英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第71話
その後アルセイユはボースの空港に向かい、着陸して停泊した。そしてエステル達は今後の事を話し合い始めた。
~アルセイユ・会議室~
「竜が逃げ込んだのは霧降り峡谷の北西部……空賊アジトがあった場所より奥にある霧の深い難所です。」
「つまり、飛行船を使った捜索は難しいということですね?」
ユリアの報告を聞いたクローゼは真剣な表情で尋ねた。
「残念ながら……。地上から捜索部隊を派遣するしかないでしょう。」
「ちょ、ちょっと待って!大勢の兵士を差し向けたらまた竜に逃げられちゃうわよ!」
「そうね……。ここは少人数で捜索して竜のスキを突いた方がいいわ。」
モルガンの話を聞いたエステルは慌て、シェラザードは提案した。
「つまり、この先はおぬしらに任せろということか?」
「難所の捜索は、軍人よりも我々の方が慣れていますからな。適材適所というやつでしょう。」
モルガンの疑問にジンは頷いて答えた。
「……ふむ…………。だが、おぬしらとて捜索するアテはあるのか?たしか、峡谷の北西部には道らしき道もなかったはず。行き当たりばったりでは何日かけても終わりはせんぞ。」
「そ、それは……」
モルガンの指摘に返す言葉がなかったその時
「……そいつは任せとけ。」
「おぬしは……」
「アガット、ティータ!?」
会議室にアガットとティータが入って来た。
「フフ、私達もいますよ?」
さらにプリネ、ツーヤ、ミント、リタも入って来た。
「ミント!それにプリネとツーヤも!」
「プ、プリネ姫!」
アガットやプリネ達の登場にエステルは驚き、モルガンも驚いた。
「プリネ達の方はメンフィルの兵士さん達への指示は済んだの?」
「はい。先ほど指示を終えて、アルセイユが戻って来たという報告を聞き、直接こちらに来ました。」
「ミントとリタちゃんはちょうど区切りがついたから、こっちに来たの!」
「………空港に到着した時、プリネちゃん達ともちょうど合流できて、一緒にこっちに来たわ。」
エステルの疑問にツーヤは答え、ミントやリタもツーヤの説明を補足するように続けて答えた。
「そっか。そ、それよりもアガットはもう動いて大丈夫なの!?」
ツーヤ達の説明を聞いたエステルはアガットを見て驚いた表情で尋ねた。
「怪我の方は心配ねぇ。ただのカスリ傷だからな。」
「……ティータ、ほんと?」
アガットの答えを聞いたエステルは信じられず、ジト目でティータに尋ねた。
「う、うん……。アガットさん、無理はしてないと思うよ。それにさっき念の為にプリネさん達が治癒魔術をかけてくれたし。」
「そっか……だったら良いんだけど。」
「フン、体力だけは有り余っているようだな。任せろと言っておったが、作戦の顛末は聞いているのか?」
「ああ、ルグラン爺さんから大まかなことは聞いてきた。竜は霧降り峡谷の北西部に消えたそうだな?」
モルガンに尋ねられて頷いたアガットは確認した。
「うん、そうだけど……」
「霧降り峡谷について詳しいヤツを知っている。そいつに頼めば、竜の隠れた峡谷の北西部に渡れるだろう。」
「ほう……」
「そ、それって誰なの?」
アガットの話を聞いたモルガンは驚き、エステルは尋ねた。
「峡谷の東側に住んでいるウェムラーってオッサンだ。昔、道もない北西部に渡ったことがあるらしい。」
「フッ、さすが遊撃士。日頃の地道な情報収集が実を結んだということだね。」
「………………………………。しかし、実際に竜を見つけたらどうするつもりだ?………廃鉱の時に現れた獣達と共に退治するのか?それでも退治できるかわからない相手だぞ。」
アガットの話を聞いたオリビエは感心し、モルガンは考え込んだ後、尋ねた。
「竜の額には”ゴスペル”が仕込まれていたそうだな?まずはそいつを何とかするのが先決だろう。」
「ふむ……」
「考えてみれば、あれのせいで竜が暴れたかもしれないのよね。今までにも”ゴスペル”は色々な異常現象を起こしているし。」
「”ゴスペル”を無力化できれば竜の暴走を止められるという事か。ふむ。理屈としては合っている……」
アガットの説明を聞いたモルガンやシェラザード。ジンは納得した。
「”ゴスペル”の無力化というと、ケビン殿が使った方法を思い出すな。あの時はアーティファクトを偽物ではるが”ゴスペル”に叩き付けることでショートさせていたが……」
一方ユリアは”ゴスペル”を無力化する方法を考え込んだ。
「そんな悠長なマネはしないさ。フレームごと”ゴスペル”を破壊するだけだ。」
「なに……!?」
