英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第76話
~夜・川蝉亭~
「―――なるほど。ゴッツイ事があったもんや。まさか伝説の古代竜がリベールに棲息していたとはな。しかも”輝く環”について警告してどこかに飛び去ったときたか……」
エステル達のからボースで起こった出来事を聞いたケビンは考え込んだ。
「うん、色々ありすぎて頭が処理しきれない感じかも。どうして竜が”輝く環”について口を閉ざしたのかも分からないし。」
「実は、教会の聖典にこんな一節が存在してな……。『至宝授けし女神、聖獣を遣わして人の子らの行く末を見届けさせん』」
「『至宝』に『聖獣』……。それぞれ”輝く環”と”竜”に相当しそうですね。」
「しかも『見届けさせる』という文句がポイントかもしれないね。ただ見守るだけで、手助けをしてくれるわけじゃないらしい。」
「ヘッ、ケチくせえ話だぜ。」
ケビンの話を聞いたクローゼは推測し、それを聞いたオリビエは頷き、アガットは鼻をならした。
「いずれにせよ、これで”輝く環”が実在する可能性はかなり高くなった。オレが調べた事と合わせると色々と推測できると思うんやけど……」
「ケビンさんが調べた事って”四輪の塔”についてよね。何か分かったことでもあるの?」
「まあな。4つの塔の頂上にある用途不明の古代装置やけど……。あれが今、光が灯って動いとるんは知っとるか?」
「そういえば、琥珀の塔で魔獣退治をした時にも光っていたわね。でも、何か関係があるのかしら?」
ケビンの問いにシェラザードは心当たりを思い出して尋ねた。
「これは、あのユリア大尉から教えてもろうたんやけど……。城の”封印区画”の最奥で巨大な機械の化物が現れる直前に妙な出来事があったそうやな?」
「あ、うん……。確か、”ゴスペル”が使われた直後、遺跡の照明が全部消えちゃって……。その後、警告の音が聞こえてから周りの柱が下に降りたのよね。」
「警告の内容は―――『第1結界の消滅』と『デバイスタワーの起動』だったわね。」
「そうそう、それです。で、目撃情報とも合わせて分かったんが……。4つの塔で装置が動き始めたのが、まさに”封印区画”で”ゴスペル”が使われた時間っちゅうことですわ。」
エステルとシェラザードの話に頷いたケビンは真剣な表情で説明した。
「あ、あんですって~!?」
「そ、それじゃあ、警告にあった『デバイスタワーの起動』って……」
「”四輪の塔”の屋上にある装置の起動を意味していたわけだ。」
ケビンの説明を聞いたエステルは驚き、ティータとジンはケビンの説明から得た答えを確認した。また、他の仲間達も驚いた表情をしていた。
「ええ、それ以外に考えられへんと思います。」
「ふむ、状況を整理すると……。グランセル城の地下遺跡には”第1結界”なるものを作りだす機能が備わっていた。だが、大佐に”ゴスペル”が使われてしまったことによって”第1結界”は消滅してしまった。」
「そして、その代わりに”デバイスタワー”が起動した……。ひょっとしたら”第2結界”と呼ばれるようなものを発生させるためかもしれません。」
オリビエとシェラザードは推測した事を言った。
「”第2結界”……」
「”第1”という言い方からして、何重にも封印を施された証拠ですね………」
「問題はその結界がどういうものか……ですね。」
「……多分、第1とは違う解除方法でしょうね……同じ封印を施すなんて、あまり考えられませんもの。」
ミントは気になった言葉を呟き、プリネやツーヤは考え込むように呟き、リタも頷いて説明を補足した。
「それなんやけど……。多分、”輝く環”の在り処を隠しておくような代物やと思う。封印もリタちゃんの言うとおり、第1とは別物やろう。」
「そっか、”輝く環”は封印区画には存在しなかった……。このリベールのどこかに隠されているって話だったわね?」
「そゆこと。そして、仮に結社の目的が”輝く環”の入手なら……連中の『実験』とやらもその目的を遂行するための手段と考えた方がいいやろね。」
エステルの確認の言葉にケビンは頷いて答えた。
「う、うーん……」
