどういう教育をしているんだ?カシウス。」

「私に言われても。………”王”を呼び捨てにするなど、そんな恐れ多い教育等した事がありません。エステルが特殊なんでしょう。現にヨシュアは礼儀正しいですし。………それと2人とも、イチャつくのなら人目のないところでしてくれないか?」

モルガンに見られたカシウスは溜息を吐いた後、指摘した。



「うっさいわね!!あたし達が働いている時にこっそり家に帰ってお母さんと子作りしていた父さんに言われたくないわよ!」

「ギクッ………なぜそれを………」

エステルの指摘にカシウスは一歩後退して気まずそうな表情でエステルを見た。

「父さん………何をやっているんだよ……」

「ったく。何をやっているんだよ、オッサン……」

「全くこの愛妻家が……」

「フフ…………」

ヨシュアとアガットは呆れ、モルガンは呆れながらも口元に笑みを浮かべ、女王は微笑んだ。

「フフ、でもいいじゃない、ママ。後数か月待ったら、ママ達の弟か妹が産まれるんだから。」

「………………………………何?」

「え………………」

微笑みながら言ったミントの言葉を聞いたカシウスは少しの間固まった後、呆けた声を出し、ヨシュアは驚いた。

「………ロレントに行った時、家に帰ってお母さんから聞いたわよ?まだ当分先だけど、父さんとできた新しい子供が産まれるって。」

「……………………」

「まあ……おめでとうございます…………!カシウス殿………!」

「おめでとうございます!」

「フッ、よかったな。」

エステルの話を聞いて呆けて固まっているカシウスに女王やユリア、モルガンは祝福した。

「フフ、エステルさん達から聞いた時は本当に驚きましたね。」

「ああ。だが、めでたい事には違いないな。」

一方クローゼは微笑みながら呟き、ジンは頷いた。

「えへへ…………早くミント達の弟か妹が産まれないかな~。」

「フフ、ミントちゃんったら………それにしてもエステルさん達の弟さんか妹さんはどんな方に育つんでしょうね?」

「そうね。……フフ、その時が来るのが楽しみね。」

ミントの無邪気な様子に微笑んだツーヤの言葉を聞いたプリネは微笑みながら頷いた。



「……フム。ロレントも近いようですし、将軍。少々の時間でよろしいので、帰宅してもよろしいでしょうか?」

一方カシウスはロレントの方面を気にしながらモルガンに尋ねたが

「馬鹿者。この非常時に認めるわけにはいかんだろう。」

「ガクッ…………」

モルガンの答えにカシウスは肩を落とした。

「………ま、そういう訳だからあたし達が四輪の塔に行っている間、お母さん”達”をちゃんと守ってね、父さん。あたし達の護衛部隊の兵士さん達もいるんだから、大丈夫でしょう?」

「ああ、任せておけ。………それより、エステル。本当にさっきのメンフィル兵達はお前が召集をかけたのか?」

エステルに尋ねられたカシウスは力強く頷いた後、尋ねた。

「あたしがそんな事をする訳ないでしょ。………リウイの奴が”結社”の動きを知って、勝手にあたしとミントに押し付けやがったのよ!後で覚えてなさいよ~!」

カシウスの疑問に溜息を吐いて答えたエステルはジト目でロレント方面を睨んで、身体を震わせながら言った。

「フフ、きっとエステルさんを思っての行動ですよ。。」

その様子を見たクローゼは微笑んで言った。

「エステルをしっかり捕まえとかないと、とんでもない悪い虫に言い寄られるわよ~?ヨシュア。」

「ハハ…………頑張ります………(…………それにしても、”転生”…………か。……………プリネ………君はもしかして”姉さん”なのかい………?」

一方シェラザードにからかわれたヨシュアは苦笑しながら頷いた後、仲間達と談笑しているプリネを意味ありげな視線で見つめていた。



その後女王を王都まで送り届け、王国軍の全部隊を指揮するためにカシウスとモルガンはそれぞれレイストン要塞とハーケン門に戻り……。エステルたちは”アルセイユ”で各地にある塔に向かうことになった………………


 
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