「ちょ、ちょっと待って!”ゴスペル”を壊すってそんなこと簡単にできるの?たしか物凄く硬いフレームで包まれてるんじゃなかったっけ?」
「それについてもなんとか目処が付いた。……コイツだ。」
驚いているエステル達にアガットは何かの装置が取り付けられた重剣を見せた。
「それって……」
「根元に何かのユニットがはめ込まれているみたいね。」
「今朝、ラッセルの爺さんが定期便で送ってきた新発明……。”ゴスペル”のフレームを破壊するためのユニットだ。」
「ええっ!?」
アガットの話を聞いたエステル達は驚いた。
「ふむ……。一体どういう仕組みなんだい?」
そしてオリビエが気になり尋ね、ティータが詳細な説明を始めた。
「えとですね……。このユニットが、フレーム素材のみ崩壊させられる波長の高振動をブレード部分に与えるらしいです。振動が原因で2、3回使ったら壊れちゃうそうなんですけど……。うまく刀身を食い込ませられれば”ゴスペル”を破壊できるそーです。」
「よ、よく分からないけどメチャメチャ凄そうな発明かも。」
「フフ……さすがは王国一の天才学者ですね。」
ティータの説明を聞いたエステルはあまりわかっていない様子で納得し、プリネは感心していた。
「さっきティータに付けてもらったばかりだが、どうやら問題なく動きそうだ。あとは実際に竜を捜しだして額に喰らわせてやるだけだが……。どうだい、将軍さんよ?」
「まったく……。そこまで用意されたのでは認めてやるしかないではないか。」
アガットに不敵な笑みを浮かべて尋ねられたモルガンは苦笑しながら言った。
「それじゃあ……」
「俺たちに任せていいんだな。」
「うむ……。やれるだけはやってみるがいい。ただし念のため、飛行艦隊を峡谷の周りに展開しておく。おぬしらが竜を逃がした時、即座に対応できるようにな。」
「ヘッ、上等だ。ムダ弾を撃たせないようせいぜい気張らせてもらうぜ。」
そして竜を見つける為、エステル達はアルセイユから降りた
~ボース国際空港~
「この後、”アルセイユ”はボース地方の上空を巡航する。竜の居場所が特定できたらよろしく連絡をお願いしたい。」
「うん、任せて。」
アルセイユから降りて、仲間達と共に発着所まで来たエステルはユリアの言葉に頷いた。
「竜の居場所が分かったらジークに伝えてもらいます。私が同行していない場合も、エステルさんの近くにいるようお願いしておきましたから。」
「殿下、同行するならばくれぐれもお気を付けてくだされ。……エステル・ブライト。それからアガット・クロスナー。」
「へっ……?」
「……なんだ?」
モルガンに呼ばれたエステルとアガットは首を傾げた。
「もし竜が峡谷から逃げたら軍が責任をもって何とかしよう。もう2度と、リベールの民を傷付けるようなことはさせぬ。だから、失敗を恐れずにやれるだけやってみるがいい。」
「モルガン将軍……」
「……まさかアンタからそんな言葉が聞けるとはな。どういう風の吹き回しだい?」
「なに、ただの社交辞令だ。……大尉、出発するぞ。」
「は!」
そしてアルセイユは飛び立った。その後エステルは肝心の重剣を使うアガット、重剣に付いているユニットの整備ができるティータ、竜と本格的に戦う時になった際、”竜化”して対抗できるミントとツーヤ、古代竜以上の存在の竜と戦った事のあるリタ、さらにプリネの召喚によって最強の種族である”魔神”――アムドシアスをメンバーにして、ギルドで待機する仲間達と別れた。
~ボース市~
「さてと、霧降り峡谷にいるウェムラーって人を訪ねるのよね?」
「ああ、峡谷の東側の山小屋に住んでいるはずだ。それよりも……。……やっぱり付いて来るつもりか?」
エステルに尋ねられたアガットは頷いた後、ティータを見た。
「えへへ、もちろんです。振動ユニットが故障したらその場で修理できますし……。飛んでいる相手だったら導力砲が役に立つと思うんです。」
「チッ……しゃあねえな。あまり無理をして足を引っ張るんじゃねえぞ。」
「はいっ!」
アガットの返事を聞いたティータは嬉しそうな表情で頷いた。一方その様子をエステル達は見つめ続けていた。
「な、なにお姉ちゃん?」
「……何だってんだ?」
エステル達の様子に気付いたティータとアガットは首を傾げた。
「いや~、なんと言いますか。今まで以上に馴染んでるなぁって思って。」
「ええ。お二人とも凄く仲良く見えますよ?フフ……どうやら良い事があったみたいですね。」
「……まあ、仲が悪いよりは断然よいな。」
「フフ………ティータちゃん、アガットさんと前以上に凄く仲良くなったんだね!」
「うん。一体どうやって仲良くなったのか、凄く気になるよ。」