「”輝く環”、”ゴスペル”、”結社による実験”……。フフ、どうやら全てが繋がってきたみたいだね。そして、その絵を描いているのが”教授”と呼ばれる人物なわけか。」
「うん……そうね。竜の額に”ゴスペル”を埋め込んでボース地方を襲わせた張本人……。そして……。………………………………」
話の大きさにミントは呆けた声を出し、オリビエの言葉に頷いたエステルはある心当たりを思い出し、黙ってしまった。
「……お姉ちゃん?」
「ママ?」
「なんや、どうしたん?」
黙り込んだエステルを見たティータ、ミント、ケビンは尋ねた。
「うん……。その”教授”なんだけど。ヨシュアが居なくなった原因を作った人物じゃないかと思うの。」
「え……」
「………………!!」
「それって……。5年前、あの子が先生に引き取られることになった原因を作った黒幕ね?」
エステルの話を聞いたクローゼは驚き、プリネは声を出さず血相を変え、シェラザードは尋ねた。
「うん……。それから、リシャール大佐やクルツさんたちの記憶を操作した人物とも同じだと思う。」
「なに!?」
「ふむ、確かに記憶操作の一件はいまだ解決されていないが……。どうしてそう思ったんだ。」
エステルの説明を聞いたアガットは驚き、ジンは尋ねた。
「うん、あのね……」
そしてエステルは仲間達にヨシュアが消えた日の夕方、出会った人物のことを思い出せないことを説明した。
「そんなことが……」
「ママ…………
「お前……今まで抱えてやがったのか?」
(……”教授”……その人がヨシュアを暗殺者に仕立て上げ、そしてヨシュアに悲しい決意をさせた張本人……許せない……!)
(?どうしたんでしょう、マスター。)
(とてつもない怒りが感じられるね……)
エステルの話を聞いたシェラザードは真剣な表情をし、ミントは心配そうな表情でエステルを見つめ、アガットは尋ねた。一方プリネは拳を握って体を震わせ、その様子を見たツーヤは首を傾げ、リタは不思議そうな表情で見ていた。
「そういうわけじゃないけど……。……ゴメン、話すのが遅れたかも。」
「でも……間違いなさそうですね。その人が、様々な事件の元凶である可能性は高いと思います。」
「ふむ、かなりエグい性格をした人物のようだねぇ。」
「ああ……。注意する必要がありそうだぜ。」
「………………………………」
エステルの説明を聞き終えたクローゼやオリビエ、アガットは真剣な表情で頷き、ティータは不安げな表情をしていた。
「あっと……。ゴメン、ティータ。せっかく遊びに来たのにイヤな話をしちゃったわね。」
「ううん……。気にしないで、お姉ちゃん。ただ、どうしてその人はそんな事ができるのかなって……。みんなにイヤな思いをさせて、ヨシュアお兄ちゃんを苦しめて……。わたし……分からなくって。」
「も~、そんな歪んだやつの事なんか分かってあげる必要ないってば。ティータはティータらしくが一番!ね、アガット?」
「だ~から!なんで俺に振りやがるんだ!」
「クスクス……」
「ふふ……いいオチが付いたわね。」
「………………………………」
(”星杯騎士”………アーティファクトの回収もそうですが、確かもう一つの――”裏”の顔は”外法”を滅する事………まさか、ケビンさんの真の目的は”輝く輪”ではなく、”教授”なのかしら……?)
エステル達が和んでいる中、ケビンは一人真剣な表情で黙っていた。またその様子を見ていたプリネは真剣な表情で考え込んだ。
「ん?どうしたの、ケビンさん?」
一方ケビンの様子に気づいたエステルはケビンに尋ねたが
「いや……何でもないで。とりあえず、情報交換はこのあたりにしとこうか?せっかくの料理が冷めてしもうたら勿体ないし。」
「うん、それもそうね。」
ケビンに誤魔化され、気にしなくなった。
「フッ、そういう事なら話は早い。思う存分、酒池肉林を楽しむとしようじゃないかっ!」
「あら、ホントにいいの?」
「……ごめんなさい。無礼講くらいで許してください。」
オリビエはいつもの調子で高々と言ったが、シェラザードの言葉を聞き、表情を青褪めさせて答えた。
そしてエステル達は久しぶりの休暇を過ごし始めた……………
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