アガット達に尋ねられたエステルはからかうような表情で2人を見て言い、エステルの言葉にリタやアムドシアスは頷き、ミントは嬉しそうな表情で言って、ツーヤは微笑みながらアガットとティータを見た。
「ふえっ……?」
「な、なに言ってやがる。」
エステル達の言葉を聞いたティータは驚き、アガットは焦った。
「あはは、焦ってやんの。でも……気持ちの整理は付けられたみたいじゃない?」
「……まあな。もう1人で突っ走って自滅するようなマネはしねえさ。またどこぞのチビスケに怖い顔で叱られたくねえしな。」
「あう……アガットさんったらぁ。」
アガットの言葉を聞いたティータは恥ずかしそうな表情で言った。
「ふふ……そっかそっか。よーし、それじゃあ霧降り峡谷に急ぎましょ!」
「うんっ!」
「おう!」
その後エステル達は霜降り渓谷に向かい、アガットが尋ねた人物によって、通れなかった道が通れるようになり、そしてジークを呼んでメモをジークの脚にくくりつけて、ジークに連絡を頼んだ後、竜がいるであろう場所に出発した。
~ボース地方・上空~
「ピューイ!」
「おお、来たか!」
エステル達が竜がいる場所への道を歩み進んでいる頃、ジークがアルセイユの艦首で連絡を待っているユリア達の所に飛んで来た。そしてユリアはジークの脚にくくり付けてあるメモを外して、内容を読んだ。
「……エステル君たちが無事、竜のいる岩山に到達しました。これから内部を通り抜けて竜のいる場所を目指すそうです」
「そうか……。……全艦艇に通達!徹甲弾を装填した上で所定の位置に待機せよ!万が一、竜が逃げ出しても絶対に包囲を突破されるな!」
ユリアの話を聞いたモルガンは頷き、指示をした。
「イエス・サー!」
~霧降り峡谷・北西部・最奥頂上~
霧降り峡谷を登り続けたエステルたちはついに、竜の棲む洞穴を見つけた。
(ああっ……)
(いたか……!)
竜を見つけたエステルは驚き、アガットは警戒した。
(ね、眠ってるのかな?)
(……そうみたいですね。)
眠っている竜の様子に気づいたティータの言葉にリタは頷いた。
(ほう………中々立派な竜ではないか。このような竜、滅多にお目にかかれんぞ。)
(ボースで見た時も思ったけど、本当に大きい竜だね……)
一方アムドシアスは竜を見て感心し、ミントは竜の大きさに呆けた。
(………マスターが戦ったレーヴェという人もいませんね……)
(これはチャンスかも……。アガット、どうする?)
ツーヤの言葉に頷いたエステルはアガットに尋ねた。
(まずは俺1人で接近する。うまく行きゃあ、そのまま”ゴスペル”を破壊できるだろう。)
(そっか……分かった。)
(アガットさん……)
(大丈夫だ、心配すんな。失敗した時は援護を頼むぞ。)
(はいっ……!)」
(気を付けてね……!)」
そしてアガットは”重剣”を持って、近くの岩陰に身を隠した。
(あれか……)
”ゴスペル”を確認したアガットは、重剣についたユニットの電源を入れた。
(……行くぜ!)
アガットは眠っている竜に走って行きそして!
「らあああっ!」
ありったけの力で竜の額に重剣を食い込ませた!その時、”ゴスペル”にヒビが入る音がした。
「やったか……!?」
アガットは警戒しながら竜を見ていた。すると”ゴスペル”から黒い光が出て、竜が目覚めた!
「チッ……浅かったか!」
竜の様子を見たアガットは舌打ちをした後、重剣を一端しまい、両手剣を構えた!そして竜はアガットに炎を吐いた!
「!!」
竜の攻撃に気づいたアガットは横に飛んで回避した!
「アガットさんっ!」
「アガット!」
導力砲で竜の頭を攻撃したティータが慌てた様子でアガットに近づいた。そしてティータに続くようにエステル達も武器を構えて、アガットに近づいた。
「ヒビは入ったが破壊まではできなかった!こうなりゃもう1度チャンスを作るしかねえ!手を貸してくれ!」
「もちろん!」
「はいっ!」
アガットの言葉にエステルとティータは力強く頷き
「……同じ”竜”として絶対に助けてあげようね、ツーヤちゃん!」
「うん!」
ミントとツーヤはそれぞれ決意の表情で武器を構え
「古の竜よ……ソロモンの一柱たるこの我の旋律……とくと聞くがいい!」
「フフ………相変わらずですね、アムドシアス。”魔槍のリタ”………参ります。」
アムドシアスは高々と言って弓を構え、リタはアムドシアスの様子を見て口元に笑みを浮かべた後、不敵な笑みを浮かべて竜を見た!
「みんな、行くわよ!!」
エステルの掛け声を合図に、”伝説”の存在に挑む戦いが始まった…………!
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